オーバーロード ―さまよう死霊―   作:スペシャルティアイス

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第十四話

そこは草原だった。

晴れ渡る青空に雲が流れ、微かな風が涼やかな場所。そこに石造りの墳墓が鎮座していた。

その光景に、トライあんぐるは改めて現状を思い知った。

 

「グレンベラ沼地、じゃないよな。……異世界か」

 

その強豪ギルドの本拠地を目にし、どこか安心感が湧く。自分の見知った場所、その存在がここにあるという実感がためだ。

 

「トライあんぐる様?」

「ああ、すんません。なんか自分でも不思議で。あのアインズ・ウール・ゴウンから招かれるとは思ってもみなくて、今更ですが呆けてしまって」

「まあ」

 

クスリと笑う案内のソリュシャンはとても美しかったが、既にアンデッドと化した身では、そう心が動くことはない。

 

「(でも吸血鬼の花嫁相手にはテンション上がったのに、最近はそういうのもないな)」

 

そうして墳墓の入り口に差し掛かった時、美しいメイドたちと見覚えがある少女が出迎えてくれた。

一律の礼をとられ、その対象が自分であることに最初気付かず、辺りを見回してしまう。

それを気にした風もなく、どこかゴシックロリータを思わせる衣装の少女が進み出る。

 

「ようこそおいでくだしんした。私の名はシャルティア・ブラッドフォールン。栄えあるナザリック地下大墳墓の守護者にして、此度の案内を努めさせていただきんす」

「あ、はい。ええと……トライあんぐると申します。その節はお世話になりました」

 

トライあんぐるが申し訳なさそうなのは、誤解で逃げ出したことに対する後ろめたさからだ。

戸惑いながらも頭を下げるその姿に、シャルティアは随分と腰が低い死霊だと思った。

最初の邂逅は今でも思い出せる。奇襲から真っ先に最警戒対象を射抜き、戦闘中にも関わらず敵を苦しめ悶死させる手腕には興味が惹かれる。

しかし今は任務中。主人やアルベドからは地底湖までの案内の中で、その実力と人となりを探るようにと言われていた。

自分にそんな小器用なことができるだろうかと思ったが、万が一戦闘になった場合、背後のプレアデスらと協力して、目の前の死霊を無力化するようにということだった。

 

「……シャルティア様」

「はえっ?……っと」

 

プレアデスの長女たるユリの呼びかけにシャルティアはハッとする。

どうやらプレアデスの紹介が終わっていたようだ。お客の前でこの態度はいけないと気持ちを入れ替える。

 

「失礼いたしんした。以上の者で、第四階層である地底湖までお連れいたしんすえ」

「はい、よろしくお願いします」

 

そうしてようやく集団は進み始める。墳墓の表層、その中央に位置する霊廟から地下への入口がある。

そこに入った所、トライあんぐるは深呼吸するかような身動きをとった。

 

「何か気になるものでもありんしたか?」

「何と言うか、落ち着く空間だなと思って。やっぱ自身は不死者だったのだなあ、と」

「ふふっ、ご冗談を。その姿と気風は紛うことなき死霊ではありんせんか」

 

まるで死霊ではなかったとかのように語る客人に笑いが溢れた。そこでシャルティアは思いつく。

 

「そう言えば、トライあんぐる様は私と初めてお会いした時のことを覚えていんしたか?」

「……えーと、その前に。なんで俺のことみんな「様」づけなんですかね?」

「主人であるアインズ様が招いたお客様に、敬称をつけるのは当たり前のことでありんすえ」

「マジっすか……。それで、アインズ様ってどんな方なんです?」

 

話題を逸らし、トライあんぐるとしては、まず知りたいことをあげる。おそらくはアインズ・ウール・ゴウンの縁者と思われるが、その人物は一体誰なのか。

 

「(アインズ・ウール・ゴウン。メンバー全員が異形種のギルドであり、数々の世界級ボスや期間限定レイドボスを撃滅した強豪ギルド。

メンバー誰もが何らかのスペシャリストで、特にその中心的な存在が)」

 

