競技フィールド内—————
「次は俺にパスを回してくれ!今度こそソラ兄達をブチ抜いてやるぜっ!!」
セット間毎に設けられる十五分の休憩時間(ハーフタイム)、ディスクの試合はセット毎に陣地入れ替え(サイドチェンジ)をするのでルーク達はフィールドの南側の陣地で円になるように集まって作戦会議をしていた。
「落ち着けルーク、お馬鹿みたいに単独で何度も正面から突っ込んでも結果は同じだぜ」
「なっ!?テメェだって単独で正面から突っ込んで潰されてたじゃねぇかよ!」
「ああ、おかげであの二人がどう動くか確認できたしな」
「「「えっ!?」」」
「ん?言ってなかったか?幾らあの二人がミストガンの有名人だからといってもこの競技でどういう対応するかわかんねーからそれを確かめる為に敢えて1セット目は捨てて正面から突っ込んでいたんだが」
「んな事一言も言ってねぇだろうがっ!!」
「そういう事はわたし達に伝えてからやってよカナタ!」
「やれやれ」
仲間達になにも伝えずに勝手に行動していたカナタに文句を言うルークとクロエ、だがカナタの行動が間違っているとは一概には言えない、確かにソラとリカは空士としては超が付く程有名だがディスクでどういうプレーをするのかは流石にわからない、圧倒的に格上であるソラ達に対抗する為には何を捨ててでも情報は必須だ、故にルーク達はカナタをこれ以上咎めなかった。
「まったくもう・・・それで?何か突破口は見えたの?」
「まーな」
クロエは気持ちを切り替えていけるのか?とカナタに確認をしてカナタはそれに対して不敵な笑みを浮かべながら肯定した。
「というわけで次のプレーの策を考えついたぜ!お前等ちょっと耳貸せ」
「なにが【というわけで】なんだ・・・」
「凄く不安ですね・・・」
「大丈夫!根拠は無いけれどカナタが言うんならきっとなんとかなるよ!」
—————今、根拠は無いっつったか!?全然大丈夫じゃねぇじゃん!
ルークとロイドが心配する中クロエだけが何の疑心も抱かずにカナタを信頼していた、流石幼馴染だ、信頼度が半端じゃない。
「いいか、次のセットが始まったら—————」
「試合再開(プレイディスク)!」
「そんじゃ行くでリカ!」
「ええ!」
ソラ達Sチームの攻撃で第2セット目が開始されスターティングディスクキーパーであるソラがリカにパスを出しソラはそのままリカの右前方を走って先行して円盤を持ったリカがそれに続く。
「全員一斉掃射!」
「「「おおっ!!」」」
一方ルーク達は始まると同時に四人全員で前方から向かって来るソラとリカに向けて指向性魔力弾を機関銃の如く乱射した。
「血迷ったんか?ディスクキーパー以外に攻撃してもうたら反則(ファウル)なん———」
放った魔力弾はソラ達の手前と左右の地面に着弾し砂煙を巻き上げてソラとリカの視界を遮った。
「うおっ!?滅茶苦茶するやんアイツ等!」
「だけれども所詮は浅い経験しか持たない予科一年生の浅知恵ね!この程度で———」
「うぉおおおおっ!!」
「はぁああああっ!!」
次に砂煙に紛れてルークとロイドがリカに突攻をする、しかし————
「私を沈められるとでも思っているの!?」
「ぐっ!?」
「ぐはっ!」
魔力強化したルークの正拳突きは左横から払われてルークは左に体勢を崩してよろめき、ロイドの繰り出した右拳は右手首に手刀を叩き込まれた事によりバランスを崩し次の瞬間頭を鷲掴みにされてそのまま地面に叩き付けられた。
「そして次は———」
「いっ!?ぐほぉっ!!」
—————後は煙から抜けたところを右から奇襲して来るみたいだけれど、甘く見たわね!この【茨の女王(ヴィターニア)】の眼はごまかせないわよ!
