私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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FILE.35 異世界な事情と奏の手がかり

 肌寒い空気に包まれて私は目を覚ました。

 まだ秋が始まったばかりで近年は残暑がうんたらかんたらとも言われているはずが今日は結構な寒さだ。……あ、でもそれは私の世界の話か。

 スマホを取り出し時間を確認すると午前八時になったところだった。

 真夜中に眠ったにしてはいい時間に起きれたかもしれない。 まあ寝心地が最悪なせいもあるだろうけど。

 

「シャワー浴びたいなあ……」

 

 シャワーどころか歯磨きもしていない。

 汗はあまりかいていないから、さすがに一日しなかっただけで臭いはしないだろう。 口の方も、一応両手を口に被せはー、はーと息を吐く。

 屋根の縁へと移動し下を見下ろす。 どうやら近くに通行人はいないようだ。

 テイルブレスを軽くかざし私はテイルホワイトへと変身した。

 屋根から飛び降り公園の中に着地するとすぐさま変身を解き、また伊志嶺 奏へと戻る。

 昨日のおじさんにもらったカードをポケットから取り出し、地図をもう一度確認する。 距離的には、やはり歩けば十数分で着くことができるかもしれない。

 カードを手にし、時々地図を確認しながら住宅街を歩きはじめた。

異世界から来た人が集まる店、どんなところなのかとても楽しみだ。

 

 

 奏がゲートに飲み込まれ、姿を消してからまる一日が経っていた。

 一度は二人に癒してもらったフレーヌも再び焦りがそれよりも大きくなり、一日目よりもタイピングスピードが速くなっている。

 奏を必死で探しているときも、頭の中にはある考えが浮かんでくる。

 

「あの人なら……この状況どうする、あの人なら……!!」

 

 自分の世界を必死で守り、最後には姿を消してしまったツインテールの戦士。驚異的な科学力と頭脳でテイルギアを開発した彼女なら、この状況でどうやって探すかを必死に考える。

 手を止め頭を抱え、フレーヌは必死に考えるが全く解決案が浮かんでこない。

 机に肘をつき俯いていると自動ドアが開く。

 

「調子はどうだ?」

「な、なんでいるんですか!? 学校は!?部活は!?」

「今日は休みなんだよ」

 

 入ってきたのは朝早くにもかかわらず基地に駆けつけた孝喜だった。

 

「多分鍵崎も言ったろうけどさ、伊志嶺は怖いくらい強い女だよ。 テイルホワイトで闘ってきたのを見てるお前なら知ってるだろ?」

「ええ……。 一度は負けたこともありましたがその後は幹部エレメリアンを倒し、どんどん強くなっていきました」

「精神的にも、肉体的にもさ、いいとこ育ちとは思えないくらい強いんだぜ。伊志嶺はよ」

 

 フレーヌ学校に座っている椅子の斜め後ろの床に孝喜は座り込む。

 孝喜も昨日部屋を追い出されてから奏が異世界に飛ばされたことを志乃に聞き、次の日こうして早くに基地を訪れたのだ。

 

「それにお前、昨日寝てないだろ」

「……奏さんを放って、寝られるわけないじゃないですか」

 

 何も食べずに奏が飛ばされた時間からモニターの前から動かずフレーヌは奏を探している。

 

「鍵崎に言われたんだろ? お前が倒れると悲しいって。 頼れるとこは頼ってくれって」

 

 孝喜の言葉に何も返さずにフレーヌは再びモニターに向き直りカシャカシャと操作し始める。

 

「俺だって同じ気持ちだよ」

 

 孝喜はそう言いながら、コンビニのおにぎりと栄養ドリンクをフレーヌの横へそっと置いた。

 タイピングをしている手が止まり、フレーヌは椅子を回転させ体ごと孝喜の方に向く。

 

「一つ、聞きたいことがあるんです」

「おう」

 

 少しだけ顔を赤らめているが暗い室内ということもあり孝喜からは見えていない。

 もじもじしながらもフレーヌはようやく口を開いた。

 

「奏さんから以前あなたと付き合ったことがあると聞きました」

「え!?」

 

 予想だにしなかったことを言われ、孝喜は大仰に驚き、立ち上がる。

 孝喜の顔も赤くなり、バツが悪そうに視線をフレーヌから外しながら頭をカリカリかいている。

 

「どうして、別れたんですか?」

「もう知ってると思うけどよ。俺さ、ポニーテールが好きでさ、ツインテールは目の敵にしてたんだ」

 

 当時のことを思い出しているのか、孝喜は目を瞑り少しだけ下を向く。 そして目を開けると先程までと同じように椅子の後ろの床に座り込む。

「ツインテールにしてる奏をみて、言っちまったんだよ''年考えずによくそんな髪型ができるな''てさ……」

「うわ……」

 

