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浮遊都市イーストスラム・・・。
世界の南東の空域を飛行するこの浮遊都市は都市と言うには小さくて人口も約四千人と少ない。
また、都市内の建物は全体的に草臥れており古めかしく都市の中心には工場である高さ800mの鉄塔が聳え立ち塔の天辺から空気を汚染する排気ガスを排出していて空気が悪い。
治安も非常に悪く都市内にはゴロツキやチンピラが多く徘徊し毎日乱闘や暴行や窃盗などの事件が絶えない。
警備や防衛の空戦魔導士も殆ど配備されておらずまるで世界から見捨てられたかのような浮遊都市である為にこの浮遊都市は別名【荒廃浮遊都市】と呼ばれていた。
エクザイル歴四三一年、八月一日
浮遊都市イーストスラム中央大工場地上780m地点外壁———————
工場である鉄塔の頂上にある煙突数本より排気ガスが噴出し空気は汚染されているがこの日は天気が良く空は鮮やかな蒼穹で彩られていた。
「ほっ!はっ!・・・もう少し・・・」
そんな蒼空の下で必死に鉄塔の外壁をよじ登る奇抜な髪型の幼き少年がいた、当時八歳のルーク・スカイウィンドである。
彼は生まれた時から空に憧れを抱いていた、少しでもこの大空に近づこうとこうやってイーストスラムで一番高い建物である中央大工場の外壁を無断で登ったのも一度や二度ではなく何度も人の目を盗んでは鉄塔をよじ登って蒼穹の大空を目指していた。
ルークは六歳の頃に飛行魔術は習得済みなのだが、このイーストスラムが荒廃浮遊都市と呼ばれる程の無法地帯だからといって許可も無く飛行魔術で空を飛ぶ事は禁止されている、それでもルークは大空に対する情熱を抑える事ができずにこうやって空に近づこうとするのだった。
「あと少s「GRYUUUUUUUUUUーッ!!」・・・・へ?」
ルークが鉄塔の頂上が見える位置まで登ったその時、突如後ろから空気が震える程の咆哮が聞こえた。絶対空気感覚(フィール・ザ・アトモスフィア)を持つルークはその咆哮を放った存在の事を正確に感じ取り場所を特定することは容易かった・・・真後ろだ・・・。
「・・・・・・・マジか?・・・」
そこには真っ赤な羽毛で全高20m以上はある大きな体躯で猛禽の鋭い瞳と爪を有している存在・・・巨怪鳥(ガルダ)が巨大な翼をはためかせて滞空し獲物を狙う様にルークを睨みつけていた。
なぜこんなところにと思うルークだったが巨怪鳥には幾つかの性質がありその一つが浮遊都市に卵を産み付けるというものがある、恐らくこいつはこの鉄塔に卵を産み付けようとしたところにルークという邪魔者がいたので怒ったのだろう。
「こりゃやばi「ピュ・・・ピュイ・・・」・・・ん?」
巨怪鳥をどうやり過ごそうかと思ったらいつの間にかルークの右手の甲の上にシロハヤブサの雛が震えながら留まっていた。
「・・・狙われていんのはコイツか・・・どうしたもんか・・・」
「ピュ・・・」
「心配すんな、お前を囮にして逃げようなんて考えちゃいねぇよ」
「ピュイ」
「ピィィィィィッ!」
「・・・・けどこれは・・・やべぇな・・・」
怯えるシロハヤブサの雛を宥めるルークだが内心かなり焦っていた、ルークはまだ自分の魔装錬金(ミスリル)武装は所持しておらず、しかも今は鉄塔の外壁の僅かな窪みに足や手を引っ掛けながらウォールクライミングをしている体勢なので身動きが制限されているためにこれでは逃げる事も反撃することもできない、絶体絶命だ。
「ピィィィィィィィッ!!」
「うああああああああっ!!」
巨怪鳥は鋭い足の鉤爪をルークの背中に向けてルークに襲いかかる—————
