転校してきてから数日経ったある日、学校生活にも慣れてきた京はこの日の昼休み中庭を散策する。その手にはいつも通り姉の乙女が作ってくれた弁当があり、どこで食べようかと良さそうな場所を探しているのだ。以前は屋上で食べようと思っていたのだが、その日は先約が居り、その先約が同じ空間にいるのが嫌になるほどのバカップルと言える3年生の2人だったので早々に立ち去った。その2人が乙女のクラスメイトであり、教室でも常に甘ったるい空気を作っていると乙女が呆れた表情で言っていたので、どうやら相当参っているらしい。
その2人はほぼ毎日いるようなので、昼休みの間は屋上に出られないなと思いながら歩いていると、
「おい、そこの貴様」
「おうっ?」
何やら鋭い視線と声を掛けられたため振り返ってみると、自分を呼び止めたであろう少女が歩いてくる。スカートとリボンの色から2年生だと解り、首元に掛けたゴーグルと腰に提げられたポーチが異様に映る。
「貴様、見ない顔だな。所属学級と姓名を言え」
「先日、こちらの2年C組に配属されました栢嶋京であります」
「ああ、あの新入りだったか。自分はA組所属の
彼女の雰囲気に圧されたのか、敬礼をして答える京に近づくと、品定めをするかのように頭から爪先まで見てきたので少々居心地が悪くなってくる。
「……ふむ、中々良い体をしている」
「ヲっ!?」
樹の視線から意識を逸らす為に現実逃避していると、いきなり二の腕を触られる。油断していた所での不意打ちだったため変な声を出した京は樹の手を振り払うように飛び退く。その動きは中々のものだったが持っていた弁当を落としそうになって足を滑らせこけてしまう情けない所を見せる。
「………大丈夫か?」
「な、なんとか…………弁当が心配だけど」
あまりの出来事に、心配そうに声を掛ける樹に手を振って無事な事を伝え、起き上がって服を叩く。
「ならいいのだが……。時に貴様は、まだそれを食べてなかったのか?」
「何処かいい場所がないか探しててな」
そう言って樹と別れ、再び散策していると昼休み終了までの時間が残り僅かとなってしまっていたのですぐ近くのベンチに腰掛けて弁当を食べることにした。今日の弁当もいつも通りキャラ弁だったが、京は特に気にした様子もなく食べていく。
「貴様も歴史研究会に入らないか?」
「……はい?」
放課後になり、乙女のいる3年の教室に向かおうと教室を出たところで、待ち伏せをしていたかのような樹が入部届片手にそう言ってきた。それに対しての京の返事はどこか間の抜けたものだったが、歴史好きと一言もいっていないのだから当然の反応と言える。
「だから、貴様も歴史研究会に入らないかと」
「聞こえなかったわけじゃなくてな。誘う理由がないだろ?」
「あの時の貴様の自己紹介で、貴様も軍事に興味があることは解っているぞ!」
腰に手を当ててビシッと指を突き出す樹に、京はそれだけで誘うのかと困惑した。あの時は咄嗟に出てしまっただけであって軍事自体にはそこまで興味があるわけではないのだが、とは口に出すのは躊躇ってしまう。なので、色々言いたい事はあるがその中で一番気になっている事を言う。
「ところで、隣の人はどちらさん?」
「それがしは
「前田は自分と同じクラスで同じく歴史研究会に所属しているのだ」
「お、おう。よろしく……」
手を出し握手を求める彩賀に、教室の入口前だから邪魔になるんじゃと思いながら応じる。
「それでどうだろう。栢嶋殿も入らないか?無論強制はしないが」
「んー、いや、折角だけど遠慮させてもらう」
「そうか。色々語り合いたかったのだが、仕方ない。だが、気が変わればいつでも自分に言いに来い。ではな」
(語り合うって、俺そこまで歴史詳しくないんだけどな……)
嵐が過ぎ去った後の感覚に似ているなと、去っていく2人を見ながら現実逃避気味に思い、帰路に着く。
「ふーん、そんな事があったんだ」
その日の夕食時、京は今日あった事を乙女に話す。乙女は味噌汁を啜り、楽しそうで何よりだと思いながら、疲れを吐き出すように話す京の言葉に耳を傾ける。
「まさか自己紹介の仕方だけで、勧誘されるなんて思わなかったよ。俺歴史詳しくないし軍事も興味あるわけじゃないし……」
「まあ、変わったのが多い学園だし仕方ないんじゃない?というかあんたに趣味って何かあるの?」
「義姉さん、それ流石に酷くないか……?」
食べ終った後の食器をシンクに運び、ソファに深くもたれかかる。それから少しして乙女も食べ終ったようで、食器を洗い始める。
「や、だってあんたの部屋結構質素な感じだし」
「アウトドア派なだけだよ。走ったり泳いだり。っていうか、この前言ったよな俺?」
「あれ、そうだっけ?」
「………もう義姉さんなんか知らない」
さらに深くもたれて拗ねてますと言わんばかりの京に苦笑し、食器を洗い終えた乙女は隣に座って宥めるように抱き締める。
「ごめんごめん、冗談だって」
「義姉さんの冗談解り辛い。あと首絞まるから……」
「まあまあ。あんたって年の割に小さいから、なんかこう、しっくりくるんだよね」
「数ヶ月前までは他人だった男子に普通抱きつけるか?」
「まあ今は姉弟だし、深く考えなくていいんじゃない?」
「そういうもんなのか?………だから撫でるなってば」
いつものように頭を撫でてくる乙女の手を払い退けようとするが、抵抗空しくされるがままになる。
「んー、やっぱりこれは落ち着くね」
「俺はペットかよー……」
「仕草や癖毛が犬っぽい京が悪いんだよ」
「なんちゆう理不尽……」
それで諦めたのか、小さく続けていた抵抗を止めると、乙女はさらに密着して撫で始める。身長差の所為もあり、京の顔がちょうど乙女の小振りながらも柔らかな胸に当たってしまっている為、乙女自身は気付いてないようだが思春期男児の京には十分な刺激となり、恥ずかしさで赤面する。
そして、所用で出かけていた両親が帰ってきたことに気付かなかった2人はこの現場を見られて数日間からかわれたのは、言うまでもない。
ドーモ、クロウズです。
周辺のコンビニで例の棒付きアメが一向に見当たらなくなりストックが底をついてしまったことにより執筆速度が低下してしまいました、ごめんなさい。その所為もあって、逃避気味にガルフレ(♪)やモンハンクロスに入り浸ってました。
だいぶグダグダ内容かもしれませんが、次回はもう少し早めに、かつしっかりしますのでこれからもお付き合いください、よろしくお願いします。
今日はこの辺で。舞台裏は見ないでねー。