私の思っていた以上だ。
あっという間に私は都心を抜け、周りが木だらけになってきた。 小さく見えていた富士山も目の前にまで迫ってきておりとても雄大だ。
やっぱり、日本の顔だし富士山はいい。
高速で走るためいくつもの木が障害物となるが、自分でも驚くくらいの恐るべき反射神経で目の前に木が現れるたびに横へ移動し、どんどん富士山に向かっていく。
富士山に近づくたびにドーンドーンと激しい闘いを思わせる音が聞こえるようになってきた。 どうやらまだテイルレッド達はエレメリアンと闘っていると途中らしい、間に合ってよかった。
「よっ!」
二十メートルはあろうかという大木の太い枝へと降り立ち眼下に広がる富士の樹海を見下ろす。
「あれは……何……?」
広がる木々よりゆうに大きい、十五メートルはあろうかという動く物体が富士の樹海を動き回り、腕を振り、地面や木々を吹き飛ばしていた。
黄金に輝く羽と胴体、二本の剛腕と後ろについている双腕、龍の顎を想起させるこれまた二つの大きな角。
地球上ではありえない姿をした怪物、エレメリアンだ。
私が闘ったメガロドギルディの倍以上はある巨軀にもかかわらず動きは俊敏で、輝く羽根で飛翔と着地を繰り返している。
そのこと以外にも、驚くべきところがある。
私が知っているのは動物、もしくは植物をモチーフをとしてきたエレメリアンだが目の前のそれは明らかにそうではない。 足が六本あり、大きな角、そして羽、これらをすべて兼ね備えている生物は昆虫だ。
昆虫をモチーフとしたエレメリアンを私は初めてみた。
バカでかいエレメリアンの近くを時々炎がはしり、攻撃しているのが見える。
おそらく、ツインテイルズが闘っているのだろう。
「ツインテイルズはあんなのと闘っているの……」
クラーケギルディに負けた時以来、本気でエレメリアンを怖いと思った。
高い枝の上で足が震え出す。
(……気合いを入れろ!)
テイルレッドのような小さな女の子と仲間のツインテイルズは立派に闘っているんだ。
両手で頬をパチンと叩き、自信に気合いを入れ直す。 ……少し痛かったけど今の私にはこれくらいがちょうどいいだろう。
「あ!!」
隙を突かれたのかテイルレッドがデカいエレメリアンの右主腕にガッチリと取り押さえてしまう。 するとデカいエレメリアンは抵抗する暇を与えようとせず左手に持っている属性力奪取のリングをテイルレッドへと潜らせようと近づけていく。
「今行くよ!!」
フォースリボンをいつもより強く叩き、両腕にアバランチクローを装備する。
私が今まさに枝を蹴りエレメリアンに向かおうとした時、激しい風切り音が耳朶を叩いた。
「あれは、テイルイエローの……!」
パソコンでみたテイルイエローが脱いだ時に出来上がる装備が光弾やミサイルを次々と撃ち込み突っ込んできている。最後にはあの装備がそのままデカいエレメリアンの顔面あたりに直撃し、右手に捕まえていたテイルレッドを取り落とす。
一瞬怯みはしたものの、デカいエレメリアンはすぐに目の前にあるテイルイエローの装甲を上下の角で挟み斬ると大爆発させ、テイルイエローの装甲は木っ端微塵となってしまった。
まずい!テイルイエローはあの装甲がないとテレビコードに引っかかるギリギリの露出をしているとネットで書いてあった。 このままではまた彼女の評判が悪くなってしまう!
装甲を木っ端微塵にしテイルイエローに服を着させないようにしたデカいエレメリアンはなにやらツインテイルズと話しているようだ。
今がチャンスだ。 正義の味方としては少々汚いが今、このタイミングなら奴を仕留められる!!