その瞬間に見た光景はルークの眼に強く焼き付けられた。
魔蹴術戦技————————————突空崩撃(エアリアルインパクト)
その瞬間に右からフード付きパーカーを着てフードを被り翼の様な装飾の魔装靴を履いた糸目の少年が飛行魔術を使い弾丸のような速度ですっ飛んで来て金剛石粉砕級の踏みつけ蹴りを巨怪鳥に叩き込んだ。
「グピィィィィィィィイッ!!?」
「ワイの弟分になにさらすんねん阿呆鳥がっ!!」
戦技がクリーンヒットして気を失った巨怪鳥が落下して行く・・・この少年こそが近い将来空の王(アトモス)の二つ名で有名になる当時十二歳のソラ・グローリーだった。
——————凄ぇ・・・あんなデケェ鳥を一撃で・・・。
ルークは目の前の空の守護者の卵が大空を制する様に呆気にとられると同時に魅入った、まるで鷹ですら敵うことのない気高き風の様だとルークは思った。
「ふぅ、大事無いかボウズ?ホンマ毎度毎度こないなとこに登りおってリカがカンカンやで、ゲンコツの一発は覚悟しとくんやな」
「あ・・・ああ」
「ん?なんやねんボウズ鳩が電磁加速銃(レールガン)くらったかの様なツラして」
「いやそれ木っ端微塵になるよなソラ兄!?」
「ナハハハハハッ!まあ細かいこと気にすんなさかい比喩表現と言うやつやねんシケたツラすんな言うとるんやでボウズ」
「余計なお世話だ!それよりソラ兄、飛行魔術使用の許可は貰ったn「そこの幼年学生!飛行魔術の無断使用により拘束する!おとなしくお縄につきなさいっ!!」・・・ソラ兄っ!?」
「やばっ!?都市警備のおっちゃんや!逃げるでボウズ!!」
「ちょっ!?ソラ兄!?」
「ピュイ!」
先ほどソラが来た方角の空からイーストスラム都市警備隊のベテラン空戦魔導士がソラの方に向かって来た、つまりソラが飛行魔術を断りもなしに無断使用した為にソラを追って来たのである。
ソラはシロハヤブサの雛を抱きかかえているルークの右腕を引っ張ってそのまま猛スピードで逃げ出した。
その後ルークとソラは都市警備隊に怒られて厳重注意されイーストスラム東区の自宅に帰宅したらルークの姉で唯一の肉親である当時十二歳のリカ・スカイウィンドに叱られて散々な目に遭うルークとソラ、だがルークはこの日に将来最強の空戦魔導士になる夢を抱いた、そしてソラと同じ魔蹴闘士になろうと決意したのだった。
イーストスラム東区、ジャンク広場———————
街の光が消える真夜中の時間帯、排気ガスによって空気が汚染されている為に夜天には三日月と朱い星が一つだけしか無く他の星が全く見えなくて寂しい感じがした、更にこの場所はあちらこちらにジャンク品の山があり潤滑油の鼻に付く臭いが相まってかなり殺風景だ。
「・・・来たんかボウズ・・・待っとったで」
「ソラ兄・・・」
そんな機械の修理・改造好きな機械技師しか来ないような場所に二つの小さな影があった・・・ルークとソラである、ソラがこの広場の中央の一番高いジャンク山の天辺に腰を掛けて座りルークがそのジャンク山の後ろでソラの背中を見上げていた。
ルークはリカが深い眠りにつくのを見計らって自宅を抜け出して来ていつもこの時間帯にこの場所にいるソラに会いに来たのである・・・魔蹴術を教授してもらうのを頼む為に。
「よっと!」
ソラは立ち上がってルークの方に振り返り眼を見開いてルークを見下ろした。
殺風景なジャンク広場に静かな一陣の風が吹いた、三日月を背景にジャンク山の上に立って見下ろすソラの姿は十二歳という幼い年齢にも関わらず王者の風格を感じさせた。
「用は分かっとるで、学びたいんやろ魔蹴術を?」
「・・・・・ああ」
