Infinite Stratos 〜WORLD re:CREATION〜   作:MZMA

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なんかギャグともシリアスともつかない微妙な感じになってしまった…orz


3人目

◉◉◉

 

 

「織斑一夏だぁ?」

 

シルクは食卓の上にある自らが作った夕飯をちょこちょことつまみながら束に怪訝そうな顔を向ける。

場所は兎の巣(ラビット・ラボ)のど真ん中。周りには様々な機械や作りかけのIS、空間ディスプレイなどが存在しており、その中の開けた空間にぽつんと丸いテーブルとそれを囲う四つの椅子が置いてある。

違和感しか感じない配置だった。

 

「そうそう、いっくんこと織斑一夏!」

 

対面に座る束はニコニコと満面の笑みを顔に浮かべている。

その笑顔を見たシルクは経験上、良からぬことや面倒ごとに巻き込まれる予感を察知し顔を引きつらせる。

 

「織斑? 確か、織斑ってあの世界最強(ブリュンヒルデ)の…?」

 

今度はシルクの右側に座っているシャルロットがシルク同様に顔を僅かに引きつらせ、尋ねる。

 

「そうそう! よく知ってるねシーちゃん!」

 

「私、一応代表候補生なんだけど……」

 

束の言い様にしょんぼりと肩を落とすその姿は、何処となく飼い主に捨てられた仔犬の様な印象を抱かせる。垂れ下がった耳と尻尾が幻視出来るくらい保護欲をそそられるその姿にシルクは束にサムズアップした。

束も同様にサムズアップで返すと、2人は黒い笑顔で更にシャルロットを弄ろうと口を開こうとするが、

 

「束様。それにお兄様も、お姉様を虐めるのは程々にしておいて下さい」

 

そこに、静止の声が入る。

黒く染まった眼球に、黄金の様な金色の瞳。流れるような銀糸の髪を持つ、兎の巣の4人目の住人であるクロエ・クロニクルだ。

 

「えー…。いーじゃんちょっとくらいー!」

 

「ダメです。お二人のお姉様弄りは悪質ではありませんが、必要以上にしつこいので」

 

「いや、ホラあれだよ。家族のスキンシップ的な?」

 

「そうそう! シーくんの言うとうりだよ! スキンシップ、スキンシップ!」

 

「ダメと言ったらダメです。わかりましたね?」

 

「「はい」」

 

束とシルクは無駄に威圧感を感じさせるクロエに抵抗するも、結局撃沈された。

 

「ぐすん。取り付く島もねぇ…ぐすん。」

 

「ぐすん。クーちゃんが冷たい。最近、シーちゃんばっか贔屓して…。ぐすん」

 

兎の巣での4人目の立場は基本的に束が上だが、こと説教をするさいには束を遥かに凌ぐ存在として君臨する。

 

「わかったよぉ。シーちゃんごめんね? 束さん、ちょっと遊びすぎちゃった」

 

「良いですよもう。私にとってはいつもの事ですから!」

 

むう、と頬を膨らませるシャルロットに束はひたすらに平謝りする。

 

「お兄様?」

 

「わかってる。シャル弄りは程々に、だろ?」

 

「分かれば良いんです」

 

「はぁ…。そんで、束ねぇ。織斑何某がどーしたって?」

 

クロエに釘を刺され、何処か辟易した様子を見せながらシルクは脱線しすぎた話を元に戻す。

 

「そうそう! いっくんがね、ISを動かしたんだよ!」

 

助かった! とばかりに束はがばりとシルクの方に身を翻す。シャルロットは未だに不満顔だ。

 

「はあ。そのいっくんってのは男なのか?」

 

「うん。そーだよ!」

 

「束ねぇの知り合い?」

 

「親友の弟さ!」

 

「じゃあ、束ねぇの差し金って事だから驚く事でもねぇな」

 

「ですね」

 

「だね」

 

