「はよーっす」
ある平日の朝、乙女はいつもより上機嫌な様子で教室に入る。
「おはよう。何やら機嫌良さそうだね、栢嶋さん」
「おはよう、
自席に鞄を置くと、クラスメイトであり友人でもある千代浦あやめの前に座る。あやめは折り紙をしていた手を止め、乙女に向き直り話を聞く。
「弟くんがどうかしたの?」
「うん、今日はいつもより寝ぼけててね。ふらふらしながら抱き付いてきてさ。それが可愛くて」
「そ、そうなんだ……」
「ほんと可愛いんだよ、京は。この前風邪引いた時も」
「お前はほんと、義弟のことになると饒舌になるな」
「それは
「んー?あぁ、お2人さんか。はよー」
乙女の言葉に呆れたのは
「おっす」
「乙女ちゃん、あやめちゃんおはよ~」
「おはよう。2人は相変わらずだね」
「もっちろん、ラブラブだからねぇ~」
「時間と場所を弁えてほしいんだけどな俺は」
「いや、あんたも弁えてないじゃん。あ、そうそう。あんたが探してる服、お店にあったよ?」
「え、あれあったのか………?」
「うん、普通に3着くらいあったって京が言ってた」
乙女と京は変な文字Tシャツをよく集めているためか、変な柄Tシャツを買う霞黒とは服屋で会うことがあり、このように情報を提供し合ったりしている。情報交換自体は普通の事なのだが、その内容が内容だからなのか、エレナとあやめの2人は苦笑するしかなかった。ちなみに、霞黒が探していたのは麻雀牌がいくつも載ったTシャツだ。一体何を思って作られたのだろう。
「あの2人、似た者同士よね」
「乙女ちゃんはブラコンだし、霞黒くんはシスコンだもんねぇ」
「服の趣味も変わってるしね」
「そうなのよぉ。デートの時とかはマシなんだけど、部屋着がねぇ。この前の休日も」
「……あー、はいはい。惚気とかになりそうだからそこまでね」
「そんなつもりはないわよぉ。霞黒く~ん、そろそろ戻りましょ?」
「ん、そうだな」
授業開始前となったので2人は先に席に戻っていき、
「じゃあ、私も戻るね」
「えぇ。お昼どうする?」
「京と一緒に食べるって言っちゃったんだけど、どうせなら来る?」
「いいの?弟くんとの邪魔しちゃって」
「京も文句は言わないだろうし。そんじゃ、また昼休みに」
「あ、うん」
自席に戻った乙女は、授業の準備をしながら昼休みになるのを待ち遠しく思っていた。
「よし、昼だ」
「そんなに嬉しいの?」
午前の授業も終り、昼休みになると乙女はうきうきとした足取りで京がいる教室へ向かう。その後ろを歩くあやめは小さな溜め息を吐き、そう問いかける。自分がいるとはいえ、義弟と昼を共にするのにここまで上機嫌だと、何か別の感情も混じっているのではないかと思わざるを得ない。実際乙女は京の事をどう思っているのかと何度か聞かれたことがあるが、あくまで義弟として見ていると答えている。
「弟くん絡みになると、別人よね……」
「可愛いからね。京ー」
▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲
時同じくして、2年C組では、
「京よ、学食に行かぬか?」
「あー?」
クラスメイトの
「学食じゃ。昼はまだじゃろう?」
「そうだけど、義姉さんと一緒に食べる約束してんだけど」
「むぅ、なら相席はいかんか?」
寂しそうに言うすずめに、義姉さんに聞くと答えて乙女が来るのを待つ。その姿勢は餌をお預けされている犬のようで、それがすずめの心をくすぐる。
「義姉さんまだかなー……ぉ、おーいみやびーん」
「みやびん言うな。なんだよ」
「見かけたから呼んでみた」
「おぉ
「今逃げた
「また逃げたのかあいつ」
クラスメイトの男子、木林
その事でこれ以上からかわれるのが嫌なのだろう、雅は逃げるように探し出しに行く。
「まだ進展しそうにねーな」
「じゃのぅ」
「京ー」
「お、来た。義姉さーん」
教室の外から声を掛けてきた乙女に反応し、立ち上がって手を振る。その姿はまさしく尻尾を振る犬そのものである。
それを見て撫でようかとうずうずしていたすずめの前に乙女が向かい、両者が見合う。そして、
「京は」
「人懐こい犬」
そう合言葉のように掛け合い握手をする。
「ちょお待っちおかしかよこん展開」
「訛ってるよ君」
置いてけぼりとなっている2人とざわついているクラスメイトを他所に、乙女とすずめは笑い合っていた。そして結局、すずめを含め4人で昼食を摂ることになった。すずめが日本文化研究会に入部したのは、その日の放課後だった。
ドーモ、クロウズ提督です生きてます。
今回は『カメラと棒付きアメと』の主役2人とみやびんにお越しいただきました。同作者による作品間コラボみたいなのってやってみたかったんですよね。こういうのちょくちょく出ますので、よろしくです。
次回は人物紹介ですね。え、すずめが何かに似てる?聞こえない聞こえなーい
ではこの辺で。そこのけやぁ!