空戦魔導士候補生の情熱   作:蒼空の魔導書

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原作『空戦魔導士候補生の教官』が遂に完結しましたね!空戦は自分がライトノベルに嵌まる切っ掛けでした。今までもですが、最終13・14刊も電子書籍限定のEXTRA MISSIONも大変面白かったです!

ルーク「カナタ・・・テメェ決戦である最後の最後でやらかしやがって・・・」

カナタ「ん?何がだよ?」

ルーク「何って、テメェが原作でやったのって中の人的なネタじゃねぇか?ミソラから白銀の魔砲剣を貸してもらって、白と黒の剣であれじゃまるで黒の剣s——」

コラァァッ!?ネタバレは禁止じゃぁぁああっ!!!

・・・原作の物語は終わりを迎えましたが、この空戦情熱はハーメルンが続く限りまだまだ続けて行きますよ!!

ルーク&カナタ「「みんな!これからもよろしくなっ!!」」


俺達がミストガンの空戦魔導士だ!

高位ランクの空士でさえ苦戦する恐るべきチカラを誇る変異種。

 

そんな強敵を相手に今、新時代を担う空士達が挑む。

 

「よしっ!行くz———」

 

変異種に一斉に掛かろうとルーク、アッシュ、アスカの三人が魔装錬金武装(エモノ)を構えた瞬間、彼等の一瞬の隙を突いて【キメラ・デネブ】が轟風が発生する程凄まじい勢いで太い一本の触手を繰り出して来た。

 

「ちょっ!?テメッ!?」

 

「チィッ!」

 

「不意討ちは卑怯だぞっ!!」

 

いきなりの不意打ちに三人は動揺する、ルークは慌てふためきアッシュはしくじったと強く舌打ちしてアスカは正面から来る触手に文句を言う。

 

「させないっ!」

 

成す術もなく三人の中央に位置するルークが触手に貫かれそうになったその時、三人の後方上から一発の紅い砲撃が飛来して来てルークの眼前に迫っていた触手を光の中に掻き消した、間一髪であった。

 

「わたしがいる事も忘れないでよね!」

 

「クロエ!」

 

「わたしが後方から援護するから、三人共思いっきりやっちゃって!!」

 

「お、おうっ!」

 

「上等だ!」

 

「おっしゃあ、任せろ!!」

 

ルーク達の後方150mでクロエが魔砲杖の先端を【キメラ・デネブ】に向けた射撃体勢で滞空しルーク達を鼓舞し、頼もしい後衛を付けたルーク達の士気が上昇する。

 

「さて、あんな化物相手に正面から突っ込むのは愚策だな・・・丁度前衛が三人だ、ここは《大狼の牙(ビーストファング)》で行くぞ!」

 

自分達と【キメラ・デネブ】の戦力差を考えて普通に戦うのはこちらが不利だと悟ったアッシュが戦術を提案する、【大狼の牙】とは三人の前衛を使う戦術であり、一人が正面から敵を惹き付けて二人が左右から挟撃するというまさに獲物を噛み砕く狼の牙のような陣形で迎撃する戦術である。

 

「は?何でテメェが仕切ってんだよ!?」

 

「そうだそうだ!ここはヒーローたるこのオレがリーダーとして指令を下すのが常識だろ!!」

 

敵と味方の戦力を分析して即座に適切な戦法を模索するアッシュは流石は現役の小隊長だと言える、しかし彼とは別の小隊に所属するルークとアスカは偉そうに場を仕切るアッシュが気に喰わなくて反発した。安いプライドで意地を張る二人にアッシュは呆れて溜息を吐く。

 

「はぁ・・・じゃあテメェ等は他に奴に有効な策を出せるのか?聞かせてみろよ」

 

自分が仕切ると言うからにはそれ相応の戦術を考えられるんだろうなとアッシュは二人に問う、当然だ、的確な判断力があり適切な指示を出して味方を引っ張れる者というのがリーダーとして最低限必要な条件なのだから。

