翌日、いつも通り堂々と遅刻してきたボクはちょうど授業が終ったタイミングで教室に入って席に着く途中、ミヤビンの席が空いてることに気付いた。授業は古文だったようで担当の響子ちゃんが何か言ってるけど、そっちは無視して委員長の
「委員長、今日ミヤビンはー?」
「それより東雲さん、遅刻は」
「まーまーいいから、ミヤビンは?」
「木林君?今日は来てないけど……って、東雲さん!?」
来てない、そう聞いただけでボクは教室を飛び出す。後ろで委員長が何か言ってるけど無視だ。まさか、もういなくなったりしてないよね。勝手にいなくなるなんて、許さないからな……!
「廊下は走るなよ」
「ひゃっ!?」
聞き覚えのある声がしたと思ったら急に腕を掴まれて思わず変な声が出る。
「ったく、転んで怪我したらどうするつもりだよ」
そう言ってボクの腕を離す声の主、ミヤビンは呆れ顔でボクを見てくる。
「う、うっさいな。だいたいミヤビンが来てないのが………ど、どうしたのさそれ」
「ん?ああ、これか」
昨日の今日で何があったのか、ミヤビンは左腕に包帯を巻いてた。
「いやぁ、今朝登校中に事故ってさ」
「はぁ!?」
なんでも、不良に絡まれてひったくりに遭って、それを追いかけてたら信号無視した車と衝突したらしい。被トラブル体質かよ。でも、骨にちょっとひびが入った程度で済んでてほっとした。衝突した車もそこまでスピード出してなかったらしいし。一応ミヤビンの鞄はボクが持ち、教室まで一緒に歩く。
「そのまま帰っても良かったんじゃないの?」
「お前がまたサボってないか見に来たんだよ」
そしたら予想通りだし、と小言を言ってくるから耳を塞ぐ。にしても、ミヤビンのやついつも通りだな。転校の件はどうなったんだろ?遠回しに聞くのもなんだから直接聞いてみると、
「俺は残りたいけどな……お袋も行くから、俺も連れて行くつもりらしい」
「そうなんだ」
「………」
「…………なに?ボクの顔に何か付いてる?」
ミヤビンはボクの顔をじっと見ていたけど、その後なんでもないって言って顔を背ける。ボクはその後もじっと見つめるけど、こっちを向く気はないみたいだから途中で諦めた。
それから教室に入ると、案の定ミヤビンはクラス中から心配されてた。ボクは邪魔になるからと、後で話があると言って自席に戻る。
放課後、ボクは教室を抜け出すと屋上に出てミヤビンを呼び出す。途中、いきなり現れたB組の馬鹿共を追い返して待つこと10分弱、ミヤビンがやって来てはボクの隣に腰掛ける。
「で、話って?」
「うん、実はね」
ミヤビンの肩にもたれかかって、ボクの気持ちを吐き出す。
頑固で、馬鹿真面目で、変わり者で、特撮好きで、仕事熱心で、時にはいらないお節介焼いたりしてくるけど、いつも側にいてくれて、ボクを助けてくれる。ボクに、あったかい居場所をくれる。そんな大切な幼馴染を、ボクは、
「ボクは、オマエが好きみたいだ」
いつの間にか、好きになってた。もしかしたらとっくの昔に好きになってたのかもしれない。それに、今まで気付いてなかっただけなのかもしれない。
「ボクはこうしてミヤビンと一緒にいるのが好き。ミヤビンは?」
「………俺も、お前と一緒にいるのは好きだ。お前が好きだ、レイ」
「そっか、良かった………」
そう言ってボクを抱き寄せ、髪を撫でるミヤビンの手は、とてもあったかかった。
その後ボクらは一緒にミヤビンの家に帰って、おじさんが帰ってくるのを待った。ミヤビンの転校を止めるためだ。
「なんなんだよあのクソ親父は!!」
部屋に戻ったミヤビンは怒ってた。そりゃそうだよね、ボクらの仲がなかなか進展しないからってけしかけるための嘘だったんだもん。そのおかげで自分の気持ちに気付けたし、ミヤビンの気持ちも知れたから、ボクとしてはありだったと思うけど。
「まあミヤビン落ち着きなって」
ベッドに座るボクの隣に座らせて、寄り添う。
「っと、どうした?」
「別にー。ただ、こうしてたいだけ」
おじさんの嘘のおかげで見つかった、ボクの大切な人。絶対に、手放さない。そう思って手を握ると、向こうも握り返してきて、
「レイ」
「ん、いいよ」
それを合図に、どちらからともなく顔を近付け、ボクらはキスをする。
end.
はい、というわけで《ハッカー少女の心のバグ》完結です。
実はこれ、俺達/私達の関係とどっちの題材でやるか迷ってたものです。もし乙女義姉さんにビビっと来てなかったらこの2人が主役を飾ってましたね。