“夜叉姫”斑鳩   作:マルル

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第三十二話 二人の作戦

 カグラは二本の小太刀を両手に構え、ノルディーン姉弟と相対する。

 リタラは天井付近でふわふわと浮かび、ヴァイトはその下で不気味に佇んでいる。

 

「得物を変えたくらいでなんだし。それでヴァイトに勝てるとでも?」

「試してみたらどうだ?」

「はっ、血気盛んなのはいいけどその前に――」

 

 リタラは斑鳩に視線を移して言った。

 

「お前は先に行っていいし。邪魔はしないから」

「うちどすか? それはまたどうして……」

 

 怪訝な表情を見せる斑鳩に、リタラは肩をすくめてみせる。

 

「パンシュラのアホがアンタと戦いたいんだってさ。三階の広間で待ってるって言ってたから、早くそこの階段で向かうといいし」

 

 そう言って、リタラは部屋の両脇にそれぞれ設置されている階段を指さした。

 斑鳩たちは顔を見合わせると頷きあう。

 

「カグラはん、サギはん。ご武運を」

「はい、斑鳩殿も」

「……気をつけて」

 

 斑鳩はノルディーン姉弟を警戒しつつ階段を登り、上階へと消えていく。リタラは宣言通り、上階へ向かう斑鳩を見送った。

 

「罠ではなかったようだな」

「てめえらごときに罠を仕掛ける必要なんてねえし」

「……待って、ジーニャは無事?」

 

 青鷺がにらみ合いを続けるカグラとリタラの間に割って入る。

 

「ああ? 無事なのはてめえらにくれてやった宝石で分かるだろ」

「……なら、早く解放してあげて。条件は満たしたはず」

「残念だけどそれはできないし。アタシら的にはどうでもいいんだけど、デヴァンが困るでしょ。アタシらとのつながり知られちゃったし」

「……お前、嘘をついたのか」

 

 青鷺が小刀を構える。

 

「悪かったし。代わりに居場所ぐらいは教えてやるよ。ただし――」

「――! 青鷺、下がれ!!」

 

 ヴァイトが怨刀・不倶戴天を構える。

 

「――ヴァイトの攻撃を防げたらな!!」

 

 リタラの声と同時、ヴァイトが青鷺に斬りかかる。

 それを見て青鷺は即座に瞬間移動で後退、カグラの後ろに隠れた。

 結果、当然カグラがヴァイトの前にさらされる。この時、カグラの脳内に浮かんだのはツユクサでの戦い。カグラは怨刀を防ぐもその怪力で吹き飛ばされた。

 

「二度、同じ無様をさらしはせん」

 

 二本の小太刀を構え、そして――――。

 

 

 

 

 カグラは強くなるため斑鳩を参考にし、日々修練に励んでいる。斑鳩自身から助言を貰うこともままあった。その中でカグラは己と斑鳩の大きな違いに気付くこととなる。

 斑鳩は魔導士であり、剣士であり、魔剣士である。

 一方、カグラは魔導士であり、剣士であるが魔剣士ではなかった。

 その差は何か。

 斑鳩の無月流は流派として確立されている。夜叉閃空のように剣技と魔法が一体となっているものもあれば、天之水分のように魔法が剣技を大きく補助するものもある。

 対してカグラの重力魔法は己の剣とあまりに噛み合っていなかったのだ。

 斑鳩と出会ってからは、重力魔法と剣技を併用して戦えるように訓練を続けた。すぐにある程度は併用して使えるようになったが、カグラとしては満足できなかった。

 そして、カグラはもう一段階先へと行くために天之水分に目をつけることとなる。斑鳩は天之水分を緻密な魔力コントロールで多彩に応用してみせる。

 ならば己も重力魔法をコントロールし多彩に応用できないか。その結果、いかなる剣技を用いるのが効果的か。

 悩み考え抜いた先、カグラは辿り着いたものは――――。

 

 

 

 

「そんな! ありえないし!!」

 

 怨刀・不倶戴天によって強化された身体能力から繰り出される必殺の一刀。たとえ防いだとしてもただではすまない。そう信じていたリタラの思いは目の前の光景に打ち砕かれた。

