テイルホワイトを闘いの女神として称えられるよう仕組んだアルティメギルの作戦。
シャークギルディ部隊だけでなく、現在たくさんの部隊で効率化を求めてこの作戦を使う部隊が増えている。
しかしその一方で、アルティメギルの若い隊員の育成を放置することになってしまいがちであり、作戦失敗するとその部隊だけでは属性力奪取が困難になるなど問題視されている。
「それがどうしたっての」
私の言葉を聞き、目の前にいるオルカギルディは高笑いをやめ、驚愕した。
私は今、自分が今までしてきたことが逆にアルティメギルの作戦の内であり、いわば手助けしていたことをオルカギルディから教えられた。
そこそこツインテールの女の子が増えてきていると思ったこともあるしテレビでもテイルホワイトは大きな話題となっていた、でもそれはアルティメギルの作戦。 人間のする養殖のようなものだった。
私は━━━━━━
「絶望を感じぬのか!? お前はまんまと俺らの作戦に引っかかり世界を滅ぼそうとしているのだぞ!?」
━━━私は、絶望なんてしたりしない。
「簡単なことじゃない!」
「何!?」
「あんた達の作戦のせいで育った属性力を私が守ればいい。属性力を狙って次々と現れるエレメリアンをこの私が倒していけばいいだけ。これであんた達の作戦は失敗に終わるってわけ!」
オルカギルディは呆気にとられたように一歩、二歩と後退った。
そうだ。私が育ててしまったツインテール属性を私自身が守ればいい。 これでアルティメギルの作戦は何の意味もなかったことになるのだ。
今までもこれからも私が闘う目的はツインテールによるくだらない闘いを止めることだけだと思ってた。でも今日からは目的がもう一つ追加された、自分がアルティメギルの作戦によって育ててしまったツインテール属性を一つも奪わせない為に闘う!
「私はね、今まであんた達が闘ってきたような戦士と決定的に違うところがあるの」
そう、ここまでの決心をしても私はまだまだ━━━━
「━━━━ツインテールが大っ嫌いなこと!」
「なんということだ……」
答えを教えるとオルカギルディは頭を抱え、信じられないといった表情をしながら声を絞り出している。
当たり前だ、今まで闘っていた戦士はみんなきっとツインテールが大好きだったんだ。 ツインテールを守るために闘い、アルティメギルの作戦に利用されていたことを知り絶望し、敗北した戦士も多いだろう。だけど、ツインテールが嫌いな戦士は作戦を聞いて、絶望はしない。 むしろ守らなければいけないと思うと燃えてくるものだ。
「だから安心してフレーヌ、私は負けないよ……!」
『奏さん……』
涙ぐんだ声が聞こえてくる。
オルカギルディから作戦を聞かされて一番辛い思いをしたのはフレーヌのはずだ。 自分がテイルギアを渡したせいでこの世界も侵略されてしまう、きっとそう思っただろう。
(大丈夫、私がそんなことさせないから)
再びアバランチクローを構え攻撃の体制をとる。
「テイルホワイトよ、お前は眩しすぎる。 ツインテールを嫌いと言ったお前の属性力はより一層光り輝いているぞ」
地面に突き刺さった大剣を引き抜き肩に担ぐオルカギルディ。
その出で立ちは、遠慮なく闘え、決着をつけよう、と言っているようにも思える。
私はそんなことはずいぶん前に覚悟している。
エレメリアンだって生きている、生き物だ。
今までもこれからも命を断つこと受け止めていくつもりだ。
お互いの足が同時に地面を爆裂させ、周りの地面が砕けて舞う。
「たああああああああ!!」
「うおおおおおおおお!!」
互いを目掛け全力で疾走しクローと大剣が火花を散らしぶつかりあった。しかし、それだけではない。
休み無く稲妻のように繰り出される大剣の斬撃をアバランチクローで全て弾き、隙をついて目の前の強大な敵に渾身の一撃を放った。
「ぐうっ!」
一撃を受け止めようとした大剣を掠め、オルカギルディの腹部分にヒットし、その反動でオルカギルディは地面を抉りながら後退していく。
「バカな!? 俺の攻撃を弾き、反撃までするとは!!」
「私も驚いてる……攻撃できるなんて! あんたが遅くなったんじゃないの?」
皮肉をこめて言い、再びオルカギルディ目掛けて疾走し両腕のアバランチクローで攻撃を再開する。
オルカギルディもたじろぐことなく大剣を振るい攻撃をガードするとともに攻撃も仕掛けてきた。
「これが、お前の力か!!」
テイルギアは心の力を原動力にすると聞いた。
自分のためだけじゃなく、フレーヌにこれ以上責任を感じて欲しくないと決心した私は、私の属性力は、自分の冷気を熱気に変えるほど燃え上がっている!
