ダンジョンに夜天の書があるのは間違ってるだろうか 作:暇人M.MAX
青年が転生してから5年の月日が流れた。
青年の新たな名はリインフォース・ヴァール。
リインフォースは自宅で本を読んでいた。
リインフォースの家は本屋を営んでいた。この世界は文明はそこまで発展していない。魔法などと言う奇跡の力もあるせいかもしれないがそこまで不便というわけでもない。
そんな世界は紙は量産できるが本はこの世界ではかなり高値で扱わられている。中でも読んだだけで魔法を覚えれる魔導書(グリモア)は立派な屋敷を何個も軽く買えるほどの値段が付く。
とは言えリインフォースの店には魔導書は置いてない。魔導書が置いてあるとすれば魔女や魔術師のいる店の方が確率が高い。しかし、娯楽の少ないこの世界では本は貴重なもの儲けはかなりだ。そのためリインフォースは何不自由なく今まで生きてこれた。
リインフォースが3歳ころに父は死にその時泣く母に抱きしめられた時の映像が未だに鮮明に覚えてる。
前世のリインフォースに両親は存在した。しかし、それは本当の両親ではなく義理の両親で、親と呼ぶにはあまりにも親らしくない存在だった。非道な仕打ちを受けたこともあったために現世の親に期待などしていなかった。
リインフォースは疑問に思った泣く母を見てどうしてこんなに泣いてるのだと。家族といっても夫婦は所詮は血の繋がらない他人に過ぎない。なのにこの人はどうしてここまで泣けるのだと。
その理由は愛ということに気づきリンフォースはあらゆる書物で愛について探すようにした。しかし、いくら言葉で語られても理解はできない。リンフォースは未だに愛を見つけれていない。
「リイン〜、ちょっと来なさい」
本を読んでると店番をしてる母から呼ばれる。
「チッ」
本を読んでる途中なのに呼ばれたことに機嫌を悪くするリインフォースは舌打ちをする。無視するのもいいがどうせ無理やり連れてかれるので早めに要件を済ませればいいと思い立ち上がり母のいる方へと行く。
母に呼ばれ店の方へ行くとカウンター近くの椅子にに座る母とカウンターの近くに立つ緑髪エルフの女性。
母の名はナハト・ヴァール。本来の姿のリンフォースを黒髪にした美女だ。一児の母とは見えない美貌を持つナハトは女神にも引けを取らない美しさを出している。
一方のエルフの女性もかなりのものだ。ナハトにも引けを取らない美しさを持ち女神すら嫉妬するほどのものだ。
「リイン、挨拶しなさい」
「初めまして、リンフォース・ヴァールです」
エルフの女性を観察していたリンフォースはナハトに促されてエルフの女性に挨拶をする。
「私はリヴェリア・リヨス・アールヴだ。君の母とは旧知の仲でな、よろしく頼む」
エルフの女性、リヴェリアもリインフォースに近づき挨拶をし頭を撫でる。
リインフォースは子供扱いされたことに不機嫌になるがここで拒絶の反応を示したら相手に失礼だと思い我慢する。
「おっと、すまない」
リヴェリアはリインフォースが嫌な顔をしたことに気づき手をリインフォースの頭からどかし謝る。
リインフォースはすぐに自分が不機嫌なことに気づきすぐ手をどかしてくれたリヴェリアに好感を覚える。しかし、そんな仲空気を読めないものが1人いた。
「リヴェリアだけずる〜い、私もリインの頭撫でたい〜」
ナハトが2人の間に入りリインフォースに抱きつく。
「離れろ」
リインフォースはそれを押しのけようと必死にもがく。
それでもナハトは止めようとせず頰ずりをしてくる。
「いいじゃない、親子なんだし」
「熱いんだよ!いいから、離れろ!」
リインフォースは無理やり押し返してなんとか離れる。ナハトは実の娘に拒絶されたことにショックを受けるナハト。
「それよりもう俺は戻っていいのか?本の続きを読みたいんだけど」
落ち込んでるナハトには御構い無しにリインフォースは言いたいことを言う。
「!リインちゃんと女の子らしい言葉遣いをしなさい!」
落ち込んでたナハトはリンフォースの言葉遣いを聞いて怒鳴りつける。
リンフォースはいくら女になったとしても前世は男だ。昔の癖は治らないし今更直すつもりもない。そんなリンフォースにナハトはいつも女の子らしくしろと言い聞かせてきた。
「ナハト、それぐらいにしてやれ」
説教をしようとしたナハトを蚊帳の外にいたリヴェリアが制する。エルフの王族であるハイエルフ、つまりは王女であるリヴェリアには少しリンフォースの気持ちをわかっていた。
リヴェリアは今現在、迷宮都市オラリアで冒険者をしてる。それはリヴェリアが幼い頃の夢でもあった。幼い頃、元冒険者のエルフからオラリアの話を聞き自分もいつしか冒険者になりたいと思っていた。しかし、王女である身分がそれを許すはずもなくいつも束縛されていた。そのためか親に束縛されたくない子の気持ちもなんとなく理解できているのだ。
