私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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FILE.21 ビフォーアフターツインテール

 テイルホワイトとオルカギルディが激しい死闘を繰り広げた次の日の朝は……いつもと変わらなかった。

 テレビをつけると相変わらずテイルホワイトが出ただとか、テイルホワイトの予想出現場所だとか、アルティメギルはテイルホワイトに会えるから羨ましいだとか、全く変わらない日常だ。 ……麻痺してきてるなあ。

 どのチャンネルに回してもどうやら昨日の闘いは報道されていないようだ。 おそらく闘った場所が外国であることや、人口が少ない小さな島だったことなどが幸いしたんだろうね。

 取っ手のついたコップで朝の牛乳を飲みながらソファに座りテレビを見ていると何やらガタガタと冷蔵庫が音を立てているのが聞こえた。買ってから何年もたってるし、そろそろ買い換えないとダメかな?

 

「お母さーん、なんか冷蔵庫がガタガタいってるよー」

 

 ううん、返事がない。

 どうやらまだ寝室で寝ているらしい。

 

「しょうがないなあ……」

 

 牛乳を口に含みながらソファから立ち上がりテーブルの上に乗っている中身の入ったパックを持ちながらキッチンの冷蔵庫の前に立ち、冷蔵庫を開けようとした時だった。

 私が手をかける前に冷蔵庫が一際冷蔵庫がガタガタと大きく揺れ、冷蔵庫の一番上の扉が勝手に開き始めた。

 

「グッモーニーン! です!!」

「!?」

 

 突然のご登場に口の中の牛乳ブゥゥと吹き出しそうになったが女としてどうにかそれだけはしまいと我慢することができた。 しかし手に持っていた牛乳パックはキッチンの床へと落としてしまい、ひしゃげた牛乳パックから残っていた牛乳が床へと流れだし、小さな牛乳の池を作り出しはじめる。

 

「あら、牛乳が」

 

 こぼれた牛乳が履いているスリッパについたところでようやく落ち着き、おかしなところから出てきたフレーヌを問い詰めた。

 

「あら牛乳が、じゃないわよ! ビックリするじゃん!!」

「すみません、ここんとこシリアスが続いたので笑いが欲しくて」

 

 そんなアホらしい理由で、いやアホらしくはない理由でうちの冷蔵庫と基地を繋げてしまったのか…。

 

「そんな笑いはいりません」

 

 手刀を作り、弱い力でコツンと、冷蔵庫から顔を出すフレーヌの額へ当てた。 ていうかこの冷蔵庫の中身は何処に行ったんだろう……。

 床にこぼれた牛乳をタオルで拭き、洗濯機の中にいれ再びキッチンへ戻るとフレーヌがいなくなっている。

 冷蔵庫はまだ転送装置とつながっているということはまだ家の中にいるとは思うけど……。

 

「フレーヌ?」

 

 玄関や風呂場、リビングやトイレなど一階を一通り探してみたが何処にも見当たらない。

 なんとなく居場所を察した私は階段を上り自分の部屋の前に立つ。

 

「ここか……」

 

 ガチャリとドアを開け部屋に入り見渡すと私のベッドに寝っころがり、大きい本のようなものを読んでいるフレーヌがいた。まったく、こんなとこにいてお母さんに見つかったらえらいことになる。

 

「フレーヌ、お母さんに見つかっちゃうから早く基地に帰って……ええ!?」

 

 フレーヌがベッドの上で見ていたのは私が中学生の頃の卒業アルバムだ。

 見つからないように机の引き出し奥深くに封印しといたのに!?

