私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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更新が遅れてしまい申し訳ございません(_ _)


FILE.32 遅い課題

 世界の狭間にあるアルティメギル基地。

 その最下層フロアにいる一人の戦士が厳しい修練を乗り越えようとしていた。

 

「は!はあー!!!」

 

 白と黒の模様が入り混じった体のゼブラギルディ。

 シャークギルディがこの場から去った後も彼は修練を続け、確かな強さを手にしていた。

 メロゲイマ・アニトュラーこそ乗り越えることはできなかったが、時々監督にくる速水黒羽の指導もあり心身とも大きく成長している。

 彼が修練を続けていると一体のエレメリアンがこのフロアに現れた。

 

「……誰だ!?」

「失礼、私はフェンリルギルディと申す者です」

「フェンリルギルディ……。もしやダークグラスパー様に処刑されたという」

「ええ。ですが、この通り生きております」

 

 深くは語ろうとしないフェンリルギルディを見て、ゼブラギルディはそれ以上問いただすことができなくなってしまった。

 

「お……私が助けたのよ」

 

 フェンリルギルディの後ろから出てきた速水黒羽がフェンリルギルディの処刑後を語りだした。

 

「私がダークグラスパー様のカオシックインフィニットにより作り出された空間にいたフェンリルギルディを助け出したのだ……のよ」

「そんなことも出来たのですか……。 しかし、それがダークグラスパー様に見つかったらどうなるか」

「心配いらん……ないわ。 ダークグラスパー様はもうアルティメギルには居ないからな……ね」

「なんと!?」

 

 その後、ダークグラスパーが首領により処刑命令を下されプテラギルディと交戦、そして新たな力を手に入れツインテイルズに仲間入りしたということを聞かされ、さらにゼブラギルディは驚愕した。

 勿論、この報はアルティメギルの部隊全てに伝えられており、隊長がいなくなったシャークギルディ部隊もその話題でもちきりだという。

 

「もはやツインテイルズはアルティメギル全体を脅かす存在となってきている……わ。 近々、美の四心も本気でツインテイルズを潰しにかかるだ……わね」

「一体何を言いたいのですか……?」

 

 速水黒羽がまるで自分に何を言いたいのかわからずゼブラギルディは思わず問い出してしまった。

 

「もしもツインテイルズが敗れるようなこととなれば、その強力なツインテール属性が私たちのところへ来ずに首領様へと渡ってしまう。 そこでゼブラギルディには今一度ツインテイルズの世界へと戻り、奴らが属性力を奪われそうになったら横取りしてきてく……ほしいの」

「そ、それはアルティメギルへの反逆へと繋がるのでは……」

「平気だ……わ。 処刑人自体がもう居ないし、ただ私はツインテイルズの属性力見たいだけ。 独り占めしようなんて思ってないからな……もの」

 

 あくまで問題はない。 そう断言し、彼女は近くの椅子に腰掛けた。

 すると彼女の体が眩く発光し、光の繭に包まれる。 光が止むと彼女は、速水黒羽はオルトロスギルディになっていた。

 

「安心しろ、反逆の罪になったとしてもだ。 この俺が責任をとってやる。 当然のことだからな」

「いえ……その必要はありません。私はあなたに鍛えられるだけで何も恩を返せていなかった。速水殿の、いえオルトロスギルディ様の力になれるなら、行って参ります」

 

 そう言うと深々と頭を下げるゼブラギルディ。

 

「頭を上げてくれゼブラギルディ。俺のわがままを押し付けてしまい酷く申し訳なく思っている」

 

 顔を上げたゼブラギルディの肩に手をかける。

 首領やアルティメギル四頂軍が自分に言わずにゼブラギルディを密かに処刑する可能性もある。

 オルトロスギルディは当然だが、ゼブラギルディもそれを承知し、オルトロスギルディのわがままに付き合うことに決めたのだろう。

 

「……行って参ります」

 

 深々とお辞儀をし、ゼブラギルディは案内役のフェンリルギルディと一緒にフロアを出ると移動艇のある搬入口へと向かっていった。

 

「次に会うのは、何時になることか……」

 

 オルトロスギルディ一人しかいないフロアでは声がよく響いて聞こえた。

 

「う……!!」

 

 オルトロスギルディが急に苦しみ出しその場でうずくまる。 すると次の瞬間オルトロスギルディの体が眩く発光し、その光は彼から離れる。 離れた光が空中を彷徨い再び集まるとだんだんと人型になっていく。

 

「また……貴様……!!」

 

 酷く疲れた様子で人型になった光を、自分の分身である頭が一つしかないオルトロスギルディを睨みつけた。

 オリジナルのオルトロスギルディから別れた分身は今度は漆黒のオーラを見に纏い姿を隠す。 オーラが晴れるとそこにいたのは速水黒羽だった。

 