 

「攻城剣撃陣(バテリング・ソード)でしこたま戦技をブチかまして爆殺!」

 

「ヒーローに小細工は必要ない!正々堂々と正面からブチ当たるに決まっているだろう!!」

 

「・・・・・阿呆が・・・」

 

「「んだとぉっ!?」」

 

アッシュの話を聞いていなかったのだろうか二人の戦術案はどちらも正面から戦いを挑む内容だったのでアッシュは魔籠手に覆われた右掌を額に当てて落胆する、ルークの案は対大型魔甲蟲用の戦術なのでまだマシと言えるのだが単縦陣で決めに行く戦術なので今回のように戦力差がありすぎる敵を相手にする場合は愚策だし、アスカの案に至っては論外だ自己的な価値観に忠実過ぎる。

 

あまりにも頭が悪いルークとアスカに蔑みの言葉を呟くアッシュに二人はカチンときてギャーギャー発情期のように騒ぎ立てて場を乱す、この非常時に喧嘩をしている場合ではない、この好機を敵が見逃す筈もなく【キメラ・デネブ】が喧嘩をして周りが見えていないルーク達三人に無数の触手を伸ばして来た。

 

「・・・・いい加減にして!!」

 

魔砲杖戦技—————拡散多弾頭射撃(マルチプルバースト)

 

「「うぉっ!!?」」

 

場と状況を弁えずに喧嘩をするルーク達に後方のクロエは頭にきていた、彼女は十六発に分裂する魔力弾をルーク達三人に被弾する擦れ擦れの間を通り抜けるように放って三人に迫る無数の触手を全て撃ち落とし、危うく魔力弾に当たりそうになったルークとアスカは仰天して驚き、恐る恐る後ろを振り向いてみると戦技を放ったクロエが蟀谷に青筋を浮かべて恐ろしい笑顔をこちらに向けているのが見えた、彼女は相当怒っている。

 

「戦闘中に喧嘩なんて何を考えているの?ふざけないで」

 

———うわぁ、クロエの奴キレてやがる、アイツ怒らせると面倒なんだよな・・・。

 

普段と変わらない声音で言って来るクロエだが眼が笑っていない、感情的に怒鳴り散らすよりも冷たい怒気の威圧感がある人間の方が恐ろしいものだ、恐怖心が無いルークは内心面倒だと思い黙り込んだ。

 

「ふざけているのはオレじゃない!勝手に指図してきたこのリーゼントg-——」

 

それでも反省の色もないアスカがクロエに抗議しようとするがその瞬間にひゅんっという風切り音と共にアスカの頬を何かが掠めた・・・・クロエの紅い魔力弾だ・・・。

 

「しっかりと判断を下せる人が指示するのは当然でしょ?況してやアッシュ先輩は所属は違っても小隊長、現役で隊員達を引っ張る空士なんだから彼の指示に従うのが最適だと思うんだけど、アスカ君、わたし何か間違った事言っているかな?」

 

「イエ、オッシャルトオリデス・・・」

 

クロエはいつもと変わらぬ口調ながら異様な迫力を発してアスカに問い、アスカはその迫力に気圧されて畏縮してしまいこれに応じざるを得なかった、メチャクチャ怖い、今のクロエには少なくともこの場にいる誰もが逆らえないだろう、アスカの片言がその恐ろしさを物語っている。

 

「・・・チッ、仕方ねぇな、今回はテメェの作戦に乗ってやr———」

 

クロエに口答えして怒らせるのは面倒だと思ったルークは仕方なくアッシュの言う事を受け入れ、三人はクロエをバックに再び【キメラ・デネブ】に向き合おうとするが、気が付いた時には既に敵は眼前に迫っていた。

 

「——ってまた不意打tうおおっ!?」

 

「まだ口上すら言ってないのに卑怯mぬおおっ!?」

 