こともなにげに束の所為だと結論づけるシルク達に束は驚く。

 

「あれ? あれれ⁉︎ 驚かないの⁉︎ 束さんの差し金だとしても、『束さんってすごい!』とか無いの?」

 

「だって束ねぇじゃん」「だって束さんだし」「束様ですから」

 

「ああ、そうかい。そうなのかい…」

 

束の内心を表すかの様に頭上のウサ耳がへにょる。

 

「ふ、ふふ。ふふふふふ…。なら、ならコレはどうだッッ‼︎」

 

だか次の瞬間、ウサッ! と立ち上がるウサ耳。

束もクワッ! と目を見開き、指を鳴らす。

 

そしてーーー

 

『緊急速報です! デュノア社よりつい先程、フランスで2人目(・・・)のIS操縦者を発見したとの報告がIS委員会に上がりました! 2人目の男性IS操縦者です!』

 

束の背後に浮かび上がった空間ディスプレイに映ったフランスのニュース番組。

現在は速報らしく、男性のニュースキャスターが興奮気味にカメラに向かってまくし立てていた。

飲もうと手に取ったワイングラスがシルクのてから滑り落ち、床に当たって砕け散る。

 

束を除く3人の動きがぴたりと止まり、ドヤ顔で腕を組み胸を張る束の背後にあるディスプレイに目が釘付けられる。

 

「にゃーーっはっはっは! どうだ! これこそ束さんのサプライズ、『シーくんチキチキビックリサプライズ!』参ったか!」

 

未だなお、にゃはははと笑い続ける束の頭にシルクの鉄拳が落ちる。

 

「ぬあっ! 束さんの天才的な脳が!」

 

「天才的なもんか! 何だこれ! オレ、束ねぇにIS学園には行かねえって言ったよな⁉︎」

 

「え? そだっけ? いーじゃん、シーちゃんも行くんだし。ついでにさ、いっくんのボデーガードも宜しくぅ!」

 

「嫌だよ! 野郎のボディーガードとか尚更行く気が失せるわ!」

 

「束さん、いきなりこれは…」

 

「はい、流石にやり過ぎかと…」

 

束の暴挙にシャルロットもクロエも言葉があまり出てこない様だ。

 

「それに潜入調査も、ね」

 

「は?」

 

だが、次いでの束の一言でシルクの顔に困惑の表情が浮かぶ。

束の手にかかれば潜入調査などする必要も無く、パソコン1つで全ての情報が集まってくる。

 

「うん、そろそろかな?」

 

束はそんな謎の一言を呟き目線をディスプレイに向けると、シルク達も釣られてそちらへ目を向ける。

すると、

 

 

 

 

『なんという事でしょう! たった今、中国政府からも男性IS操縦者を発見したとの情報が委員会に届いた様です! 3人目! 3人目です! 本来、女性しか扱えないはずのISの適切を持つ男性が短期間の間に3人も現れました! いやっほう!』

 

 

女尊男卑の世界で、IS適切を持つ男性が現れた。

同じ男性であふニュースキャスターとしては、少しは女尊男卑の風習も薄まるかと、期待せずにはいられないのだろう。

隣に座る女性キャスターの嫌悪の瞳を全く気にせずにただひたすらに3人目が現れたと繰り返す。

 

「これ、は…」

 

ポツリとクロエが声を漏らす。

織斑一夏がISを動かせるという事は束の名前を覚える程の知り合いだから、という事で片がついた。

 

シルクがISを動かせるのは、束がそうした(・・・・)からだというのは兎の巣の全員が知っている。

 

たが、束が潜入調査と言ったのだ。

全てのISに接続し、データを抜き取る事が可能な束が、実際に接触して調べろと言ったのだ。

 

「これは、束ねえも知らなかったんだな?」

 

「うん。アイツの専用機に使われてるISコアの方も命令をまるで受け付けないんだ。そして昨日ついに、コア・ネットワークからも外れた」

 