 

「――――止めたぞ、貴様の一刀!!」

 

 カグラはその場から一歩も動くことなく、ヴァイトの怨刀を小太刀でもって受け止めたのだ。

 

「さあ、約束通りジーニャの居場所を吐いて貰おうか!」

「…………ふん、地下室に拘束して閉じ込めてあるし。階段は前の扉の奥」

 

 リタラは苦虫を食いつぶしたような表情をした。

 

「なんだ素直に吐いたな」

「うるさい。二度はないし。――ヴァイト!!」

「オオオオオオオオオ!」

「来るか!!」

 

 雄叫びと共に、ヴァイトが何度も打ち込んだ。それをカグラは二本の小太刀でさばいていく。それを見てリタラはヴァイトの異変に気付いた。

 

(動きが鈍い?)

 

 それだけではない。ヴァイトはどこか戦いずらそうで、苛立ちがリタラに伝わってくる。

 

(なんとか、上手くいったか――)

 

 カグラは己の重力魔法を改造した。大雑把ではあるが、力の向きも変えられるようにしたのである。

 

(おかげで斑鳩殿と出会ってから一年。重力魔法の威力そのものは大して向上させられなかったがな)

 

 カグラは今、ヴァイトにかかる重力を小さくし、自分から反発するように力を加えている。上手く踏ん張れず、常に抵抗感がつきまとう。ヴァイトはまるで水の中、それも向かい流れる水流に逆らうが如き感覚を味わっていた。

 それを、普通の刀と比べて軽量で小回りがきく小太刀二本でもって防ぎきる。それが現在のカグラの剣術であった。とはいえ完成に至っていない剣術であり大きな弱点を抱えていた。反撃の型が完成していないのである。

 

「頼んだぞ青鷺!」

「……分かってる」

 

 カグラが盾の役割ならば青鷺は矛。矛にしては火力に不安はあるが関係ない。なぜなら、ヴァイトを倒す必要はないのだから。

 

「アタシを狙う気か!」

 

 怨刀は使用者の怨念が強ければ強いほど使用者を強化する。尋常でないヴァイトの力と様子を見れば一目瞭然。リタラがヴァイトの感情を操り、強制的に敵対者へ強い怨念を抱かせているのである。

 リタラはヴァイトの怨刀が止められたことで己の危険性に気がつき、周囲に魔力弾を浮遊させる。

 

「てめえの魔法は調査済みだし」

 

 リタラはアキューとともに斑鳩に接触をしようと試みていた。その過程で斑鳩及びチームを組んでいるカグラと青鷺の魔法も調べている。

青鷺の転移は短距離に限るが、いかに広いとはいえ室内である以上範囲外に居続けることは難しい。天井付近に浮かんでいる今でも範囲外には出られていない。そのため、リタラは周囲に魔力弾を配置することで近くに転移できないようにしたのである。

 

「……別にそんなことをしても転移ができないわけじゃない」

「てめえ!」

 

 青鷺は無理矢理リタラの近くに転移した。転移場所に浮遊していた魔力弾が青鷺を傷つける。

 

「……くっ、この程度、どうってこと!」

 

 痛みに怯むことなく、リタラを逃がさないように左腕で掴み、右腕で小刀を振りかぶる。

 

「離しやがれ!」

「……それは無理」

 

 後は振り下ろしてリタラを気絶させればヴァイトを無力化し勝利することが出来る。そう思ったときであった。

 

「避けろ青鷺!」

 

 カグラの怒声が響く。そして、青鷺めがけて跳躍してくるヴァイトの姿が目に入った。とっさに瞬間移動で避けて床に着地する。ヴァイトは一回転して天井に着地すると、再び青鷺に飛びかかった。

 

(……インターバルが)

 

 たまらず青鷺は捕まえていたリタラを投げ飛ばし、後退してヴァイトの攻撃を避ける。ヴァイトは投げ飛ばされたリタラを回収し距離をとったため、さらなる追撃はなかった。

 