「もう、リヴェリアったら甘やかしたらダメなのよ」
「しかし、そこまで無理に言うと嫌われるぞ」
「ハッ⁉︎リイン、嫌わないで〜!」
嫌われるという言葉を聞いた瞬間ナハトは固まる。そして、すぐにリインフォースに抱きつき許しを請う。
リインフォースは嫌な顔をしてナハトを離そうとする。
それからなんとかリヴェリアの力を借りてナハトを引き離したリインフォースは2人にお茶を淹れて差し出した。
「そうだわ、リヴェリア。昼ごはんはまだでしょ。よかったら食べてって」
ナハトの言葉を聞きリヴェリアは口に運ぼうとしたカップの手を止める。そんなの御構い無しにナハトは話を続けようとする。
「今日は私がよりに手をかけて作るわよ。リインも待っててね」
ナハトの膝の上に座らされて本を読んでたリインフォースが本を落とす。
2人がこんな反応をするのには訳がある。それは至極簡単なことで単にナハトの料理が壊滅的に下手なのである。
オラリアの伝説にとあるファミリアがある女性の手料理で壊滅寸前に追い込まれたという都市伝説がある。その女性こそがナハトである。
とある冒険者が新米冒険者にナハトの手料理を持たせ危なくなったらこれを魔物に投げろと言い、その新米冒険者は本当に魔物に投げたらそれを食べた魔物が倒されたと言う話もある。
そんなナハトの手料理を食べさせられると考えたリヴェリアは顔を真っ青にする。
一方、リインフォースは夫を亡くし忙しいナハトはご飯を作ることが滅多になかった。いつも外食が多かったのだが一度だけナハトが作ったことがある。その時、リインフォースは三途の川を見た。2度目の死を覚悟きたほどだ。その後、前世の記憶と技術をフルに使い死ぬ気で料理を覚えた。あそこまで何かに必要になったのは前世も合わせて生まれて初めてだと思えるほどにだ。そのためかいつもリインフォースが料理を作るようにしてるし、おまけに家事が壊滅的なナハトに変わりいつもリインフォースが家事をしてる。本人が知らぬところでいいお嫁さんになれるようになってしまってることにリインフォースは気づかない。
「か、母さん。今日は私が作るよ、リヴェリアさんとも積もる話があるでしょ」
「でも、いつもリインに悪いし。今日ぐらいは・・・」
何としても阻止するためになれない女言葉を使い必死に止めようとする。それでも止まらないナハト。助けを求めるようにリヴェリアを見る。
「そ、そうだな。私もナハトとは久々にじっくりと話したいな」
意思が通じたのかリヴェリアもリインフォースの言葉に乗っかる。速く退散すればいいのだが、今日はナハトに呼ばれてきたのだ。まだ、要件も済んでいないのに帰れる訳がない。
「そう?仕方ないわね。リイン、今日もお願いね」
「わ、わかったよ」
リインフォースは脱兎の如く台所に向かう。途中からやっぱ私も手伝うと言われて参加されたら元も子もないので速く料理をするに越したことわないのだ。
「あんなに慌てて大丈夫かしら?」
当の本人はこの有様だが。
一方、リヴェリアは安堵の息を吐いていた。リインフォースの料理の腕を知らないリヴェリアでもナハトの料理よりはマシだとおもっているのだった。
「それで、私を呼んだのはなんなんだ?」
リヴェリアは早速要件を尋ねる。リヴェリアはとあるファミリアの副団長を勤める立場だ。そこまで暇ではない。それなのに来て欲しいと頼んできたのはそれなりに理由があると踏んでいる。
「あら、あなたがなかなか会いに来てくれないから呼んだのだけど」
「ふざけるな。それに私はお前に会わせる顔がない」
リヴェリアのファミリアは2年前ナハトの夫が所属していたファミリアをオラリアから追放した。そのことでリヴェリアはナハトに対して落ち度を感じているのだ。
「あれはあなたが悪いわけでわないわ。あの人も黒竜に殺されたんだもの。それに黒竜のせいで主力戦力を亡くしたあのファミリアはいづれ衰弱して壊滅してたわ。それが速いか遅いかの違い。あなたが抱え込む必要はないわ」
「しかし、私は自らの主神を止めれな・・」
リヴェリアが何かに言おうとするがナハトがリヴェリアの口に人差し指を当て制する。
「はい、これでこの話は終了。リインにまで聞こえちゃんわ」
ナハトの優しがリヴェリアにとっては何よりも辛かった。責められたり、恨まれたり、憎まれたりされる方がよっぽど心が楽になれる。でも、ナハトは責めないし恨みも憎みもしない。黒竜討伐だってリヴェリアの主神ともう1人の神が企み2つのファミリアだけでさせたことなのに、それを知ってもリヴェリアをましてや2柱の神すらも責めないのだ。