更にリカはパスと見せかけて煙に紛れてソラへのパスコースを塞いでパスカットをしようとしていたクロエにショルダータックルをくらわせてふっ飛ばしカナタが前方右から向かって来るのを確認しながら走ってその勢いのまま砂煙を抜けてその瞬間を狙って右から来たカナタの拳を左に躱した・・・だが———
『ピピィーーーーッ』
「ソラチーム、場外(アウトオブバウンズ)!!」
「なっ!?」
リカは自分が左側のラインを跨いでいた事に気づいていなかった。審判であるテオがホイッスルを鳴らしてリカの場外を宣告して試合が中断された。
「へっ!眼が良すぎると足下が見えなくなるってな!」
「・・・・やってくれるじゃない・・・」
リカの二つ名である【茨の女王】の由来はその規格外の動体視力と観察力と魔弓の命中精度にて敵がどんな動きをしようとも逃がさない、それがまるで全ての敵を切り落とすことのできない無数の茨で搦めとって仕留めるように見えたことからその名が付いたのである。
しかしリカはその眼の良さが故に敵の動きを第一優先に見る癖がある、カナタはそれを逆手にとってリカを左サイドに誘導したのだ、円盤を奪わなくてもこうすれば自分達に攻撃権がくる、リカは別に注意力散漫だったというわけではないが人間どんなに優秀でも完璧ということはなかなか無い、今回はまんまとカナタの策に嵌められたのだった。
「と言っても次はねーだろーな・・・次の攻撃は確実に点とらねーとな!」
「そう上手くいくかしらね」
「へっ!見てな!次も面白いことをしてやるよ!」
点数の変動が無くて試合が中断した場合はその場所から再開する、後方40m先にEチームの陣地がある所からEチームの攻撃で試合を再開した。
「そんじゃいくぜ」
クロエからのパスを受け取ったカナタが身を屈めてリカに突撃する。
「嘗めないで!そう何度も上手く行くと思っt「リカ!手ぇ出したらアカン!!」しまっ!?」
「ぐはっ!」
突っ込んできたカナタを迎撃する為に鞭の様に鋭くしならせた蹴りを繰り出すがソラが何かに気づいてリカを止めようと呼びかけてリカもそれに気づくがもう遅く、カナタの横っ腹に蹴りが直撃してカナタは地面に沈んだ。
『ピピィーーーーッ』
「ソラチーム反則(ファウル)!罰則(ペナルティー)によりE128小隊チームに1ポイント!!」
Eチーム1-0Sチーム
反則判定、それはディスクキーパー以外のプレイヤーがディスクキーパーではないプレイヤーを攻撃した時の判定だ、地面に倒れているカナタは円盤を持っていなかった、カナタはクロエからパスを受け取った瞬間ソラとリカにバレないようにコッソリとすぐ真後ろにいたロイドにパスをして、円盤を持っていない事がバレないように体勢を低くして突撃してファウルを誘ったのである。
「うわっ!ダッサイわリカ!予科生に二度も嵌められてもうてダッサイわ!」
「さっきクロエに注意力散漫だとか言っておいてそれはねーんじゃないの?」
「くっ!返す言葉も無いわ・・・ってソラ!?どさくさに紛れて一緒にディスるな!」
「だってダサイんやもん♪」
「・・・・後で覚えてなさいよソラ」
カナタとソラに弄られたリカは腸が煮え繰り返そうな程腹が立ったが事実なので後でソラに鬱憤を張らすと決めて心を落ち着けた。
「けどアンタに突っ込まなくてよかったぜ、早くにばれてたみてーだしな」
「当たり前やろ、まだまだガキなんかに出し抜かれる程特務小隊は甘くあらへんで!十年早いわ!」
————ワザと私に聞こえるように大声で言っているでしょ!?本当に後で覚えてなさいソラ!