「すまん、止めきれなかった」

 

 青鷺にカグラが合流する。

 

「……どうしたの?」

「万事上手くはいかないらしい。ヴァイトの剣は防げたが、リタラの救援に向かうのを阻止できるよう立ち回るほどの余裕がない」

 

 そう言うカグラは戦闘開始からほとんど時間が経っていないのにも関わらず、大量の汗を浮かばせ、かなりの疲労を感じさせていた。

 限りなく威力を低減してなお、ヴァイトの一刀は防いだカグラの腕に響くほどの衝撃を与えた。加えて新魔法の制御もある。発動をヴァイトが攻撃する瞬間に限定し魔力を大量に注ぎ込むことで効果を高めている。剣撃を交わしながらタイミングをはかり、この処理をするのはカグラの精神に多大な負荷をかけていた。

 

「……長くは持ちそうにないね」

「ああ、だが位置が良い」

 

 現在立ち位置が入れ替わり、リタラたちが玄関を背に、カグラたちが奥へと続く扉を背にしている。

 

「てめえら、よくもやってくれたし」

 

 ヴァイトに抱えられたリタラが表情を怒りに染めていた。

 

「ふん、ツユクサのようにはいかんだろう?」

「ああ、むかつくけど認めてやるし。だけど結局、てめえらにアタシのヴァイトは倒せねえし。――ホント、ヴァイトは最高だよ」

 

 言ってリタラはヴァイトの頬にキスをした。

 

「ふん。姉弟関係自体にとやかく言う気はないが、人形にしておいてそれとは。本当に気持ちが悪い女だな」

「――あ?」

「怒るな。自覚でもあったか?」

 

 カグラが煽る。怒りが頂点を越え、リタラの表情が抜け落ちていった。

 

「……お前は絶対、ただじゃ殺さねえし。ヴァイト!!」

「ちっ、行け青鷺!」

 

 カグラがヴァイトの剣を受け止める。

 

「……カグラ、どういうこと!?」

「私ではヴァイトを足止めできない以上勝目は無い! ジーニャをすぐに連れてこい! 逃げるぞ!」

 

 ヴァイトの剣撃を受けながら叫ぶ。

 

「……じゃあ、二人で――」

「甘ったれるな! こいつと戦いながら探せるとでも!?」

「……でも」

「いいから行け! 長くはもたんぞ!」

「……わかった」

 

 青鷺が通路の奥へと消えていく。多少溜飲が下がったのか、必死の形相でヴァイトの剣を捌くカグラを見てリタラは笑った。

 

「美しい友情ってヤツ? はは、バカらしいし。ヴァイト相手に、そんなに長くもつと思ってんの?」

「貴様に、何が、分かる!」

「分かるよ。アンタの心理ぐらい。伊達に感情を操る魔導士じゃないし。ヴァイト退きな」

「どういうつもりだ……」

 

 リタラの命令通り、ヴァイトがカグラから距離をとった。

 

「お前、本当は今すぐ逃げ出したいんだろ」

「…………何を言っているのか分からんな」

「でも、尻尾を巻いて逃げ出すなんて良心が咎めるからせめてジーニャだけでも救わせに行かせたんだし」

「仮にそうだとして何の問題がある」

「偽善だなって思っただけだし」

「何?」

 

 怪訝に眉を寄せるカグラにリタラは笑う。

 

「お前らが逃げたら、斑鳩とかいうてめえらの仲間がどうなるか分からない訳じゃねえだろ」

「――――!」

 

 カグラたちが逃げれば当然、斑鳩はヴァイトの相手をしなければならない。しかし、斑鳩はすでにパンシュラを相手に戦っているのだ。ツユクサにて、斑鳩とパンシュラはほぼ互角であったと聞いている。斑鳩がパンシュラに勝ったとして、ヴァイトと戦えるだけの力が残るか怪しい。

 

「それが分かってたから。任せろって言って斑鳩を向かわせたんだし。なのに突然役目を放棄。怖くなった以外の何だって言うんだし」

 

 リタラの言葉に何も言い返せず俯くカグラ。それを見てリタラが愉悦に浸っていると、突然カグラが笑い出した。

 

