俺達/私達の関係   作:クロウズ

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3話目 『かちにげ』と『義姉が好き』

 5月の半ばになり、聖櫻学園の2年生はこの頃に修学旅行がある。この日を楽しみにしていた生徒は大勢いることだろう。京もその1人で、他クラスの生徒とも親睦を深めようと思っていたり、どんな事があったか等を家族に話そうと思っていたりしていたのだが、

 

 

「39.1℃……昨日より上がってるね」

「うー………」

 

 

 前日の夜に風邪で熱を出し、欠席せざるを得なかった。その看病をしている乙女は、平日であるにも関わらず制服ではなく『かちにげ』の文字が入ったTシャツ姿だった。

 

 

「ま、今日1日は安静にして、午後には病院行くよ」

「ん……でも、義姉さん学校………」

「こんな高熱出してる義弟放って行くほど冷たくはないから。お粥食べる?」

「……ん……食べりゅ………」

「(かわいい)ん、それじゃあ作ってくるけど、辛かったらすぐ呼ぶこと。いいね?」

 

 

 父は3日ほど出張、母はどうしても外せない用事の為午前中はいないので、休むと決めていた乙女はそう言って京の頭を撫でて部屋を出る。京は寂しそうにその背中を見つめるが声をかけることはせず、布団を深く被る。

 それから数分後、乙女が戻ってくる気配はなく、何もすることがなく手持ち無沙汰な京はベッドの中でもぞもぞと寝返りを打つ。アウトドア派な彼にとっては、じっとしていることが苦痛なのだろう。

 

 

「ん……義姉さーん………」

 

 

 呼んでみるも、もちろん返事はない。

 

 

「義姉さー……けほっけほっ…うぅー………義姉さんまだか………な……………」

「あ」

「……い、いつからそこに」

「元気無く義姉さんって呟いてた辺り、かな」

 

 

 お粥と薬をお盆に乗せて運んできた乙女に見つかり、ぷるぷると震える京。

 

 

「なるほど、京はお姉ちゃんがいないと寂しいんだ?」

「そんなこつ……………うん、寂しか……」

「素直でよろしい」

 

 

 伏し目がちに言うと、ベッドに腰かけ頭を撫でてくる。普段なら振り払うなどして抵抗するのだが、この時ばかりは自分から撫でてもらおうと乙女に寄り掛かる。彼女は肩をすくめ、京が満足いくまで撫で続ける。この時いつものように癖毛がパタパタと動いていたが、弄らないでおいた。

 その後、京は乙女手製のお粥を平らげ、今はすやすやと寝息を立てている。乙女が優しく頭を撫でてくれたため眠るまで時間はかからなかった。

 

 

「普段からこう素直だと、もっと可愛いんだけど」

 

 

 寝ている間に体の汗を拭き、背中側に『義姉が好き』と書かれたパジャマに着替えさせ、冷えピタを貼り替え、今は手を握り優しく頭を撫で続ける。

 

 

 

 

 

 昼には母も帰って来て、夕方になると熟睡していた京も起きたので病院へ行き、薬を貰う。帰宅後、朝よりは気分がましになったからと、乙女を自室に返し、京はベッドに潜りスマホを手に取る。

 

 

「んー……うわ、連絡いっぱい来てる……」

 

 

 ロック画面に並ぶ大量の通知に、風邪とは別に頭が痛くなりそうだった。その中でも特に多かったのはクラスメイトの戸村(とむら)美知留(みちる)だった。登録名はバイト娘にしているが、近況報告なのかその名前がずらりと並んでいた。

 

 

「……読むのは、後にして電話にするか………」

 

 

 掛けた直後に、時間的に大丈夫なのかと思っていたら1コール半で出た。

 

 

『やっほー京ちゃん。風邪大丈夫そう?』

「そこそこしんどいかな……。それより、あの通知の数はなんだ、軽いホラーぞ?」

『やーほら、せっかくの修学旅行に来れなかった京ちゃんの為を思ってですなぁ……』

「それはありがたいけど……どうせコスプレばかりだろ………」

『あ、バレた?いやー、やっぱり京都だといいものが多くてねぇ!他の学校の人達もいたんだけど意気投合しちゃって!』

「………あー、うん。それじゃ、眠くなってきたし切るな。木林(こばやし)らにもよろしく言っといてくれ」

『え?ああうん、了解了解。そんじゃまたねー』

 

 

 通話を終えた後は、連絡してきた美知留以外の友人達に返信していく。ただ、美知留の量が多いので見つけ出すのに悪戦苦闘した。そしてなんとか返信し終えると、力尽きたかのように眠り始める。

 

 

 

 

 

「んぉ……?」

「あ、起きた?」

 

 

 目を覚ますと、乙女が顔を覗き込んでいた。

 

 

「義姉、さん………?」

「うん。また汗掻いてたから、拭いておいたよ」

「……ありがと…………」

「お礼言うなら、早く治しなよ。それじゃ、お休み」

「ん……あ、義姉さん……」

「なに?」

 

 

 部屋から出ようとした乙女を引き留め、

 

 

「義姉さんのこと、すいとーよ……」

「……?うん?」

 

 

 それだけ言って寝てしまう。そもそも方言だったため乙女には伝わってなさそうではあるが。

 

 

 

「えーと、すいとーよっと……」

 

 

 自室に戻った乙女はクッションに顔をうずめて、先程京が言った方言を調べる。

 

 

「んー、何々……?佐賀弁で「好きだよ」かぁ……。まったく、どうせ寝ぼけて言ったから覚えてないんだろな」

 

 

 意味が解っても恥ずかしがることはなく、むしろ満更でもないようなだらしない笑顔になる。義理とはいえ弟にそう思われていることに悪い気はしないのだろう。

 

 

「これは、明日言ってや………くしゅん。………やば、感染(うつ)ったかな?」

 

 

 ほぼ1日中看病していたためその可能性はあり、寒気と共にくしゃみをすると早めに寝ようと布団にくるまり、これで風邪引いたら洒落にならないなと思いながら眠りについた。

 

 

 

 

 なお、この翌日乙女は案の定風邪を引き、ある程度快復した京に看病されることになった。その時の乙女は熱で頬が紅潮していて別の意味で一緒に居づらかったと、後に京は語る。




 どーも、最近グミばっか食べてるクロウズです。
 どっちでやろうか迷った末、こっちで風邪ネタやりました。風邪引いた時はほんと辛いんですよね、1人暮らしの時なんて特に、誰もいないから38℃出しただけで精神的に参りやすいですし、すっごく心細いんですよね。皆さんも風邪にはご注意を。
 書きながらその事思い出してたら、京がどんどん犬っぽく見えてきた………もう犬でいいかな。乙女義姉さんはきっとブラコン予備軍です。



 今日はこの辺で。五月雨を、あつめて早しって…芭蕉だっけ?
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