その予科生に二度も出し抜かれた特務小隊のリカの前で当たり前のようにそう言うソラに握り拳が震える程苛立つリカであった。
競技フィールド中央外——————
「一点取った!?凄いのですカナタ君!」
「フッ、仲間を頼らない奴かと思ったが俺の思い違いだったようだな」
あの茨の女王を二度も出し抜いて初得点を取ったカナタを絶賛するギドルトとカナタの評価を改めるテオ。
「1セット目で完封されて圧倒的に不利だった状況の中リカの癖を見破ってわずかながら道を開くとは、カナタにはエースの素質があるみたいだな」
「エースの素質・・・なのですか?」
「ああ、優勢の時は攻撃の基点として主力となり劣勢の時は状況をひっくり返すキーマンとなる小隊の要、それがエースだ、今のカナタはまさにそれだったぞ」
カナタには敵の深層を見抜く観察眼と圧倒的逆境でも喰らいつく粘り強さを以って状況をひっくり返すエースの素質があることをテオは見抜いた、流石ミストガンナンバー2の空士だ。
Eチーム1-1Sチーム
「・・・と言っても相手は超が付く程の格上、そう何度も止めさせはしないか・・・」
テオはたった今ソラがルーク達のディフェンスを突破してタッチダウンを決める光景を見てそう呟く、やはり何度も止められる程ソラ達は甘くないようだ。
Eチーム1-2Sチーム
「カナタだけに頼り切りじゃダメだ、他の奴等もそろそろ気づかなければこのまま試合を持って行かれるぞ」
「そんな・・・」
テオはクロエのパスをパスカットしてカウンターでタッチダウンを決めたリカを見てこのままではルーク達は負けると悟り、ギドルトは動揺するように呻いた・・・・だが———
「・・・・・でも、多分クロエさんはそろそろ気づくと思いますのです」
ギドルトはたった今目の前でさっきと同じようにルークを右前方、カナタを左前方に先行させてリカと対峙するクロエを見てそう確信した。
競技フィールド内——————
————また左が少し広い・・・だけどそれはまたワザと隙を作っているに違いない
————流石に同じ事をするとは思わないけど目線でパスコースを探っている時点でバレバレよ
1セット目と違うのはクロエがリカと正面から対峙してソラが直ぐにカウンターできるようにクロエから見て20m後方いるという構図なので絶対に取られるわけにはいかない。
————・・・でももう大丈夫、さっきのカナタのプレーがヒントをくれたから!
クロエは目線をカナタの方に向けながら逆方向のルークにパスを出そうとする・・・しかし———
————そんな大雑把な動きじゃ目線と違う方に投げたって駄目よ、私は相手の動きを目で捉える事に関してはミストガン一だと自負しているの、こうして私の前でパスを出すと選択した時点で貴方の間違いよ!
リカはそれにアッサリと反応してパスコースを塞いだ。
「甘いわ!そんなんj————」
その瞬間クロエの口の右端が吊り上がったのが見えた、そしてクロエはなんと手首のスナップを利かせて円盤をリカの左肩の上目掛けて素早く投げ、左腕を伸ばしきっていたリカは反応はできたがそこから左肩の上を通り抜ける円盤をカットすることはできなかった。
————この子、私が反応するのを見計らって!?
反応されるのが分かっているのなら反応しても取れないようにすればいい、クロエは先ほどカナタが自分達を使ってリカを場外に誘導したのをヒントにして自分なりにリカを誘導したのだ、リカの規格外な動体視力を利用して。
「・・・上手く出し抜いたつもりでしょうけどその方向には誰も・・・はっ!!」
それでもリカはルークとカナタへのパスコースを完全に把握していたので一瞬クロエが無意味な方向に円盤を投げたと思ったがすぐに思い違いに気づいた、それはパスを受け取るプレイヤーが動く可能性だった。
「ナイスパスだクロエ!」
「しまった!」