ソラの問いにルークは頷いた、それを聞いたソラは鋭い眼光でルークに問いかけた。
「なら、なんの為に魔蹴術を習得したいん?答えてみいボウズ、ワイが納得いく答えやないと拒否させてもらうで、見込みのない奴鍛えてもしゃーないし時間のムダやしな・・・」
するとルークはソラを真っ直ぐな眼で見てチカラ強く答える。
「世界最高にして最強の空戦魔導士になりたいからだ!今日、巨怪鳥を一撃で倒すソラ兄を見て夢を抱いたんだ!この大空のテッペンを目指したいとっ!!」
「・・・そんで?どないな理由でそんな夢抱いたん?聞かせてみい」
冷ややかな鋭い眼光でその理由を求めるソラ、ソラは今試しているのだ、ルーク・スカイウィンドという一人の少年が自分が魔蹴術を教えるに値するかを・・・・・静寂な間が緊張感を漂わせていてもう一度一陣の風が吹いてそれが静まった時、ルークの口が開いた。
「ソラ兄・・・—————————
——————————夢を抱く事に大層な理由が必要?夢を抱く事そのものが大切なんだろうが!!」
ソラは呆気にとられた、灼熱の様な眼差しで真っ直ぐ自分と目を合わせてそんな普通の人間からしたらブッ飛んだ答えを言ったからだ、にも関わらずルークはその続きを言い放つ。
「何かに憧れ何かを夢見る、夢を抱いた瞬間が【原点】だ!後はその夢への翼の道(ウィングロード)を翔け抜けていくだけ!———————
————————夢を目指す為に魔蹴術を習得したい、それが俺の理由だっ!!!」
ルークはこの大空への情熱を乗せてソラにぶつけるように言い放った。
先の事をまるで考えていない突拍子が無くて滅茶苦茶な理由だ、普通の感性の人間なら【ふざけるなっ!!】と激怒するところだろう・・・だがソラは—————
「・・・プッ!ギャハハハハハハハハハッ!!!」
眼から涙を大量に飛び散らせる程大爆笑した。
「ギャハハハハハハッ!!ええわええわ最高やで!!ガキらしくてド正直な自分勝手な理由やないか!!ギャハハハハハハハハハッ!!!」
「笑い過ぎだろソラ兄っ!?」
ジャンク山の天辺で四つん這いになってジャンク品の足場を片手でバンバンぶっ叩きながら大爆笑するソラ、さっきの王者の風格はどこへやら・・・。
「スマンスマン、せやけどホンマに良かったわボウズ!もし【世界を護りたい】やとか【正義の為に悪と戦う】やなんてふざけたこと言うたら唾ぶっかけとったで!」
「?」
ソラの言った事が意味不明で首をかしげるルーク、今ソラが言った理由の例えは傍から見れば大変立派な理由だ、しかしソラはそれを否定する。
「ガキがそないな大層な事言う時はな、大抵大人共を見て真似しとるだけやねん、そうやなくても世界だの正義だの護るだの何も理解してへんガキの癖に綺麗事並べるだけのつまらんガキに教える事なんてあらへんわ!」
ソラの言う事も一理ある、まだ人生の四分の一すら生きていない八歳児がそんな大層な事を言ったって意味を理解しているわけが無い、何故ならそういう考えに至るのはこの長い人生の中で様々な人間と交流し色々な事を経験し続けて【世界】を知り【自分の正義】というものを見つけていき【自分が護りたい大切なもの】を理解するからだ。
「ガキの真の原動力っちゅうのは【夢】やねん!これはなにも知らへんでも上を目指して飛んで行ける【翼】やさかいガキが持つもっともゴツイ想いとチカラやで!」
【夢】、それは何も知らない子供がもっとも強い想いを抱けるものだ、何かを護るなどの責任感を持つ事ではないのだ。
「・・・じゃあ!」
それを聞いたルークは期待を高める、ソラの答えは当然————
「合格やボウズ!!そのデッカイ夢手助けしたるわ!!」
それを聞いたルークは歓喜の声を上げてガッツポーズをして喜んだ。