「やはり部下に任せなくて正解だった!! この俺が限界の力を出して闘っている!!」
オルカギルディの攻撃は飛躍的に速度を増し、規格外の大剣から放たれる攻撃はずっしりと佇む大木をいとも簡単に吹き飛ばしていく。
こちらもまた、オルカギルディに合わせて速度を増し、両腕のアバランチクローで攻撃と防御を繰り返す。
高速の攻防のあまり、私たちを中心としてあたりには激しい風が巻き起こり、地面はどんどん抉れていく。
「たありゃ━━!!」
渾身の一撃。 クローで抑えつけながらオルカギルディを吹き飛ばし、砂浜よりさらに離れた島の中心近くの崖へと叩きつけた。
「なんということだ、俺のさらに早くなった攻撃にすぐ対応している!」
「人を想う力は、無限大だからね!」
再びクローと大剣の攻防が始まり、崖や周りの岩は次々と砕け散り水しぶきのように舞う。
終わりが見えない闘いは続く。
◇
アルティメギル秘密基地の大ホールではオルカギルディの死闘は中継されておらずかわりにある重大な会議が行われていた。
大ホールの中央にあるテーブルにはシャークギルディの席、オルカギルディの席のみが空席となっており、会議の進行役はもちろんサンフィシュギルディが行っていた。
数ヶ月でずいぶんと空席が多くなった大ホール内を見渡し、サンフィシュギルディは話し始める。
「ツインテイルズの世界へ、ダークグラスパー様に続き、アルティメギル四頂軍の美の四心(ビー・ティフル・ハート)が向かっていたことが判明しました」
次第にざわつく大ホール。
「クラーケギルディ様とリヴァイアギルディ様が敗れた後に派遣されたようでございます。 ダークグラスパー様と美の四心を派遣せねばならぬほど自体は深刻なのでしょう…」
事態は深刻だ、と言われても大ホール内にいる何人かの隊員は幾分か余裕があるように思える。 自分らには関係のないことだ、と。
そんな彼らもサンフィシュギルディの次の一言によって固まってしまった。
「次に、我が隊へ新しい隊員が派遣されることが決定しました。 その隊員の名は、オルトロスギルディ様です」
先ほどよりもずっと大きい声で大ホール内はざわつく。
やがて一人の隊員が立ち上がり中央にいるサンフィシュギルディに質問した。
「オルトロスギルディ様というと神の一剣(ゴー・ディア・ソード)のオルトロスギルディ様ですか!? どうして我が部隊に!?」
「わかりません……」
アルティメギル四頂軍は、美の四心(ビー・ティフル・ハート)、貴の三葉(ノー・ブル・クラブ)、死の二菱(ダー・イノ・ランヴァス)、そして出撃すれば世界が破滅すると呼ばれる神の一剣(ゴー・ディア・ソード)の四つで結成されており、オルトロスギルディは神の一剣に所属していたはずだった。
それからも、オルトロスギルディのことで大ホールは騒がしく、中には弱音を吐くものまで現れ始めた。
◇
ツインテールの形に地面が抉れ、土砂や岩が噴き上がる。
斬撃のせいであたりの岩や、木などは吹っ飛び残っているのはただの地面のみ、その地面でさえボロボロに削られていた。
「はあ、はあ、はあ……」
体力の限界を感じ、膝をつく。
オルカギルディが私の前に仁王立ちし、激しい闘いで刃こぼれした大剣を私に突きつける。
「久しぶりに楽しい闘いができた。 お前は強かったよ、だが今までの相手とは実力の差がありすぎただけに、実戦経験が足りなかったろう。 そういった意味では、クラーケギルディ様はお前に貴重な経験を与えてくれたな」
アバランチクローを地面に突き刺し、杖がわりにしながら立ち上がり目の前の強大な敵を見上げる。
「しかし、それだけではもちろん足りない。俺との闘いの年季の差が……明暗を分けたのだ!!」
「まだ……!」
咄嗟に、片方を地面に突き刺しながらもう片方のアバランチクローを繰り出す。しかし、とっくに攻撃の精彩はかき、簡単に受け止められた。
「本当に楽しく、そして面白い闘いだったぞテイルホワイトよ」
大剣を軽く振っただけで、両腕に装備されているアバランチクローをいとも簡単に弾き飛ばされてしまった。
風切音とともに冷気をまとっていた二つのアバランチクローは地面を転がっていく。
力なく私は再び膝をつき、顔をうつむける。
大剣を防御する術などなく、残っているのはテイルギアの標準装備のみ。
「さらばだ!テイルホワイト━━━━━━っ!!」
躊躇することなく大剣を振りかぶり、私の脳天目掛けて大剣が振り下ろされてくる━━━━━━!!