円盤は綺麗なカーブを描いて正面に移動していたカナタの手に納まり————
「タッチダウゥーン!!」
誰も守りがいないためにカナタはそのままタッチダウンを決めた。
Eチーム2-2Sチーム
「ギャハハハハハハッ!!また出し抜かれおった!茨の女王の名が泣くでリカ!手ぇ抜き過ぎとちゃうんか?」
「・・・・・そうね・・・フフフフフフフッ!」
あまりにも不甲斐無いリカを見て爆笑するソラだったが、顔に暗い影を落として不気味に笑うリカを見てゾッとした。
————あ、こりゃ怒っとるわ・・・・ボウズ共、ご愁傷さま・・・。
そしてリカ・スカイウィンドの怒濤の逆襲が始まった。
「ルーク!同時にかかるぜ!」
「ああ!いくぜリカ姉!!」
「・・・・・・」
円盤を左腕に抱え正面切って走って来るリカに突っ込むルークとカナタだったが————
「ふごっ!?」
「なっ!?」
リカはルークとカナタの筋肉の動きを見切って二人がチカラを加える方向に合わせてそれぞれ軽いショルダータックルと左肩への掌底を軽く打ち込んで二人をスリップダウンさせて悠々と突破した。
「ロイド!一斉掃射!」
「わかりました!」
次にクロエとロイドが指向性魔力弾をリカとその目の前に乱射して彼女を攪乱しようとするが———
「・・・・・浅薄ね・・・」
リカは向かって来る魔力弾をその眼で全て把握して着弾しない最短ルートを解析して魔力弾の嵐を簡単に突破してしまう。
「ヤバイ!止めるよロイド!」
「まったく冗談じゃないですよ!」
「俺達もまだ終わってねーぞっ!!」
「リカ姉覚悟しろっ!!」
前後より一斉にリカに飛び掛かるE128小隊の四人、しかしリカはなんと四人全員の筋肉の動きを同時に把握して全員徒手空拳で地面に沈め、そのままタッチダウンを決めた。
Eチーム2-3Sチーム
「くっ!?マジかよ!?」
「怪物ですね・・・」
「これが茨の女王の真の実力・・・」
「リカ姉・・・」
地面に倒れ伏すルーク達は【チカラの一端】を見せたリカの実力に唖然とした、愚かな愚民共を見下す様にリカはルーク達を蔑んだ眼をして見下ろしていた。
「まだまだこんなもんじゃ終わらないわ、覚悟しなさい」
女王による蹂躙が始まった。
「いくぜリカnぐはっ!?」
格闘戦を挑もうとすれば筋肉の動きを掌握されて地面に沈められ————
「カナt「もう貴方のパスは通用しないわ!」そんな!?」
パスを出そうとすれば意識の方向を掌握されて投げた瞬間に一瞬でパスカットされ———
「「うぉおおおおおっ!!」」
「はぁあああああっ!!」
「くっ!?リカ先輩が止まらない!!」
「まだまだねっ!!」
「「「「ぐはっ!!」」」」
肉弾戦・遠距離射撃・不意打ちなど様々な手段で攻めて来るリカを迎え撃とうとすると筋肉の動き・魔力弾の数と飛行弾道曲線と弾道速度・意識の方向など様々な細かい情報をその眼で掌握して襲いかかって来る愚民共(ルーク達)を悉く容赦なく叩き潰した。
Eチーム2-8Sチーム
「大人げあらへんわリカ・・・」
暴虐の限りを尽くすリカにドン引きするしかないソラ、まさに蹂躙、女王に逆らう塵芥共はプチッと潰される運命だ、これが茨の女王(ヴィターニア)!これがリカ・スカイウィンド!!女王に逆らうことなど許される所業では無いのだ!!!
「やべーな、次取られたら後がねーぞ」
「もう落とせないね・・・皆、気張っていくよ!」
「「「おおっ!!」」」
それでも彼等は諦めない、不屈の心がこの胸にある限り彼等は何度でも立ち向かうのだ。
競技フィールド中央外————
「「・・・・・・これは酷い(のです)・・・」」
フィールドの外でリカの蹂躙劇を見ていたギドルトとテオも唖然としていた、幾らなんでも酷すぎると。
「リカの奴アイツ等にチームワークの大切さに気付かせるって目的忘れているだろ・・・」