疾風の如く伸びて来る無数の触手に慌てふためくルークとアスカ、喧嘩をして気が散っていた為にルークの絶対空気感覚は狭まっていたのだろう、敵の接近に気付いていなかったようだ。二人は再び不意打ちして来た【キメラ・デネブ】に文句を言おうとするがそんなの敵が大人しく聞いて待ってくれる筈がない。

 

「ボサッとすんなっ!!」

 

「注意力散漫だよ二人共っ!!」

 

魔拳戦技—————散蓮華(ブラストロータス)

 

魔砲杖戦技—————複数同時射撃(マルチショット)

 

そこへ冷静に対処していたアッシュが割って入り一瞬の内に僅かな縮退魔力を練成して魔籠手を着けた右拳の周囲に小さな乱気流を生み出し眼前に迫った無数の触手に向けてその右拳を繰り出す、突き放たれると同時に拳の周りを駆け巡る乱気流が弾け暴発するように空間を歪ませて捩じれ回転するミキサーのように無数の触手をグチャグチャに引き裂いた。四つ程逃したがそれはクロエが放った四発に分裂する紅い魔力弾によって撃ち落とされた。

 

そしてアッシュが勢いのまま前に出た。

 

「俺が惹き付け役になる!テメェ等は隙を見て奴を左右から挟撃しろ!」

 

「「おうっ!!」」

 

息を吐く暇もなく次々と連続で繰り出される触手の嵐をアッシュは真っ向から捌きながらルークとアスカに指示を出す、それを聞いた二人は調子のいい返事と共に散開して飛んで行き———

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」

 

魔拳戦技—————疾風爆裂拳(バーストストリーム)

 

アッシュは速度が上昇し弾丸のような勢いで次々と伸ばされて来る触手の乱撃を縮退魔力の練成によってできた風圧の拳による猛ラッシュで次々と爆散させていく、絶え間なく続く空気の爆発が大気を揺らし敵を怯ませる、彼のような近接系の空士が戦闘中に縮退魔力を練成するのは至難の業と言われているにも係わらずそれを難なく熟しているのを見るに彼の神経の図太さはなかなかのものだと言えるだろう、アッシュの気迫によって【キメラ・デネブ】は慄き徐々に後退していく。

 

「今だ行けっ!!」

 

そして敵の意識が完全にアッシュのみに向いたのを見計らい、アッシュが号令を出すと敵の左右に展開したルークとアスカが敵に突攻を仕掛けに行く。

 

「うおおぉ、くらいやがれええぇぇぇぇっ!!」

 

「今こそヒーローの見せ場だっ!行っくぞおおおぉぉぉっ!!」

 

魔蹴術戦技—————突空崩撃(エアリアルインパクト)

 

カイゼル流魔棍戦技——————無双突破

 

左方よりルーク、右方よりアスカ、それぞれ突進の勢いのまま突破力が高い戦技を繰り出してその巨体に風穴を空けんと【キメラ・デネブ】に突攻を仕掛けた、敵の意識は前方で応戦するアッシュに集中したままで二人の奇襲に気付いていないかと思われた・・・が———

 

「ぐっ!?なんて堅てぇ障壁なんだよ!!」

 

「うぉのれ!蟲の分際でこのスーパーヒーローの一撃を止めるとは!!」

 

二人の戦技は【キメラ・デネブ】が出現させた呪力障壁に阻まれてしまう。

 

「「うああぁっ!!?」」

 

「ルーク!アスカ君!」

 

攻撃が阻まれるとすぐさま【キメラ・デネブ】が左右の二人に一本ずつ触手を繰り出し撓る鞭のように二人に叩き付ける、障壁に阻まれた反動で体勢を崩していた二人はそれを身体にモロに受けて後方に弾き飛ばされ、クロエの悲痛の叫びが辺りに響いた。

 

「ぐあぁぁっ!!」

 

「アッシュ先輩っ!!」

 

二人に振るわれた二本の触手は後方から正面に閉じるように振るわれたのでその勢いのまま正面のアッシュにその二本の触手で挟撃し、アッシュは強烈な二撃を同時に受けて後方に弾き飛ばされた。

 

「くっ!このっ!!」

 

クロエは【キメラ・デネブ】に三人を追撃させまいと奴に砲撃の乱射を浴びせる、しかしそれは全て敵の手前に展開された呪力障壁によって無力化されてしまう。

 

————ダメ、全く通らない!くっ、わたしもカナタのように収束魔砲(ストライクブラスター)が使えれば!

