私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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一年振りの更新………。
マイペースどころじゃないですね……。


FILE.39 帰還

 休日とイベントが重なったこともあり、ビクトリースクエアはかなり混雑している。 しかし、エレメリアンが出現したにも関わらず人々は避難もせず普段通りにイベントを楽しんでいた。

 

「おかしいですね……。 エレメリアンが出現したはずなんですが……」

 

 カタパルトで人目のつかないところへと転送され会場まで来ていた三人はキョロキョロと周りを見渡す。

 

「あそこは?」

 

 何か見つけたのか志乃が声を上げ指を差す。

 二人がその方向を見てみると周りよりさらに人が集中している場所がある、その中心にいるのは……エレメリアンのようだが。

 エレメリアンがいるにも関わらず、周りの人々は高価そうなカメラやらスマホやらを持ちその場所へどんどん集まっていく。

 三人も続き、エレメリアンのいる場所に向かうとフレーヌが何かに気づいたように話しだした。

 

「あのエレメリアン、カメラを持っています!」

 

 確かに大きな鎧を前につけたエレメリアンは周りの人と同じようにカメラを持ち、目の前にいる女性を撮っているようだ。

 

「エレメリアンに人が集まっていたんじゃなくて、人混みの中にエレメリアンが自分から入っていたのね……」

 

 エレメリアンの目の前にいる女性は今巷で話題のアニメに出てくるキャラクターのコスプレをしている。

 全体的にピンク色で胸と下半身が隠しているだけのほぼ意味のなさそうな防具、ビキニアーマーを着ていた。

 周りにいる人達は皆色々な角度からコスプレイヤーを撮影し、女性は時々リクエストに答え色々なポーズを決めていた。

 

「うおおおおおお!!!こっちを向いて第三章の最後にやる''きゃるるん♪ポーズ''をしてくれい!!」

 

 例えリクエストしたのがエレメリアンだろうと女性は臆することなくポーズを決めフラッシュを浴びている。

 恐るべし、コスプレイヤーの意地。

 

「いい加減にしなさいエレメリアン!! そこのあなた達も!」

 

 フレーヌがコスプレイヤーに集まる人混みに飛び込み大声を上げるとエレメリアンの近くにいた人々は一斉に散らばり出し、あたりにはエレメリアンと三人だけが残った。

 

「ぬう、邪魔しやがって……。 まあいい、我が名はシェルギル……何!?」

 

 しょんぼりした後、シェルギルディは顔を上げアルティメギルお決まりの自己紹介するも、フレーヌ達を見て驚くと大仰に飛び上がり腰を抜かしてしまった。

 

「貴様ら、そそそ、それはテイルホワイトのお面か!?」

 

 あまりの恐怖のためか、シェルギルディの声も震えている。

 

「ええ、顔を見られるわけにはいけませんので」

「ぬう……びっくりしたぞ!出来の悪いテイルホワイトの顔が三つもあるのだからな!!」

 

 シェルギルディは手首あたりにある二つの貝をカスタネットのようにカチカチとならし大声を上げた後、腕を組むと左右と後ろにそれぞれ大きな黒い渦を作り出し、中からアルティロイドを出現させた。

 

「テイルホワイトがこの世界にいない事は知っている!さあアルティロイド達よ、属性力を頂くのだあ!!」

「モケ━━━━」

 

 シェルギルディの指示を受け、十数体のアルティロイド達はシャボン玉のような物を発射する銃を乱射し、ビクトリースクエアにいる人達を次々と捕まえ、シェルギルディの近くまでフワフワと連れていく。

 

「所詮ツインテールの戦士でないお前達には何もできんぞ!! ぬわっはははははははは!!!」

 

 ツインテールの少女達が次々と大きなリングに通していく様をただ見ている事しかできない状況に三人は歯を噛みしめる。

 

「やはり、速水黒羽がやったことはアルティメギルの作戦だったんですね!?」

 フレーヌは腕組みをして高笑いするシェルギルディに声を張り上げた。

 

「む……。もしかして我々の中の誰かがテイルホワイトを別の世界へと送り込んだのか……?」

 

 全く覚えがない。

 シェルギルディは暗にそう答え、顎に手を当てて考えているようだ。

 

「とぼけやがって! 早く速水黒羽とか言う奴を連れてこいよ!!」

「や、やめろ、その顔で怒鳴るな!! 気味が悪い!!」

 

 品質が悪い故か、一つ一つの顔が微妙に表情が違うのも恐怖心を掻き立てる。

 フレーヌが強く拳を握り締めた時━━━━彼女の持っている端末のアラームが激しく鳴り響く。

 画面に表示される、左右対称の美しい紋章。

 

「まさか……ツインテール属性!?」

 

 フレーヌが端末に表示されている属性力に驚いた刹那、上空に大きな穴が開き異空間が現れた。

 中から大きな流星のような物がフレーヌ達とシェルギルディの間に突き刺ささり、あたりに砂埃が舞う。

 