「「「⁉︎」」」

 

コア・ネットワークから外れた。それは進化の停滞を意味する。

常に進化し続ける為にコア同士で情報をやり取りする為の、束のを除く世界のどのコンピュータからも独立したネットワーク。

 

「そいつは、確かに調査が必要かもしれねぇな 同じ男ならある程度は相手も油断するだろうし…」

 

シルクが険しい表情で画面を睨みつける。

 

「うん。ムカつくんだよねー。束さんのISにさ、装備を作るならまだしも勝手にコアまで弄るとか」

 

束は不機嫌を隠そうともせずに言う。

これが、篠ノ之束という人間である。親しい者や、自身の認めた者には必要以上の世話を焼いたり、構ったりと人懐っこさを感じさせるが、自身の囲う外の人間に対しては驚くほどに排他的で残酷だ。

 

以前は短期間だが枠の外に身を置いていたシルクとシャルロットはそれをよく理解している。なんとかしてその性格を矯正しようと何度か試みたが、結局は無理だと諦めた。

シャルロットの父親であるデュノア社社長に対しては、取引相手として一定の信用は置いているが、必要以上に干渉しようとはせずその態度も冷たい。

束曰く、つまらない人間に対する譲歩はこの程度で十分ーーだそうだ。

織斑千冬辺りが聞いたら卒倒するだろう。ーー束から譲歩という言葉を引き出した事に。

 

だが、だからと言って「ハイそうですか」と従う程にシルクは可愛い性格をしてはいない。

 

「だがしかぁーーし! オレの進路は1択! 兎の巣で一日中ゲーム、アニメ、読書を謳歌し、人生をエンジョイするつもりである! 『シルク君…私を抱いて!』という懇願以外の意見は異論反論講義質問の一切合切を認めんーーーーッ‼︎」

 

IS学園なんぞ行くかバァーーカ‼︎ と束の前で変な踊りを披露しながら煽り始めるシルクを見て、シャルロットは苦笑を浮かべる。

欲望のままに生きようよする姿勢を隠そうともしないシルクは、一周回って何故か潔く見えた。

 

「シルク…。それって所謂ニートってやつじゃーー」

 

「シャラップ! 所謂自宅警備員ってヤツだ! 兎の巣はオレが守る!」

 

シャルロットの言葉をぶった切り、シルクは声高々に主張する。

これは断じて労働及び学習の放棄(ニート化)などではないーーと。

これは、女性である束やクロエの精神的な支えとなる為の、やむを得ない犠牲なのだ、と!

 

まあ、要するに「兎の巣に女性だけでいると言うのは心細いだろう? 99.9%あり得ないけど男に襲われた時の為に、という名目でオレがニートするけど文句無いよね? 万が一ってこともあるし? それに2人の不安を和らげるためだもん」と言っている訳である。

全くもって男の風上にも置けないクズの発想であった。

 

だが、クロエはそんな社会不適合社予備軍(進路の第一希望は自宅警備会社のクズ)に容赦なく言い放つ。まあ、元々容赦する必要も無い様な人間なのだが。

 

「お兄様? 兎の巣の警備会社に就職するのでしたら、現在兎の巣の地下で建造中の空中航空艦『斑鳩(イカルガ)』の建造を手伝っていただく事となりますがーー」

 

「よし、クロエ。お兄ちゃんに任せなさい。シャルの事を全力で守るのは勿論、織斑の野郎の護衛は適当に、3人目の事はそれなりに。お兄ちゃんはジャパンで頑張るさ」

 

心機一転。妙にいい笑顔でクロエに向かってサムズアップする。

クロエは相変わらずの義兄の様子にはぁ、と深い溜息を吐く。

 

そして、シルクを憐れみの表情で見上げる。

その瞳はーーシルクの背後を見ていた。

 

「そうですか、御愁傷様です。お兄様」

 