━━━━━━この時を、待っていた!!
瞬間、テイルブレスに激しい閃光が走り、私を包み込んだ。
「何!?」
一瞬怯んだものの、オルカギルディは体制をたて直し、すぐに追い打ちをかけようとしてくる。
しかし━━━━━━
〈三つ編み(トライブライド)〉
包み込む光の中で小さく、機械音声が流れた。
光から解放されると私はツインテールではなく三つ編みの形態、テイルホワイト・トライブライドへと変貌し、右腕にフロストバンカーが装備されていた。
「な、何だと!?」
「もう一度言うからよく聞きなさい!! 私は、ツインテールが大っ嫌いなの……!!」
動揺するオルカギルディの胸目掛けてフロストバンカーを渾身の力で叩き込んだ。
「ぐうっ!!」
「ブレイク!!」
フロストバンカーの攻撃を受けよろめきながらも、再び大剣を振り上げるオルカギルディ。
「レリ━━━━━━━━━━ズ!!」
ゼロ距離でフロストバンカーからオルカギルディを貫く光線を放つ。
「うおおおおおおお!!」
光線に撃ち抜かれ、オルカギルディは踵で地面を抉りながら後退していく。
「クレバスウゥゥゥ!!ドラアァァァイブ━━━━━━━━ッ!!」
光線をレールのようにして近づくと、フロストバンカーで渾身の一撃を叩き込んだ。
直後、吹き荒れる猛吹雪。
ダイヤモンドダストさながら美しく輝く三つ編みが吹雪の中で舞い踊る。
クリティカルヒット、オルカギルディを確実に仕留めることに成功した。
「う……作戦通りか………」
ついにオルカギルディは力尽き、両膝を地面についた。
「私は……何も考えてなかった」
そう、私は大剣が振り下ろされる直前まで三つ編みになる事を考えていなかった。
だけど━━━━━━
「━━━━かけがえのない友達が私のために準備してくれていたから」
志乃は私がきっと三つ編みを使う時があると考え、ずっとエレメリンクを使う準備をしてくれていたんだろう。
そうじゃなきゃ、あの一瞬で私に属性力をリンクブレスを通して送る事なんてできっこないからね。
「他人の力を借りるなんて、無粋な真似した?」
「いや、見事だ……!! テイルホワイト!!」
体から放電が始まるオルカギルディ。
「強く、美しい少女に倒される。悔いなど残るはずもない!!」
「おめでたいなあ……」
少々呆れながらオルカギルディにそう言った。
今まで闘ってきたエレメリアンにもそうだが美しい少女などと簡単に言うのは少し照れてしまうかもしれないのでやめて欲しかった。……まあ、エレメリアンの言うことは鵜呑みにはしないけどね。
「アルティメギルはまだ氷山の一角だ。 お前がどこまでいけるのか、楽しみにしているぞ!!」
「……」
最後の忠告、とも言える別れの言葉を残しオルカギルディは大爆発を巻き起こし、散った。
爆発を見届けると、全身から力が抜けていきそのまま後ろに倒れてしまった。
完膚なきまでの疲労と、闘いの緊張感が一気に抜けたせいか変身が強制的に解除されてしまった。
「「奏!」さん!」
通信……ではない二人の肉声が間近で聞こえてきた。
仰向けで倒れているので空しか見えなかった視界に志乃とフレーヌの心配そうな顔が出てきた。
どうやら私がオルカギルディを倒したのを見て、空間跳躍カタパルトでわざわざこの場所へ来てくれたのだろう。
二人の手と肩をかり、私は立ち上がる事ができた。
「ありがとう志乃、私だけエレメリンク使っても志乃が使わないんじゃ意味ないもんね」
「うん、ずっと待ってたよ」
志乃にお礼を言い、今度はフレーヌの顔を見る。
「ね、平気でしょ? 私がそんな事させないって、言った通り」
フレーヌはうつむき、やがてその頰には涙が伝ってくる。
「……はい」
涙ぐんだ顔と声で弱々しく、フレーヌは私に返事をしてきた。
今までのエレメリアンとは格が違うオルカギルディを倒し、私はさらなる強さとかけがえのない世界をひとまず守ることができたのだ。
皆さんどうも、阿部いりまさです。
初の前後編いかがでしたでしょうか。
物語のターニングポイントとして、自分としては長く書かせてもらったつもりです。
原作のドラグギルディ戦をモデルに書かせてもらっています。
オルカギルディを倒したテイルホワイトは今後どんな敵と出会うのか!?シャークギルディは!? そして新たに登場が示唆されたオルトロスギルディとは!?
今後も頑張っていくのでお付き合いいただけたら光栄です。
感想、質問等どんどん募集しています。
それでは。