今度こそ私は枝を強く蹴り、デカいエレメリアンへ猛然と滑空し向かっていく。
「隊長殿━━━━━━ッ!!!」
「ええええ!?」
突如ゲートが現れその中から奇妙なエレメリアンが現れた。
当然、空中で避ける術はなく、私とそのエレメリアンは激突し、勢いを失った私は真下の地面に叩きつけられる。
激突したエレメリアンもそのまま地面に叩きつけられたのかすぐ近くで痛みを耐える声が聞こえてきた。
頭を押さえながら立ち上がり妨害したエレメリアンと対峙する。
「痛ったあ……! あ、あんたね……!」
「痛えなチキショー! ……ん? な、なんだお前はあああああああ!!」
私をしっかりと見ると目の前のエレメリアンは大仰に驚き数歩後ずさった。
羽根に、足が六本、そして特徴的な眼と触覚。
目の前にいるエレメリアンもデカいエレメリアンと同様、昆虫のようなフォルムをしている。
やはり一線を画したデザインだ。
昆虫という種類を考えながら見た感じ、目の前のエレメリアンは蝶……だろうか。
「私はテイルホワイトよ!」
「テイルホワイトだと!? いつの間に新たな戦士が……!!」
「どうせあんたも名乗るんでしょ? 私は名乗ったからはやくして!」
言われるまま、蝶ギルディ?は素早く立ち上がり、なにやらおかしなポーズを取り始めた。
「俺は、アルティメギル四頂軍の美の四心(ビー・ティフル・ハート)隊員、モスギルディだあ!!」
だあ……だぁ……だ……。
大きく声を上げたせいで山にこだまする。
本人的には最後に最高の決めポーズを披露したのだろうか、名乗った後もそのポーズを継続したままになっている。
モスギルディ……蝶ならバタフライか、もしくはパピヨンのはずだから……モスは……確か、蛾だった気がする。 確かに、羽根も地味な茶色で蝶らしくないな。
ファストフードっぽい名前よりも、気になったのが名乗る前に言ったアルティメギル四頂軍と、美の四心という言葉だ。
私はアルティメギル四頂軍という言葉によく聞き覚えがある。
「アルティメギル四頂軍てことは……神の一剣と同じような部隊ってこと?」
「なぜ貴様がその名前を!? その部隊は自ら出撃されるような部隊ではないはず……ナニモンだ貴様は!!」
しっかりとした答えは受け取れなかったが、モスギルディのリアクションを見るに神の一剣と美の四心は同じような部隊で間違いないのだろう。 しかも、目の前のモスギルディの所属している美の四心と呼ばれる部隊よりも格上のようだ。
「……しょうがない。そこまで知っている貴様を、貴様の''アレ''を、見逃すわけにはいかねえな!! 出てこい!!」
モケモケか?
撃退体制に入るも、モスギルディは羽根を羽ばたかせあたりに鱗粉らしき粉を撒き散らし始める。
もう一度羽を羽ばたかせるとあたりに漂っていた鱗粉が凝縮され、ノートサイズの銅板へと固まっていった。
「行けえ!!」
完成された何枚もの銅板が、モスギルディの合図とともに私に殺到する。
「こんなもの!」
両手に装備しているアバランチクローで迫り来る銅板をどんどん撃墜していく。
銅板の耐久力はあまりないようでクローで一発叩くだけで粉々にすることができ、すぐに私に向かってきた銅板全ての撃墜に成功した。
「やるじゃねえか。でもよ、撃墜すんのは酷いぜ、俺の趣味なんだからよお!!」
モスギルディが一際強く羽根を羽ばたかせると奴の後ろに先ほどと同じような銅板が何十枚も出現した。よく見ると、その銅板一つ一つに何かが刻印されている。
それが何か気づいた時、私は思わず体をびくんと震わせた。
「き、きっも!」
「人のコレクションを見た最初の感想がキモいとは、なんとも失礼なやつだ。だがな、なんと言われようと貴様の唇の型をとりコレクションにさせてもらう、さすれば今は亡きあいつへの手向けにもなる」
色々と気になる発言はあったが、目の前の状況のせいであまり頭の中へは入ってこない。
銅板にはコレクションと称して、魚拓のようにキスマークが刻印されている。
「うわぁ……」
本気でエレメリアンの属性力にドン引きしてしまった。
無数の唇が空中に浮いている……ホラーだ……。なにより、キモい。
「さあ、テイルホワイトよ! 未知のお前の唇、頂こうか!!」
「誤解される言い方しないでくれる? ファーストキスもまだなのに、そんな変な銅板にキスなんか嫌に決まってんでしょ!」
「安心しろ! 近くに寄るだけで型はとれる!!キスする必要はねえ!!」
もはやこれ以上の問答は無用だ。
右のアバランチクローを肩へとスライドさせテイルブレスをモスギルディに向かって構える。
モスギルディを守るように今度はしっかりとモケモケがモケモケと現れ、守るように周りに立つ。
こんな奴のために忠義を尽くすのこのモケモケたち、実は立派なんじゃないか……?
