どちらも素手で、正真正銘、一対一の真剣勝負''タイマン''が始まった。
私が大股歩きで近づくとゼブラギルディも同じようにして歩み寄り……拳と拳の乱打戦が始まる。
「はあああああああああ!!」
「うおおおおおおおおお!!」
私は小さい頃から今までに、殴り合いの喧嘩なんてしたことがない。 誰かを殴ったのはテイルギアを纏い、アルティメギルと闘い始めてからだ。……反射的に嵐は殴ってしまったが。
フォトンアブソーバーにより、大部分のダメージは減らしてくれる。 しかし、今のテイルギアはあちこちから放電が始まりフォトンアブソーバーも弱まっているのか、ゼブラギルディの攻撃が結構身体にくる。
でも……一人っ子で、全く喧嘩をしたこともない私は今始めて経験するこの状況をなんか……楽しんでいる!
「どうしたテイルホワイト! お前はそれほどの力だったかあ!!」
残念だが、手数の多さではゼブラギルディに分がある。
ゼブラギルディは元々武器を持たずに闘う戦法をとっている。 がむしゃらに殴りつけてくるように見えてもその先を見越しているのだろう。
対して、私はテイルギアを装備してからはアバランチクローなどの武器に頼りきって闘ってきた。 そこで生まれた僅かな差が、大きく私にのしかかる。
爆撃なような連打を浴び、私は大きく後ろへ吹き飛ばされた。
「痛った……」
身体中が痺れる。
殴り合いの中で何発身体にゼブラギルディの拳が入ったかはわからないが、相当痛めつけられている。
それに、テイルギアもそろそろ限界だ。 この短時間に全力を出し尽くして闘ってきたせいか。
一旦変身を解き、再び装着すれば多少は勝手に修復してくれるが今はとてもそんなことしている暇なんてない。
「無理だ死ぬ━━━━━━━━━━━━っ!!」
突如私の後ろから少女の叫び声が聞こえてくる。
まさか、属性力だけでなく人の命まで狙うエレメリアンがいるとでも言うの!?
できればいち早く向かいたいところだが……。
「大袈裟なリアクションをする娘もいるものだな」
ゼブラギルディは傷ができた胸部を腕で抑えながら、達観しているようだ。
「あんた達、人の命はとらないって断言できるの?」
「できる! 俺らが狙うのは属性力のみだ!!」
調子が狂うな……。
どっちにしても、近くにいる少女がピンチなのは変わりないだろう。
エレメリアンに襲われている少女を救うため、テイルレッドに会いに行くため、負けるわけにはいかない。
フラフラとしながらも何とか私は立ち上がった。
「お前は、ツインテールが嫌いと言ったな。……ならお前のツインテールは、お前にとって、ただの髪型でしかないと言うのか!?」
以前の私なら、当たり前だと即答していただろう。
いや、今でもそう思うよ。ツインテールなんて所詮ただの髪型であることにかわりはないんだから。
「もちろん、ただの髪型に決まってるじゃん……」
でも、私にとってはただの髪型でもね、私の世界で、私を応援してくれている人達にとって……私のこの……ツインテールは……。
「でも、みんなにとっては希望……」
堂々と宣言する。
「私のツインテールは━━━━━━━━━希望!!」
瞬間、テイルブレスから眩いばかりの光がはしり私を取り囲む。
光の繭から解放されると私のテイルギアは完全ではないが修復され、放電が止まっていた。
「お前のツインテール属性、何故か俺には見えん。それは他の仲間も同じだろう。しかし! 今の一瞬、太陽のように眩いツインテール属性を確かに見た!!」
太陽、か。
地球だけでなく、近くの星を熱いくらい照らし続ける太陽に私はなれるのだろうか。
でも、私は━━━━━
「そんな大層なツインテール、絶対ごめん」
「ほう……!!」
「私はね、ツインテールが大っ嫌いなんだから!!」
これが私の答えだ。
太陽になったしまったら、ずっと照らし続けなければならない。 そうなると、ツインテールを解くことが出来なくなってしまうじゃないか。
「面白い……今始めてクラーケギルディ様がお前の世界へ俺を送った理由がわかった気がする……」
修復されたと言っても、結局は少しだけ壊れるまでの時間が延びただけだろう。
どのみちはやく決めなければいけないことに変わりはなかった。
次の一撃できめる。
直後、咆哮とともにゼブラギルディが突進してきた。
「属性力を頂くぞ!テイルホワイトオオオオオオオオオ!!!!」
繰り出された右ストレートを低い姿勢で交わすと一瞬の隙をつき、真下から砲弾のようにゼブラギルディにアッパーを食らわした。
怯んでいる中、回し蹴りによる追い打ちをかけ、ゼブラギルディを吹き飛ばす。
フレーヌはテイルギアは私の意思で御せない道理はないと言った。
「ブレイク……」
なら、アバランチクローがなくとも私の期待に応えてることができるはずだ!