 

「ちょ!? 恥ずかしいから!」

 

 フレーヌからアルバムを取り上げると何やらフレーヌはニヤニヤしてこちらを向いている。…仲間になりたいようだ、ではない。

 フレーヌが開いていたページを見ると私が在籍していた最後のクラスの写真が貼ってあるところだ。 ……ということは、見られてしまった。

 

「ツインテールお似合いじゃないですか!」

 

 そう、私は中学の最後までは何処へ行くにもツインテールだった。

 体育祭、遠足、合唱コンクールに修学旅行、全てアルバムに載っている写真にはツインテールにした私が写っている。黒歴史であるからこその封印だったのに…。

 

「ツインテールが嫌いというのでツインテール属性が奏さんに本当にあるのか少し不安でしたけど、ツインテールにしている写真があるのですから奏さんがツインテール属性をお持ちというのは明確な事実! 謎が解明されました! 」

「じゃあ、私はツインテールが嫌いっていう属性力を持っているのかもね」

「そんなことはありえません! みてください、その写真に写っている奏さんのツインテールを!! 」

 

 そう言われて写真をみてみるも私と志乃が一緒に写っている写真なだけ。これをみて、ツインテール輝いてるなあ、なんて思う人いるのかな。

 

「強力なツインテール属性をお持ちだったのでしょう。 見る人によってはテイルホワイトのツインテールと同等、もしくはそれ以上はあるかと」

 

 テイルホワイトと同等以上か……。

 変身前からそれほどのツインテール属性を持っていたら、変身したら一体どれほどの戦士になるんだろうか、そんな疑問が頭に浮かんだ。もし、私がツインテールが大好きな状態でテイルホワイトに変身したら……。

 ま、ツインテールを大好きだった私はもういないんだし、たらればの話なんて所詮その程度、気にしてもしょうがない。

 アルバムを閉じ自分の机にポンと置く。

 

「さ、もう少しでお母さん起きちゃうだろうし早く帰った帰った」

「はーい……」

 

 トボトボと歩くフレーヌに続いて私も部屋を出た。

 ドアを閉めるとき、机の上に置かれていたアルバムが少し光ったような、そんな気がしてしまった。

 早いとこパンドラの箱にでも封印しとかないと……。

 

 

 アルティメギル基地にある大ホールよりも奥にある末端の兵ではまず立ち入ることのできないフロアにシャークギルディは佇んでいた。

 基地では昨日のテイルホワイトとオルカギルディの闘いでオルカギルディが敗れたことは当然のように誰の耳にも入っており、もちろんそれはシャークギルディも知っていた。

 

「オルカギルディよ……」

 

 自分よりも実力が上であるオルカギルディがテイルホワイトに敗れたということは、今の実力ではテイルホワイトに敵うわけないと悟っていた。

 拳を握りしめシャークギルディは自分への怒りを爆発させまいと心で制止している。

 

「へえ、ここがあの部屋ねえ」

 

 自分しかいないと思っていたこのフロアでもう一人、誰かの声が聞こえた。

 

「何者だ!! ここは基地の神聖な場所故、立ち入りは禁止ぞ!!」

 

 シャークギルディは声のする方へと振り返り暗闇の中にいる何者かへと警告する。

 コツン、コツンというヒールを履いているかのような足音が聞こえ声の主が暗闇から現れるとシャークギルディは息をするのも忘れ、その姿に驚愕した。

 

「お前……あなたはアルティメギル五大究極試練を受けようととしているのだろ……でしょう?」

 

 どこかたどたどしく声の主は喋り、シャークギルディに問いかけた。

 シャークギルディは声の主の姿に戸惑いつつも頷くとさらに声の主は続けた。

 

「ドラグギルディのスケテイル・アマ・ゾーンでは時間がかかりすぎるな……ですわ。 ナニイー・テモス・ヴェイルも同じ」

 

 相談にのってくれているのだろうか。

 相手の考えがまったく理解できずたまらずシャークギルディは声の主に問いかけた。

 

「そなたは何を考えておられる!?」

「親身になって相談してやって……あげてるだけよ」

 