椅子から立ち上がり、クルリと踵を返すとチラチラとシルクの背後を怯えた様な表情で見ているシャルロットを伴い、兎の巣の入り口の対面に位置するエレベーターから居住区画でもあり、斑鳩建造の地下整備場(ドック)へと降りるべく部屋の隅へと歩いて行く。

 

「おい、どこ行くんだよお前たーー」

 

「シーくん?」

 

ぽん、と。自身の肩に何気なく背後から置かれた手を見て状況を察したのだろう。シルクの顔からスーーッと血の気が失せる。

 

「あ、束ねぇ‼︎ なんでそんなに強い笑顔なの? なんでそんなに拳を振りかぶってるの? なんでそんなに強い力で肩を握るーー痛たたたたたた! 痛い痛い! シャル! クロエ! 助けーー」

 

ぎゃーーーーーーーッ⁉︎ と。

閉まり行くエレベーターの扉の向こうで最後に見たのは束に馬乗りになられ、タコ殴りされ、断末魔の声を上げているているシルクの姿だった。

 

ポーンと間抜な音と共に扉は閉まり、沈黙すること数秒。

 

「えっと…。あれで良かったのかな?」

 

シャルロットがおずおずといった様子で隣に立つクロエへと尋ねる。

 

「良いんです。これでお兄様の引きこもり癖が少しでも治れば。お姉様、知っていますか? ジュニアハイスクールの3年間で学校行事意外でお兄様が兎の巣を出た回数を」

 

「えっと……10回…かな?」

 

「いえ、たったの1回です。自身の使っているお気に入りのキーボードが壊れた時に、宅配業者が休日だった時だけ」

 

全く、束様はお兄様に対して甘すぎます。とクロエは誰にともなく愚痴る。

 

「……………」

 

「お姉様」

 

「……なに?」

 

「IS学園では、お兄様を連れ回して下さい」

 

「わかった」

 

シルクの預かり知らぬ所で、シルクの脱引きこもり計画が始動し始めていた。

 

 

◉◉◉◉

 

 

「……行ったか?」

 

「うん、行ったね」

 

扉が閉まって数秒。2人は先程の取っ組み合い? が嘘の様に冷静になると、倒れていた椅子を元に戻し再び座る。

その表情は真剣そのものだ。

 

「それで、体の調子は大丈夫?」

 

「ああ、拒絶反応は出ていない。束ねぇの免疫抑制剤のお陰だな」

 

「そう。良かったよ。シーくんに死なれたら悲しいしね」

 

「それは光栄だ。稀代の"大天災"から大切にされるとは」

 

シルクは挑発的な笑みを浮かべる。束もふっと表情を緩める。

 

「完全に適合する迄もう少し、だね。そうすればある程度は体を気にせず外を歩ける様になるから」

 

束が空間ディスプレイの画面を見ながら呟く。

 

「ああ、学園に行くまでには落ち着くだろうよ」

 

「でも本当にヤバくなったら束さんを呼んでね? あのISを使うって事はーー」

 

「分かってる。だからあんな芝居を打ってまで束ねぇと2人きりになったんだしな。此処まで隠し通せて来たのに最後の詰めを怠ってバレましたじゃ、カッコがつかないからな」

 

「そうだね。でもーー」

 

束のつま先が、シルクの脛に突き刺さる。

 

「っーー!」

 

「1回は1回、だよ?」

 

「規格外の大天災の1回は100回くらいあるだろーーッ!」

 

脚を抱え悶えるシルクを見て束は満足そうに頷くと、

 

「さて、じゃあ診察室に行こうか。シーくんの最終調整も兼ねて、ね」

 

束は魅力的な笑みを浮かべると、未だに地面で丸くなっているシルクの首根っこを掴み、シャルロットやクロエにも秘匿されている、束個人の移動要塞のなかにある診察室へと脚を向けた。

 




束さんがシリアスやってると違和感が凄い(笑)
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