 

魔甲蟲の持つチカラである呪力の事象干渉力はウィザードの魔力を大きく上回る強大なチカラだ、これによって展開した障壁を突破するには収束魔砲のような限定戦技(リミットスキル)級の火力が必要だろう、先程アスカが無双突破で敵の呪力障壁を破壊できたのは遠距離から飛来した運動エネルギーによって限定戦技級の威力が出ていたからだ、クロエはそんな戦技を自分は一つも修得できていない事に歯痒い思いを抱き下唇を噛んだ。

 

【キメラ・デネブ】は難なくルーク達に追い打ちを掛ける、無数の触手を一斉に多方に伸ばし幼き空士達を貫かんと大気を刺し穿つ。

 

「クソッタレェェェェエエエエエエエエッ!!!」

 

大気を劈く風音と共に無数の触手が個々に不規則な動きをして弾丸のような勢いでルークに襲い掛かって行く、障害物の無い無防備な空中は危険だと判断したルークは触手の追撃を振り切るように急降下し廃棄ビルや街灯などを盾にした地面擦れ擦れの匍匐飛行で再び敵に向かって行く、上から降り注ぐ触手の豪雨が煉瓦で舗装された歩道やコンクリートの道路を刺し貫き破片と粉塵が舞う中ルークは苦難の表情を浮かべながら絶対空気感覚を駆使して触手の豪雨の中を掻い潜り【キメラ・デネブ】の巨体を眼前に捉えたところで急上昇し再びその巨体に迫る。

 

「今度こそ喰らe————」

 

それ以上言葉は続かなかった、無数の触手を突破して再び突空崩撃を放たんとしたルークに【キメラ・デネブ】が呪力弾を放ったのだ。

 

「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

【キメラ・デネブ】の伸びきった無数の触手に退路を塞がれて避けきれないルークは成す術なく呪力弾の直撃を受けてしまった、被爆によってボロボロになったルークが強烈な衝撃波によって砲弾のように吹き飛び廃ビルに衝突、成長途中の身体が大の字で側面に埋まった。

 

別の空域を見てみるとアッシュとアスカも無数の触手による容赦の無い無差別絨毯乱撃に悪戦苦闘を強いられていて、遥か後方の空域にいるクロエは必死に無我夢中で砲撃を乱射して敵の呪力障壁の破壊を試みているが障壁には罅一つ入る気配がないのでかなり焦っており戦況は悪化の一途を辿っている、このままではルーク達が全滅するのも時間の問題だ。

 

————クソッ、諦めて堪るかよっ!やっとの事でランキング戦に一勝してようやく最強の空戦魔導士への第一歩を踏み出したんだ!こんなところでこんな奴にやられてその道が終わってなるもんかよぉぉぉおおおおっ!!

 

どんなに打ちのめされても不屈の心で立ち向かおうと奮起するルーク、夢を叶えるまで死ぬわけにはいかない、共に空を目指す仲間達に出会えた、未熟な所為で負け続けだったランキング戦でようやく一勝を手にする事ができた、これからだって時にこんなところでその道が閉ざされてしまうなんて冗談じゃない・・・しかし現実は非情である、廃ビルの側面に埋まったルークの目の前で先が鋭く尖った太い触手がその針のような先端をルークの脳天に向けて刺し貫かんと狙いを定めていたのだ。

 

そして・・・その凶刃は蛇が獲物を仕留めるかの如く空気を刺し穿ち発射された。

 

