「ほう、三つ編みか。 俺の知らぬ間にそのような形態を手にしていたとは」
砂を巻き上げた後、オルカギルディは私の髪型を見てそう言った。
ゼブラギルディもトライブライド形態に驚いていたからどうやら本当にコーラルギルディは仲間に報告しなかったんだな。
オルカギルディは髪型に関してはその一言だけでゼブラギルディのように驚くことはなかった。
「そういうあんたは、今までのエレメリアンに比べると随分カワイイのね」
私なりに精一杯の皮肉をこめて言う。
オルカギルディは今までのエレメリアンに比べるとよく言えば可愛く、悪く言えばイマイチ迫力がない。 体躯は役二メートルくらいで全体的に丸みを帯びた体に禍々しい大きな大剣はあまりにも不恰好だ。
オルカ……ということはシャチのことを言っているのだろう。
「ふん、見た目で判断しないことだな。 この俺、オルカギルディの実力は十二分にあると自負している」
「だよね、エレメリアンの恐ろしさは身を持って経験したことあるし」
私の言葉を聞きオルカギルディはふむ、と言いながら顎と思われる部分に手を当て何か考え事をしだした。十秒ほどたち、顎から手を離し私をまっすぐ見て話し出す。
「なるほど、クラーケギルディ様と闘った時よりも遥かに戦闘力は増している」
クラーケギルディ様、ということはオルカギルディにとってもクラーケギルディはいわば上司にあたる存在なのだろうか。
でもこの威圧感……クラーケギルディと闘った時のように重く強く、私にのしかかってくる。
『奏さん、オルカギルディの属性力は並みのエレメリアン以上……幹部並みです!!』
フレーヌから通信が入りオルカギルディのことを教えてくれた。 私の思った通り、オルカギルディは見た目に反してものすごい実力を持っているのだろう。
暑さのせいではない、汗がツーッと私の頬を流れて砂浜に落ちた。
「ではテイルホワイト、お前の属性力をいただく!」
そう言うと大剣を大きく振り上げ、オルカギルディは私の元へ一瞬で接近し振り下ろしてきた。
咄嗟にフロストバンカーをシールドにし大剣を受け止めたが、テイルギアで強化されている手が痺れるほどの衝撃が走った。
やはり幹部級、おそらくあの時と同じくフォトンアブソーバーの閾値を超えているのだろう。
「受け止めたか!」
私が受け止めたのを見てオルカギルディは大剣に力を入れてくる。
あまりの力に片手だけじゃ抑えきれず左手も使い大剣を防ぎ続けるも、このままじゃいつか大剣の餌食になってしまう。
腰の装備から蒸気を噴射し押し返そうとするもオルカギルディはびくともしない。
「ぐ、うぅ……!」
「このままでは私の剣に斬られてしまうぞ、テイルホワイトよ!」
オルカギルディはそう言うと更に力強く大剣を押してくる。
心配しているのかそうでないかはともかく、容赦ないな!
「くうっ! オーラピラー!!」
「ぐあっ!」
ゼロ距離から放ったオーラピラーはオルカギルディをバインドこそできなかったものの眩い光を放ち、怯んだ隙にオルカギルディの間合いから逃れることができた。
『オルカギルディのスピードではまたすぐ間合いに入られてしまいます! エレメリンクを切ってツインテールに戻して闘ってください!』
「そのつもり!」
エレメリンクを切り通常のツインテールに戻るとすぐにフォースリボンを叩き、アバランチクローを両腕に装備した。
「ツインテールに戻り装備を減らすことで機動性を上げようというのか、いい判断だ。 だが、それは俺が相手ではなかった場合だ。 俺を相手にしている今、無駄なことでしかない!」
再びオルカギルディはゼロ距離まで一瞬で近づき大剣で今度は上からではなく横から斬りつけてくる。
「ぐぅ…!」
すんでのところで今度はアバランチクローの手甲部分で大剣を受け止める。しかし、その一撃だけでは終わらなかった。
「どうだ? ついてこれるか!!」
「つあっ!!」
一度に十数本いや、数十本の剣で斬られる感覚。
オルカギルディのあまりの早さに翻弄され、私は呼吸をする暇もなく大剣をアバランチクローで受け止めていく。
(やばい、限界が近い…!)