「な、なんだと!?」

 

 シェルギルディがありえない状況に驚愕する。

 

「よかった……」

「信じてたぜ……!」

 

 次に志乃と孝喜が安堵の声を漏らす。

 砂埃がだんだん晴れてくると、そこにはこの世界のツインテール戦士テイルホワイトが悠然と立っていた。

 

 

 とりあえず、帰ってはこれたらしい。

 でも、周りは酷いあまりにも酷い光景だ。

 ビクトリースクエア、またここでエレメリアンを好き勝手させてしまうどころか、たくさんの人のツインテール属性を奪われてしまっている。

 だけどまだ、間に合う……早いとこあの輪っかを破壊すればこの場にいる人のツインテール属性は返すことができるだろう。

 

『奏さん、無事で……本当にご無事で良かったです!』

「ただいまみんな、ただまず先にあの貝をやっつけるからね!」

 

 一度変身解除したことで完全には直ってないにしろテイルギアは多少修復されてるし、この一体を倒すぐらいならもってくれるだろう。

 

「まさか、このタイミングで現れるかテイルホワイトよ!」

 

 貝ギルディはカチカチと手元の貝をカスタネットのように鳴らし……威嚇しているのだろうか。

 

「少し遅かったな、見ての通りこのイベント会場にいたツインテール属性はもちろんの事、我シェルギルディが崇拝するコスプレ属性も頂いておいたのだ!」

「じゃあすぐに返してもらわないとね……!」

 

 私がそう言うとシェルギルディは漆黒のゲートを至る所に生成、現在いるモケモケに加えさらに数十体のモケモケを私の周りに出現させた。

 一体ずつ倒していってもきりがない、なら''アレ''しかない!

 テイルブレスをつけている右手を高く上げ、祈る。

 頼むよ、志乃!!

〈三つ編み(トライブライド)〉

 刹那、エレメリンクが発動し、私はトライブライドに変身しフロストバンカーを装備、真上に光線を発射した。

 光線は上空で弾け、流星群のようにあたりにいるモケモケ直撃しあっという間にモケモケを全滅させた。

 やっぱ多数相手にはこれが効くね!

 残った光線がシェルギルディに直撃するが全くダメージを受けている様子はない。

 次にすぐさま狙いを属性力奪取のための輪っかに定め光線を発射、輪っかは粉々になりあたりにいる人たちに属性力の雨が降り注ぐ。

 そして、すぐにまたテイルブレスを掲げ祈る。

 頼むよ、嵐!!

〈ポニーテール〉

 さらにエレメリンクが発動、ポニーテールへと変身した瞬間シェルギルディとの間合いを詰め、ブライニクルブレイドを一閃した。しかし━━━━

 

「ふっははははは! 我は頑丈さが自慢なのだ!! 」

 

 擦り傷一つ、シェルギルディの鎧にはついていない。

 光線はダメ、斬りつけるのもダメ、なら叩いてみればいい!!

 

「はああああああああ!!!」

 

 シェルギルディ目掛けてブライニクルブレイドを全力のフルスイング。

 ガンッと鈍い音がしたと思うと今度はガラスの割れるような音が聞こえ、シェルギルディの前についていた貝殻を粉砕した。

 

「ぬうおおおおおお、我の、我の殻がああああああああああ!!!!」

 

 トドメだ!

 シェルギルディが怯んだ隙にブレイクレリーズし、シェルギルディの眼前へと移動し必殺技を決める体制へ移る。

 

「ブライニクルウゥゥ!!!スラ━━━━」

「━━━そこまでよ」

 

 斬りつける直前、横から出てきた漆黒の剣によって私の必殺技は防がれてしまった。

 慌てて私は後ろへ跳び、漆黒の剣の持ち主から距離をとる。

 

「意外に早かったわね」

「速水黒羽……!!」

 

 速水黒羽はシェルギルディの前に立つと手に持っていた漆黒の剣を消滅させ、余った手を白いローブの中へとしまう。

 

「それで、私の課題は達成できたのかしら?」

 

 課題が、他のツインテール戦士を見てこいと言う事だとしたら私は━━━━

 

「どうかな、ただものすっごいツインテールバカを知った」

 

 私の返しに少し考える仕草をした後、速水黒羽はフッと笑い神の一剣の証である白いローブを脱ぎ捨てた。……テイルイエローのせいで少し身構えてしまった。

 

「私は神の一剣の速水。下がりなさいシェルギルディ、私がこの子の相手をするわ」

「な、なに!? 人間の小娘が神の一剣などと、信じられると思うか!!」

 

 シェルギルディの反応を見るに、速水黒羽が自分たちの仲間だと気づいていないみたいだ。 信じられていないシェルギルディは素直に引こうとせず、速水黒羽に反論を続ける。

 

「下がりなさいと言ったのよ?」

 