この約半年後にソラとリカはイーストスラムを離れて学園浮遊都市ミストガンの空戦魔導士科(ガーディアン)へと入学して四年間の間に名を上げていき、ルークはその間にソラに教えられた魔蹴術を磨いていきソラとリカの後を追ってミストガンの空戦魔導士科へと入学した。
これがルークの《翼の道への出発点(スターティングウィングロード)》だ。
エクザイル歴四三六年、五月十八日
学園浮遊都市ミストガン、闘技場———————
『試合終了ーーーーーーーっ!!この試合を制したのはE119小隊!!それも自分達は一人も撃墜されずに対戦相手であるE128小隊全員を撃墜という完全試合(パーフェクトゲーム)!!一方E128小隊はこれで十連敗!身の程を知ったかルーキー共!!これがランキング戦DA★ZE!!』
「・・・・・また負けやな・・・」
「ええ、まったく・・・まだ解ってないみたいねあの子達」
ランキング戦EランクリーグJブロック第十戦目第七試合E128小隊VSE119小隊、試合結果・・・E119小隊の完全試合。
闘技場フィールド内で倒れて気を失っているルーク達E128小隊のメンバーが担架で運ばれて行く様を東側観客スタンド四階から見下ろしているソラとリカはルーク達の不甲斐無さに溜息を吐いた。
経験不足なルーク達はC140小隊小隊長のオリバー・ヒューイックに言われた【小隊としてどう戦うか】というのをまだ理解できていなかった。E128小隊とC140小隊との決定的な違いは豊富な経験を持つ本科生がいるかいないかだ、ルーク達128小隊のメンバーは全員新人である予科一年生である為に【小隊戦】の経験が不足しているのだ、故に今回の試合もルークとカナタが個人戦闘(スタンドプレー)をして分断されE119小隊が三人という自分達よりも少ない人数であるにも関わらず各個撃破されたのであった。
「・・・・なあリカ?」
「ん?」
「ワイらは立場上ボウズ達を贔屓して教えてやることはできへんけど・・・ヒントをくれてやるぐらいはええんやないか?」
「・・・はぁ、まったくしょうがない子達ね、で?何をするの?」
ルーク達の不甲斐無さを見兼ねたソラはリカにルーク達の手助けをする為の提案をした、ソラは見込みの無い人間は例え自分の弟分であろうと見捨てるのだが逆に見込みの有る人間にはとことん入れ込み手助けしてやりたくなる差別的なお人好しなのだ。つまりE128小隊はこのまま潰れるのは惜しいと思ったからそういう提案をしたのだ。
「ふっ、それは明日のお楽しみやな、リカにも手伝ってもらうで!」
「元からそのつもりよ、貴方だけに任せられるわけないじゃない」
「酷っ!?」
斯くしてソラとリカによる【E128小隊救済作戦】は明日決行される事となった。
果たしてその内容とは何か?そしてルーク達は自分達の小隊としての戦い方を見つける事ができるのだろうか?全ては明日ソラ達がやる事でルーク達が気付くかどうかに懸かっていた。
次回予告
リカ「で?一体何をする気なのソラ?」
ソラ「そやな・・・まずボウズ共を誘ってメシでも食いにでも行こか」
リカ「うんうん」
ソラ「そんでウェイトレスの姉ちゃんのケツの柔らかさを確かめるんや」
リカ「うんうn・・・え?」
ソラ「グヘヘヘヘヘ!この前行ったレストランにいいケツをした姉ちゃんがおったんでどんな触り心地か気になったしな!こりゃあ是非とも確かめに行かんと!」
リカ「真・面・目・に・か・ん・が・え・ん・かいっ!!」
ソラ「ウボァアアアアッ!?」
次回、空戦魔導士候補生の情熱『ソラとリカの誘い』
ソラ「翔け抜けい!最強への翼の道(ウィングロード)!!」