 フレーヌ明らかに孝喜を軽蔑する目でドン引きするも孝喜は何も反応しなかった。

 孝喜にとってはこの反応は当然されるだろうとわかっている。 だから今まで、このことは極少数を除いて話したことはなかった。

 

「それでまあ、次の日に奏がツインテールをやめたばかりか腰まであった髪の毛をバッサリ切ってきて……。その日に別れを告げられたんだ」

「か、髪は女の命ですよ!?」

 

 フレーヌは思わず自分の肩までの髪をわしゃっと掴む。

 

「ああ……だからそんときから今この瞬間も後悔してる……。 あいつがツインテール嫌うようになったの俺のせいなんだよ」

 

 悲しそうな顔をする孝喜にフレーヌは何も言えずに沈黙がうまれた。

 

「奏さんはツインテールを嫌ってはいませんよ」

 

 うつむく孝喜のまえに椅子から飛び降りたフレーヌが立ち、肩に手を乗せた。

 

「説明したかどうかは忘れましたが、属性力はそれが好きという気持ちがなければ生まれません。 奏さんの心にツインテール属性があるということは、表面上は嫌っていても本当は………」

 

 フレーヌの言葉が突然止まり、何かを思いついたか椅子へと急いで戻るとモニターと向き合いまた高速でタイピングを始めた。

 

「ど、どうしたんだ?」

 

 孝喜が問いかけるとフレーヌはポケットからペンダントのようなものを取り出し孝喜に優しく投げ渡した。

 ペンダントを開けるとロングでストレートな髪型の女性が後ろ向いて立っている。 ストレートだが腰あたりの髪の毛は少しだけ逆立っておりとても特徴的だ。

 孝喜が頭の上にクエスチョンマークを浮かべているとフレーヌから話し出した。

 

「それは私の世界で闘っていた戦士です」

「ああ、そうか……ん?でもこれツインテールじゃないぞ」

 

 孝喜も最強の属性がツインテールだということ、そのためツインテール戦士がアルティメギルと闘えるということは聞かされていた。 そのため、写真の中の彼女の髪型に疑問をもつ。

 

「私が撮った頃はまだツインテールだったんです。……おそらく戦士がツインテール属性を失ったために写真の中の彼女もツインテールではなくなってしまったのでしょう」

「そんなやばいもんなのか、属性力って……」

 

 タイピングを一旦やめ、引き出しから今度はタブレットのようなものを取り出し、中のファイルを漁っていく。

 

「時間の逆行や促進を意図的に行うのはは私たちの世界でも科学の極点の先にある神の技術です」

「……つまりそれって、タイムマシンのこと言ってんのか?」

 

 少しだけ頷くとフレーヌはタブレットとパソコンのようなものを接続し、今度はモニターと睨めっこを始めた。

 

「そして属性力はそんな時間に干渉することができます」

「つ、つまり?」

 

 学校の成績が決して高くない孝喜はまるでこの話についていけていない。 いや、いくら高くてもこの世界ではこの話にはついていけないことをフレーヌが話しているのだ。

 

「あくまで私の推測、希望的観測ですが……時間に干渉できるほど強力な力の属性力なら異世界に行った人の属性力を探すのは容易いと思うんです」

「なるほど、奏のツインテール属性を探せば!」

「はい。 それでも世界は無数にあるので苦労するかと思いますが、ずっと奏さんを見つける確率は上がるはずです!」

 

 奏が異世界に飛ばされてから初めて自信たっぷりの表情でフレーヌはタイピングを始めた。

 今まで開いていたテイルギアのGPS探索ページを閉じ、本格的に世界をまたいで属性力の検知を行い始めた。

 

「あ、でも俺とのエレメリンクはゲートに入った瞬間切れちまったんだよな……」

「エレメリンクは元々機械なしに奏さんと志乃さんの間に起こった未知の現象で、私はそれを機械で管理し、任意に発動できるようにしたんです。 機械による縛りがない属性力ならなんとかなると思いますし、もしかしたらあのゲート自体が属性力をジャミングする効果がある可能性もあります」

「おお……」

 

 孝喜の不安を一蹴するフレーヌの頼もしい言葉に孝喜は感心する。

 高速でタブレットとモニター交互に操作するフレーヌを見て孝喜は邪魔しないように、と静かに部屋を出て行った。

 孝喜が部屋から出て行った後もフレーヌは手を休める気配はなく属性力を探すための準備をしている。

 

「焦っていたせいで、この考えに辿り着くまでに時間がかかったわ。 待ってて下さい、奏さん」

 