ナハトの夫が死にそのファミリアが解散した後、リヴェリアは全てを話しナハトに謝った。許されない、そう思っていたのにナハトひリヴェリアを抱き締め簡単に許した。唯一無二の愛する人を失ったのにその原因の一端であるリヴェリアを責めなかった。自分には最愛の娘がいる。愛する人が残した宝物がある。もう、いっぱい悲しんだから過去のことは水に流して愛おしい宝物と生きていくために頑張るとそう言ったのだ。そして、今日初めてナハトの宝物を目にした。幸せそうだった、それが余計にリヴェリアを苦しめる。もっと幸せになれたのに。なのになんで責めない。そんな思いがリヴェリアの中で響く。しかし、それ以上リヴェリアは口にはしない。きっと口にしたら余計にナハトに心配をかけさせる。これ以上ナハトには迷惑をかけたくない。だから自分を苦しめる思いを自分内に閉じ込める。
「さて、要件よね。まぁ、リインに合わせたかったと言うのも1つね。どう、可愛かったでしょ」
「ああ、お前に似てきっと美人になるだろうな」
「そうでしょ!でも、なんでも1人でできちゃうしあまり甘えてくれないのよね〜。お風呂は1人で入りたがるし、寝るときも1人で寝るとかいうのよ!まだ、幼いんだからもっとこう、甘えてきて欲しいのよ!」
いきなり饒舌になるナハト。この親バカっぷりにリヴェリアは苦笑いするしかなかった。それと内心、子離れ出来なさそうだど思っていた。
「てっ、要件ね。つい、話が脱線してしまうわね。早速だけどこれを見て欲しいの」
ナハトはそう言うとリヴェリアに1冊の本を見せる。
その本は表紙に十字架のようなマークが浮き出ており何かの力を感じ取れる。
「これは魔導書か?」
リヴェリアはなんとなくそんな気がして尋ねてみる。
「半分正解ね。でも、私達の知ってる魔導書とは違うわ中を見てちょうだい」
リヴェリアはそう言われ本を読む。中はほとんど白紙だ、それは魔導書が使われた後だと言うことを意味する。しかし、全部白紙ではなく最初のページから何枚か魔法が書かれてる。複数の魔法が書かれた魔導書など前代未聞、ましてや読んでるのに消えないし魔法を覚えた感覚もない。
「これはなんだ?」
思わず尋ねてしまう。ただ、魔法を書かれた本ならなんの力も感じない。しかし、これからは魔導書のそれ以上の力を感じ取れる。
「その本の名前は夜天の書、効果は魔法を記録して所有者は使役することができる。でも、なんらかの条件がないと記録することしかできないのよ。それとその本に書いてある魔法は私がその魔導書に見せた魔法よ」
「なっ!お前が作ったのか⁉︎」
リヴェリアはナハトの言葉に驚く。
魔法を記録し記録した魔法を使える魔導書など見たことも聞いたこともない。ましてや、魔法を記録できる数は見るからに無数と言ってもいいほどに見える。魔法は最大でも3つしか覚えれない。それを踏まえるとこの本の価値は計り知れないのだ。
「いいえ、リインよ。いつの間にかあの子が作ってたのよ。それに所有者はあの子」
「これを見せるために呼んだのか。また、厄介なものを見せてくれる」
「いま、頼れるのはあなたぐらいしかいないのよ。アリアにはあまり迷惑はかけたくないし」
「これを見せてどうするつもりだ」
リヴェリアは考える。これは神々にとっていい玩具だ。ナハトの存在は神々も無理に手を出せないがその娘はまだナハトにばれないようにすれば手を出せる。なら、リヴェリアはリインフォースの護衛をして欲しいと頼まれるか、それとも他の理由か。
「私に何かあればあの子をあなたに託したいの」
「何を言ってる!縁起にもないこと言うな!」
リヴェリアはナハトの言葉に激怒する。それはすなわちナハトが死ぬかもしれないと言っているのだ。リヴェリアにとってナハトは友であり数え切れない恩のある恩人なのだ。
「もしもの話よ。そんなに怒らないで。でも、私が死ねばリインは私の後を継がないといけなくなる。それは力の制御をできるようにならないといけないし、神々も一斉にリインに目をつけるわ。それに、私はリヴェリアは良い母親になれると思うのよ」
「ふざけたことを抜かすな。私に子供などまだ早いわ」
「そう、良い相手はいないのかしら」
「なっ・・・・」
リヴェリアはからかわれてることに気づき頬を染める。それを見てナハトは微笑む。ナハトにとってリヴェリアは良き友人で妹分みたいなものだと思っている。たまに頑固なとこもあるが誰よりもリヴェリアの優しを知ってるつもりだ。
「2人とも、ご飯できたぞ」
台所で料理をしていたリインフォースに呼ばれる。
「さて、食べに行きましょうか。リインの料理は世界一なのよ」
「まだ、5歳の子が世界一とはおかしいだろ。まぁ、お前の料理よりはマシだろうな」
「それってどういう意味⁉︎」
2人和気藹々と話しながらリインフォースが待つ食卓へと向かうのだった。