かなり遅れましたごめんなさい。
それでは19話目です。
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強化合宿一日目の日誌を書きなさい。
須川亮の日誌
『駅のホームを見渡すが吉井の姿は見かけたのに秀頼の姿が一向に見つからない。まさかハーレムを形成し見つからないように行動しているのだろうか。なんとうらや…ゴホゴホ 全く以てけしからん奴だ』
教師のコメント
クラスメイトがいないだけで、そこまでの妄想を膨らませるのは一種の才能だと先生は思います。
木村秀頼の日誌
『今日1日だけでも十分に濃密な合宿だったと思う』
教師のコメント
開始1日目でここまで様々な問題が起きた合宿は初めてです。
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合宿当日、グラウンドには所狭しとグレードが違うバスが並んで入るが一向にFクラスが騒いでいる声などは聞こえてこなく、既にバスの乗車が始まってるが合流できずにいる。
「あら、秀頼じゃない。こんな所でなにしてるのよ」
バスの窓を開け声をかけてきたのは優子で不思議そうな顔でこっちを見てきた。
「なにって俺のバス探してるんだが」
荷物を人の行き来の邪魔にならない縁に寄せ、窓から顔を出している優子を見上げる。
「Fクラスって現地集合じゃないの?」
「え?そんなこと聞いてない…まさかアイツ大事なこと言う前に切れたのか…」
昨日の留守電の内容は確かにあれだけでも通じるが大事な部分が抜けており、伝えたいことがほとんど伝わっていない。
『荷物積み込み終わりました』
『よし、出発するぞ』
「向こうに着いたら遅れた理由くらいは伝えといてあげる…」
各々の準備が終わりバスが随時発車されているのをただ見送ることしか出来ずに呆然と立ち尽くす。
「仕方ない、一旦帰る…鞄がない!」
合宿では財布は必要がなく持ち歩いてはいないし、鍵は鞄の中。電車で行くにしても一度帰って支度する必要があり、辺りを必死に探すがまっさらなグランドがあるだけで。
「バスに積まれた…」
残る可能性はそれぐらいしかない。
「こうなれば密行だ」
取り出すことは不可能と考え、バスに密行して目的地に直行することを決意する。
「コレ借りてくぞ」
「ちょっと!君!」
近くにいた校内清掃を担当している会社の軽トラックから新品のラバーカップ(トイレのつまりを直す道具)を数本拝借し、校門付近で渋滞して動けないバスに飛び移りラバーカップを貼り付けバスの屋根に即席の足場と持ち手を作る。
「さて、あとは寝てても勝手に着くだろ」
大きな欠伸をしてランダムに配置したラバーカップの間に寝転がって目を閉じた。
その後、高速道路で速度があがってバスから滑り落ちそうになったところで目が覚め、数少ない出っ張りに必死にしがみついている姿を発見され、次のパーキングエリアで同行していた西村先生による説教を受けたあとAクラスのバスに乗せてもらうことになった。
今夜、鬼の補修を条件として。
☆
その後、バスに揺られ目的地である旅館を改造して文月学園の合宿施設にされた食堂でAクラスは昼食を取っているが
「秀頼、アナタ本当に馬鹿?大体…」
現在、俺はその部屋の隅で優子から説教を受けていた。
「木村君も反省してるみたいだし、優子も許してあげたら」
「次からは二度とあのような事はしません」チャリン
「仕方ないわね…ほら秀頼、昼食食べに行くわよ」
Aクラスでの数少ない知り合いにより説教はおとがめなしで釈放された。
「それなんだが優子、昼飯は用意して…「分けてあげるから行くのよ」チャリン
多少強引に手を引っ張られ、隣席に座らされたが、無事昼食にありつける事になった。
「Aクラスなだけあって弁当も華やかだな」
チャリン
用意されていた弁当は彩り豊かな三段弁当で、一目で高級品だと感じる作りだ。
「ほら、早く好きなの一つ選びなさいよ」
「やっぱりいいのかそんなにも貰って?」チャリン
「こんな量1人じゃ食べきれないわよ…」
確かに女子が食べるには少し多めの量なのかも知れない。
「じゃあ、俺は『優子』を貰おうか」
さっきまではしゃぎ声などで賑わっていた食堂が一気にひそひそ話で溢れた。
『ねえ今の聞いた?』
『[Fクラスは女子に飢えてる]って噂本当らしいな』
「な、な、なにいってんのよ!」
「ちょっと待て!俺は『やっぱり』『華』が欲しいって誰だ!」