 自信のない表情はもうフレーヌはしていない。

 

 

 十数分かけ歩き、やっと私は自分の世界へと帰れる手がかりをつかめるかもしれない場所へと着くことができた。

 喫茶店なのはわかるが、看板を見ただけではなんていう名前なのかわかりづらい。 手元のカードに目を落とすと、親切にカタカナで振り仮名がふってある。

 ''アドレシェンツァ'' どうやらこれがこのお店の名前らしい。

 英語ではなさそうだ。 フランス語か、もしくはイタリア語だと思うけど、意味は後で調べておこう。

 おじさんは異世界の人が集まる、と言っていたが外観は特に特徴的なものはなく中々オシャレな個人経営の喫茶店、という感じかな。

 早速、私は喫茶アドレシェンツァの前に立ちドアを開ける。 喫茶店によくある心地いいベルの音がなるのと同時に店内に入るが、お客さんも、喫茶店のマスターも店内には居なかった。

 

「もしかして……休み?」

 

 手に持っているカードを確認するもいつが休みだとは書いていない。 それに、真ん中に並べられたテーブルや、カウンターのほうから湯気が出ているのも見えるしとても休みだとは思えないが…。

 とりあえず店から出ようとすると内側からドアの突起に札がかかっているのに気づいた。

 内側からみると''Open''という文字が確認できる。外に出て確認してみると、札には手書きで''Closed''の文字が書いてあった。

 

「あ、休みか……失礼しました」

 

 誰もいないが建物自体にペコリと頭を下げると大きくため息をつく。せっかく私の世界に帰れる手がかりを見つけられかと思ったのに、運が悪いのか私は。

 喫茶店での滞在期間、驚きの一分未満という記録を更新し少しだけショックだ。

 希望が途絶えた今、次に行く当てはない。

 とりあえずカードの地図を見ると、このお店を中心としていろいろ目印になるようなお店が描かれている。一つ一つ確認していると地図の端に駅が描いてあるのを見つけた。 ……行く当てもないしとりあえず駅へとまた徒歩で向かうことにしよう。

 先程の公園からアドレシェンツァまで十数分だったことを考え地図を見るとおそらく駅までは十分もせずに着けるだろうし。

 歩き始めたはいいが、アドレシェンツァに向かうときと同じ足で歩いていると思えないほど足が重い。 気分によってここまで違うのか……。

 重い足取りで歩き、暗い気分の私とは対称的に周りはどんどん賑やかになっていく。

 いつの間にか私は賑やかな商店街の中にいた。

 

(そういえば、私の町にはこういうのなかったっけ……)

 

 物珍しく思い周りをキョロキョロ見ながら歩いていると電気屋だろうか、ガラスケースの中にたくさんのテレビが表から見えるように展示されている。

 

「アイドルねえ……」

 

 テレビにはこの世界で人気らしい幼いアイドルのコンサート映像が流れている。

 ……やたらこの娘、メガネをアピールしているように見えるな。

 しばらくするとコンサートの映像は終わり、スタジオに画面が切り替わった。 ニュースで取り上げてたらしく生の映像じゃなかったみたいだ。

 

(行こうかな……)

 

 特に気になることもないし、さっさと駅に向かうかな。

 

『ただいま速報が入りました!! 世界遺産の富士山でテイルレッドたんが怪物と戦闘を繰り広げているとのことです!! 繰り返します、世界遺産の富士山で……』

 

 ニュースキャスターの言葉を聞き、私はすぐに歩を止めた。

 こっちの世界にも富士山が!? それより富士山が世界遺産?ゴミが多くて登録は無理だったんじゃ? いやいや、それよりもテイルレッドだ!

 今から、富士山に行けばテイルレッドに会えるかもしれないし、テイルレッドならもしかしたら私を助けてくれるかもしれない。

 可能性が少しでもあるなら、私はそれに賭けたい!

 建物の陰に隠れ、私のテイルギアを胸の前にかざした。

 

「テイルオン!」

 

 一瞬で変身が完了し、私は跳躍し建物の上へと登った。

 

「富士山はえーっと……あっちね!」

 

 テイルギアによって強化された目で微かに富士山の影を捉えると、私は再び跳躍し建物の上で走り出した。 テイルレッドに会えるなら人に見られるのなんて構いやしない。

 フレーヌがいれば、転送装置で一瞬だがここには私しかいない。 何分かかるかわからないけど、間に合えるようにと祈りながら私は富士山に向かい走り続ける。




皆さんどうも、阿部いりまさです。
おそらく次かその次あたりが奏が一番原作に近く絡んでくると思います。
感想、質問等どんどんお寄せ下さい!
それでは。
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