……ちゃうねん、少しはっちゃけてみたくなっただけやねん。
強いて言うならクラスメイトのドマゾン君(仮)が悪いねん。
「……ここは……?」
真っ白な空間の中、一人の男が立ち上がる。
「白い空間、先程までの記憶……成程、俺は死んだのか」
この状況を極めて冷静に把握し、続いてその口から出てきた言葉は――
「……何故あの痛みを感じることが出来なかった……嗚呼、神よ……」
――ここらで彼の紹介をしておこう。
彼の名前は板峰忍。
俗に言う、ドMである。
マゾヒズム、マゾ、M、ドM…
様々な呼び名があるこの性的嗜好、理解するものは少ないだろう。
この者は現代日本において、つい先程21年の生涯を終えるまで自らがドMであることを一切恥じず、逆に友人をその道に引きずり込む程の偉業()を成し遂げた、ある意味物凄く芯が強い人間と言える。
――そんな人間を……
「なーんで引っ張っちゃったのかなぁ……」
「む?」
忍の後ろには、これまたテンプレのような神っぽい幼女の姿。
純白の衣を身に纏い、背中にはご丁寧に翼まで生やしている。
神と言うより天使に近い。
「あー、尺の都合で手早くいくよ。君死んだ。OK?」
「OK。ただあの時の痛みを再現できないものか」
「あーもう、じゃあ一回だけね。ほら」
「ヅッッッ……!!!ア゛ア゛ッッッ!!!!……ふぅ……」
「おうちょっと待とうか」
「……有難う。君のお蔭で俺はまた新たな痛みを知ることができた」
常人ならばショック死するほどの痛みを与えられてこの男、泣き叫ぶどころか達してしまった。
嗚呼恐ろしい。
何が恐ろしいってこんな内容書いてる私が恐ろしい。
「ま、まぁいいや……次、特典あげるからISの世界へ行ってきてください。OK?」
「IS……ああ、大丈夫だ。読んだことはある」
「そんで与える特典は完全ランダムで一つだけ。向こうに着いたら確認するように。OK?」
「オーケイオーケイ。丁度バリエーションが尽きていた所だったんで助かった。重ねて礼を言う」
「……何のバリエーションかは聞かないでおくよ」
それが賢明である。
「そういえば君、言っちゃうけどMだよね?私に蹴って欲しいとかそういうのは無いの?」
「勿論今も思い切り踏んでもらいたいとは思っている。だが、俺はそんなモノは望んでいないのだよ」
「……?」
「君が踏みたいと思った時、君が蹴りたいと思った時、君が殴りたいと思った時……そんな時に、俺を呼んでほしい」
「うわぁホンモノだぁ」
◆ ◆ ◆
「じゃあ、二度目の人生を楽しんでおいで」
「ああ、行ってくる」
白い光に包まれ、忍が目を覚ました時――
「……ここが、俺の新しい世界か」
彼は未だ気付いていなかった。
「ほう、頭に勝手に情報が入ってくる……良い攻め方だ」
既に自分には特典が与えられているという事に。
「先ずはこの学園に入れば良いのだな?」
そしてその特典が彼を更なる道へと導くことなど――
「IS学園、貴様は俺をどこまで痛めつけてくれるのか……楽しみだ」
『無痛』の身体を携えた男はその瞳に何を映すのか。
IS-その男、ドМにつきー
近日公開。
反響があったら続く……かもしれません。