俺達/私達の関係   作:クロウズ

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10話目 『絶対夜戦主義』

 あれから数日後。3連休の最終日であるこの日、京は朝早くから家を出て、『絶対夜戦主義』の文字が入った白のTシャツにジャージの上下で散歩をしていた。あれから乙女は、あの時の告白と行為が嘘だったかのようにいつも通りに接してきているが、京はあの事を意識してまともに会話できないでいた。

 

 

「はぁ……どうしよう」

 

 

 誰かに相談すべきだろうかと悩みながら散歩を続け、公園に足を運ぶ。早朝で誰もいないのか、公園は静かなもので、京はベンチに腰掛けて日差しに目を細めながら空を仰ぎ見る。空には数羽の鳥が飛び交い、それを目で追う。

 

 

「俺もああして飛べたら、今の悩み晴れるかな………?」

「やっほ、栢嶋くん」

「おうっ!?」

 

 

 自分でも聞こえるか怪しいくらいの小ささで呟いてみると、明音が上から顔を覗き込んでくる。それに驚いた京は体を震わせベンチから滑り落ちる。その際に頭を打ち、涙目でさする。

 

 

「わっ、大丈夫!?」

「いてて……さ、櫻井?なんでここに」

「散歩をね。栢嶋くんは?」

「俺も散歩を、ちょっと」

 

 

 伏し目がちに言うと、明音はそっかーと言って先ほどまで京がしてたように空を仰ぎ見る。

 

 

「今日はいい天気で、散歩日和だね」

「ん……そうだな」

「栢嶋くん、元気ないね。何か悩み事?」

「ちょっとな」

 

 

 この際明音に話そうかと考えたが、義姉に告白されてキスされたと話せば彼女は困惑するだけだろうと思いなかなか言い出せないでいると、

 

 

「実は、私もちょっと悩み事があるの」

「そうなのか?そうは見えないけど」

「そうかな。で、気を紛らわせようかなって散歩してて」

「……似たことしてるなぁ、俺達」

 

 

 明音が話してくれたことが自分の現状とほとんど同じだったことに、苦笑気味に笑う。そして吹っ切れたのか、明音の方を向き、

 

 

「………なあ、俺の悩み事、聞いてもらっていいか?」

「ん?いいよ、なにかな」

「実はこの前――」

 

 

 それから京は、乙女とあったことを話した。告白と、突然のキスのことを。明音は声を出さず、黙って京の話を聞いていた。その表情には驚きとは他に、どこか苦しそうな感情が見え隠れした。

 

 

「でもこの3日間、普段と変わらなかったからさ。どうすればいいんだろって」

(あの後、そんなことがあったんだ……)

「……?櫻井、大丈夫か?」

「えっ?ああうん、大丈夫だよ?」

 

 

 心配そうな目を向けられた明音は、慌てて手を振る。

 

 

「栢嶋くんは、先輩に対しての気持ちが決まってない感じなのかな?」

「まあ、それもあるかな。家族としては、好きなんだけど……」

「そっか……」

「……聞いてくれてありがとな。ちょっとすっきりした」

「ううん、いいの」

 

 

 明音ににぱっと笑いかけて立ち上がり、大きく伸びをする。それから明音の方を向くと、

 

 

「そういえば、櫻井の悩みって?」

「私?うーん、言わない方がいいかな」

「お、俺じゃ力になれないってことか……?」

「そうじゃないよ!そうじゃない、けど……」

 

 

 うつむいてもじもじとしながら言葉を探しているように見える明音の前に立ち、京は右腕を袖まくりして曲げ、左手をひじの内側辺りに添える。

 

 

「もしかしたら力になれるかもだし。お兄ちゃんに任せろ!」

「………。ぷっ、あはは。栢嶋くんはお兄ちゃんというより弟くんだよ。それに、私達同い年だし」

「た、誕生日は俺の方が早いし!ほら、いいから話す!」

「解った解った。あのね、実は私、好きな子がいるの」

「そ、そうなんだ」

 

 

 明音の悩みが予想外の悩みだったのか、軽く衝撃を受ける。

 

 

「その子は、背は低いけど頑張り屋さんで、でもどこか危なっかしくて」

「ふむふむ。聖櫻の生徒?」

「うん、同じクラスの子。えっと、櫻花祭の時に女装させられてて」

「へぇ……」

「お姉さんがいて、文字T集めが趣味で」

「ん?」

「あと、お祖父さんが元軍人って聞いたよ」

「んんっ!?ちょっと待った!」

 

 

 明音の言う相手の特徴を聞いて一度待ったをかけた京は、背を向けて何事か考えるように二言三言ぶつぶつ呟き、明音の方に向き直り、

 

 

「えっと、それって、俺……だよな?」

「うん。私は、栢嶋くんが好きだよ」

 

 

 そう聞くと明音はどこか恥ずかしそうに頷いた。京はどうしたものかと考える。義姉に告白され、その事で悩んでいたらさらにはクラスメイトにも告白されたのだ。明音が言わない方がいいと言っていた理由はこれかと理解したものの、今は答えが出てこない。それでも考え続けていると、明音が近付き頭を撫でてくる。

 

 

「んにゅ……いきなりなんだ」

「答えは、急がなくていいからね。じゃ、私帰るね。また明日」

「……あ、うん。また明日」

 

 

 手を振って別れ、去って行く明音の背中を見つめ続け、見えなくなると溜め息を吐く。義姉とクラスメイト、どちらを取るべきかと悩みながら、一度家に帰る。

 

 

 

 

 

「どうしたらいいと思う?」

「いきなり来て開口一番がそれか……」

 

 

 午後。昼食を済ませた京は雅の家に向かった。今朝のことも含め、からかったり面白おかしく吹聴しないであろう人物に相談しようと考え、白羽の矢が立ったのが雅なのだが、その説明もせずに先程の発言である。雅は呆れて、自分の足を枕にして気持ち良さそうに寝ているレイの頭を撫でる。

 

 

「で、何がどうだって?」

「先輩とクラスメイトに告白された。どうしたらいい?」

「どうしたらって、まずその2人をどう思ってるんだよ」

「2人とも嫌いじゃないんだけど、なんて返事すればいいか」

「恋愛対象じゃないなら振ればいいだろ」

 

 

 雅はそれしかないと、ズバッと切り捨てる。容赦ない彼の発言に少しむっとするが、彼の言う通り恋愛対象として見ていないので振るしかなかった。だがそうすることで2人を傷つけないだろうか、今の関係が壊れないだろうかと思ってしまい、それは避けていたのだ。

 

 

「でも、2人に悪いような……」

「好きでもないのに付き合う方が相手に悪いだろ」

「それは…そうだけどさ……」

 

 

 それでもうだうだしている京に苛ついたのか、雅はレイを起こさないように横にずらし、京の頭を叩く。

 

 

「ったぁ!?なんばすっと!」

「なんかムカついたから。ぐだぐだ言ってないで腹括れっての」

 

 

 解ったら帰れと、無理矢理追い出される。ドアの前でぽつんと一人立ち尽くすことになった京は仕方ないといった風に頭をガシガシと掻いて、その後夕方まで散歩をしてから帰ることにした。その間に、今後どうするかを考えながら。




 はいさい、クロウズです。沖縄県民ではありません。
 前回怪しかった明音はこういうことでした。それ故さらに悩み事が増えた京ちゃんは、どんな答えを出すんでしょうね。次回更新はもちろん未定です。




 それではこの辺で。仕方無い、特別な瑞雲をやろう
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