「勝手に別れちゃうのよ。 あなた自身の力が弱っているから」

「なんだと!?」

「オリジナルであるあなたの力が私に流れ込んできている、て事ね。 もはや私は分身じゃない……私がオリジナルになろうとしているのよ」

「……貴様などに……まけるかぁぁぁぁ!!」

 

 突如オルトロスギルディは左手に剣を持ち速水黒羽に斬りかかる。 しかし速水黒羽はこれをスルリと簡単にかわしてしまった。

 オルトロスギルディは斬りかかった勢いでそのまま前に倒れ込んでしまう。

 

「貴様が……何を企んでいるのかは知らんがそれがアルティメギルにとっていいことでないのは明らかだ……必ずお前を……!!」

「はいはい、私は用があるからしばらく休んでいなさい」

 

 速水黒羽がフロアから消えていくと再びフロアは、頭が一つしかないオルトロスギルディだけとなった。

 

「俺は……なんなんだ……」

 

 悲痛の思いで呟いたオルトロスギルディの声は今度はフロアに響く事はなかった。

 

 

「腕立て五百回!!!!」

 

 オゥゥ!!!

 ウォルラスギルディが声を上げると、屈強な隊員達が一斉に腕立てを開始した。

 最下層フロアでオルトロスギルディとゼブラギルディが話しているほぼ同時刻、いつもの会議室とは違う大きな体育館のようなフロアでシャークギルディ部隊と補充部隊が暑苦しく己を鍛えていた。

 毎日、腕立て五百回から始まる筋トレに加え、組手による実戦特訓、さらにテイルホワイトへの恐怖心を無くすため、ビートルギルディの教えである「テイルホワイトのイラストを模写せずに搔き上げる」特訓を行っている。

 もちろん、属性力の生命体であるエレメリアンはいくら筋トレしようとも筋肉が増えることはない。しかし筋トレは仲間のチームワークや部隊の士気を上げるにはうってつけの方法だという。

 

「ウォルラスギルディよ、そろそろ始めましょう」

「はい。全員イラストへ移れ!」

 

 サンフィシュギルディに急かされ、筋トレを中断しテイルホワイトのイラスト特訓へと移った。

 初めの頃は一つの絵を仕上げるのにも時間がかかっていたが今や隊員の誰もが三十分以内に描き上げることができるようになっていた。

 

「できたぞ!」

「我もだ」

 

 次々と隊員が手を挙げ、自分の絵をウォルラスギルディ、サンフィシュギルディに見せ、採点を受けては次の絵を描き始めていく。

 隊員が描くテイルホワイトには見事に個々の属性力が現れている。メイド服、ビキニといった服装から、やたら胸を強調したイラストまで。

 

「ほほう、そういえばお前は巨乳属性(ラージバスト)だったな」

 

 ウォルラスギルディが巨乳属性を持つジュゴンギルディのイラストを横から覗き込んだ。

 

「うむ、思い切って巨乳にしてみたが……やはり……いいな」

 

 自分が思うテイルホワイトが書け、満足そうな表情を見せるジュゴンギルディから離れ、ウォルラスギルディはまだまだ別のエレメリアンのイラストを横から覗き込む。

 

「ほう、お前は足裏属性(ソール)を持っているのか」

 

 腰の下から足、特に足の裏をこちらに見せつけるように描かれているイラストを見れば誰もが分かる事だろう。

 

「ああ! 足裏こそ縁の下の力持ちの如く女体を支え、そして輝くのだ!!」

「そ、そうか……」

 

 そそくさと足裏属性のエレメリアンから離れ、再びウォルラスギルディは集団の前に出る。

 

「この厳しい特訓により、我々の部隊は完全にテイルホワイトへの恐怖心を無くし、同時に部隊がより一致団結する事が出来るようになった!」

 

 イラストを描く手を止め、皆静かに正座しウォルラスギルディの言葉に耳を傾けている。

 

「今こそ勝機! 必ずやこの世界の属性力を頂くのだ━━━━━━ッ!!!」

 

 オオオオオオオオオ……!!!

 正座していた隊員全てがウォルラスギルディに賛同し立ち上がり、雄叫びをあげる。

 世界を侵略するHENTAIの目ではない。その場にいる隊員誰もがまごう事なく戦士の目になっていた。

 

 

 長いようで短い夏休みも終わり、二学期が始まってから二週間が経った。

 速水黒羽やら、ゴーなんとかやら、メガロドギルディやら、私やフレーヌの想定外の事が起きていたけどそれ以降はここまで特に変わったところはない。 いつものように、学校を途中で抜け出して闘い、ポニーテールの私が放った必殺技により目の前でエレメリアンが放電している。

 

「ふ、太眉ぅぅぅぅぅ!!!!」

 