「・・・やっぱりそうだったのですねテオ先輩」
「ああそうだぞ、E128小隊がランキング戦で負け続けているのは個人戦闘(スタンドプレー)ばかりしていてチームワークを疎かにしているからだ」
そう、今テオが言った通りE128小隊はチームワークに欠けていて、試合ではいつもルークとカナタが個人戦闘をして分断されて各個撃破されてきたのだ。この勝負は元々勝敗など関係ない、立場上表立ってルーク達を贔屓する事ができないソラ達がルーク達にチームワークの大切さに気付かせる為のものだったのだ。
「この【ディスク】ほどチームワークを要求する競技は無い、ソラはそこに目を付けたんだろう、これならルーク達はチームワークの大切さに気付くだろうと信じているってことだ」
「ソラ先輩・・・」
「カナタとクロエはもう大丈夫だろう、ロイドは元々連係できていたみたいだし存在感がウスィーから知らなかったが・・・まあ大丈夫だろう・・・・・後の問題はルークか・・・」
この勝負の意図に未だに気づかないのはルークだけだ、ルークは体力は無尽蔵で根性値はMAXだが理解力が乏しい故にこの状況で彼がチームワークを理解するのは難しいだろう。
「・・・きっと大丈夫なのです、ルーク君にはどんな時でも絶対に諦めない不屈の心があるのですから!」
それでもギドルトはルークを信じていた、ルークならば必ずチームワークの大切さに気付く筈だと、何故ならばルークはミストガンの空戦魔導士なのだから。
競技フィールド内————
「試合再開(プレイディスク)!!」
「頼んだよルーク!」
「おうっ!!」
試合再開と同時にルークがクロエからパスをもらって一直線に駆ける。
「来いやぁボウズっ!!」
「いくぜソラ兄っ!!」
ルークの進行ルートにはソラが立ちはだかる、一対一(ワン・オン・ワン)だ、ルークは絶対空気感覚で競技フィールド全体を掌握して必死にソラを抜き去る方法を考えた。
—————正面からの正拳付き?なら手首に手刀を叩き込んで逸らす・・・いや、それなら左右どちらかに躱した方がいいか?・・・・でもどっちに?———
あれこれ考えている間にソラの右拳がルークの顔面に迫る———
—————・・・やっぱ手刀だっ!!
「おらっ!・・・い”っ!?」
迫る右拳に対して上から手首に手刀を叩き込んでソラの正拳付きを叩き落すルーク、しかし叩き落した瞬間ルークはソラが勢いのまま頭突きを自分(ルーク)の額にぶつけて来ようとしているのを感じたので回避しようと思ったが、勢いよく手刀を叩き込んだ為に体勢を崩したので回避できない。
「考え過ぎやと言っとるやろがぁああああっ!!」
「がはぁあっ!!」
ソラが繰り出した頭突きはルークの額にクリーンヒット、あまりの威力にルークは地面を転がり円盤を真上に飛ばしてしまった。
「カバー!!」
「もう行ってるっつーの!」
「少し休みたいのですが・・・」
万有引力の法則に従い落下して来る円盤の落下地点にカナタとロイドとソラが集まって来て———
「「「うおおおおおおおおぉぉっ!!!」」」
落ちて来る円盤を巡って競り合いながらチカラいっぱいジャンプした・・・・そして———
「空でワイに勝とうなど百年早いわガキ共っ!!」
「「ぐはぁっ!!」」
ソラが競り勝ち円盤を掴んだ瞬間、跳んで腕を伸ばしきっている為に無防備状態のカナタとロイドに空中回転蹴りを叩き込んで二人をふっ飛ばし————
「リカァアアアッ!!」
そのまま空中でクロエの35m手前にいるリカにパスを出した。
「・・・・今だぁああっ!!」
リカがパスを受け取る瞬間のタイミングを計っていたクロエはリカが円盤をキャッチしようとした瞬間にリカに突攻を仕掛けた。
—————いくらリカ先輩の動体視力が規格外だからって体勢が整っていない状態で躱す事はできない筈!これならいけるっ!!
