私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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ウォルラスギルディ
身長:288cm
体重:370kg
属性力:八重歯属性(ダブルトゥース)

シャークギルディの敗戦後、オルトロスギルディの指導により台頭してきた若手エレメリアン。
実力もさながらリーダーシップもあり、部隊の隊員からは信頼されている。
オルトロスギルディに代わり、イラスト特訓の監督をサンフィシュギルディとともに担当するようになった。


FILE.33 ツインテールな世界

 奏が速水黒羽の作り出したゲートに吸い込まれていくのを見て、フレーヌは基地で一人必死に名前を叫んでいた。

 

「奏さん!! 応答してください、奏さん!!」

 

 フレーヌの必死の問いかけもかなわず、奏が吸い込まれると通信は途切れてしまった。

 映像にはゲートが消えていく様とそれを見守る速水黒羽のみが映っている。

 フレーヌは動揺し、力が抜けそのまま椅子に座り込む。

 

『んーっ!』

 

 画面の向こう側にいる速水黒羽は両手を重ね上にあげ伸びをすると上を見上げる。

 

『どうせ何処かで見てるわよね? テイルホワイトのサポーターさん?』

「っ……!!」

 

 力なく俯いていたフレーヌだが速水黒羽の言葉を聞き画面に目を向け息を呑む。

 フレーヌの動揺を察したのか、またはテイルホワイトを消せたことが嬉しかったのか画面越しの速水黒羽は笑みをうかべる。

 

『安心しなさい、彼女は生きてるわ。こことは違う世界に飛ばしただけ…』

「そ、そんなことが……!!」

 

 自分と同じ人間が機械もなしに生物を他の世界に飛ばすなどとにわかには信じがたいことだ。

 

『それにテイルホワイトがこの世界にいない間は私たちも属性力を奪うことはないわ。 私たちも休暇ぐらい欲しいし』

「そ、そんな勝手なこと許さないわよ!今そっちに行くから待ってなさい!!」

 

 フレーヌは激情に駆られ、小型の通信機を耳から外し床に叩きつけると、カタパルトに走り出した。 しかし、その足は再び話し始めた速水黒羽によって止まる。

 

『それじゃ、近いうちに会えるといいわね』

 

 画面越しにいる速水黒羽にフレーヌの言葉や行動がわかるわけもなく速水黒羽は再び極彩色のゲートを生成しその中へと消えていった。

 速水黒羽への怒りと自分の無力さの二つの怒りに震えたフレーヌは涙を流しながら小型の通信機を踏み潰す。 するとその場にペタンと崩れ落ち、奏が吸い込まれたゲートのあった場所をただ見つめた。

 

「助けないと……!」

 

 立ち上がり、目の前の椅子に腰掛けゲートの位置と今の時間、さらに速水黒羽の心理を探り奏が飛ばされた世界を計算し始める。

 ドア一枚隔てたところに他の世界はある、がそれが無数にも連なっており世界の正確な数は認知できないほどに多い。もしかしたらまだ見たことも聞いたこともない世界に飛ばされているかもしれない。 時間の流れが違うような世界に飛ばされているかもしれない。 もしかしたら過去や未来に飛ばされているかもしれない。 全てを頭におき、フレーヌの奏探しが始まった。

 

 

「ん……」

 

 目を覚ますと、まず目に飛び込んできたのは生い茂る木々とその間から覗く快晴の空だった。

 確か、速水黒羽が作ったゲートに吸い込まれて……意識を失って……何処か別の場所へ飛ばされてしまったのだろうか。

 上体を起こし周りも確認してみる。

 木々の間から少しだけコンクリートのようなものも見えるし、どうやら都会近くにある小さな森、もしくは公園のようなところへ飛ばされてしまったようだ。

 スマホを取り出し現時刻を確認するに私がゲートで飛ばされ意識を失ってからまだあまり時間は経っていない。

 そのままロックを外しフレーヌお手製のアプリを開き通話ボタンをタップし耳に当てる。

 ところが全くコール音が鳴らない。耳から離し、画面をもう一度見てみるとマスコットのようにデフォルメされたフレーヌが手でバツを作っている。

 

「圏外……」

 

