私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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FILE.34 異世界な夜

 まさか、ここが異世界だとは思わなかった。あまりにも私がいた世界と似ているから気づくのに時間がかかってしまった。

 普通の町並みに普通の人々。

 この普通の日常こそが私自身を異邦人なんだと突きつけてくるようだ。

 もしかしたら、むやみに動かない方がよかったかもしれない。……とは言っても結構な距離を歩いてきてしまったし、元いた場所がどこかも把握していない。

 もう一度スマホを見るが、やはり圏外。電話もつながらず、メールも届かず、ネットを使うこともできない。 最初から入っていたマップのアプリもGPSが動作せず、使い物にならない。

 やはりただの時計にしかならなかった。そもそも時計すら正確なのか怪しいものではあるが。

 スマホをしまう。とりあえずこんな街中でボーッと突っ立っているのもアレだ。行く当てもないがとりあえず歩き出す。

 ここが異世界なんだと認識した今、周りを見てみるとやはりよく似ているが、やはり異世界だと実感できてきた。

 外国よりも異質な場所で私は道なりに歩く。

 

 

 しばらく歩いていると車用に作られている青い標識に''図書館''という文字を見つけた。

 

「図書館……そうだ!」

 

 図書館なら、ただでこの世界のことが知れるし、とりあえず暇も潰せるだろう。

 図書館に入るが、ここも全く異世界感がなくて逆に驚いた。

 フレーヌのいた世界は科学がかなり進歩していたらしいし、いろんな世界があると聞くとやはり魔法が使えるような世界を思い浮かべるだろう。 しかしこの世界はやはり私のいた世界とよく似ている。

 良く言えば普通の、悪く言えば面白みのない、といったところか。

 タダで使えるパソコンを見つけ、早速インターネットを使う。

 ニュース欄には、この異世界の出来事が載せられている。 最近の出来事は私の世界とはやはり違う。

 ニュース欄にもっとも表示されているのがこのテイルレッドという文字だ。記事を見てみると写真付きでテイルレッドの戦績などが懇切丁寧に解説されている。

 

「これって……テイルギア?」

 

 テイルレッドの写真を何枚も見ているうちに気づいたが、 彼女の装甲は私のテイルギアと良く似ているように感じる。 それにテイルレッドという戦隊モノじみた名前もテイルホワイトと似ている。

 写真ばかりなのでスラスラと流し見して下までスクロールし関連記事を見てみる。

 

「テイルブルー、テイルイエロー、テイルブラック、テイルシルバー……なにこれ!?」

 

 関連記事には小さく、本当に小さくテイルレッド以外の名前が載せられていた。

 この世界にはテイルレッド以外にもツインテールの戦士がいるということなのだろうか。

 さらに調べていくとテイルレッドとテイルシルバーというロボ以外はすこぶる評価が悪かった。

 イエローは記事と写真をみるときわどい露出を繰り返し、子供に防犯ブザーを鳴らされる。

 ブラックは筋骨隆々な男達を召喚し、エレメリアンごと周りにいた野次馬を悶絶させた。

 酷すぎる……。記事が本当なら酷い以外の何物でもなかった。

 特に際立って酷いのは青い蛮族だとか、貧乳魔人だとか記事の中で使われているブルーだ。 恐ろしい表情の写真がたくさんあるし、テイルブルー対策の避難訓練を初めて最近行われたと書いてある。

 改めて、ここを異世界なんだと実感できたような気がした。

 そっとテイルブルーの記事を閉じ、再びテイルレッドの記事に戻る。

 

「ツインテイルズ……」

 

 どこかで聞いたような名前だ……。

 どうやらテイルレッドやその他全員合わせてこの世界ではそう呼ばれているらしい。しかし、ネットの記事見てるとテイルレッドのことをどこも詳しく書かれているせいで同じ内容が多くなってきた。 その癖他のツインテイルズには罵倒ばかりでネットだけじゃ全然わからない。

 

(せっかく図書館にいるんだし……)

 

 これだけの本があるんだ。もしかしたらテイルブルーのことを詳しく書いてある本や新聞があるかもしれない。

 とりあえずツインテイルズコーナーに向かい、本の物色を始めた。

 

「テイルレッドについて考察する本、テイルレッド探検記、テイルレッド読本、僕のテイルレッドたん………」

 

 ツインテイルズコーナーと書かれながらテイルレッドまみれの本棚を一つ一つ、背表紙を確認しながら横に移動していく。

 

「テイルレッド出現予測地、テイルレッドホビー情報、名探偵江戸川……あれ?」

 

 結局テイルレッドだけでツインテイルズコーナーと称するテイルレッドコーナーは終わってしまい普通の漫画のコーナーに変わってしまった。

 

「ないかー。……ん?こ、これは!」

 

 フレーヌがアニメを見始めてから原作を揃えていた新作ふぉーくーるあふたー!