「ちくしょおおぉぉおおおおおおおおおおぉおおおおおっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の仲間を、これ以上やらせるかよっ!!!」

 

魔砲剣戦技——————収束魔砲(ストライクブラスター)

 

「「「「っ!!?」」」」

 

触手がルークの頭を貫きかけた瞬間、クロエの後方から強い意志が籠った声が聴こえてくると同時に膨大な黒い魔力の奔流がクロエの真上を通り過ぎて【キメラ・デネブ】の周囲に展開された呪力障壁に突き刺さり貫通して【キメラ・デネブ】本体に直撃、その衝撃により【キメラ・デネブ】は体勢を崩しルークの頭を貫きかけていた触手は狙いがズレてルークの頭の横の壁を貫く、それによってルークの身体を拘束している壁が砕かれてルークは自由の身となり、アッシュとアスカを猛追していた無数の触手も動きが止まった、間一髪である。

 

「・・・今の黒い砲撃・・・まさか!?」

 

「そのまさかだぜクロエ」

 

「あ・・・」

 

クロエは声が聴こえてきた後方を振り返り、ルーク達三人も砲撃が飛来して来た方角の空を見た、そこには———

 

「カナタッ!!」

 

「ミレーユ!?小隊長も!?」

 

「ウチの馬鹿共まで・・・」

 

満身創痍の身体をロイドとミレーユに支えられて漆黒の魔砲剣を前に突き出す射撃体勢で滞空して不敵な笑みを浮かべているカナタ、その右隣で威風堂々と魔大剣を肩に担いで凶悪な笑みをしているオリバー、カナタの左隣で横一列に並んで気取ったポーズを取り揃ってドヤ顔をしているグライド等E108小隊員達・・・防護壁手前で無数のアルケナル級達と戦闘をしている筈の空士達が応援にやって来ていたのだ。

 

「・・・・・へっ!なんだ、もうそっちは片付いたのかよ?」

 

「ああ、みんなのおかげでな!それより随分と苦戦してるじゃねーか?」

 

「無様な姿曝してんじゃねぇぞクソガキ共っ!シャキッとしやがれっ!!」

 

「どうしたアッシュ、テメェはそんな蟲野郎に良いようにやられるタマじゃねぇだろう?」

 

「負けんなよアッシュ!やられたら百倍返しがE108小隊(オレ達)の鉄則だったろ!?」

 

「こんなウザくてかったるい仕事とっとと終わらせたいのよ、早くその蟲野郎を叩き殺してよね!」

 

「そうだ!そのロクデナシの蟲野郎を後六分で倒しやがれ!!」

 

「あれ?君誰だっけ?存在感ウスィーから気が付かなかった、ゴメン」

 

「いいんですよ・・・誰も僕の名前を呼んでくれなかったし・・・」

 

ボロボロになったルーク達を見てカナタ達は彼等に喝を入れる(一部おかしいのも混じっているが気にしたら負けである)、ルーク達はそれを受けて失いかけていた戦意を取り戻しルークとアスカはアッシュの許へと飛翔して集合した。

 

「派手にやられてんじゃねーか、なんなら俺達が手を貸してやろうか?」

 

「へっ!身体を支えてもらわねぇと飛んでいられねぇ奴は黙って観ていろよ!俺達三人で十分だ!!」

 

「ルーク!アスカ!仕留めるなら奴が収束魔砲をくらって怯んでいる今しかねぇっ!【攻城剣撃陣】で一気にケリを着けるぞ!!」

 

「ヨッシャァァアアッ!待ってました!ヒーローらしく格好良く決めてやるっ!!」

 

カナタの申し出をルークが拒否し、ルークとアッシュとアスカの三人は横一列に並び、カナタの収束魔砲の直撃による激痛でもがき苦しむ【キメラ・デネブ】を睨みつけて魔装錬金武装(エモノ)を構えた、いよいよ【キメラ・デネブ】と決着を着ける時だ!