「アインズ様は、この世すべての美を集めてなお、その上をいく白面の美貌の御方。そして私がこの世で最も愛する君であり、いずれは私と結ばれる運命にある御人!!」

「うん?」

「そして我らを導く慈悲深き王にして、いずれはこの世に覇を唱えんとする至高の御方でありんす!」

「お、おう」

 

あまりに顔を輝かせながらそう言う少女に、トライあんぐるは若干気後れする。

周りを見れば、大なり小なりその発言に同意しているようだ。

夜会巻きのメイドとピンクブロンドの子は真顔ながら穏やかな雰囲気を、褐色のメイドはひまわりのような笑顔で。黒髪のポニーテールのメイドは、何故か顔を伏せて肩を震わす。

自分と最も身近にいた巻髪のメイドも微笑を浮かべ、まったくわからないのは最も小柄なメイド。

 

「(てかこの子から、めちゃめちゃな数の生き物の反応あるんだけど……)」

 

考えないようにしよう、そう思う。

 

「(しかし……」

 

それだけの、皆の羨望を集める人物が羨ましく、そして少し妬ましい。

 

「(しかし、NPCって実体化するとこんな風になるんだ)」

 

NPCを持たぬトライあんぐるにとって、飽和せんばかりの忠誠心は青天の霹靂といえた。

 

「ちょーお美しい人ってのはわかったんですけど、種族とかなんなんですかね?竜人とか悪魔ですか?」

「……その種族に当てはまる至高の御方もかつてはおりんしたが、今ナザリックにいらっしゃるのはアインズ様ただ一人。そしてアインズ様は、至高のオーバーロードでありんす」

 

その単語で、トライあんぐるの頭のなかで実像が結ばさる。

 

「(――オーバーロード。確定、そう確定だ。あのギルドでオーバーロードといえばあの人だ)」

 

プレイヤー名 モモンガ。アインズ・ウール・ゴウンのギルド長。

ある意味、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーで最もPvPをやりにくい人物。

自分の最も実力を発揮でき、かつ敵がその逆の状態に舞台を落としこむのが巧いといわれていたはずだ。

最終的な勝利のためなら、局地戦の敗北をも布石にできるという強かさをもつプレイヤー。

そのスキル数は多岐にわたり、ガチビルドとはまた違ったスキル構成にもかかわらず、高いPvP勝率を誇る。

自分のように、人質染みたPKを行わない正統派の人。

 

「(……予想通りな感じだが、なぜ一人?他のメンバーは一体?)」

 

わからないことが多いが、それはこれから本人に会えばすべてはっきりする。もしかしたら、自分がこの体になった原因も教えてくれるかもしれない。

 

「そういえば、シャルティアさん。あなたを始めみなさんもNPCなんですかね?」

「その解釈で間違ってありんせん。ここにいる者は皆、至高の四十一人に創造されたのでありんすから」

 

その言は誇らしげな響きが隠せていなかった。

付き従うメイドの中には、その気持を抑えきれない者もいる。

特に黒髪のポニーテールの娘っ子、口元がにやけそうなのを必死に堪えてるのがまるわかりである。

 

「(あー、さっき顔伏せてたのはにやけた顔を隠すためか)」

 

ここまでの会話で、それぞれに個性が出てるのがよくわかった。職種に関してはソリュシャンしかわからないが、かのギルドなら全てのNPCが異業種ということも有り得る話だ。

そんなことを考えるに重苦しい、自分にとっては安心する空気が入れ変わる。

 

「これは……すごいな!」

 

薄暗い地下墓地を抜けた先は広大な空間だった。鍾乳石とは違った角ばった岩場が広がり、その中心には淡い光を湛えた神秘的な地底湖が広がっていた。

プレイヤー1500人のナザリック侵攻の折、その第八階層までの内部データが映像としてユグドラシルに散逸した。

そのあまりに精緻なデザインと注ぎ込んだデータクリスタルの総量に、運営にチート調査の苦情が殺到した事があった。

その時の物を目にしたことがあったために、漠然とすごいだろうという想像はしていたが。

 