 私の世界だとまだ二巻しかでていないのにこの世界だと十巻まででているのか……。

 フライングだけど、少しくらい読んでも罰は当たらないだろう。

 ふぉーくーるあふたーの漫画をあるだけ持ち、席に座ると一巻から読み始めた。

 

 

 奏が速水黒羽により異世界へと飛ばされてから数時間が経ち、現在は午後の五時を回ったところだ。

 あらゆる状況を予測し、あらゆる限りのことを尽くしてきた、しかしまだ奏が飛ばされた世界は見つからない。

 フレーヌにも焦りが見え始めていた。いや、最初から今までずっと焦り、必死に奏を捜索している。

 一人、部屋で機械を操作していると自動ドアが開き、誰かが入ってきた。

 

「奏どう?」

「志乃さん……。 すみません、まだ見つけられてないんです……」

「そっか……」

 

 志乃は学校が終わり、基地にやってきたところをフレーヌに奏のことを聞かされていた。

 聞かされてから志乃は家には帰らず、そのまま基地でフレーヌからの朗報を待つことにし、時々こうして聞きに来る。

 

「大丈夫、一応テイルギアはしてるだろうし……奏は強いから!」

「はい……」

 

 志乃の必死の元気付けもフレーヌにはあまり届いていないように見える。

 小さな声で返事をすると再び画面に向き直り、自分が予測した世界の座標を入力、テイルギアに搭載されているGPSを探し始めた。

 奏を見つけるには現状これ以外の方法は見つからない。 おまけに世界は無数にもある、一つ一つ入力し、微弱に検知できるかどうかのGPSを探すのは至難の業だった。

 疲れながらも画面と向き合っているフレーヌに志乃が歩み寄りイスの横に立つ。

 

「奏もだけどさ、フレーヌが倒れちゃったら私は悲しいの」

 

 明るく話すと、その場でしゃがみ込み今度は下からフレーヌを見上げる。

 

「頼れるなら、頼ってね!」

「ええ……」

 

 とびきりの笑顔で見上げながら言われるとフレーヌも笑顔になり先程よりも元気に、返事をした。

 

「あー!!疲っれたあぁぁ!!」

 

 フレーヌが再び画面に向き直り気合いを入れ捜索を再開しようというところで、自動ドアが開き練習着姿の孝喜が叫びながら入ってきた。

 空気を読まない登場にフレーヌも志乃も思わずズッコケそうになる。

 

「いやー、今日の練習メニューキツくてよ」

 

 肩に掛けていたバッグを壁近くの床に放り投げ肩をグルグル回し、自分の足を揉みだした。

 

「あ、汗臭いんですよ! バッグを部屋に置かないでください!!」

「はあ!?ちゃんと制汗スプレーあるだろうが!」

 

 口喧嘩のようなものが始まるとフレーヌはバッグを孝喜に押し付けるとそのまま部屋から押し出す。 つられて志乃が自分で部屋から出ると自動ドアは閉まってしまった。

 

「なーにイライラしてんだ」

 

 バッグを持ち、自動ドアの前で立ち尽くす孝喜を志乃は横からジト目で見ている。

 

「空気読めるのか読めないのか……どっちなの……」

「え?」

 

 孝喜に応えることなく、志乃はいつものテーブルに座り、スマホをクリクリと操作しフレーヌお手製アプリを開く。

 奏へと繋がる通話ボタンを押すもすぐにエラーのメッセージが表示され繋がらない。

 

「無事だよね……」

 

 自分にしか聞こえないような小さな声で志乃は呟いた。

 

 

 漫画を夢中で読んでいたら図書館の閉館時間になってしまった……。

 秋ということもあり、午後六時にもなると夜の帳が下りてきて、ほとんどもう陽などでていない。

 どうやら今日はこの世界で夜を越すことになりそうだが、寝る場所とか全く考えていなかった……。 とりあえず一日くらいは野宿くらいはできるけど、流石に毎日野宿は私とて年頃の女の子としてキツイものがある。

 騒がしい町並みを数時間歩いていると、いつの間にか閑静な住宅街へと私はやってきていた。

 何時間も歩き疲れたのでとりあえず、近くにあった公園のベンチに腰掛け、一息つく。

 この世界の秋、そんなに肌寒くなくて助かった。 この気温ならブレザーだけど、そこまで凍える心配もないだろう。

 

「ふわぁ……」

 

 心地いい風が吹き抜け思わず欠伸が出た。

 

「若いお姉さんが夜に一人じゃ危ないよ」

 

 眠くなりウトウトしていると誰かに声をかけられた。

 目の前にはシルクハットを深く被った三十代くらいの男性が立っていた。

 ヤバい、変態か? 少しだけ心で目の前の男性を警戒するが、男性は全くそんな素振りは見せずに隣のベンチへと座り帽子を取る。

 しばらくその男性は夜空を見上げ、私も空を見上げると沈黙が続く。

 赤い光を発している飛行機が一機、星の海を通り過ぎると隣の男性はゆっくりと口を開き、沈黙を破った。

 

「お姉さんまるで……この世界の人間じゃないような雰囲気だね」

 

 全てを知っている、と言わんばかりに静かに、優しく男性は言った。

 もちろん私は、

 

「え、ええええええええ!?」

 

 男性の発言に眠気は完全に吹き飛び、私は大声をあげた。

 何者なんだこの人は!?