 目にも止まらぬ速さで、速水黒羽はシェルギルディの眼前へと漆黒の剣を突きつける。

 

「ぬう……オルトロスギルディ様以外にも神の一剣のお方が来ていたとは……しかも小娘が……」

 

 そう言うとシェルギルディは納得したのか、そそくさと極彩色のゲートを生成し、消えていった。

 

「これで邪魔者はいなくなったわ、一度じっくり話をしたくて」

「私は別にしたくないけど」

『どうせまたツインテールについてのことだろ』

 

 嵐が多少呆れたような声で話す。

 私もそうだと思う。 また、私がエレメリンクを使って闘っているのに苦言を出すつもりなのだろう。

 

「しょうがないわね……」

 

 速水黒羽がローブから手を出すと再び、彼女の手に黒い影が集まり漆黒の剣が現れた。

 

「少し頭を冷やしたらいいわね」

「!?」

 

 一瞬で私に近づき耳元で囁くと漆黒の剣を振り下ろす。 なんとか間一髪のところでブライニクルブレイドで防ぐことができた。しかし、受け止めただけで威力を殺しきれずに地面を抉りながら後退する。

 

「ちょっとは強くなった?」

 

 明るく話す速水黒羽には余裕が見える。

 

「ええ、少しはね……」

 

 事実、前に撤退を余儀なくした時ほどの絶望感や大きな差は感じない。 ただそれでも、実力の差は明確だ。

 私の返答を待たずして再び接近し、ブライニクルブレイドと漆黒の剣が再び交わるとあたりに突風が巻き起こる。

 

「うっ!!」

 

 なんとか速水黒羽についていけていたがそれも長くはもたずブライニクルブレイドは私の手から弾かれる。

 

「はああああああああ!!!」

 

 武器がないならゼブラギルディのようにこのままパンチを繰り出すだけだ!!

 

「なら私も……」

 

 速水黒羽は自分の剣を放り投げ、自らも拳を突き出してきた。

 光の渦を纏った右腕を速水黒羽の左ストレートに合わせる。

 

「きゃあああっ!!」

 

 元々傷んでいた所為もあるだろう、私のテイルギアだけ右腕の装甲が砕け、後ろに吹き飛ばされる。

 

「いいパンチね」

 

 砕けた装甲を顔に受けながらも瞬きすることなく速水黒羽は私を賞賛する。

 私はそのまま地面に打ちつけられる。

 ゼブラギルディの比ではなかった、満身創痍な私に対して速水黒羽は私を賞賛できるくらい余裕があるのだ。

 痺れる右手を抑えながら立ち上がり、近くに落ちていたブレイドを持ち再び黒い少女へと疾駆する。

 両手で目一杯力を込めブレイドを振り下ろす。

 

「無駄よ」

 

 しかし、いとも簡単に速水黒羽は素手で受け止め力を込めるとブレイドは真っ二つに折れてしまった。

 

「あんたたちアルティメギルに、私の世界を侵略させてたまるもんかああああ!!!」

 

〈三つ編み(トライブライド)〉

 トライブライドへと変身した瞬間今度は無数の光線を速水黒羽目掛けて発射し次々と命中していく。しかし、煙の中から速水黒羽が現れ、今度は左足でフロストバンカーに蹴りを入れてくる。

 

「そろそろ話を聞く気になったかしら?」

 

 周辺の装備よりもさらに強固なフロストバンカーがひと蹴りで粉々になり、また私は飛ばされ地面に叩きつけられた。

 速水黒羽は……息切れすら起こしていない。

 信じられない、ここまで力の差があるなんて……。

 

「ほら、あなたの仲間が来たわよ」

 

 確かに、視界の端に三人が走ってくるのが見えた。

 

「奏さん!!」

「奏!!」

「伊志嶺!!」

 

 フレーヌと志乃に両腕を持ってもらいなんとか上体を起こした。

 

「いくらなんでもやりすぎだろ!!」

「闘いなんてこんなものよ。 だから覚悟が必要なのよ、自分がボロボロになっても守る為の覚悟がね」

「なんだとぉ!?」

「やめて嵐。速水の言う事は……最もだから」

 

 詰め寄ろうとした嵐は私の言葉を聞き、この場で強く拳を握る。

 速水黒羽はその様子を見てから近くに落ちていたローブを拾いパンパンと叩くと、再びそれを装甲の上に着用した。

 

「全員いるし、丁度いいわね」

 

 こちらを向き、笑みを浮かべた。

 

「ええ、話したい事って何」

 

 速水黒羽は私の言葉を聞くと笑みを辞め、二、三歩私達に近づき、

 

「え?」

 

 頭を下げた。

 

 

「私と一緒に、アルティメギルを潰して欲しいの」

 

 

 顔を上げた速水黒羽の目は真っ直ぐを見据えており、嘘偽りがない事を示すには充分だった。

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