「レリ━━━━━━ズ!!」
「うおおおおおおおおおお!!」
地面に着地し、すぐにまた私に向かい突進してくるゼブラギルディ。
「アイシクルゥゥゥゥゥ!ドラァァァァイブ!!」
眼前までゼブラギルディが接近してきたところで、私は右手で渾身の一撃を奴の左の頬の部分へ叩き込んむ。
ゼブラギルディが吹き飛び、地面に叩きつけられた衝撃で小さなクレーターが出来上がり、その周りには地割れが起こる。
その瞬間、ダメージを受け続け、最後に限界を超えた衝撃を与えたことで右手についているテイルブレス以外の装甲が砕けてしまった。
異世界で再開し、死力を尽くした闘いはここに決着した。
「はは……最後は……必殺技でも何でもない……ただのパンチとは……」
身体から放電が始まり、まさに今爆発しようかという時にゼブラギルディは満足そうに笑う。
結局必殺技名は叫んだが、通常通りにアイシクルドライブをすることは出来ずただのパンチになってしまっていた。だけど、それでも並の威力ではなかったのは自分でもわかる。
「ツインテールは希望、か……まるで……テイルレッドのようなことを……言う……」
「テイルレッドが?」
「ああ、テイルレッドはツインテールを守る……ついでに世界を守ると宣言しているほどの強者よ……」
なんだそれは…………。
そういえば、ツインテール好きじゃないと戦士になれないんだっけか。
テイルレッドはその中でも別格、ツインテール馬鹿とでも言うべきかもしれない。
或いは小さい娘だからこそ、ツインテールにすること自体なんのためらいもないのかもしれない。
少しだけ……羨ましい気がする。
「どうやら……あちらの闘いも……終わりそうだ……」
震える腕を上げ、私の後ろを指差すゼブラギルディ。
視線を向けると先程よりもさらに赤く光っているヘラクレスギルディが突如上空へ押し上げられていく。
テイルイエローが必殺技を繰り出したようだ。イエローとヘラクレスギルディは銀河を一直線にて突き抜けるような、一筋の流星となると富士山を超え宇宙へと昇っていった。
「帰ってこれるのかな……」
心配になり思わず口にしたが、よく見ると地面からリードのようなものが宇宙に続いているのが微かに見える。
あの紐を使って戻ってくるのだろうか。
それよりも、気のせいかイエローの露出が増えていたような……。
「クラーケギルディ部隊はこれで完全に消滅するわけか……」
「……」
クレーターの中心で大の字になり空を見上げ、悲しそうな声を絞り出す。
「今行きますぞ……クラーケギルディ隊長……」
最後に満足そうな顔を浮かべるとゼブラギルディは爆発し、私のもとへ導かれるように襟巻き属性(マフラー)の属性玉がふわふわと飛んできた。
「女の子は……」
女の子を助けようと思ったが樹海はシーンと鎮まり返り、全てが終わったことを示していた。
テイルレッド達が助けてくれたのだろうか。
テイルレッドと女の子を探すべく、私は衝撃でできたクレーターを登っていく。
「え」
なんとクレーターを登りきるとすぐ近くに、私が吸い込まれた極彩色のゲートが生成されている。
確かここは……ゼブラギルディやとその他エレメリアン達がゲートを使い現れた場所だったはず。……もしかしたら爆発とかのせいで勝手に開いてしまったのかもしれない。
……フレーヌならこの現象を詳しく説明できるんだろうけど私じゃ全くわからないな。
とりあえず、このゲートに入るか否か。
運が良ければ私の世界に帰れるかもしれないし、運が悪ければまた別の世界へ行ってしまうかもしれない。
でも、このゲートを捨ててテイルレッドに頼ったとしても私の世界へ帰れるのだろうか。
「なんとなくだけど……」
本当になんとなく、このゲートに入れば私の世界へ帰れるような気がする。
右手のテイルギアも、なんだか帰れるよう手助けしてくれるような、そんな気がしてくるのだ。
「よし」
覚悟を決め、私はゲートの前に立つと振り返り、戦場となった富士山を眺める。
この世界では世界遺産に登録されたとかテレビで見たけど、だいぶ荒らしてしまった、申し訳ない。
テイルレッド……こんな形じゃなく今度はフレーヌに連れてきてもらっていっぱいお話ししたいな。