「オーラピラー!」
テイルブレスから発射されたオーラピラーはモケモケを吹き飛ばし、いとも簡単にモスギルディの拘束を成功させる。
「ブレイクレリーズ!」
腰の装甲から蒸気が噴出され、素早くモスギルディの眼前に接近、そして相手よりも遥かに高く飛び上がる。
二つのアバランチクローを一つに合体させブレイクレリーズし、必殺技を放った。
「アイシクルドライブ!!」
目の前のモスギルディとあまりにもキモくホラーなコレクションを一緒に貫いた。
「す、すまないパピヨンギルディよ……全ての唇をコンプリート、できなかった……」
とても果たせそうのない夢を語りながら、モスギルディは私の必殺技によって跡形もなく消し飛んだ。
初めて見る昆虫のエレメリアンに結構警戒していたのだが、意外とあっさり決着はついてしまった。
そうそう、モスギルディが現れたため妨害されてしまったが私はあのデカいエレメリアンを倒そうとしていたのだ。
目を向けるとまだあのエレメリアンは大きな体を震わし、近くにいるであろうツインテイルズと闘っている。
アバランチクローを両肩にスライドし今度こそツインテイルズに加勢しようと私はまた走り出した。
しかし━━━━━━
『またれよ、テイルホワイト……!』
「またぁ!?」
目の前にゲートが現れ、その中から声が聞こえた。
スルーしようとしたが小さな敵でも変な連携でも取られると厄介だし、デカいエレメリアンに集中できないだろう。
今ここで、倒すのがいい。
なかなか出てこない敵をゲートから出てくるのを待つ。
イライラしているとようやく私を呼び止めたエレメリアンが出てきた。
「まさか……!?」
ゲートから出てきたのは白と黒が入り混じったエレメリアンには珍しいモノクロなエレメリアン、ゼブラギルディだった。
「まさかテイルホワイトがこの世界に来ているとは……ヘラクレスギルディ様の邪魔はさせんぞ!」
ヘラクレスと言ったら……ヘラクレスオオカブト、女の私でもそれくらいは知っている。
ヘラクレスギルディ様というのは姿形から考えておそらくあのデカいエレメリアンのことだろう。
そんで、さっきのモスギルディの言動から察するに、ヘラクレスギルディが美の四心の隊長、ということかもしれない。
「好きで来たんじゃないし。ていうかはやく帰りたいくらいなんですけど」
ゼブラギルディとは一回闘ったことがあった。 その時はオルカギルディが邪魔してきて仕留めそこなったが、邪魔が入らなければ今度こそ奴を仕留めることができる。
「俺らもいるぞ!」
「クラーケギルディ部隊は一連托生!ゼブラギルディだけではない!!」
私の周りに次々とゲートが作り出され、中から一体ずつエレメリアンが出現する。
ま、私の思い通りばかりに行くわけもないか。
クラーケギルディは倒されたと聞いたが、それでもこの部隊は存在し、一連托生とまで言った。
まったく……変に人間的で、騎士道や武士道を重んじる姿勢は人から属性力を奪う怪物にはとても思えない。
ゼブラギルディ含め計五体のエレメリアンが私の周りを取り囲んでいる。
「お前ら……。 よし!我ら全力でテイルホワイトの属性力を頂くのだ!!」
ゼブラギルディに反応し、周りのエレメリアンは力強く返事する。
私を倒すのに、それだけ尽くすのなら……私はそれ相応に応えなければいけない。
「そこまで闘志を燃やしているのなら、私も全力を尽くすのが礼儀、だね!!」
アバランチクローを両肩から再び両手にスライドし、装備し構える。
モケモケや幻を大量に相手した事はあるが、エレメリアン自体を何体も相手にした事は私にはない。
「うおおおおおおおおおお!!!」
「はあ!!」
一体のエレメリアンが雄叫びをあげ突進してくると、私はそれを避けそのエレメリアンを蹴飛ばす。 蹴飛ばされたエレメリアンはそのまま他のエレメリアンへと突っ込んでいった。
もちろん、これくらいで倒せるわけもなく二体ともにすぐに立ち上がりジリジリと私に詰め寄ってくる。
「さあ決着をつけるぞ!! 我らクラーケギルディ部隊の力、とくと味わえ!!」
ゼブラギルディの掛け声で周りのエレメリアンが一斉に私に向かい攻撃を開始した
皆さんどうも、阿部いりまさです。
今やっている話は原作七巻の内容を奏視点から送っているものです。
もちろん二次創作なので「裏ではこんなことがあったんだろうなあ」という感じで書いております。
異世界で再開したゼブラギルディとの対決はどのような展開を迎えるのか。
そしてテイルレッドとの共演は!?
次の回も戦闘が多くなりそうですがご了承ください。
次回は2月29日に投稿されます。
それでは。