 そしていつも通り、酷い断末魔をあげると目の前のエレメリアンは爆散した。

 うーん、あと三十年くらい前に来ていれば太眉の人結構いたんじゃないのかな。

 

『属性玉、お願いします』

「ええ」

 

 それにしても、女子高生が変身して、悪の怪物と闘う事がいつものことになってしまっていいものなのだろうか。

 いつも通り事が進んでいたが、ここからはいつも通りではなかった。

 属性玉を拾い上げると、パチパチとやる気のない拍手が聞こえてきた。

 

「久しぶりね」

『速水黒羽!』

 

 黒いツインテールが象徴の速水黒羽が私の前に再び現れた。

これで速水黒羽と会うのは三回目になるけど、前回少し剣を交えた時に奴の強さは痛いほど感じた。 今ここで闘っても勝てる見込みは限りなくゼロに近い……また逃げた方がいいかな。

 

「あ、今日は闘いに来たんじゃないわ」

「……そう、私も闘いたくないけど」

 

 ジッと私を……いや私の髪型を注視し、速水黒羽は目を細める。

 

「相変わらずツインテールは嫌いなのかしら?」

「当たり前じゃない」

『奏さん、何を考えているのかわからないので注意してください』

 

 少しだけ頷き、フレーヌに応える。

 私が返事を即答したせいか速水黒羽は少し困った顔をしながらやれやれと言わんばかりに手を左右に出して首を振っている。

 どうやら前回のように、ツインテールにしていないのを怒ってはいないようだ。その代わり、呆れているのだろうか。

 

「ツインテールがどれだけ重要なものか……わかっていないのね」

 

 ツインテール属性が最強の属性だという事はフレーヌの説明や、今まで倒してきたエレメリアンが言っていたので知っているつもりだ。

 ただ、私はツインテールが嫌いだから。 それはツインテール属性が最強だとしても決して揺らぎようのない事実なんだ。

 

「ちょっと遅いけど私から夏休みの課題を出すわ」

『「は?」』

 

 何を言っているのかと、私もフレーヌも速水黒羽の意図が掴めずハモる。

 

『どういう意味でしょうか……』

「さあ……でも……私はもう課題なんてこりごりだ!!」

『最後の最後まで溜め込むからですよ……』

 

 ど正論をフレーヌに言われ、いいかえす気力もなく黙り込む。

 いやいやエレメリアンが……これは志乃にもバッサリ斬られたし……そもそも大抵の人は課題を溜め込むものかと思っていたけどそうでもないのかな。

 今年の課題は再提出もあったし、余計なものは増やしたくないんだけど……。

 

「何をごちゃごちゃ言っているのかしら?」

「課題なんて私は絶対やらないって決意表明してたの!」

 

 もしエレメリアン百体撃破とかRPGのような課題を出されると面倒だし、少しだけ私が負けるかもしれない可能性がある。

 

「拒否はできないわよ、受け取りなさい」

 

 速水黒羽が腕を大きくあげると、私のすぐ後ろにあの極彩色のゲートらしきものが出現する。

 

「これは……!!」

 

  やがて後ろにあるゲートはブラックホールのように私もろとも周りを吸い込み始める。

 当然空気も吸っているのだろう。 風が激しく吹き始め、私をゲートへ押し込もうとしはじめた。

 

『奏さん! 今こちらに転送しま』

「逃がしはしないわ」

「え」

 

 目にも留まらぬ速さで速水黒羽は私の前へと移動し、軽く私をトン、と押した。

 軽く押されただけで私はバランスを崩し、極彩色のゲートへと吸い込まれてしまった。

 

『奏さ……』

 

 ゲートの中に入った途端、フレーヌからの通信は途切れ何も聞こえなくなってしまった。

 それとほぼ同時に嵐とのエレメリンクも解除され元のツインテールへと戻ってしまう。

 

「このままじゃ……!」

 

 私が入ってきたゲートの入り口のようなところから速水黒羽の声が聞こえてくる。

 

『ツインテールがどれだけ重要なものか、その目で確かめなさい』

「速水!!」

 

 どんなにもがいても私の体はゲートの入り口へ戻る事はなくどんどん奥へと進んでいく。

 

「オーラピラー!!!」

 

 私が入った入り口のようなところだけでなく、四方八方にオーラピラーを撃ち続けるが壁がないのかオーラピラーはどこまでも飛んでいくだけだ。

 ならばと、腰の装甲から属性力や蒸気を噴射しゲートの入り口を目指すが何も変わらない。

 どんどんゲートの奥に行くに連れて、自分の意識が遠くなっていくのを感じる。ここで意識を手放してはいけない、そう強く思っても異空間の底知れぬパワーにはかなわず、意識を手放してしまった。

 一体私は、どうなってしまうのだろうか。




皆さん、どうも阿部いりまさです。
急展開!!としか言いようがないですかね……。
感想、質問等どんどんお寄せください!
それでは。
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