私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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FILE.40 速水黒羽の真実

 エレメリアンの襲撃によりイベント目的で来ていた人達はすっかりいなくなり、あたりに見える人影は私達しかいない。

 なんとか自分の世界に帰ることができた私はシェルギルディが人々から奪っていた属性力を取り戻すことができた。 しかし、シェルギルディにトドメをさそうとしたところ私を異世界に送り込んだ張本人の速水黒羽が妨害に入りトドメはさせなかった。

 私は今度こそ速水黒羽を倒してやろうと戦闘を挑むも、結果はこの状況。 私のテイルギアはあちこちから放電が始まり今のにも壊れてしまいそうだ。 対して速水黒羽の武装は放電しているどころかヒビさえ入っていない。

 私は、速水黒羽に力の差を見せつけられる形となってしまった。

 だが速水黒羽は私から属性力を奪おうとはせず、抵抗する気力のない私達四人を前にして衝撃的な発言をした。

 

「私と一緒に、アルティメギルを潰してほしいの」

 

 私達に頭を下げ、自分に協力してくれと頼んだのだ。

 当然私も、フレーヌ達三人も動揺を隠せない。

 

「あなた、自分が何を言っているかわかってるんですか?」

 

 当然、フレーヌも信じられないと言った表情で速水に問いかけた。

 そうだ。アルティメギルに属している彼女が放った言葉の意味、それ即ちアルティメギルへの反逆、ということだ。

 

「だいたい、お前は俺たちの敵だろうが。そんな奴にいきなり手を貸そうってのは無理があんじゃねーの?」

 

 嵐が言う事はもっともだ。

 私の前にいきなり現れ、攻撃を仕掛け、さらには異世界へと飛ばしたのは他でもない速水黒羽だ。

 

「今まで散々、奏の事を攻撃して来ておいて急にそんな事言われても……」

 

 志乃も速水の圧倒的な力を、私と闘っているところを見ていたからこその言葉だろう。

 三人に遠回しに''無理だ''と言われていても速水はまだ頭を下げたまま、上げようとはしない。

 確かに、ついさっきまで私は速水黒羽というアルティメギルの一員に苦しめられてきた。

 みんなと同じ、私だってすぐに返事ができるわけがない。

 でも、聞いておきたい。

 

「だったら、教えてくれる? 何故今までアルティメギルにいたのか、何故今、私達に協力を頼んだのか……」

 

 そう言うと速水は頭を上げ私達の顔を真っ直ぐ見つめた。

 大きく深呼吸をすると同時に、速水の体が光り出し、光の中で彼女のフォルムが変わっていく。

 程なくして彼女は三メートルあるかないかぐらいへの怪物、エレメリアンへと変身した。

 私達四人は予想だにしていなかった事態に誰も声を出せず、ただジーッと驚愕したまま目の前のエレメリアンを眺めている。

 

「私は元々、影だった」

 

 そして声は変わらずに、彼女は自分の生い立ちや、これまでの事を話し始めた。

 

「私はオルトロスギルディというエレメリアンが作り出す分身に過ぎなかった。 でも、ある世界を侵攻している時に影であるはずの私にこうして自我が宿った」

 

 自分の大きく筋骨隆々な手を見ながら彼女は続ける。

 

「自我が宿った後もオルトロスギルディの分身として、アルティメギルの一員として私はたくさんの人のツインテール属性を奪っていった。 ただ、一人のツインテール戦士の属性力を奪った時に私に一つの疑問が生まれた。 ''ツインテールへの愛が本当に人々から奪う事なのか''ってね」

 

 再び、彼女は光に包まれ今度は私達と同じぐらいの人型へ、速水黒羽へと変身した。

 

「その想いが影であるはずの私をこの姿へ、最終闘体へと進化させたのよ」

 

 最終闘体、確かシャークギルディがメガロドギルディに進化した時もそのような事を言っていた気がする。

 人間になる事さえ、可能というのだろうか。

 

「私は嬉しかった、もう愛でる為にツインテール属性を奪う必要はなくなったから。 そしてそれと同時に、無数の世界の属性力を守りたいと考えるようになったわ。 そこで、アルティメギルが意図的にツインテール戦士を作り出す事を逆手に取れないかと思い、すぐに実行に移したわ」

「ま、まさか……!?」

 

 何かに勘付いたのか、フレーヌは急に立ち上がり声を出す、その手は微かに震えている。

 

「ドラグギルディ部隊によって属性力を狩り尽くされようとしていた世界で、私はその世界の戦士が開発した''テイルギア''の存在、戦士が基地として使っていた場所を知った。そしてその世界で属性力を失っていない数少ない人間の少女を見つけ出し、テイルギアや世界間航行技術の情報とともにその少女を基地へと匿った。 いつかアルティメギルを脅かす戦士とそれを導ける科学者が現れる事を願って……」

 

 エレメリアンに侵略された世界に、テイルギア、少女というのは……まさか。

 私の思い当たる人物は驚きを隠しきれない表情でまたペタンとその場にしゃがみこむ。

 もしそうなら、速水が私達に協力を申し出てきたのは……。

 

「私の願いが、叶ってくれた……」

 

 速水はその少女と思われる人物の前に立つとしゃがみこみ、目線を合わせた。

 

「あなたのおかげよフレーヌ……ありがとう」

 

 少し涙ぐんだ声でお礼を、アルティメギルを倒すため自分が敷いたレールを脱線する事なく走り続けてくれたフレーヌに対して再び頭を下げた。

 

「でも、私はあなたを勝手に利用したに過ぎないし、どんな恨みや暴言もでも受け止めるわ」

 

 フレーヌはしゃがみこみ下を向いたまま顔を上げようとはしない、それか上げられないのだろうか。

 速水は待っていたんだ、いつか自分と一緒にアルティメギルと闘える戦士を。

 それなら、突然襲ってきたり異世界に飛ばしたりしたのはもしかしたら私を鍛えていたのだろうか。 好意的に解釈しすぎかな?

