義姉である乙女と恋人関係になってはや数週間、京は悩んでいた。それはこの事を両親にどう伝えるかで。
元々乙女と京は距離が近く、恋人関係になってもこの数週間は特に何も言われたりはしていないがこのままというわけにはいかないと、いつかは伝えなければと思っているもののずるずると引き延ばしている。そしてその事を相談する為に、今回もまた雅の家に来ていた。
「義姉さんとのこと、いつ親に言えばいいかな……」
「今すぐ帰ってさっさと報告しろ」
「相談に乗る気なし!?」
「バイトあるんだよこっちは」
さっさと帰れと、以前相談した時同様に追い返される。確かにこういったものは早くに言うべきだっただろう。しかし内容が内容な上に、今の今まで引き延ばしてしまっているため、義母の方はともかく父からの拳は覚悟した方がいいか。下手をすれば過酷な訓練を課せられるだろうかと、内心怯えている。
「一番まずいのは山奥にナイフ一本のみのサバイバルだ…あれだけは絶対に回避しないと……」
「何をぶつぶつ言ってるのだ、貴様は?」
「ぅわん!?」
「っ!?」
頭を抱えながら色々と考えていたせいで、急に声を掛けられた京は思わず飛び上がって奇声、というか鳴き声をあげる。その声に驚いたのか、声を掛けた人物、樹は少し体を強張らせて身構えていた。
「いいい、岩本!?なしてここに!?」
「ただの散歩だが……それより先程の醜態はなんだ?ここが戦場なら死んでいたぞ」
「や、ちかっとば悩みが……」
「ほう?なら自分に話してみろ」
「え、いや、その……」
腕を組み、威圧を与えるような目付きで見てくる樹から、怯えるように癖毛を押さえつつ目を逸らす。しかし樹は微動だにせずじっと京を見る。その視線に耐えきれなくなり、諦めて近くの公園に移動してから訳を話す。その結果、
「何を腑抜けている貴様は!」
「ピィッ!?」
「そもそもその様な事を上官とも言える両親に報告しないなど、軍法会議にかけられても文句は言わせんぞ!」
「そ、そんな重い……?」
「口答えするな!」
「すみません!!」
ベンチの上で正座させられて説教されていた。癖毛はしゅんと項垂れ俯いている京と、そんな彼を見下ろすように仁王立ちしている樹は、傍から見ればまさしく飼い主と叱られるペットの図。京は若干涙目である。
「家族との関係が変わるのであれば、当然報告する義務があるだろう!なのに保身に走りそれを怠った貴様は恥晒しだ!階級を剥奪する!新兵卒からやり直せ!」
「いや、そもそも階級なんて持ってない…」
「口答えするなと言っただろう!」
「ぴゃい!」
「貴様のすべき事はなんだ!」
「義姉さんとの関係を報告することです!」
「そうだ!貴様の葛藤など不要物だ!微塵の価値もない!どの様な結果になろうとも甘んじて受けろ!いいな!?」
「イェス、マム!」
「よし、吉報を待っている」
満足そうに頷き、樹は公園を後にする。
残された京はベンチに座り直し強張らせていた体をほぐす。そして深呼吸を数回し、挟むように自分の頬を叩き、帰宅する。そして自分達の関係を両親に報告することを、乙女に話す。
「義姉さん。俺達の関係、親父達に話すよ」
「ん、そう。言い辛そうなら私から話そうか?」
「いや、俺から話す。だって、義弟だけど彼氏だから」
「……ふふ、男らしいねー」
拳を握り自分の胸を叩く京を微笑ましくも嬉しく思い、乙女は彼を抱き締めて頭を撫でる。少しの間されるがままの京だったが、このままだと決心が鈍りそうなので両親がいるリビングへ向かう。乙女の手をしっかり握り、義姉弟から恋人関係になった事を報告するために。
「えー、今回の件で向こう1週間、義姉との接触禁止令を言い渡されました……」
『厳罰は免れたか。これに懲りたら上官への報告は怠るなよ』
『イェス、マム…』
「京との関係、今まで黙ってた罰だからって明日から1週間接触禁止って言われた……」
『まぁ、隠し通していいものでもないからねそれは』
「こうなったら今日のうちに既成事実を」
『やめなさい』
両親への報告後、2人はそれぞれ相談相手に連絡をしていた。黙っていたことへの説教はあったものの結果としては受け入れてくれたようで、それでも罰は必要と課せられた接触禁止に嘆きながら。
お久しぶりすぎます、クロウズです。お待たせして申し訳ありません。
栢嶋義姉弟の関係、実はまだ両親に話してませんでした。一線越える前とはいえ事後報告ですね。悪い義姉弟です。でも受け入れてくれたので、これから自宅内でもイチャイチャすることでしょう。どこぞのバカップルみたく。
もしかしたら次回の本編は最終話になるかもしれません。
では、今日はこの辺で。さあ、私と夜戦しよっ?