私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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FILE.31 属性玉変換機構

 またこの夢だ。

 薄暗く何もない空間に私はいる。右も左も上も下も、全く同じ色の空間だ。

 何回も同じ夢を見ているせいか次に自分がするべきことがわかってきた。直感を信じ、おそらく以前歩いたであろう方向に向かい歩き出した。

 しばらく歩いているといつものように大きい柱が薄暗い中ボンヤリと見えてくる。また、いつものように、あそこにテイルホワイトが拘束されているのだろうか。

 

「え!?」

 

 走って近づくとやはりテイルホワイトは拘束されていた。しかし、ここだけいつもと違うことに気づく。

 いつもロープのようなもので拘束されていたはずのテイルホワイトは、今は頑丈な鎖のようなもので拘束されている。

 前よりも、厳重に拘束されてしまっていた。

 

「ッ!!」

 

 鎖なだけあって私の力ではビクともせず、全く拘束を解くことができない。

 

「起きて私!テイルホワイト!!」

 

 テイルホワイトを呼び続けるもやはり気を失ったままで目を開けてくれそうにない。

 その時、テイルホワイトのテイルブレスが光り輝きだした。

 いつも通りなら、私は光に吸い込まれ現実に戻るはずだが、ここも今回は違った。

 テイルブレスが光り輝いても私は目を覚ますことはなく未だ夢の中に居続けている。

 ただ光っただけ?

 それは違う、テイルブレスが光り輝いたのには意味があったらしい。

 

「……え?」

 

 目の前で拘束されていたはずのテイルホワイトがアルティメギルの幹部、速水黒羽の姿へと変わっている。

 ただ、私の目の前にいる速水黒羽はいつもと違う。テイルギアを装備しておらず、普通のセーラー服を着ているし、私の見た速水黒羽のようにどす黒く染まっていないように見える。

 なぜテイルギアが光って、テイルホワイトが速水黒羽になったのかは知らないが、速水黒羽だって人間のはずだ。

 私は再び鎖に腕をかけ、力のかぎり引く。

 

「何……してるのよ……」

「速水!」

 

 いつの間にか速水黒羽は薄く目を開け、か細い声で喋り出していた。

 

「あなたが、私を苦しめている……私を縛っている……!!」

「な、何のこと……」

 

 頭の中に直接声が聞こえてくる。

 私が、速水黒羽を苦しめている?

 私には全く身に覚えがないし、理不尽な理由で闘いを挑んできたのはそっちじゃないのか。

 

「ツインテールを……縛らないで……」

 

 弱々しく、速水黒羽は一粒の涙を流しながら、私に懇願したのだろうか。

 再びテイルブレスから激しい光が走り、また私はその光に吸い込まれていった。

 

 

「ハア、ハア、ハア……」

 

 嫌な目覚めをし、冷静になり息を整えながら周りを見る。

 近未来的な室内にかすかに聞こえるモーターのような音、ここは私たちの基地だ。

 テーブルには私と、眠っている志乃とフレーヌがいる。

 見た感じ、話し合いをしている間にみんな疲れて眠ってしまったらしい。

 

「ん?」

 

 私の隣にあるパイプ椅子に、メモが置かれている。

 そういえば、結局どこかうろついてた嵐をフレーヌがまた基地に転送してたっけ。

 おそらく嵐が書いていったであろう手紙を読んでみると、どうやら先に帰っていったらしい。

 時計に目を向けると深夜の三時、親に連絡しておいてよかった……。

 あんな夢を見た後に寝るのは怖いような気もするけど、この時間に起きててもしょうがないか。

 それに私が闘うのに支障は出てないし、夢についてはまたフレーヌに相談すればいいかな。

 

「ふわぁ……」

 

 大きな欠伸が出るということはやはりまだ眠いんだろう。

 欲望には忠実に、寝ることにしよう。

 

 

「で、こうなるわけ……」

 

 目の前にいる志乃は呆れ顔だ。

 夏休みもあと六日ということろで私はある重大な事実に気がついた。

 

「まあまあ、それよりこの問い教えて♪」

 

 私に言われ渋々志乃はペンと教科書を持ち、問いの解説を始めた。

私、伊志嶺 奏は夏休みが後六日というところで夏休みの課題を全くやっていないことに気づき、志乃の家へと転がり込んだのだ。

 去年はしっかりと計画的にできたんだけど、今年はなぜこうなった……。

 

「あ、エレメリアンだ!エレメリアンがいつ攻めてくるかわからないから課題やってる暇がなくて」

「都合のいい時だけエレメリアンを使う!」

「う……すみません……」

 

 私がテイルギアの武器でエレメリアンを斬るように。志乃は私の言葉をバッサリと斬り捨てる。

 正論すぎて何も言い返せない。

 アホの子っぽいけど志乃はこの辺はちゃんとしてるんだよね。成績だっていいほうだし。

 

「そういえば海に行った時からエレメリアンも出てきてないよね」

 

 そう、最近アルティメギルはおとなしい。

 おおよそ二週間前にシャークギルディ改めメガロドギルディを倒し、速水黒羽と闘ってからは全く現れていない。

 もしかしたら私の忠告を聞いて撤退してくれた……? なんて事はないはずだし。 どうせいつものように私を倒す作戦を考えているか、もしくはその作戦の準備をしているのだろう。

 

「ペン、止まってるよ」

「あ、はいはい!」

 

 後のアルティメギルより目の前の課題だ。

 夏休み明けの登校日に出さないと成績に響くしなんとしてでも終わらせなければ。

 でもただ課題をやるだけというのもつまらないな……。 そうだ、迫り来る課題をアルティメギルだと思ってやってみよう。

 簡単な問題はあのモケモケで、すいすいと解いていける。 少し難しい問題はウーチンギルディとかのエレメリアンで、難しいのがオルカギルディとか強かったやつ!