 初めて会ったはずなのに、一発で私が他の世界から来た人だと当ててしまった。

 私が''何故わかったのか''と聞く前に男性は顔色一つ変えずにそれを答え始めた。

 

「私も、君と同じクチだからね」

「ええ!? おじさんも異世界から来たんですか!?」

「ああ、そうだよ」

 

 目を瞑り、昔を思い出しているのか男性は懐かしむような表情で話す。

 私以外にも、他の世界に飛ばされた人がいるとは、男性に失礼だが仲間ができたようでなんだか安心した気がする。

 男性は再び帽子を被るとベンチからの立ち上がり私の前に立つ。

 

「慣れないこともあるだろうし、最初は戸惑うだろう……。 そんな時、はここに来るといい」

 

 そう言うとスーツの内ポケットから名刺のようなカードを取り出し、私に差し出してくる。

 それを受け取り、見てみるとどうやらお店、それも喫茶店のようだ。

 

「君と同じ悩みを抱えている人が集まる店さ。 私も時々行っている」

「え、他にも異世界から来た人が!?」

「ああ、いるともさ」

 

 私と前の男性だけではない。 他にも異世界から来てしまった人がたくさんこの世界にはいるのか。 そしてこの世界での悩みや、出来事をこの喫茶店に集まり話し、きっと励ましあっているのだろう。

 

「あの、聞いてもいいですか?」

「ん、なにかな?」

 

 嫌な顔せずに質問に答えてくれる、この人はとてもいい人だ。

 

「おじさんは……自分の世界には帰りたくないんですか?」

「そうだね……」

 

 少しだけ生えている顎髭を触りながら目を瞑り、答えを考えているようだ。

 異世界から来たなら、私みたいに自分の世界に帰りたいと思うのが普通だと思ったけどおじさんにはそれが全くと言っていいほど感じられない。 だから、聞いてみたくなってしまった。

 

「最初は帰りたいと思ったさ」

「や、やっぱり……! そうですよね!?」

「でもね……」

 

 私の言葉を遮り、男性は顎髭から手を離しさらに続けた。

 

「でもね……この世界の人の温かさが心地よくなってしまってね。 もう戻ろうとは思っていないよ」

「そ、そうですか……」

 

 最初は帰りたいと思っていても、しばらくこの世界にいると同じ考えになっていくのだろうか。

 確かにここは私の世界とよく似ている。 普通に生活するのに不便なことはないかもしれない。

 でも、目を閉じると浮かんでくる。 志乃やフレーヌやお父さんに、お母さん、そして嵐も。 みんなが私の世界にいる限り、私はこの世界に残りたいと思うことはないだろう。

 

「それじゃあ、君は元の世界に帰れるといいね。 お互い頑張ろうね」

「は、はい! ありがとうございました!!」

 

 私がお礼を言うとおじさんはニッコリ笑い、公園から出て行った。

 不思議な人だった。 ただ、あの人が紹介してくれたこの喫茶店に行けば元の世界へ帰れる方法がわかるかもしれない。

 名刺のようなカードには地図も載っており、それによるとこの公園からさほど遠くない距離にあるそうだ。

 明日さっそく行ってみようかな。

 

「テイルオン……」

 

 誰もいないことを確認するとテイルホワイトに変身し、ひとっ飛びで民家の屋根の上へと降り立つ。

 変身を解除し念のため持っていた新聞紙を敷いてペタンと座る。するとどっと眠気が襲ってきた。

 もういい時間帯だ。

 目を閉じると、一分もたたずに眠りへとだんだん落ちていく。

 

『うっぎゃあああああああああああああああああ!!!』

 

 何処からか、夜中にそぐわない大きな声が聞こえてきた。

 疲れの方が上回っていたせいで構わず私は深い眠りへと落ちていった。




皆さんどうも、阿部いりまさです。
今回は原作の視点からみると七巻の内容となっています。
さて、異世界から来たという男性は何者なのか、その人達が集まる店とはなんなのか。
近いうちにわかると思います。
感想、質問等どんどんお寄せください!
それでは。
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