「まさか、これほどとは……」

「ふふん。これで驚いてたら、身が保たないでありんすよ?さあ、我が主人がお待ちしていんす」

 

シャルティアの視線の先、湖畔のほとりに多くの生気を感じた。おそらくそこが会場なのだろう。

 

「(モモンガさんってもしかして上流階級、アーコロジーに住んでる身分なのかね?)」

 

あまりにそのセレブリティな想像に、トライあんぐるは自分の姿がみすぼらしくないか見回した。

そこには何の変わりもない、闇靄の身体しかなかったが。

 

 

 

湖畔の一角、ひらけた広い砂浜のような場所が会場のようだった。

どうやらビュッフェ形式なようで、カフェのように椅子と白いクロスがひかれたテーブルが無数にあった。。

 

「俺、本当にお呼ばれしていいのかな……」

「アインズ様が招待なさったのだから、何の問題もないのでは?」

「あ゛ー……緊張してきた」

 

シャルティアに先導されるままに集団に近づく。するとその場に居た存在が一斉にトライあんぐるを見た。

大多数は興味深そうに。またあるものは羨むかのように視線を投げかける。

トライあんぐるは自分がここまで注目を浴びるとは思っていなかったので、どうにも落ち着かなくて霊体化したくなった。

しかしこの状況でそんなことをするのは失礼というレベルではない。なので堪える。そして堪えるうちに、

 

「(すっきり爽やか~)」

 

精神安定化で冷静になれた。そうしてみると周りを伺う余裕ができた。

モンスターだらけであり、ユグドラシルでも高位のモンスターがかなり見られる。

 

「ドラゴン、悪魔、スケルトン、蟲王、ペンギン……ペンギン?」

 

なにか執事のような集団に抱きかかえられているペンギンが目についた。強豪モンスターのなかでのその場違い感に、どこか肩の力が抜ける。

そうしているうちに、この場の主催者の面前までたどり着いた。段上の人物の脇に控えるように、六人の存在が見て取れる。

 

「(ダークエルフ二人、蟲王、ドッペルゲンガー、ヤクザ!じゃなくて悪魔か。それと黒髪の女は堕天使あたりかな)」

「アインズ様。シャルティア・ブラッドフォールン、御客人トライあんぐる様をお連れしました」

「ご苦労、シャルティア」

「お、おぉお!?」

 

思わず呻く。

精巧な細工、ルーンが散りばめられた黒いローブに包まれた身体は骨だけ。まさしく死を超えた者だ。

身体から沸き上がる陽炎のように立ち上る魔力は、似たようなエフェクトをユグドラシル時代にトライあんぐるは見たことがあった。

そしてその手にする黄金の杖。あれはまさしく、

 

「(姿はおそらくスケルトンメイジの上位種、オーバーロードと変わりない。データクリスタルで外装をいじってるわけでもないし。

だが装備が半端もんじゃあねえ。全部が神器級ッ!それにあの杖、狂ってやがる。マジキチだ!廃人ってレベルじゃねーぞ!?」

 

静まり返る空間。凍りついたナザリックの住人たち。アインズの周りの守護者らは、初めての、あまりに現実離れした無礼な言動、もはや暴言に、無効なはずの《時間停止》にかかってしまったようだった。

あとコンマ1秒経っていれば、憤激と呼ぶのが生易しいほどの虐殺の嵐が、トライあんぐるを襲っただろう。

 

「………ふっふふふ、あっはっはははっ」

 

しかし、自らの主人の晴れやかな笑い声に注目が集まる。光風霽月とでも言おうか、そんな笑い声が僅かな時間、第四階層に響き渡った。

 

「ふふっ、廃人という言葉は褒め言葉としてもらっておこうか」

「イッ!?しし失礼しましたっ」

 

どうやら、ぶっ壊れ装備の衝撃に思ってることを口に出してしまったようだ。しかし、かえってその明け透けな本音が、アインズの琴線に触れたようだった。

機嫌のよくなった主人の姿に、守護者並びにナザリックの者らはなんとも言えない気持ちで怒りを収める。

 