 

「な、何その絵………」

「え、絵?……げ」

 

 頭の中で設定を作りすぎて、自分でも気づかないうちに絵と詳細な設定をノートに書き記していた。

 

「モケモケ……ウーチン……オルカ……」

「わー!!やめてやめて!!」

 

 ノートに書いてしまった頭の中の設定を志乃に音読され、たまらず私はノートを抱き抱え絨毯の上をグルグルと転がり回る。

 

「例えだよ!? 例えだから!!」

「え、うん」

 

 グルグルと転がりまわりベッドの近くに来たところでベッドに飛び乗り必死の弁明をする。

 

「落ち着いてジュースでも飲みなよ」

 

 志乃はコップにオレンジジュースをドプドプ注ぎ、コップを私に差し出した。

 コップを受け取り一口飲む。 うん、おいしい。

 

「変な考え捨てないと課題終わらないよー?」

「ッ!?」

 

 オレンジジュースを吹き出しそうになるもなんとか堪えて飲み込む。

 今の私にはエレメリアンなんかより高校の課題の方がよっぽど強敵に感じるよ。

 

 

 奏が志乃の家で課題相手に苦戦している同時刻、フレーヌは基地の開発室にいた。

 画面以外の明かりがなく、映画館のようになっている部屋で必死にキーボードを操作し、テイルギアの資料やこれまでのテイルホワイトの戦闘映像を見ている。

 

「ツインテール属性が最強だからこそテイルギアとして作られたはずなのに」

 

 テイルギアのデータを画面に映し、一つ一つ目を通していく。

 彼女自身が設計した訳ではないためもう一度見落としがないか確認しているのだ。しかし、その資料にも奏のようなケースの記述はなかった。

 

「やっぱり私じゃ……あの戦士ならわかるのかな……」

 

 自分の世界をたった一人で守ってくれていた少女を思い出していた。

 その少女なら、テイルギアを纏いアルティメギルと闘っていた少女ならフレーヌにわからないこともわかるだろうと思っているが、彼女は突然姿を消してしまった。 当然連絡先なども知らない。

 

「私を助けてくれて、テイルギアの資料まで頂いたのに……私が無知なせいで」

 

 弱音を吐いているがフレーヌはしっかり画面と向き合い手元にあるキーボードを操作している。

 

「私は……あなたの期待に応えることができているのでしょうか……」

 

 懐から出したペンダントのようなものを開けるとそこには一枚の写真が入っている。

 後ろを向いているが過剰に肌が露出しているスーツ、そして美しく輝くツインテール…………ではなかった。

 

「そ、そんな……ッ!?」

 

 美しく輝くツインテールが、その写真には収められていたはずだった。 しかしその写真の中の少女はツインテールにはしておらず、髪を下ろしている。

 

「ま、まさか……ツインテール属性が……!?」

 

 属性力は強力なもので、過去の記録にまで干渉していた。

 写真の少女がツインテールじゃないことを考えると、彼女はツインテール属性を失ってしまったと考えた。

 ペンダントをぎゅっと握りしめ、再びフレーヌは懐にそれをしまいこむ。

 

「あの人は……やはりアルティメギルに……なら、私が仇をとるわ!!」

 

 哀しそうな表情から一変、フレーヌは気合を入れ再び手元のキーボードをカシャカシャと操作し始める。

 

「属性力直結現象、最終闘体という変身、そしてアルティメギルにいる人間の幹部、想定外なことだらけだけど……私は、できることをやるしかない!」

 

 フレーヌが画面を切り替えると、テイルギアの腕の装備であるスピリティカフィンガーの部分が大きく映し出される。

 

「エレメリンクだけじゃ限界がある。……あの人が作った装備なら、私が属性玉を知った今ならできるかもしれない」

 

 カチカチとマウスをクリックするような音が部屋に響くと再び画面が切り替わり、中途半端な落書きのようなものが表示された。

 

「属性玉変換機構(エレメリーション)を完成させることができれば…」

 

 属性玉を一つ手に取り、しばらく見た後再び元の位置に戻す。

 

「スー……ハー……」

 

 大きく深呼吸をし、フレーヌは再び画面と向き合い、キーボードやタッチパネルを使い操作し始めた。

 まだ見ぬ装甲を完成させるため、フレーヌは自分の知識の全てを注ぎ、エレメリーション開発へ勤しんだ。




最近少しスランプ気味です……。
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