明らかに一部録音された声を使われ真実をねじ曲げられ喋れば喋るほど深みに落ちていく。
「ごめんごめん、反応が面白くてついつい」
そう名乗り出たのは小悪魔的な笑みを浮かべた工藤だ。
「お詫びといっては何だけど特技を見せてあげるよ」
「自信があるみたいだがどんな特技なんだ?」
「パンチラ」
一瞬目線が下がってしまったのは男として仕方ないはずだ。
「ねぇ、秀頼ちょっと話したいことおるんだけ…「俺外の空気吸ってくる!」
後ろから溢れ出る殺気に敏感に反応し全速力で食堂の窓から飛び降り、近隣の森に逃げ込んだ。
☆
食堂での騒動のほとぼりが冷め、雄二に担がれてる明久を除くFクラス全員と無事に合流し。ムッツリーニに写真を託したあと、割り振られた部屋で雄二、俺、秀吉の即席医療チームで明久の蘇生作業を行っていた。
「この症状は姫路の料理か…」
「そうなのじゃが、今回はいつもより重傷なのじゃ」
どうやら姫路の料理は日進月歩で悪い方向に進んでいるみたいだ。
「300チャージ。明久戻ってこいよ!」
電気ショック特有の機械音が部屋に響き、様態を固唾をのんで見守る。
「心肺回復。脈も正常」
「良かったのじゃ…」
どうやら命の瀬戸際からは戻ってきたようだが目はまだ覚めてはいない。
「じゃあ俺は、食堂で栄養がありそうなもの探しに行くか」
そう告げ食堂に向かうとそこには誰もおらず、厨房にある業務用冷蔵庫の中には昼間と同じ弁当が数個入れられていた。
「昼の残りか…まぁこれでいいよな」
冷蔵庫から一つ取り出して部屋に戻ろうとした時、不意に大勢の足音が近づいてくる聞こえ近くの物陰に身を隠す。
『覗きよ!今から現場を押さえるわ』
『誰なの、その覗きの犯人は』
『Fクラスのバカ四人組よ』
「……………」
全く身に覚えはないが覗きはしてないと言っても前科や騒ぎの中心人物であるため説得力が無いのは明らかだ。
「秀頼じゃない、なにしてる…」
不意に後ろから優子に声をかけられ見つからないようにするため口を押さえて物陰に引き込む。
「頼む優子わかってくれ」
緊急時であるため1から話すわけにも行かず短くそう告げ口から手を離す。
「………」
「お、おいどうした?」
顔を真っ赤にしたまま一向に俯いている優子の顔を覗き込みながら訪ねる。
「……するならしなさいよ」
「は?なんのことだよ」
「ア、アタシに言わせるつもり!?」
さらに顔は赤く染まっていき言いにくそうに口をもごもごとさせた。
『見つけたわ!』
『さぁ、観念しなさい!』
「やば、逃げ…「逃がしません!」
横をドリルのようにロールした髪が通り過ぎた瞬間身体に電流が流れたときに感じる痛みが走る。
「捕まえましたわ!はやく罪人を拷問室へ」
痺れて動けない俺を二人掛かりで引きずられ、明久達と昔の拷問『石抱き』を受けた。
☆
「今日は全くろくな目に会わないぞ」
「僕も今日はいつもより生命の危機が多いよ」
初日からこれでは先が思いやられる。
「第一このメンバーならやったとしてもばれないだろ」
「………もちろんだ」
「その会話だけを聞いたらお主らが犯人じゃぞ…」
それを言われるとぐうの音も出ない。
「雄二、大丈夫?さっきから黙ってるけど」
明久の言うとおり雄二はさっきから一言も話してはいなかったが
「……上等じゃねぇか」
少し怒りを孕んだ声で呟いた。
「え?雄二。どうしたの?」
「どうせここまでされたんだ。本当に覗いてやろうじゃねぇか!」
「雄二。大丈夫か?」
拷問のせいで正気を失ったのだろうか。
「雄二は覗かなくても、霧島さんに頼めば見せてくれるんじゃないの?」
「バ、バカを言うな!翔子の裸なんかに興味があるか!」
あんなに綺麗な人の裸に興味がないと言い張るなんてなんて勿体無い。
「ふむ。もしや、例の尻に火傷のある犯人探しかの?」
「(なんでそんな所火傷するんだ…)」
火傷をする場所も場所であるが、なによりその情報の入手の経緯が気になるが後でゆっくりと聞くことにした。
「そうだ。向こうがあんな態度で来るなら遠慮は無用だ。思う存分覗いて犯人を見つけてやろうじゃないか」
確かに前払いではあるが然るべき罰も受けたし正当な理由があるような気さえしてきた。
「………さっきのカメラとマイクは、脅迫犯と同じものだった」
「なら、その火傷のあとがある人をさがしたら「………ただ、秀頼だけは機材が別物…すまない」
どうやら俺の犯人だけは痕跡が辿れなかったらしい。