 まさかこのご時世にちょっとした小さい森で圏外になる場所があるなんて思わなかった。

 仕方なくスマホをブレザーのポケットにしまい紅葉が始まりだした美しい森を歩き始めると、ほんの五分程度で鉄筋コンクリートのビルに囲まれた美しい噴水のある広場に出ることができた。

 真昼間なだけあって小さい子供を連れたお母さんや、ゆっくり歩く犬を連れたお年寄りおじいちゃんおばあちゃんなどが多い。

 スマホを取り出し電波を確認する……が圏外のまま変わらない。

 もしかしたら変なゲート通されたせいで壊れてしまったのかもしれない。

 

「えー、なんでよ……」

 

 フレーヌに連絡が取れないのなら最悪テイルホワイトに変身して走って帰ることも可能だが、明るいのでどうしても目立ってしまいなるべく使いたくはなかった。 電話ボックスも見つからないので結局暗くなったら変身して帰るということにする。

 

(それまではぶらぶらしてよっかな)

 

 広場から離れ、とりあえず大通り沿いに歩き出した。

 まさか、速水黒羽が言っていた課題というのは都会に放り出されて誰の力も借りずに帰ってこい、というものなんだろうか……。

 

(あれ……なんだろこの違和感……)

 

 噴水広場から大通り沿いに歩いていると、何かいつもと違うような違和感を感じる。 でも、見たところ普通に都会の街だし、通行人にもなんら変わった様子はない。

 

「ああ、やっぱりテイル……ちゃんは可愛いなあ!!」

 

 そう、変わった様子もない……うん。

 時々聞こえる通行人の声に耳を傾けながらビルを見上げたりして違和感を探す。

 すると一つの広告が目に入った。

 アイドルを使ったメガネの広告だろうか、黒髪の幼い少女がにこやかにメガネをアピールしている。でも、こんなアイドルいつの間に出てきたんだろう……。

 

「……あ」

 

 私が感じた違和感が今、わかった。

 テイルホワイトの広告や看板などが全くないのだ。

 普段歩いているだけでも嫌になるくらいあちこちにテイルホワイトの広告や看板があったものだが、ここにはそれが全くない。

 その代わり一際目立つのが眼鏡をかけた黒いツインテールの少女だ。まあ、ブームなんてそういうものだし別にいいんだけども……。

 少しだけ不安になり近くのコンビニに入り雑誌コーナーを物色する……もテイルホワイトの名前は見当たらない。だが、代わりに別のテイルを見つけた。

 

「━━━━テイル、レッド!?」

 

 テイルレッド特集という雑誌の表紙には赤く燃えるような装甲とツインテールの幼い少女が写っていた。

 

「ど、どいうこと……?」

 

 雑誌を開き中の記事に目を通す。 記事によると今年の四月から怪物が現れ、颯爽と赤いツインテールの幼女が怪物を倒していった。

 テイルホワイトという名はどこにもなく、記事にあるのはテイルレッドという名前だけだ。

 こういう時はいやに感がよくなってしまう。

 速水黒羽のゲート、スマホの圏外、見たことないアイドルそして、テイルレッド……。

 

「お姉ちゃん、立ち読みはいけないよ。 いくらテイルレッドたんが魅力的だからって……」

「すみません!」

「え、あちょっと!」

 

 急いで雑誌を店員に渡し、外に出る。

 ビルの上の方にある大きなテレビを見るとニュースの時間らしく、アナウンサーが座り何やら喋っている。……テイルレッドと呼ばれる少女がワイプで映しだされながら。

 確信に変わった、もう考えられることは一つだ。

 

「……ここは私がいた世界じゃない。ここは……異世界だったの!?」

 

 違和感を感じないことがおかしい。

 自分の生きてきた世界とは別の世界に、初めて私は降り立っていたのだ。

 

 

 いつもの大ホールに部隊の隊員全てが集合し、整然と着席している。しかし、行われているのはいつもの作戦会議や、熱い特訓ではない。

 現在この部隊の隊長兼トレーニングコーチのオルトロスギルディが大ホールの中央で静かに佇んでいた。

 やがて、静かに口を開く。

 

「しばらく、この世界の属性力奪取のための侵攻を中止する」

 

 にわかにざわつきはじめる大ホールの隊員達。 現隊長の命令とはいえ、もちろん反発するものも現れた。

 