身体が円盤が来た後ろを向いている状態のリカが円盤をキャッチする瞬間を狙ってリカの背中に掌底を打ち込もうとするクロエ、タイミングはバッチリだ、魔力で強化して繰り出した掌底がリカの背中に炸裂・・・する筈だったが。
「・・・・だから貴方達は浅薄だと言うのよっ!!」
「えっ!?」
円盤をキャッチするかと思われたリカはその直前で身体を反転させてクロエの全力の掌底を右に躱してEチームの陣地に向かって走り出し円盤がクロエの横を通り過ぎた。
「しまった!?」
全力の踏み込みで掌底を繰り出したために体勢を崩して反転できないクロエを後目にリカは走りながら円盤をキャッチしようとしていた。
パスを受け取るタイミングで妨害されるなら距離を伸ばせばいい、クロエはリカを出し抜いたつもりが逆に出し抜かれてしまったのだ。
「さっきの仕返しよ!これで王手(チェック)ね!」
ここでタッチダウンを許したらマッチポイントだ、Eチームの陣地が目前に迫ったリカが円盤をキャッチする体制に入る、万事休すか!?————
だが円盤はいつの間にか何故かそこにいたロイドの腕に納まった。
「都合よく前に来ましたね」
「なっ!?」
「えっ!?ロイド!?」
「なんやてっ!?なんでそこにおるんやウスィーの!?」
「貴方がふっ飛ばしたんでしょう?忘れないでくださいよ」
なんとロイドはさっきのソラの回転蹴りでここまでふっ飛ばされていたのだった、怪我の功名とはまさにこのことだ、しかもロイドの存在感のウスィーさによりソラ達は勿論クロエすらも近くにいるのに気づかなかったので上手く横取りできたのだ、ウスィーのも上手く使えば武器になるということだ(笑)。
「後は頼みましたよ—————
—————ルークッ!!」
ロイドはリカが追い付いて来る前に180m先で既にSチームの陣地に向かって駆けだしているルークに向かって全ての想いを託すロングパスをチカラいっぱいを投げた。
「ああ!任せろっ!!」
物凄い速度で飛んで来る円盤を走りながらキャッチしたルークはそのまま全速力でSチームの陣地に向かって猛ダッシュするが———。
「甘いでボウズ!そう簡単にいくと思っとんのか!?」
ロイドが円盤をキャッチした時に既に自分達の陣地の前に回り込んでいたソラがルークの前に立ちはだかった、流石の対応の速さだ。そしてルークは意識を集中して絶対空気感覚で競技フィールド全体の空間を掌握する。
————・・・考えんじゃねぇ、感じんだ・・・勝利への翼の道(ウィングロード)を。
ソラの身体の動き・速度・膂力などを人間の身体の周りに纏わり付く空気の流れを感じ取って割り出し、最適な攻略方を見つけようとするルーク、ルークから延びて行く彼だけにしか見えない空気の道、それがソラに向かって無数に延びて行く・・・しかし———
————・・・クソッ!流石ソラ兄、どんな事をしてもダメみてぇだ。
延びて行った道は全てソラの前で無残にも消えてしまった、これが意味するのは現時点ではルークはソラに絶対に勝てない事を意味していた。
————これまでか・・・・・いや!俺は絶対に諦めねぇっ!!何か方法は—————
もはや手は無いかと思われたその時、後方から光り輝く一本の翼の道がチカラ強く延びて来るのが見えた。
「・・・・・へっ!そういう事かよっ!!」
たった今ルークは気付いた、一人で勝てない時はどうすればいいのかを———
「見えたぜ———」
自分に足りなかったのが何なのかを————
「勝利への翼の道!」
新たに見つけた翼の道を!!
「翔け抜けるっ!!」
————真ん前から向かって来るやと!一見阿保正直な突攻に見えるんやが今のボウズがしとる眼は破れかぶれな眼とちゃう、希望に満ち溢れとる眼をしとる!
ソラは突撃して来るルークの眼を見てルークは絶対の自信を持って突攻して来ているのだと確信した、もしソラが絶対空気感覚を封印しないでいたらとっくに気が付いていただろう、ルークの後方から向かって来る未来の黒いエースの存在に。
「よしっ!来いやぁっ!ボウズッ!!」
「いくぜソラ兄っ!!今度こそ俺は———」
向かって来るルークの顔面を狙って右拳を繰り出すソラ、ルークはそれを左にズレて躱すがその瞬間ソラが身体を半回転させて今度は左拳による遠心力を利用した裏拳をルークの顔面に繰り出した、その時———
「「俺達はアンタに勝つっ!!!」」
ルークの真後ろから全速力で向かって来たカナタがソラが繰り出した裏拳と反対側である数センチ右を駆け抜けて————
「ぐぼがっ!!」
「なんやとっ!!?」
ルークは裏拳が当たる直前にソラの脇の下から正面にパスを投げ、裏拳はルークの顔面にクリーンヒットしてあまりの威力にルークは鼻血を噴き出しながら地面に沈んだ・・・そして———
————クッ!ディスクキーパー以外は攻撃できへんから黒髪のガキを止められへん!!