「自己紹介が遅れた。私の名はアインズ・ウール・ゴウン。このナザリック地下大墳墓の主人をつとめている」

「……これはご丁寧に。私はトライあんぐると申します。所属はありませんが、かつてはギルドに、そしていくつかの集団に所属しておりました。

先ほどの御無礼、平に詫びるとともに、それを収める大器、誠に感服仕りました」

 

そう言って深々と頭を下げる死霊の頭上には、烙印が浮かんでいた。その返礼に、この場の空気もようやく落ち着きを見せた。

それも仕方ないことだ。なにせ至高の御方に出会い頭に暴言を吐くような粗忽者。主人の歓心がなければ、即座に未来永劫の八つ裂きの刑にしていただろう。

 

『もしもし、もしもし。聞こえますか?』

『はっ?えっ《伝言》?』

『繋がった!?よかったー!全然返答がないんで焦りっぱなしでしたよ』

 

トライあんぐるの頭に声が届く。どこか目の前のオーバーロードに似た声な気がするが、それよりも明らかに若く、青年のような声だ。

 

『私です。目の前にいるアインズですよ』

『お、おお。これはまた、何用でございましょうか?』

『ちょ、ちょっとやめてくださいよ!そのロールプレイは外面だけですからっ』

『は?』

 

今トライあんぐるの目の前で、この場に集った面々に仰々しく歓迎のスピーチを述べている筈の存在が、何故かフランクな調子で《伝言》を飛ばしてきたのだ。

話を聞くにどうやら支配者としての体面のために、無理してこのような態度をとっているらしい。

 

『いやぁ、とてもそうは思えない堂々っぷりッスけどねえ。もしかして俳優とか舞台演出かなんかやってました?』

『うっ、その、違うんですけど……。俳優とか舞台って言うの、やめてもらえますか?』

『お、おう』

 

なにやらまた地雷を踏んでしまったようだ。

しかし、これなら話が早いとトライあんぐるは問いかけた。

 

『……一つ聞かせてください。あなたは、モモンガさんですよね?アインズ・ウール・ゴウンのギルマスの』

『え?私を知ってるんですか?』

 

ここでトライあんぐるの感情が爆発した。憧れの存在の一人に生で会えたのだから、それもむべなるかな。

 

『知らんはずが無いでしょぉ!?あの異形種で構成された、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーにしてそのギルマスを!』

『ええと、その』

『そんな人に今日!招待してもらった俺の気持ちわかります?!これ、遠足を楽しみにして眠れなくなる小学生って気分ですよ!俺、遠足行ったことないですけど!!』

 

アインズのスピーチが途切れ、そして急ぐように締めの言葉となった。

 

『お、落ち着いてくださいよ』

『これが落ちついて………んあぁ~』

『あ、抑制した』

 

司会役らしい悪魔の音頭とともに、食事会が始まった。

そして冷静になったトライあんぐるへ歩み出した者がいた。黒髪に山羊のような双角と黒い羽根をもつ女性だ。

 

「初めまして、トライあんぐる様。私、このナザリック地下大墳墓の統括役を仰せつかるアルベドと申します」

「これはこれは。お妃殿から先に名乗らせてしまうなぞ、男としてあるまじきことを」

『ちょっとトライあんぐるはん!アンタ、なに言うてはるん!?』

 

混乱のあまり、言語が怪しくなるアインズ。

 

『えっ。だってこの人、モモンガさんに一番近くに控えてましたから、てっきり“俺の嫁”ってやつかと』

『おいィ?あんたもしかしてペロロンチーノと同類ですか!?』

 

一瞬の《伝言》で会話を終えたアインズとトライあんぐるだったが、うつむいて震えだすアルベドに両者の視線が集まる。

 

「妃、妃、妃、きさき、きさききさききさきぃぃ」

「うわぁ……」

『どうするんですかこれぇ!?アルベドまた暴走しちゃうじゃないですかっ』

 