オルカギルディの斬撃をいくつにも受け止めているうちに私の疲れは溜まっていく。
休もうとするために距離を取る暇もない。
たまらず再びオーラピラーを撃とうとするもオルカギルディにはよまれていた。
「同じ手は通用せんわ!!」
「うあぁっ!!」
今度は大振りで大剣を真横に一閃し、砂浜のせいで踏ん張りきれなかった私は数十メートル吹っ飛び砂浜の外の地面に叩きつけられた。
自身にダメージを負ってしまったけど、一応距離はとれた。
『まさか奏、距離をとるためにわざと攻撃を!?』
「ええ、少しだけでも休みたくてね……」
もう一度オーラピラーを撃つのをよまれているとはわかってたし、同じ手が通用する相手じゃないのはあの斬撃を受けていればわかる。 致命傷にならなくてよかったけど。
『奏さん!撤……』
「でもね、目は慣れてきた」
『え……』
オルカギルディの斬撃を受けているうちにだんだんと相手の攻撃パターンと太刀筋が見えてきた。 相手の速さにもだいぶ慣れてきた。
「今までは表の攻撃、私は守備をするだけだったけど……」
「ふん、余裕がなくなってきているのか? 」
オルカギルディはこっちに向かい歩きながら話しかけてくる。が、私は構わず続ける。
「裏は私が攻撃する番! この世界は、私のホームだから!!」
アバランチクローを再び構えるとオルカギルディは歩みを止め、持っている大剣を地面に突き刺した。
「流石だテイルホワイト、お前のその気合いに敬意を表して俺らが実行していた''ある作戦''を話してやろうか」
「作戦?」
オルカギルディは地面に突き刺した剣の柄の先を両掌ので抑えながら''ある作戦''について話し始めた。
「俺の所属する部隊がこの世界に来てからお前は毎日のように隊員と闘い勝利を収めてきた」
「弱っちいのばっかだったけどね」
「ふ……そうだな。 隊員に勝ち、テイルホワイトに憧れた女子達は次々とツインテールにしていったはずだ、お前に近づくために」
「……」
オルカギルディは柄から手を離し空を仰ぎながら説明するが私の反応がないのが気になったのかまたこちらを向き話し始めた。
「まだわからんのか? お前の、テイルホワイトのおかげで俺らアルティメギルの念願たるツインテール属性が期せずして世界を覆い支配したのだ! 狩場としてこれほど理想的な世界は他にはないだろう?」
ここまで聞いてようやく私にも理解することができた。
「まさか、私はアルティメギルの手助けを…」
「その通りだ! ふふふ、ふっははははははははは!!」
アルティメギルらしからぬ高度な作戦に私は固まってしまった。
ツインテールのせいで起こるくだらない闘いを止めるために今まで闘ってきていたのに、それは全くの逆効果だったんだ。
私は、ツインテールのせいで起こるくだらない闘いを余計増やしてしまっただけだった。
それだけじゃない、ツインテールを大好きだと思う女の子の気持ちまでも私が奪ってしまっていた。
南国の島に響くオルカギルディの高笑いは普段のエレメリアンの倍以上大きく、重く聞こえた。
◇
普段よりも激しい闘いが行われている戦場から遠く離れたフレーヌの秘密基地でもオルカギルディの作戦の内容は機械越しでハッキリと聞こえていた。
『ふーっはははは!!』
オルカギルディの高笑いもテイルギアを通してハッキリと聞こえている。
基地内はその声以外音もなく静かな状態、沈黙が続いていた。
しばらくしてから口を開いたのはフレーヌだ。
「私の世界で戦士が突然現れなくなったのはこの事実を聞かされ今の私と同じ気持ちになったから、なのかもしれません……」
「フレーヌ……」
志乃が弱々しく話すフレーヌを心配し声かけるとフレーヌの目からは大粒の涙が流れ始める。
「私は……世界を救うどころか、この世界を滅ぼしてしまう……」
フレーヌはなおも泣き続け、両手で顔を覆う。泣いているのを隠そうとしているのだろうか。
志乃がフレーヌを見た後に画面を見るとテイルホワイトもうつむき、ただ黙っているだけだ。
画面の向こうからオルカギルディの声が聞こえてくる。
『ふ、テイルホワイトも今まで威勢良く闘っていたツインテールの戦士がこの作戦に気づいた時の顔をしてくれるのか? 絶望に満ちた顔をな!!』
志乃はエレメリンク以外何もできず、ただ歯をくいしばり、拳を強く握りしめ、悔しがることしかできなかった。
その時、基地の中が絶望と悲しみにあふれている中画面の向こうから一筋の光が差し込むような一言が聞こえてきた。
『それがどうしたっての』
「え……?」
テイルホワイトから発せられた言葉に驚き、涙を流したまま顔を上げ画面を見た。
志乃も先ほどまでの表情とは違いキョトンとした顔で画面を見ている。
画面の向こうではオルカギルディも志乃と変わらない表情でテイルホワイトを見ている。
テイルホワイトの表情は絶望しているのとは逆に、希望に満ち溢れているように思えた。
皆さんどうも、阿部いりまさです。
今回はなんと前後編に分けて書いています。
ここが一つ物語のターニングポイントだと思い、一話じゃ物足りないと思いまして前後編にすることにしました。
オルカギルディら幹部が考えていた作戦も判明しましたね。もちろん原作にあった作戦ですが。
感想や質問、どんどんお寄せください!
それでは。