ソラの右側を抜けて行くカナタに反応はできたが円盤を持っていないから止めることができない為対処ができない。
「届けぇええええええっ!!!」
そしてカナタはSチームの陣地の上に届くか届かないかの距離で真っ直ぐに飛ぶ円盤に向かってイチかバチか思いきり左腕を伸ばして飛びつき・・・・・見事キャッチに成功してその勢いのままSチームの陣地の上を転がった。
『ピピィーーーーッ』
「タッチダウゥーーーーン!!」
審判であるテオによる得点宣言が響き渡った。
「やっっったぁあああっ!!」
「やりましたね!ルーク!!カナタ!!」
200m後方から歓喜の声を上げるクロエとロイド。
「・・・まったくあのお馬鹿は、ようやく気が付いたみたいね」
弟の成長を見て嬉しく思うリカ。
「ギャハハハハハハッ!してやられてもうた!流石ボウズ共やな」
そして、最後の最後に出し抜かれて少し悔しそうにしながらも弟分達の成長が嬉しくて思わず高笑いをしてしまうソラだった。
「・・・へっ!どうだソラ兄!十年早いとか言っといて出し抜かれた感想はよ!」
「んな鼻血出しとって無様さらしとる癖に減らず口だけは一丁前やなボウズ」
地面に仰向けに寝転がって鼻血を流しながらも不敵な笑みをしてそう言い放つルークの横に立って言い返すソラ、ルークの顔を覗き込んで見ると彼は全力を出し切ったと言わんばかりに清々しい表情をしていた。
「もうワイ等が教えんでも分かったやろ?お前等に足らへんもんがなんなんかを」
「ああ、仲間達と協力する事だろ?」
「そや、気付くの遅いっちゅうねん」
「へっ!そうだな、馬鹿だぜ俺は」
ルークは寝転がったまま周りを見渡し歓喜の声を上げる仲間達の姿を見る。
「こんなにも頼りになる奴等がいるっていうのに自分のチカラで勝つことしか考えていなかったんだからな」
ルークは個人で強大な敵に立ち向かうことの困難さと愚かさを知った、下手をしたら何百回攻撃しても倒せない強敵と対峙することだってあるかもしれない、そんな時は仲間達とチカラを合わせて立ち向かうのだ、そうすればきっと何とかなる。
「・・・だけど俺は自分のチカラでソラ兄に勝つことを諦めたわけじゃねぇからな!いつか絶対に勝つぜソラ兄!!」
夢に燃える眼差しでソラと目を合わせてそう宣言をするルーク、ルークの夢はあくまで世界最強の空戦魔導士になることだからだ。
「ハッ!ナマ言うんやないわ!簡単には勝たさへんでボウズ!!」
ルークの宣言を聞いたソラはルークに拳を突き出して対抗宣言をするのだった。
そしてこの試合の意味はもうないと判断したソラ達は勝敗関係無しに時間が許す限りひたすらにルーク達とディスクをプレーした、やりすぎて夜の巡回警備をしていたレイブンネストに強制終了させられて反省文を書かされたが、ルーク達は大変意味のある有意義な時間を過ごせて大満足だった。
E128小隊はもう大丈夫だろう、チームワークの大切さを学んだのだから。
そしてその二日後の五月二十一日、E128小隊はランキング戦第十一戦目に挑む。
次回予告
ルーク「ソラ兄達との秘密特訓によって仲間達とのチームワークの大切さを知った俺達E128小隊!」
カナタ「俺達は明日への希望を胸にランキング戦第十一戦目に挑む!」
ロイド「しかしどんな相手でも今の僕等は負ける気がしない!」
クロエ「そう、わたし達には仲間との絆と不屈の心があるのだから!」
次回、空戦魔導士候補生の情熱『陽が昇れば夜が明ける・・・そして・・・』
E128小隊全員「「「「翔け抜けろ!最強への翼の道(ウィングロード)!!」」」」
クロエ「あれ?ひょっとして今回初めてまともに次回予告をした?」