月曜日。結局あの後色々と考えたが、京は未だ答えを見付けられずにいた。そんな彼は義姉といるのが気まずいのか、1人で先に学園に向かい、誰もいない教室で自席に伏して深い溜め息を吐く。この日はあいにくの曇り空で、京は今の自分の心内を映してるようだと思った。
「はぁ……どうしよ」
「あれ?早いね栢嶋くん。今日日直だっけ?」
「わうん!?」
急に声をかけられた京は、飛び跳ねてしまいそうになるくらいの勢いで伏せていた上体を起こす。声をかけてきたのは、今の京にとって顔を合わせづらい人物だった。
「さしゃ、櫻井……!?ななな、なんでここに」
「なんでって、ここC組だもん。おかしな栢嶋くん」
京は慌てて隠れようかと考えたが、明音が前の席に座り、今更隠れたところでどうしようもなかったので諦める。どこか怯えたように、上目遣いで明音を見ると、彼女はじっと京を見ていた。
「っ!」
それで目が合った京は恥ずかしくなり顔を伏せる。明音はそんな京の頭を撫でる。
「かわいいなぁ、栢嶋くんは」
「うるさい、かわいい言うな」
「ふふ。あ、そうだ栢嶋くん。ちょっといいかな」
「……んだよ」
伏せたまま相手しようとしたが、ガタッと席を立つ音が聞こえ顔を上げて確認してみると、座っていた席の横にずれて両手を広げてスタンバイしていた。京は何をしているんだこいつは、とでも言いたげな表情で明音を見るが、彼女はそんな視線を向けられても両手は広げたまま。ただ、どこか恥ずかしそうにしている。
「……一応聞くけど、何をする気だ?」
「えっと、抱き締めていいかな?」
「……………いいけど」
10秒ほど間が空いたが、明音の頼みを了承する。席を立って明音の前に立つと、抱き締められる。彼女からするとただ普通に抱き締めただけなのだが、身長差の所為で胸に突っ込まれる形になってしまい、京は真っ赤になり体温が急上昇していく。明音は京の状態を知ってか知らずか、長い間抱き締め続ける。
(うぅ……恥ずかしいけど、櫻井、柔らかい……)
「栢嶋くんあったかいね~」
「恥ずかしさで発火しそうだよこっちは……」
「そっか。…………ねぇ」
明音は抱き締める力を緩めると一歩下がり、京の顔をじっと見つめ、ゆっくりと顔を近付ける。京は戸惑い逡巡するも、脳裏に乙女の顔が浮かんだことで明音の肩を掴みそっと離れようとしたところで、
「……お前ら、せめて鍵くらい掛けろ」
「「くぁwせdrftgyふじこlp!!?!」」
本日の日直の雅に見られた。
「ここ、木林くん!?」
「おま、いつからそこに!?」
2人は慌てて離れ、何でもなかったかのように平静を装おうとするが、目が合って頭から湯気が出るほど真っ赤になる。
「今さっきだよ。栢嶋、ちょっとこっち来い」
「………お、おう」
「俺は言ったよな?恋愛対象じゃないなら振ればいいって」
「そ、そうだけど……」
「ぐだぐだ言ってないで腹括れとも言ったけど、なんだ?櫻井と付き合うことにするか?」
「いや、その、違くて……」
「だったらさっさとはっきり告げろ。でなきゃ櫻井が可哀想だ」
雅が手招きして京を廊下の方に連れ出して明音に聞こえないように話し合い、最後にはまた頭を叩いてどこかへ行く。叩かれた頭をさすりながら教室に戻った京は、先程のことから明音と顔を合わすと気まずくなり、彼女も気まずいのかお互い無言のまま時間だけが過ぎ、教室に生徒が集まりだしたため2人は苦笑いを交わしてそれぞれの席に戻る。
その昼休み、京は屋上に出て大の字で寝転がる。教室にいれば雅がぐちぐち五月蝿いので避難しにというのと、今は1人になりたかったのだ。空を眺めても灰色の雲しか視界に入らず、気分は優れないが今の京には丁度良かった。
