こちらは、両作品の最強キャラとも呼び声高いお二人のお話となります。
小鍛治健夜が、幼い頃に赤木しげると出会っていたらというIFです。(赤木しげる本人は登場しませんが……)
今回は若干台本形式であり、なおかつ一切麻雀を打ってません……
それでもよろしい。という心の広い御方は見てやってください。
(注意)この物語は、咲-Saki- 天_天和通りの快男児の二つを既読されていることを前提にしています。
正直読んでないと、コイツ誰だ?とか場面場面の描写が理解不能になってしまうのでご注意ください
「ねぇ、すこやん。前はああ言ったけどさ、なんでタイトル戦とかにでなくなったの?
いや、地元のクラブに入って盛り上げたりってのが悪いってわけじゃないんだけど、
別に大会とかに出ること自体はもっと出来るんじゃないかなって思ってさ」
インターハイAブロックの準決勝が終わり、実況の仕事も一段落した時間
そんな時、福与恒子……こーこちゃんは私にそんな質問を投げかけてきた。
「えっと、それは……」
そんな質問に私はどう言ったものかと悩む。
黙ってしまった私を見て、こーこちゃんは私が何か言いたくないことがあるのかと思ったのか
慌てたように謝る。
「あっ、ごめん。言いにくいことだったらいいんんだけど……」
きっと本当に、ふと気になっただけなのだろう。
自分の態度でそうなってしまった彼女に若干の申し訳なさを感じながら、私はそれを訂正する。
「ううん、問題ないよ。どう言ったらいいかに困ってただけだし。うん、一言で言うなら
成功ってやつを一度零にしたかったんだ」
今まで積み重ねたものを捨て去りたかった。
そう告げるとこーこちゃんは固まっていた。
「はい?どゆこと?」
あっ、再起動した。
「んー、なんというか……ぴったりな表現が分からないんだけど、
一番近い心境は一度自分を見つめなおしたかったっていうことなのかな?
前に赤木さんの話をしたことはあったよね。あの人が昔言ってたんだ。
『成功、そいつは積み重ねていくうちにいつしか自分を束縛する枷になる。
だから俺は成功(それ)を少し積んだらすぐ崩すようにしてる。』って」
その、ある意味どこまでもあの人らしい言葉と、表情を思い出しながら、私はそう語る。
「え?いやいや、おかしいでしょ。まるで成功しないほうがいい、失敗を奨めるようじゃない。」
こーこちゃんは、一体なにを言ってるのさといわんばかりに呆れた目で私を見つめてくる……
うん、私も言われたときにはボケてしまったのではないかと思ったよ……
「うん。私もそれを聞いたときにはね、同じことを聞いたよ。そしたら、
『嬢ちゃんみたいにまだ成功もなにもないような子に言って分かるようなことでもねぇか……
まぁ……嬢ちゃんは取り敢えずは成功を目指せばいいさ』って言っただけでその話は終わっちゃってさ、私も全く理解できてなかったんだ……けど、前にリオであった世界大会あるじゃない?東風フリーの。あれで二位になった時にね、どうして勝てなかったんだろう、どうすれば次は優勝できるんだろうってそういったことをアレコレと考えたときにふと気が付いたんだ。わたしは、勝ち過ぎていたってことに。……こーこちゃん、私の肩書きで思いつくもの言ってみて?」
そう言うとこーこちゃんは指を折りながら次々に私の積み上げてきたものを挙げていく。
「えっと、インターハイ優勝、最年少でプロ八冠、国内無敗、永世七冠、元世界ランク二位あとはそのリオデジャネイロ東風フリースタイルで銀メダル。他にもあるけどこんなところかな?うん、改めて見るとすこやん凄い成績だね。わざわざそれを言わせて……自慢?」
こーちゃんは私をからかうようにそう聞く。
そんなつもりじゃありません!といつものように思いっきり否定しようとしたけれども、傍から見れば自慢してるようにしか思えないということに気が付き、軽く否定しておくだけにとどめる。
「違うよ。けどまぁ、自分で言うのもなんだけど……
私は今まで勝ち続けて、所謂成功ってのを随分と積み重ねてきたんだと思う。
けどね、いつの間にかそれは成功じゃなくなってたんだ」
「えっと、余りにも簡単すぎて、当たり前のことになったとか?凄い自信だね、すこやん。さっすが~」
「違うよ。ただ……うん、当たり前、普通ってこと……それは少し当たっているかも。
それは私が、っていうよりも見えない何かが私にそれを要求してくるんだ。
当たり前に勝ち、『成功』し続ける人生を……その肩書きに見合うだけの振る舞いを
いつしかね、そんな肩書きのために麻雀をするようになっていた……
高みを目指して、自由に麻雀を打っているつもりでもさ、
気が付かないうちにタイトルの為に、見ている誰かに気を使って打つようになっていた……」
そうなってしまったのはいつからだろう。プロに入ってからを思い返せば、既にそんな肩書きに捕らわれていた気がする。
きっと、インターハイでの優勝……もしかしたら、もっと前からかもしれない……
勝ちを重ねる度に自分でも気が付かないほど徐々に絡め取られていたのだ。
そのことを私は追想しながら話を続ける。