女性がしてはいけない顔のアルベドに、トライあんぐるはドン引きする。

 

「ちょっとっ!誰がアインズ様の妃ですってぇ!?」

「あぁ、シャルティアさん」

 

そこへ突進してきたのは紫のポールガウンの少女、シャルティアだった。その柳眉を逆立て、トライあんぐるに食って掛かる。

 

「私の話、ここに来るまで聞いてたでしょ!?アインズ様は私と結ばれるって!」

「はぁ、まあ仰ってましたが」

「ならっ!なんでこの大口ゴリラが妃なんて言えるのよアンタ!!」

「ちょっとシャルティア、お客様に失礼でしょうが!」

 

それを止めたのはダークエルフの少女、アウラだった。

 

「ふ、ふふふ。やはり初対面の者でもわかるほど、私はアインズ様に相応しい女ということよ。おわかりかしら、ヤツメウナギ?」

 

アルベドは慢心と言えるほどのドヤ顔で、シャルティアへ流し目を送る。その挑発にシャルティアの瞳孔が危険な色に染まる。

一触即発、という寸前に二人の間に三つの影が滑り込んだ。

 

「アルベド、シャルティア。ナザリックの栄えある守護者がなんです!客人の前でのその行い、招待したアインズ様の顔に泥を塗るつもりですかっ」

 

アルベドの前にはパンドラズアクターが、シャルティアの前にはコキュートスが。もしもの武力衝突を阻止するために動いたのだ。

幸い、悪魔デミウルゴスの一喝で動きを止めたが。

 

「……とんだ醜態をお見せいたしました」

 

そう言って、理知的な悪魔がトライあんぐるに頭を下げる。

 

「お、お気にならず。私がきっかけのようですから。……ええと、デミウルゴス様、でよろしいですか?」

「私のことはデミウルゴス、と呼び捨てで構いません。客人にそのように呼ばれては、ナザリックが従僕としての品位が問われます」

「(なにこのひと紳士か。……ヤクザって思ってマジごめんなさい)」

 

心中で土下座するトライあんぐるへ、この場に集まった守護者たちの自己紹介が始まった。

内心では、ここまでの濃いやりとりでお腹いっぱいなのだが黙っておく。

 

「第五階層守護者、コキュートス。オ初ニオ目ニカカリマス」

 

ライトブルーの蟲王の自己紹介は、簡潔であったが確かな礼を感じるものだった。

 

「初めまして!第六階層守護者アウラ・ベラ・フィオーラ、と」

「同じく第六階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレと申します。……よろしくお願いします」

 

活発な男の子(・・・)と、物静かな女の子(・・・)。イイネ!

 

「第七階層守護者、デミウルゴスと申します。お見知り置きいただければ幸いです」

 

やめてくれ……あんたの紳士っぷりを見ると、今までの自分がアホすぎて泣きたくなる……。

 

アルベドとシャルティアの紹介は済んでいたのでなかったが、トライあんぐるは先ほどからポーズをとっている人物を見る。

黄色の軍服に身を包み、どこか気障で大袈裟な感じの挙動ながら、愛嬌を感じるのは気のせいだろうか。

 

「Vielen Dank für dieses Treffen zu meinem Gott(この出会い、我が神に感謝します)」

「……パァンドラズ・アァクターぁ」

 

アインズの地の底からのような声に、パンドラズ・アクターが背を正す。

 

「ハッ、失礼いたしました。私の名はパンドラズ・アクター!」

 

胸に手を当て、もう片方の手を空へ掲げ一回転。

 

「偉大なるアインズ・ウール・ゴウン様の忠実なる下僕にして!」

 

そのままオペラ歌手のように両手を広げ、

 

「変幻自在なる舞台役者(アクター)でございます!」

 

大げさな動きで胸に手を当て礼をする。そして静寂。

 

『……悪く無いですね』

『ウソぉ!?』

 

アインズに突っ込まれた。

 

 




ちなみアインズ様の笑いのシーンは抑制がかかるほどの喜ではありません。
流石に四十一人の思い出ほどのインパクトはありませんので。
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