 言い直した部分以外はスラリと簡単に声の主は答えた。

 しばらく顎に手をあて、何かを考えながらうーん、と声を出す。

 しばらくすると目をあけ、ニヤリと笑い両手をパンと叩きあわせた。名案が浮かんだのだろう。

 

「おま……あなたは基地の者に見つからずひっそりと修行したいと考えているのだろう、だったらこの俺……私とできる試練にすれば良い」

「その試練とは?」

 

 コツン、コツンとヒール音のようなものを響かせながらシャークギルディを追い越し、互いに背を向けた。

 

「自分自身を題材にした小説を創作し、他人に評価を問う非常に厳しい修練''メロゲイマ・アニトュラー''よ」

 

 メロゲイマ・アニトュラー、声の主がそう言うとともにシャークギルディは驚きのあまり瞬時に声の主の方へと振り返った。

 五大究極試練を一つも修めていないシャークギルディにとってその試練はあまりにも難易度が高く、難しいものであった。

 

「やるのですか?」

 

 目を細め、声の主はシャークギルディに問いかけた。

 声の主の目はまるで「お前などにできるものか、さあ早くできないと言え」そう言っているようにも思えるほど冷たく、凍てつくような目だ。

 もし、メロゲイマ・アニトュラーに耐えられなくなってしまうと自分の命を落としてしまうかもしれない。しかし、シャークギルディは思う。オルカギルディや散っていった部下たち、そして師匠であるクラーケギルディの仇をとりたいと。

 握っていた拳を緩め、片膝を床につき、シャークギルディは話し始めた。

 

「是非、メロゲイマ・アニトュラーに挑戦させてもらいたい!」

 

 シャークギルディの言葉を聞くとそれまで凍てつくような瞳をしていた声の主はフッと笑いシャークギルディに手を差し伸べる。

 

「俺……私はあまくない。 どんどん批評させてもらう!!……ですわ」

「は!」

 

 アルティメギル基地の最奥のフロアでアルティメギル五大究極試練に挑むことをシャークギルディは決心したのだった。

 

 

 お風呂から上がり、パジャマへと着替え、自分の部屋のベッドに腰掛けた。

 今日は特にエレメリアンも出現することはなく、今日起きたこと一番のイベントは冷蔵庫からフレーヌが出てきた事くらいでなんとも平和な一日だった。

 スマホをいじりながらベッドに倒れこむと机の上のアルバムが視界に入った。

 ヒョイとベッドから立ち上がり机の上にあるアルバムを手にとる。

 黒歴史、黒歴史だと思っていた中学生の頃は今となってはそうでもないのかもしれない。 テイルホワイトに変身する前の私だったなら朝、フレーヌに見られた時点で床を這いずり回り、もしかしたら椅子や、テーブルを投げつけるまでしていた可能性もある。 いや、ないか。

 アルバムを再び机の引き出しの奥へと突っ込み再びベッドに座りスマホをいじり始めた。

 テイルホワイトに、私が嫌いなツインテールになってから、そろそろ三ヶ月になる。

 アルティメギルの幹部とかいうオルカギルディも倒したというのに、一体私はいつまでツインテールにならなければいけないのだろうか。

 あの初めて見たエレメリアン、スクリーンに映っていた隊長らしきエレメリアンを倒せば、闘いは終わるのかな? ……いや、オルカギルディは「アルティメギルは氷山の一角だ」という言葉を残し爆散した、もしかしたら私の想像以上にアルティメギルは大きい組織なのかもしれない。

 ベッドで仰向きになったまま右腕を天井めがけて掲げると見えなかった白いテイルブレスが出現した。

 

(フレーヌとの約束だけは、守ってみせる……!)

 

 そう、アルティメギルが千人でも、一億人でも、私はそれを倒し続けるだけだ。

 




皆さん、どうも阿部いりまさです。
新キャラ登場しました!
察しのいい方はこのキャラが今後どうなっていくか、見当がついてしまうと思いますが見逃してください!
感想、質問等どんどんお寄せください。
それでは。
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