「そこにあるのは……ただスケジュール通りにタイトルを得ていくだけの人生……
ただ、強い人と麻雀を打ちたい。子供の頃に見たあの神域を目指し続ける。
本来ならそこに肩書きは必要ない。ただ、麻雀を自由に打てればよかった。
それをね、理解したときにずっと追い続けている赤木さんの強さも漸く分かったんだ。」
「強さ?成功に拘らないのが強さってこと?」
「そう。積むことに固執しない。余計なもので飾らないありのままでいつ続けること。
それが強さになるんだ。別に大会に出なくなっても今まで積み重なったものがそれで消えるわけじゃないけどね……立ち止まる。成功の続く人生から離れる。そんな選択肢を自分が選べるってことを確認できる事が私には重要だっただろうから……だから、一回そういったタイトルとか肩書きに縛られない時間が欲しかったんんだ」
「成る程、だからタイトルに関わる大会に出てなかったと……」
ようやく得心がいったとばかりにこーこちゃんは何度も頷く。
そんなこーこちゃんを見ながら私は笑みを浮かべる。
第一線を退いて、初めて見えたものがある。
世界ランクで言えば昔は二位で今は973位、肩書きだけを見れば以前より随分と見劣りする……
それでも、きっと以前の私よりも、今の私の方が遥かに強くなっている、そう確信できる。
こーこちゃんとそんな話をしながら私はふと思った。
自分を含めて、全てのことに頓着しなかった赤木しげる……あの人はそんな無色透明な生き方をしたからこそ、あの高みへと至れたのだろう。
私はきっとそこまでなにもかもを捨てれない……
こーこちゃんみたいな友達やら結婚のことを口煩く言ってくる両親
そういった様々なしがらみ……その大切な繋がりはきっと私を縛っているのだろう。
けど、それでいいのだ。
私は、赤木しげるにはなれない。
けれども、あの人のように生きていくことはできる。
赤木しげるという欠片を胸にあの人の可能性を追うことはできる
いつか、あの人に……神域に辿り着くこと……
それが小さい頃に一度だけみたあの人の麻雀を追い求める私の夢なのだから
ぼんやりと一人そんなことを考えていると、こーこちゃんが声をかけてきた。
「すこや~ん、急に黙り込んでどうしたの?」
「えっ?」
「いや、黙ったまま笑顔なんて浮かべちゃってさぁ。なにかうれしいことでも思い出したの?」
「えっ、いやっ……その……」
一人物思いにふけってしまっていたようだ。
言葉がつっかえてしまう。
そんな私を見て、こーこちゃんはニヤリと笑いながら近付いてくる。
まずい、こういったときの彼女はろくでもないことを考えてる……そんな風に警戒してると
「んで、誰のこと考えてたの?」
「え?」
「いや~、幸せそうな顔浮かべてるしさ、好きな人のことでも考えてるのかなぁ~と。で、誰だい?話しちゃいなよ。」
ほら、やっぱりろくでもなかった。
「違うよ。はぁ、大体好きな人なんていまだに出来てないし……」
そう……麻雀にばかりかまけていた所為か、いまだに片想いの人すらいない現状。
それを思うとなんだか悲しくなってくる。
「じゃぁなんだったのさ?」
「内緒。まだまだ道は長いなぁって話」
「え~ケチ。教えてくれたっていいじゃん」
「はいはい。そろそろ決勝始まるよ。準備しなくちゃ」
そう言って立ち上がる。
インターハイを見ていて感じ始めていた。勝負の熱を、それに惹かれる自分を
もう十分に休憩は、停滞はした。
今の私の中に溢れるのは、ヒリヒリするような勝負を望む博徒の血……
私は根っからの麻雀打ちなのだろう。真剣勝負の中にこそ生を感じるのだから
大きく伸びをして、窓から空を見上げると、青く大きな空が広がっていた。
このどこまでも続く、雲ひとつない空で、赤木さんは笑ってる。そんな気がした。
「こーこちゃん、私ね、今はタイトルだとかそんなものはどうでもいいって思うようになったけど、だからこそ、そろそろ第一線に戻ろうと思う。だから、きっと楽しみにしていて。今の私は少しだけあの人に近付けたから、きっと見てて楽しんでもらえると思う。」
そう言うだけ言って、放送室へと向かう。
こーこちゃんに復帰を伝えたのは、彼女に真っ先に知っておいて欲しかったから
私が目指すのは、見るものを惹きつけることのできる麻雀。
それを一番に見せたいのは誰よりもきっと彼女なのだろう。
インターハイのあの時から……
あの時、傷つけているだけの私の麻雀でも、誰かを……魅せることが出来たのだと知るれたのだから
「へっ……えーーーー!!??」
ガタッ、うわっと!?、バタっ……
後ろから賑やかな音が響く。
「ちょ、ちょっとすこやん!!待ってよ!!今のどうゆうことっ!?」
振り向いて、慌てて追いかけてくるこーこちゃんの姿を眺めながら私はそんなことを思っていた。
はい。前回同様ただ脳内の妄想を駄々漏れにしただけの文字数もないようなスッカスカなSSにございます。
すみません……
このような文章に目を通してくださった方々に感謝を
このssが誰かの時間つぶしにでもなってくだされば幸いです。
というか麻雀描写なし、高校生も出ない……
これを咲-Saki-のSSと言っていいのかどうか非常に怪しい気がしてきました。