「何故このような大切な時期に! 我々は特訓により力と、自信を得ることができたのですぞ!!」

 

 オルトロスギルディ、サンフィシュギルディ、そしてウォルラスギルディの指導によって彼らはメキメキと力をつけてきたところに、侵攻中止。 当然の反応だった。

 

「黙れ!! 命令無視は許さんぞ……!!」

「っ……!」

 

 オルトロスギルディが部下に対してここまで怒りを露わにするのは初めてのことだった。

 反発した隊員は一礼すると着席する。

 

「それだけだ、解散しろ!」

 

 それだけ言うと、オルトロスギルディは白いローブを翻し一番に大ホールから立ち去っていった。

 後に残された隊員達もぞろぞろと席を立ち、大ホールを去る者やその場に残るものもいる。

 どこからか聞こえてくる。

 

「隊長はどうなされたのだ……」

「部隊の士気が上がっている中、この命令とは何を考えているのだ……!」

「考えがあるのだろう、隊長殿を信じるしかあるまい」

 

 ここにきて、シャークギルディ部隊の残存兵や、補充部隊の隊員たちはオルトロスギルディに対して疑問を抱くようになっていった。

 馴れ合いなど許さぬ、そんな雰囲気を醸し出しているが故かだんだんと反発するものも増えてきている。 その一方で指導者としてとても優秀な能力を持っていることも事実だ。

 

「まあ良いではないか。 この間にさらに特訓し、さらなる力を身につければな」

 

 ウォルラスギルディにもオルトロスギルディの考えは読めない。 が、この侵攻中止期間はこの部隊をさらに強化することができるかもしれない。 ポジティブに考えオルトロスギルディの命令に疑問を抱くものを一人一人あやしていった。

 

 

 自分の部屋に戻り、扉を閉めたオルトロスギルディは大きな椅子に座り込む。

 

「これでいいのだろう……!」

 

 オルトロスギルディ以外誰もいない部屋で話し始める。

 話し相手はオルトロスギルディの中にいた。

 

『ええ、それでいいわ』

 

 最初は自分の身代わりであったはずの分身が、今や心のようなものを持ち、分身を出現させていないときでも声が聞こえてくる。

 オルトロスギルディの体が光り出し、その光が体から離れると人型になっていき速水黒羽を作り出した。

 

「なぜ俺にあんなことを言わせたんだ。 何を考えている……」

 

 オルトロスギルディの問いに答えることなく速水黒羽は部屋の中を歩き始めた。

 興味深そうに見ながらフィギュアが入っているショーケースの前で速水黒羽の足が止まる。

 

「やっぱり、私の元はこの娘なのね」

 

 ショーケースを開け、速水黒羽が手にしたフィギュアは彼女と瓜二つの顔をしている。

 

「苦しめられたわね、この娘には」

 

 フィギュアをショーケースへと戻し、オルトロスギルディには向き合いながら前の世界にいた戦士のことを話し出した。

 

「ああ、おかしなロボのようなものを使い俺を苦しめた。 おかげで一番心に残っている」

「だから……この姿なのね」

 

 オルトロスギルディにとってこの少女がもっとも印象的であったために、最終闘体に到達した際この姿になった。

 オルトロスギルディもわかっているが、一つ気掛かりなことがあった。

 

「しかし、俺の中にあの娘のツインテール属性はない……貴様が、どこかにやったのか」

 

 キッと速水黒羽を睨みつけるが帯びることなく彼女は向かいのソファに深く座り込んだ。

 

「さあ……知らないわ」

 

 何かを期待しているような目をしながらオルトロスギルディから視線を外し、彼女は再び自分と同じ顔のフィギュアを見つめた。

 同じ顔であっても彼女達は人間とエレメリアンの分身、全く別の生き物だ。 証拠に、速水黒羽の元となった彼女がしていた表情は自分ではしたことがなく、することもできない。

 笑みを浮かべると速水黒羽は再び光となり、オルトロスギルディの中へと戻っていった。




どうも皆さん、阿部いりまさです。
とうとう来ましたテイルレッドたんの世界!
次からはツインテイルズが本格的に登場!!かと思いきやそうでもないと思われます……。
察しがいいお方ならどんな感じでツインテイルズと絡むのかわかる方もいらっしゃるかも……?
それでは。
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