ネタ帳 作:????
セシリアワンドロ ーセシリア初来日ー
「……ここが日本ですか」
ISというものが登場した世界で、日本の空港に立つ少女が居た。
彼女の名前はセシリア・オルコット、イギリスの名門貴族であり、IS学園に入学する者である。
そもそも、ISとは何か。それは、数年前に登場した、マルチフォームスーツのことであり、作成者は日本人である
彼女は、その一機『ブルー・ティアーズ』を本国イギリスから授かり、実家の名を背負い、ここ日本へと訪れた。
「チェルシー、この後の予定はどうなってるの?」
そばに控えさせている幼い頃からの親友であり、現在最も信頼できる自分の使用人である、チェルシーへ問いかける。
「この後の予定は……日本語講座を少々と、後はIS学園本島へ行くだけですよ」
「日本語講座、ですか……」
ISが登場して以来、IS専攻の者には日本語学習が必要になっているため、この通り、常用的な日本語は話せるようになっているセシリアは、今更の日本語講座に困惑する。
「過去にお世話になった先生がいましたよね」
「ええ。サツキさんですね」
「彼女が、最後の仕上げに、とのことです」
「彼女が……」
セシリアの家庭教師として日本語を教えていた
「それでは、向かいましょう」
「コチラに車が」
空港から出て、事前にレンタルしておいた軽車両に乗り込んだ彼女は、早くサツキに会えないだろうか、と心中ワクワクしているのであった。
◇◆◇◆◇
「やっと来たね!!」
「お久しぶりですね、サツキ」
そこはオフィスビルの一角、その人部屋に二人の女性が向かい合ってハグしていた。
片方は金髪のストレートロングで学生服を身に纏った女性、セシリアであり、もう一方は黒髪のショートでビジネススーツを身にまとった20代後半の女性、サツキだ。
「いやー、本当に久し振りだね。5年ぶりくらい?」
「そうですね、本当に久しぶりです」
若いころ、翻訳者になるために海外留学をしていた。その後色々とあって、セシリアのところに努め、現在に至る。
「それで、最後の仕上げとは……?」
「それはね、……近くにチェルシーはいない?」
「はい……IS学園の方へ荷物を置きに行くとか……」
「よしっ、屋敷にいた時から狙っていたタイミング……やっときた!」
彼女は、チェルシーが近くにいないのを確認すると、小さくガッツポーズをする。その姿を見て、セシリアはなんのことだろうかと首をかしげるも、結局なんのことかはわからずじまいだ。
「最後の仕上げって言うのはね……口調のことなんだ」
「口調……ですか?」
「そう、口調だよ。どうもキミの口調が似合っていなくてね」
「そう、ですか……?」
「そうだよ、試しに、語尾にですわ、やですの、をつけてみて」
「どういうことなんですか……ですの」
「そうそう。でももっと自然な感じで」
「こうですの?」
「そうそう!! そうですの!!」
そう、彼女サツキはチェルシーがいない状況で何がしたかったのかと言うと、セシリアの口調を日本人がイメージする貴族のお嬢様に変えたかったのだ。今まで何回も変えようと思っていたがしかし、屋敷では常に近くにチェルシーの息のかかったメイドが潜み、何もできない。
そのため、最後の機会として、この場所を設けたのだ。
「もっと、もっと練習してみなさい!」
「ですの……ですの……こうですの?」
「そうそう、しっくり来ない?」
「なんというか……クセになりそうですわね」
「お、自分でアレンジを創りだしたか……さすが現役貴族、やりおる」
「現役貴族って、どういうことですの!?」
「はっはっは!!」
ムキーッ、と両手を上げて怒りを表現するセシリアだが、心中ではこの口調を気に入り始めていた。
「よしっ、もうちょっとバリエーションを増やそう」
「……と、いうと?」
「こう、ポーズを決めるんだ。腰に手を当てたり」
「こうですの?」
腰に右手を当てて、左手は流す。それは、モデルのポーズであり、彼女の魅惑的なプロモーションを最大限に引き出すポーズだった。
「お、さすが。ファッション雑誌とかのポーズをもっとやってみてよ」
「こう、ですの?」
その後、様々なポーズのお披露目がされた。
◇◆◇◆◇
「それでは、わたくしはもう行きますわね」
「よし、その様子だとばっちしのようだね」
「ええ、それでは、また今度会いましょう」
「じゃーねー」
セシリアは、サツキと別れ、ビルの前に車とともに立っているチェルシーの元へと向かう。
「終わりましたわ、行きましょう」
「……!? お嬢様、その口調は……?」
「サツキが教えてくれましたわ。これがわたくしに合う口調なのでしょう?」
「……そうですね。今度サツキにはいろいろと付き合ってもらいます」
最後にボソリとつぶやき、車にチェルシーは車の運転席へと着いた。
これからIS学園の学園生活の中で、一体どれだけの生徒がセシリアの口調に疑問を抱くのだろうか。チェルシーの心配は只々それだけであった。