「ハハハ、確かにそうかもしれんな」

「なんだこいつ。開き直ったし……」

 

 リタラはどこかつまらなそうに呟いた。

 

「お礼に私も心理分析してやろう」

「あ?」

「貴様、さっきからずいぶんと私から距離を取っているな。そんなにさっきやられかけたのが怖かったのか? か弱いことだ。いや、その通りか。お前は弱い。弟にひっつくだけの金魚の糞め。弟から離れられないから、そうして縛っておくんだろう?」

「――てめえ」

「もう一度言ってやる。貴様は本当に気持ち悪い女だ!」

「ヴァイトォォオ! こいつを殺せェェェ!」

 

 リタラの怒声が響く。応じてヴァイトが斬りかかった。

 

「しまった!」

 

 カグラが受けきれずに体勢を崩した。そこにすかさずヴァイトの蹴りが入る。吹き飛ばされ、青鷺が通っていった通路を転がっていった。

 

「かはっ!」

 

 カグラは床に蹲る。ヴァイトがゆっくりと通路を歩き近づいてくるのが見えた。

 

「ヴァイト、殺して良いし。こいつの顔、一刻も早く忘れたいから」

 

 蹲るカグラの目前でヴァイトは怨刀を振りかぶる。もはや絶体絶命だと、この場に他の誰かがいれば思ったことであろう。

ヴァイトが怨刀を振り下ろす。そうして、カグラの命はここで尽きる――などということは起きなかった。

 

「――かかったな!」

「何!?」

 

 リタラが驚きに声をあげる。

 もう動けないと思っていたカグラがヴァイトの下を潜って振り下ろされる怨刀から逃れたのである。カグラは再び二刀の小太刀を構えてヴァイトの前に立ちはだかる。自然、リタラとヴァイトを分断する形になった。

 

「今だ青鷺!」

「……分かってる!」

「――なんで後ろから来るし!?」

 

 ジーニャを救いに向かったはずの青鷺がなぜかリタラの背後、玄関口の方から姿を現した。

 迫る青鷺。しかし、ヴァイトは救援には来られない。通路でカグラと剣を交わしている以上、先ほどのようにカグラを無視してリタラの救援に行くことなど不可能であった。

 

「ちっ!」

 

 リタラが苦し紛れに魔力弾を放つが青鷺はそれを苦もなく避ける。

 

「……今度はもう、逃がさない」

 

 転移し、青鷺は再びリタラを捕まえた。

 リタラの顔が屈辱に歪む。

 

「てめえら! さっきのやりとりは全部演技か!?」

 

 その問いかけに、青鷺は口元に嗜虐的な笑みを浮かべた。

 

「……正解。演技相手の心理分析ご苦労様。聞いてて恥ずかしくなっちゃったよ」

「このクソがァァァァァア!!!!」

 

 青鷺の小刀が一閃。リタラはその場に崩れ落ちた。

 

「……何が感情を操る魔導士だ。感情を操ろうなんてする人間こそ、感情なんてわかるはずがない」

 

 青鷺のその言葉を最後に、リタラの意識は暗闇へと落ちていく。

 一方、カグラは、

 

「――洗脳が解けたか」

 

 ヴァイトの剣撃が止み、瞳に理性の色が灯る。

 

「貴様が操られていただけで戦意がないのなら何もしない。なおも向かってくるのなら相手をしよう」

 

 カグラの言葉にヴァイトは、

 

「ね、姉ちゃんの仇……」

 

 カタカタと震えながらカグラに剣を向けた。

 

「そうか」

 

 カグラが駆ける。ヴァイトが迎え撃つが先ほどまでの怖さはない。怨刀の力を抜きにしても体格自体はよかった。しかし、へっぴり腰では剣に力などこもらない。生来、戦えるような性格ではなかったのかもしれない。

 

「眠っていろ」

 

 ヴァイトの剣を受け、小太刀の柄で喉を打つ。その一撃でヴァイトは気絶して崩れ落ちた。

 

