99層のフロアボス 作:百舌木
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遺言書
遺言書は遺言者の全財産を
母である
付言事項
お父さん お母さんへ
昔、お父さんが自分がする仕事には、
責任と誇りを持ちなさいと言っていました。
その言葉は、僕の心に深く刻まれています。
僕は、茅場さんの夢の舞台に参加します。
その中で、僕が茅場さんから任された仕事は
フロアボスというフロアの番人になる事です。
その仕事の中で、僕は殉職するかもしれません。
僕はこの仕事に責任と誇りを持って臨みます。
僕が帰って来れなくても落ち込まないで下さい。
いつも通りにしてくれたら僕はうれしいです。
でも、お酒はあまり飲みすぎないで下さいね。
お母さんと食べたお寿司、美味しかったです。
お父さんを恨まないでくれると嬉しいです。
お母さんの息子で嬉しかったです。
今迄ありがとうございました。
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約1年前にそんな文章を書いた僕は今、ヒキニートをしていた。
濡れ羽色に光る大理石の椅子の上で足を組んでカッコなんかをつけている。
正直、一人ぼっちで
だけど、僕はこの99層にてフロアボスとしてプレイヤー達を待たなければ行けないのだ。彼らが来たら殺し合いをしなければ行けないのだ。
だけど一向に彼らは上を目指して、この世界の事を攻略してはいるが、此処や近くには1年間経ってもやってこない。システムのお陰で彼らが今何層目まで上がってきたかは確認出来るが、確認なんてするだけ無駄な程にしか彼らは上には上がって来ないのもあるし、他の事もあるので今は確認などの行為はやらない。
他の事と言うのは、自分に備わっているソードスキルやボス唯一のエクストラスキルに自分以外には使用できないユニークスキルなどを、例え、同じ人間同士の殺し合いになった時に生き残る為の『力』を磨かなけなければ
後、学校などに行ってない分も此方の方で鍛錬なりレポートを作成するなりをして、ちゃんと仕事をしないといけないから。
…だが、本当にここ(ボス部屋)から出れないのは難点である。
幾ら食べ物などはシステムのおかげで召喚出来るとはいえ、同じ場所に何ヶ月もの間いたら気が少し可笑しくなりそうだ。まだNPCに話しかけたりする、などという
「はぁ……」
これからどうしようか
いや、頭では分かっているつもりだ。
こんな仕事を押し付け、あまつさえ約1年間もの間ここに閉じ込めた茅場さんに回線を繋いで「仕事辞めます」とだけ伝えればいいのだ。
だが、その後はどうするのだ?
下階層のマップや場所自体が分からない。
いや、なんとなくだけど、そこに住んでいるプレイヤーに聞けばいいじゃないかと言うのはわかる。
だが、まともにこの1年間を1人で外界からの情報がない場所で過ごしてきた僕はコミュ症になっている可能性がある。
そんな僕が、他のプレイヤーに聞く?
…無理だ。
そして、それ自体にも無理がある。
僕の上に表示されているプレイヤーと全くを持って異なるカーソルに浮き出る文字。
《The Satana Beelzebub》
これが僕をボスとしている証だ。システムで隠せると思うが、バレたら即指名手配犯かお尋ね者が関の山である。
仮に、もし無断で下層に行ったとして茅場さん…もといヒースクリフに見つかったらどうなるだろうか?
答えは簡単だ。
激おこされるか…オブラートに包んでも、消されるだろう。
そもそも僕には人間状態になったとしても衣服を持ってはいないし、システムでも召喚は出来ない。
下層に行って裸の王様でもやってみろ、すぐにでも誰かが視界に表示されているハラスメント防止コードの発動を促すOKボタンを押してしまえば僕は黒鉄宮の監獄エリアに一直線だ。
他に案があるとしたら、このアインクラッド最強のフロアボスの姿で下層の迷宮区に行くとかだが、すぐに噂が広がって下層に居る茅場さんの耳に入るに違い無い。
そして、ラスボスであるヒースクリフ様にバレたらお終いである。
バイバイキーン☆なんて言えないまま吹っ飛ばされるだろう。
詰んだ。
僕はここに来て、ヒキニートを続ける以外の道が無い事を悟った。
「……なんて日だ」
濡れ羽色に光る大理石にもたれ掛かる。
恐らく今の僕の目は腐った魚の目をしている事だろう…きっとDNAやなんかが豊富そうだ。
ああ、なんでこの仕事を引き受けたのだろうか。
父さんがやる筈だった仕事を引き受けなければ良かっただけの話ではないか。
母さんに遺言書でお父さんを恨まないで下さいなんて書いた後で何だが、僕は父さんを恨むことにしよう。
…父さんは絶対に来世では水虫になるだろうことよ。
そんな絶望的な感情を抱いてフフッと笑みを浮かべていたら回線からコールが届いた。
宛先を見ると茅場先生。
僕にとっては本当に絶望先生。
「……う、嘘だろ、嘘だと言ってくれ」
うわ言を吐きながら先ほどとは比べものにならない程の恐怖と対峙する。
そして、意を決してもの凄くビビりながら、僕は震える手でOKボタンを押した。
『サタナ君。調子はどうだろうか』
どこの親戚だ。と心の中でツッコミを入れる。
「はい、調子は、いいです。大丈夫です。」
画面には彼の姿は見えないが、それでも拭えないこの緊張感のせいで何故かフランクな喋り方が出来ない。どうしても片言になってしまう。
『そうかね。さて、サタナ君…君にやってもらいたい事がある』
一瞬、ウソダドンドコドーン‼︎て叫びそうになった。
「は、はい。何でも大丈夫ですだ」
キョドりすぎて何故か訛った。
『それは……私を殺して欲しいのだ』
…………えっ?
次更新は12月の始めです。