遠目でしかみてはいないが、彼女のツインテールはとても輝いていたと思う。
彼女だけじゃない、露出狂扱いのイエローも、マッチョ使い扱いのブラックもそして、蛮族扱いのブルーも全員がツインテールを愛している。 それはもうツインテールが嫌いな私にビンビン伝わってくるくらいにね。
そしてみんな、本当は優しい人たちなのだろう。
……もしかしたら、速水黒羽が言っていた課題ってこういうことだったんだろうか。
「テイルレッド、いつか会おうね!!」
ツインテールが大好きなテイルレッドと大嫌いな私、話が合うかはどうかわからないけどね。
富士山に向け思いっきり叫ぶと私は変身を解き、極彩色のゲートへと飛び込んだ。
私の世界へ帰るために。
◇
奏の探し方を変え、各世界の属性力を辿っていくも、状況は変わらなかった。
奏がゲートに吸い込まれてからもう少しで二十四時間が経とうとしていた。
「……属性力が全く検知できない」
悔しそうに表情を歪めるフレーヌ。
探し方はわかった。わかったのだが、そこまでだった。
「フレーヌ……」
「……」
フレーヌの後ろで志乃は心配そうに呼びかけ、孝喜はフレーヌの心情を察してのことか何も言おうとはしなかった。
嫌な空気が流れたまま、時は過ぎてゆく。
機械音しか聞こえない基地に突如、荒々しくアラームが鳴り響いた。
「エレメリアン……!?」
フレーヌがモニターの映像を切り替え、出現したエレメリアンを表示した。
エレメリアンがいるのは、奏が初めてテイルホワイトに変身した場所、ビクトリースクエアだ。
「速水黒羽は奏がいない間は属性力狙わないって……」
「ええ、言っていました。 私もあまり信じてはいませんでしたが、以外と早く攻めてきましたね」
フレーヌはモニターから立ち上がると机の引き出しを開け、何やら探し始める。
「何してるの?」
「私が直接エレメリアンに速水黒羽を呼び出すよう説得し、速水黒羽が現れたら奏さんをこの世界に戻してもらうんです。 今はこれしかありません」
時間に干渉できるほど強力な属性力に絞り奏を探しても見つからない。
ならば、最後の手段として奏を別世界へ送った張本人に戻してもらうこと、この方法でしか奏をこの世界へと戻すことは不可能だとフレーヌは判断した。
「私たちも行くよ」
志乃はフレーヌの横に立ち、真剣な表情だ。
「危険です」
目を合わせることなくフレーヌは引き出しを漁ったまま返事をする。
誰にでも''ついて来るな''の意を込めてフレーヌがそう言っていることはわかった。
「だから俺らも行くんだよ、自分より年下の奴を一人で危険なところになんか行かせられるか」
いつのまにか部屋に入ってきていた孝喜も志乃と同じようにフレーヌの隣に立ち、優しい言葉をかける。
「私たちだって奏に早く戻ってきてほしいからさ、一緒に行こうよ」
小型の銃のようなものを取り出すと引き出しを閉じ、椅子から降りると今度はロッカーを開ける。
中にあった白衣を着るとフレーヌは二人の元へと近寄り深く頭を下げた。
「お願いします……」
志乃と孝喜は互いに顔を見合わせフッと笑うと空間跳躍カタパルトへと向かった。
「おーし、伊志嶺を取り返すぞ」
意気揚々と孝喜がカタパルトへと入ろうとしたが、フレーヌに腕を掴まれ、止められた。
「私たちがテイルホワイトの関係者だとバレるのは危険です。 一応これをしてってください」
そう言ってフレーヌは顔を隠すためのものを二人の前へと出す。
「……これを?」
少しだけ苦笑いを浮かべながら志乃と孝喜は渋々受け取り、顔につけカタパルトへと入る。
「では、向かいます!」
フレーヌがカタパルトの中からリモコンで操作し、三人はビクトリースクエアへと転送された。
皆さんどうも、阿部いりまさです。
まずは、期待していただいていた方達にごめんなさい。
今回はテイルホワイトとテイルレッドの共演はなりませんでした。
しかし、まだ物語は終わったわけではありません。
必ずいつか、きっといつかテイルホワイトがツインテイルズと相見える日も来るかもしれません。
感想、質問等どんどんお寄せください!
それでは。