「……お疲れ、カグラ」

「お前もな」

 

 青鷺が気絶したリタラを抱えてやってくる。そして、ヴァイトのそばに下ろした。

 

「それにしても青鷺。最後の煽りは余計じゃないのか? 少し哀れになったぞ」

「……散々カグラも煽っていたくせに」

「私の煽りは作戦の一環だ。一緒にするな」

 

 今回、カグラと青鷺の立てた作戦は次の通りである。

 まず、カグラがヴァイトを足止めし、その間に青鷺がリタラを討つというもの。これはカグラが足止めしきれなかったために失敗する。

 次にそれが失敗した場合、『ジーニャの救出』や『斑鳩の救援』など適当な理由で青鷺が離脱するもの。カグラがヴァイトを足止めできないとはいえ、ヴァイトはリタラを守るためにそばから離れるわけにはいかない以上、カグラがその場に残ればまず青鷺が追われることはない。そう見込み、実際にその通りになった。

 三つ目に、戦闘から離脱したと思わせた青鷺による不意打ちで一気に決着をつけることである。青鷺は通路の奥に消えた後、一旦二階に転移で移動。その後、玄関まで二階から回り込んだのである。この作戦がはまり、リタラを討つに至ったのだ。

 この作戦において重要なのは、いかにリタラの注意を青鷺に向けさせないかである。そのため、カグラは芝居をうち、煽り、注意を己に向けさせたのである。

 

「……別に煽るくらいいいでしょ。散々痛い目にあわされたんだし。仕返しだよ」

(そういえば、髑髏会で嫌なヤツに幽霊騒ぎを起こして復讐するようなヤツだったな……)

 

 やれやれとカグラは肩をすくめた。

 ジーニャを迎えに行く前に、ノルディーン姉弟が逃げられないよう縛り上げて拘束する。その途中、床に転がる怨刀・不倶戴天が目に入った。

 

(――怨刀か。今の私には不要な力だ)

 

 カグラは怨刀を鞘にしまって床に置く。カグラが今後、この刀を手にすることはなかった。

 

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

 

 三階。斑鳩は大きな扉を開けた。

 

「来たかい」

 

 正面にはパンシュラが戦闘態勢を整えて待っていた。その奥にはアキューが立っており、足下に縛られて転がされている修羅を見つける。即座に斑鳩はアキューに向けて夜叉閃空を放った。

 

「――やはり、その盾をどうにかしまへんといけませんか」

 

 斑鳩の放った夜叉閃空は誘引の盾へと吸い込まれる。

 

「カカ、いきなり景品をとろうなんざ甘いんじゃ」

「……景品?」

 

 師匠を景品呼ばわりされたことで、斑鳩の声のトーンが一段下がる。パンシュラはそれに気付かず言葉を続けた。

 

「お前さんがやる気になってくれればと思っての。ワシに勝てば解放しよう」

「それは願ってもない話どすな」

「カカ、それにどうやらお前さんも景品を持ってきてくれたらしい」

 

 パンシュラは斑鳩の腰にささる刀を見た。そこには普段使っている刀ともう一本、一際存在感を放つ刀が差されている。

 

「ああ、これどすか?」

「二本差しとるのを見る限り、神刀を抜けるわけではあるまい。なぜ持ってきたんじゃ」

「どうせうちが勝つのに、持ってきても置いてきても変わりまへんでしょ?」

 

 斑鳩の返答に、パンシュラはさらに大きく笑った。

 

「なるほどのう! 覚悟の現れと言うことかい! ならば早速始めるとするかの!」

「あの夜の決着、つけてあげます!」

 

 こうして、斑鳩とパンシュラによるデヴァン邸最後の戦いが幕を開く。

 




 実は前回エリックがバイクで特攻したのは二人の作戦を聴いたからというのもあります。青鷺の不意打ちを決めるためには屋内のほうが可能性が高いですからね。ノルディーン姉弟が外に出てくる前に屋敷に突撃できるようにというはからいです。まあ、肝心の二人はソーヤーの方に乗ってたんですが。きっと便乗してくれると確信があったんでしょう……。

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