(うーん……あれは、そういうことなのかな……。俺、義姉さんが……)
「ああ、やっぱりここだった」
「んぇ?」
汚れるのも気にせずごろごろしていたら聞き覚えのある声がして、起き上がって振り返る。その視線の先には、2人分の弁当を持った乙女が安堵したような表情で立っていた。先程のことで乙女への感情が解らなくなっていた京は、その彼女の顔を見ただけで赤くなってしまう。
「義姉さん……」
「お昼、まだでしょ?ほら」
こっちに来て食えという乙女の手招きに応じ、弁当を受け取る。と、急に抱き締められる。
「ふぎゅっ、なにすんのさ」
「今朝方避けてた罰。しばらくこのままね」
「………義姉さん、ちょっといいかな」
「んー?何でも言ってごらん」
「じゃあ、少し屈んで」
ぺちぺちと背中を叩きながら言う京に苦笑し言われた通り屈むと、肩を掴んだ京が背伸びをして乙女の唇に自分のそれを重ねる。まさかそんなことをするとは思わなかったのか、乙女は驚いて目を見開くがそれを受け入れ京を強く抱き締める。
10秒ほどそうしていた後、どちらからともなく離れ、お互い頬を緩めて笑い合う。
「随分と大胆なことするね、京」
「たはは……。義姉さんのこと、好きだって解ったら、つい」
「そっか。ね、もっとしよっか」
「え、義姉さ――うわぁっ!?」
ぺろりと舌なめずりした乙女はその場で京を押し倒し、覆い被さるようにして京にキスをする。ただ唇を重ねるだけでなく、舌を絡めたり京の舌に吸い付いたりと、どんどん過激になっていく。
京はあまりの出来事にただただそれを受け入れる形になり、されるがまま。そんな時間が、昼休み終了まで続くこととなった。
その日の放課後、結局昼休みには食べられなかった弁当を急いで平らげた京は、帰りの支度をしている明音の前に移動する。
「櫻井、ちょっといいか?」
「栢嶋くん?うん、いいよ」
まだ少しばかりクラスメイトが残ってるので声を小さくして、
「ごめん。俺、お前の気持ちには応えられない」
「……そっか」
京の答えに悲しそうな表情になるも、すぐにいつもの笑顔に戻る。そして席を立つと廊下の方をちらっと見て、
「でも、私諦めないからね。私は、栢嶋くんが好きだから」
大きな声でそう言った。教室に残っていたクラスメイトやすぐそこの廊下にいた生徒達がざわつく中、すっきりした表情で京の頭を撫でて教室から出る。その際に、廊下に立っていた乙女と目が合い軽く頭を下げる。乙女は声をかけようしたが止め、教室に入ってくる。
「京、帰ろっか」
「あ、うん」
しばらく放心していたが乙女に声をかけられたことではっとし、帰路に着く。
『で、結局どうなんだ?』
「だから、義姉さんと付き合うって」
帰宅後早々雅から電話がかかり、めんどくさそうな顔でその相手をする。
「京~、ん~」
「ちょ、義姉さん今電話中だから」
『……まあ、風紀を乱すなよ?』
「うっせ。それじゃ、また明日」
『ああ』
通話が終ると解るや否や、乙女がさらに密着してくる。京は恥ずかしながらも突き放すことはなく、それを受け入れる。
ちなみにこの夜、昼休みでムラムラした乙女が夜這いを仕掛けてくるのだが、その事を京はまだ知らない。
半年ぶりですね、最新鋭軽巡から超弩級戦艦になれたクロウズです。嘘です。
悩んだ末京ちゃんが出した答えはこれでした。「この後滅茶苦茶……」はありません。昼休みに何やってんだこの姉弟は。
次回はもちろん未定です。どれが更新されるかも不明です。
それではこの辺で。ふふん…これが重雷装艦の実力ってやつよ…あ~よかった~活躍できて~