 

「それんじゃあ行くぞ、まずはオレからだ!」

 

先陣を切るのはアスカだ、連結式三節魔棍【ホウオウ】を魔棍モードで先端を敵に向けるように構えると撃ち出された弾丸のような勢いで敵に向かって飛び出して行く。

 

「覚悟しろ魔甲蟲!二人の出る間も無くこのスーパーヒーロー、アスカ・イーグレット様が一撃で仕留めてy———ってちょっ!?マジかっ!!」

 

敵が怯んでいるのを良い事に調子に乗って直進横転飛行(エルロンロール)をしながら敵に向かって行くアスカだったが調子に乗ったツケが回ったようであり、未だにもがき苦しんでいる【キメラ・デネブ】が向かって来るアスカに気が付き無数の触手を苦し紛れに彼に繰り出して来た。

 

「舐めるなっ!こんな統率が取れていない触手を差し向けて来たところでこのスーパーヒーローの障害にもならないっ!!」

 

一瞬驚いたアスカだったが攻撃が正面からしか来ない以上慌てる必要はない、アスカは直進横転飛行を止めてホウオウの二つの【節】を切り離し三節棍モードにして二重三重の円を描く様に振り回した。

 

「受けてみよ!カイゼル流魔棍術秘技!!」

 

カイゼル流三節魔棍戦技—————円征嵐

 

アスカが振り回す三節魔棍がノコギリカッターとなって迫り来る無数の触手を全てズタズタに切り裂き彼は難なく突破する、そのまま【キメラ・デネブ】の頭上に舞い上がり、三節魔棍の片端を両手持ちにして振り上げ、頭上で三節魔棍の反対側の端が撓ると同時に勢いよく急降下した。

 

「これで終わりだ悪党ぉぉぉおおおおおおおおっ!!!」

 

カイゼル流三節魔棍戦技—————旋鋼撃

 

急降下をしながら風車のように高速縦回転をしてその遠心力の威力で撓る三節魔棍の外側の片端を敵に叩き付ける戦技・・・それが《旋鋼撃(せんごうげき)》だ、カイゼル流魔棍術の戦技の中でも最大級の破壊力を誇るこの一撃が直撃すればいかに変異種とて一溜りもないだろう・・・しかし———

 

「ぐっ!!?また障壁かよ、ちくしょおおおおおおおおおおおおぉぉぉっ!!!」

 

アスカの渾身の一撃は【キメラ・デネブ】が再展開した呪力障壁によって弾き返され無念にもアスカは綺麗な放物線を描いて吹き飛ばされて行く、旋鋼撃は強力な一撃だが変異種クラスの魔甲蟲が展開する呪力障壁を破るにはやはり【限定戦技】でなければならない。

 

「最低限の仕事はしたみてぇだな、おかげで難なく接近できたぜ!」

 

吹き飛ばされるアスカと入れ替わるように今度はアッシュが手に纏う魔籠手【烈風拳】の右に最大まで練成された【縮退魔力】を収束して山吹色の光を発し、弾丸のように一直線に【キメラ・デネブ】の手前に展開されている呪力障壁に向かって飛び、その膨大な縮退魔力が込められた右拳を大きく振り被る。

 

「この障壁は俺がブッ壊す!うおぉぉぉぉぉおおおおおおおおっ!!!」

 

アッシュ・クレイモアという空士は近接系でありながら戦闘中に練成するのが難しい【縮退魔力】を自在に練成できる、彼の凄まじい集中力の高さがそれを可能にしているのだろう。彼が今から放つ戦技は超単純にして超難易度の高い一撃だ、ただ一瞬にして最大まで練成した縮退魔力を魔籠手を纏った拳に込めて敵に叩き付ければいい、シンプル・イズ・ベスト故に強い、それは極限まで高められた何者をも爆砕する太陽の光を放つ必殺の拳、これこそアッシュ・クレイモアの最強の限定戦技!その名も————