「さて、覗きに行くか」
「でも秀頼は…」
確かに今からやることは危険で俺にはほとんど利益が無いように思え、明久が言いよどむのはわかるが
「どうせムッツリーニも秀吉も協力するつもりなんだろ?俺だけ待機はごめんだぞ」
「当然じゃろう、友人の危機なのじゃから」
「………(コクコク)」
期待通り秀吉とムッツリーニは首を縦に振り快諾してくれた。
「よし。時間がない。一気に突っ込むぞ」
雄二の合図を切っ掛けに足音が出ない靴下のまま廊下を飛び出て、地下の大浴場に続く階段を駆け降りた。
「今更なんだけどさ秀頼」
「……ゴクン ん、どうした?」
階段を降りているとき横から明久に声をかけられる。
「その手に持ってる箱って弁当?」
「あ、悪い渡すの忘れた。ほら、お前の分だ」
三段あるうちの一段を手渡し、明久も同様に食べ始める。
「君たち、止まりなさい!」
流石に大浴場までの道のりはがら空きとはいかず、監視の布施先生が立ちふさがるが
「構うな!ブチのめせ!」
今の俺たちに止まるという選択肢はない。
「了解!一撃でケリをつける!」
「坂本君に吉井君!私は一応教師ですよ!?」
布施先生が悲鳴じみた声で叫ぶが明久は構うことなく
「この前の補習の恨みをくらえぇっ!」
拳を握り全ての恨みを吐き出しに行った。
「さ、試獣召喚!」
明久渾身の一撃は布施先生には届くことはなく教師用の召喚獣に止められた。
「やっぱりな」
「秀頼は知っておったのか?」
それぞれ大なり小なり反応をしてるなか無反応だった俺に秀吉が問いかける。
「あぁ。ただ理由はまた今度でいいか?」
「わかったのじゃ」
そう頷き秀吉は再び視線を元に戻した。
「おい秀頼、この生ゴミを連れて先行っててくれ」
そう言って押し付けてきたのは明久だった。
「(何があったんだ!?)」
どうやったらこんな短時間で渾名が生ゴミになるのか不思議ではあるが状況が状況なのでなかなか聞き出せない。
「ならワシはここに残るとするかの、あとは任せたぞい」
「任せとけ」
そう言い残しムッツリーニを含めた三人で更に先へと進む。
「そこで止まれ」
次に現れたのは保健体育の教師大島先生だ。
「………大島先生。これは覗きじゃない」
一番最初に喋りだしたのは普段口数の少ないムッツリーニだった。
「それならなんだと言うんだ?」
真剣な表情に大島先生も臨戦体形を解き説得に耳を傾ける。
「これは保健体育の実習」
「試獣召喚だ」
もちろんの事説得は決裂し戦闘は免れなくなった。
「明久先に行け!ここは俺たちでなんとかする!」
「わかった!先生を片付けたらまた会おう!」
明久は大島先生の横をすり抜け先に進んで行った。
「(………)試獣召喚」
『体育教師 大島武 保健体育 633点
VS VS
Fクラス 土屋康太 424点
木村秀頼 48点』
「………何故残った」
「…正直反省はしている」
ムッツリーニからのジト目が辛く、とてもこの先から溢れ出る魔王級のオーラを感じたからとはとても言えない。
「さて、覚悟はできたか?」
「いつでもどうぞ」
召喚獣武器である鍬と鋤を二重にして少しでも時間が稼げるよう体制を低くして受け身をとる構える。
「いくぞ」
短くそう告げると召喚獣のサーベルで俺の召喚獣を二重に構えた武器ごと一閃し、反応の遅れたムッツリーニも逃げる隙すら与えることなく両断した。
「ゲホゲホ」
手加減はしてくれたようで多少咽せる程度ですんだが痛いものは痛い。
「これが先生の実力だ」
そう告げるとあらかじめ用意しておいたであろう縄で束縛され奥へと連行された。
「…よう、雄二さっきぶりだな」
「…あぁ、そうだな」
しばらくすると同じように縛られた雄二と秀吉が布施先生に連れられてきた。
「歯ぁ食い縛れぇっ!」
この声から推察すると、どうやら明久もバッドエンドが控えてるらしい。
「ごぶぁっ!?」
見えてきたのは召喚獣を素手で殴っている鉄拳先生だ。
「まぁ、男らしく正面から堂々と現れた気概に免じて、停学は勘弁してやろう。優しい西村先生が相手で良かったな」
この光景を見たら十中八九鬼畜の間違いではと思う。
「なに。俺も鬼ではない。きっちり指導したら解放してやる。ただし、木村お前だけはバスに続きこの職員用弁当の件もある覚悟しておけ」
そう言って鉄拳先生が見せてきたのは、俺が明久に渡した弁当箱の空箱だった。
「さて、まずは英語の反省文でも書いて貰おうか」
どうやら今日の夜はゆっくりと寝かせてくれないらしい。