 

魔拳戦技—————山吹色の爆拳(サンライトイエロー・エクスプロージョン)

 

太陽の光を放つ拳が呪力障壁に突き刺さり極大の爆炎の柱が障壁を突き破った、想像を絶する威力だ、爆炎の柱がそのまま【キメラ・デネブ】の巨体を飲み込み焼き尽くす、やがて炎の柱は消え中から出て来た【キメラ・デネブ】は黒焦げになっていて文字通り蟲の息であった・・・後はもう止めを刺すだけだ。

 

「後は任せたぜ・・・ルーク・スカイウィンド」

 

「おうっ!!」

 

今の一撃で魔力が尽きたアッシュがガラスが割れるような音を立てて崩壊していく障壁と共に重力に引っ張られて落下して行くと同時にフィニッシャーを務めるルークが蟲の息で辛うじて浮遊している【キメラ・デネブ】の懐目掛けて弾丸のように突っ込んで行く。

 

「クロエやロイド、ミレーユにオリバー先輩、E108小隊の奴等、カナタ・・・そしてアッシュとアスカが造ってくれたこの勝利への翼の道(ウィングロード)を———」

 

ルークの眼にはもう見えていた、皆のチカラで切り拓かれた勝利への翼の道が———

 

「翔け抜ける!!」

 

その道を・・・ルークは翔ける、皆から託された想いを背負って!

 

「舐めてんじゃねぇぞ・・・・この蟲野郎がぁぁぁぁあああああああああああっ!!!」

 

魔蹴術戦技————疾風怒濤(ストームラッシュ)

 

【キメラ・デネブ】の懐に飛び込んだルークは魔装靴【ストームブリンガー】を履いた両脚に乱回転する暴風を纏わせ怒濤のラッシュをその巨体に叩き込んでいく。

 

「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

ルークは凄まじい蹴りの応酬で【キメラ・デネブ】の巨体を上へと追いやり、ミストガンを覆うドーム状の防護壁の天蓋の前まで押し上げて、そのまま右脚を後方に大きく振り上げて右足の裏に空気の球を生成、そしてその右脚を・・・・・敵の零距離で振り抜いた。

 

「耳の孔かっぽじってよぉぉく聞きやがれ!この触手野郎っ!!————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———俺達が、ミストガンの空戦魔導士だぁぁぁぁああああああああああああっ!!!!」

 

魔蹴術戦技—————零距離竜巻杭打(パイルトルネード・ゼロ)

 

 

 

 

この空域に、この都市に、この世界を護る為に戦っている全ての空戦魔導士達の想いを代弁してルークが叫ぶと同時に零距離で放たれた巨大竜巻が【キメラ・デネブ】の巨体に風穴を空けて、竜巻はそのままその後ろの防護壁の天蓋をも突き抜けて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

ルーク「原作が終わっちまったけど、俺達の戦いはこれからだぜ!」

カナタ「そうだな、ようやくランキング戦で一勝をあげて、勢いのまま中型変異種も倒したしな」

ロイド「でも勢いに乗っている時が一番危ないといいますよ?あまり気乗りはしませんが未熟者である僕らはこれに驕らず更に精進するべきでしょうね」

クロエ「そうなるとギドルトの考える訓練だけじゃ物足りないかもしれないね・・・そうだ!ギドルトのとは別にわたしが特別な訓練メニューを考えてあげようか?自分の限界越えに挑み続けるって感じの量にやり甲斐のあるやつを」

ルーク「おっ?特訓ってやつだな?おもしれぇ、いいじゃねぇかそれ!」

クロエ「でしょ?」

カナタ「あー、たぶんそれお前らしか完遂できねー特訓だなきっと・・・」

ロイド「僕は遠慮しときます」

次回、空戦魔導士候補生の情熱『いざ、朱き母艦が待ち受けし空へ!』

ルーク「翔け抜けろ!最強への翼の道(ウィングロード)!!」




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