 速水は立ち上がると今度は私達三人の方へと向き直った。

 

「あなた達にも申し訳ない事をしたと思ってるわ。 私の私欲のせいで危険な闘いに巻き込んでしまって、本当にごめんなさい」

 

 そう言うと速水はまた深々と長々と頭を下げる。

 私は未だ痺れる右手を抑えながら立ち上がる。

 

「それが、速水……あんたが協力を申し込んだ理由……」

 

 速水は頭を上げると真っ直ぐ、綺麗な目で私を見る。

 

「ええ、信じるも信じないもあなた達次第。 どのみち、私は目の前にある絶好のチャンスを逃したくない」

「チャンス?」

 

 嵐が不思議そうに尋ねた。

 

「オルトロスギルディがアルティメギルのボス……首領に呼ばれたのよ」

「!?」

 

 その場にいたフレーヌ以外の全員が声を上げた。

 アルティメギルの首領、総数は不明だけど数多くのエレメリアンを束ね、ツインテール属性を集めている騒動の元凶。

 奴に呼ばれたことがチャンスとの言葉が意味することは……。

 

「私が直接、首領を討ちこの闘いを終わらせてみせる」

 

 やはり、速水は親玉を先に倒すことでツインテール属性やその他多くの属性が守られると考えているらしい。

 そう言うと速水はローブを翻し、後ろを向き極彩色のゲートを生成すると、ゲートに向かい歩き出した。

 そうだ、協力を頼んだのにはもう一つ理由があったんだ。 もし自分がアルティメギルを倒せなかった時に自分の意志をついでアルティメギルに反抗し続けて欲しい、と。

 

「待ってください!」

 

 顔を上げられなかったフレーヌが立ち上がり、呼び止めると、速水はまたこちらを向く。

 

「私は気を失う前にエレメリアンに襲われ、今にも属性力を奪われるところでした」

 

 よほど恐ろしかったのだろうか、彼女の頬を一筋の涙がツゥと流れ地面に落ちる。

 

「あの時にエレメリアンから助けてくれたのは私の世界の戦士だと思っていましたが、本当はあなたなんですか……?」

 

 一瞬の静寂後、速水は質問に答えた。

 

「無事でよかったわね」

 

 優しい声色で優しく笑うと速水は極彩色のゲートへと姿を消し、ゲートも閉じられた。

 

 

 世界の狭間に鎮座する母艦。

 そこに一人の戦士がゲートをくぐり、帰還した。

 戦士が薄暗い廊下を歩いていると、銀色の毛並みをしたエレメリアンと出くわした。

 

「首領様に呼ばれたそうですね」

「知ってたのね、フェンリルギルディ」

 

 その一言だけ交わし、速水黒羽は歩を止める事はなく、オルトロスギルディのいる部屋へと到着した。

 

「帰ったわよ」

 

 ドアを開け、さながらサラリーマンのような言葉を発する速水黒羽。

 そこにはやたらとソワソワし、部屋中を歩き回っている頭が一つのオルトロスギルディがいた。

 

「遅いぞ! 首領様を待たせるわけにはいかん、早く俺の中に戻れ!!」

 

 ハイハイと気だるそうに返事をした後、速水黒羽はエレメリアンの姿へと戻りオルトロスギルディに吸い込まれていく。 程なくしてオルトロスギルディは双頭となった。

 

「首領様が俺をお呼びになるとは一体何があったのやら……」

 

 自分の艦のコックピットへと移動し、フェンリルギルディに操縦桿を握らせる。

 オルトロスギルディの艦は首領の間へと行くため別次元への移動を開始した。

 オルトロスギルディは自分の中の速水黒羽が実行しようとしている事に気付かないでいる。

 

 

 オルトロスギルディが首領の元へと向かった丁度その頃、基地の大ホールは再び大きな騒ぎとなっていた。

 

「なんと! テイルホワイトが!!」

「だから早く侵攻すべきであったのだ!!」

「隊長の考えが分かる日は来るのであろうか………」

 

 天井から吊り下がっているいくつものモニターにはついさっきまでのテイルホワイトとシェルギルディ他アルティロイドの戦闘が映し出されている。しかし、映像はシェルギルディに必殺技を決める直前で終わっていた。

 テイルホワイトが予想以上に早くにこの世界に帰ってきた事でまたもオルトロスギルディに対しての不満が積もっている。

 そんな中一体のエレメリアンが机を叩き、椅子から立ち上がった。

 

「確かに隊長の意思は気になる!!……が、今は無事に帰ってきたシェルギルディを褒め称えようではないか!!」

 

 ウォルラスギルディの一言で大ホール内は静かになり、ところどころからやる気のない拍手がシェルギルディに贈られた。

 

「そうだ、俺たちは幾度となるイラスト特訓によりついにテイルホワイトに対抗できるようになったのだ!!」

 

 ウォルラスギルディが声を張り上げると大ホールの至る所から希望に満ちた声が聞こえて来る。

 

「そ、そうか!いつの間に我らは!!」

「いけるぞ! 今ならテイルホワイトを裸エプロンにできるぞ!!」

「なにおう!? 私が先に裸ワイシャツにしてみせるわ!!」

 

 知らない小娘に助けてもらったとは言えず、自分の席でシェルギルディは小さくなっている。

 

「もう援軍や補修部隊など必要ない!! 我らは勝━━━━━━━━っつ!!」

 

 大ホールの至る所で自信に満ちた笑い声が溢れる。 かつてここまで明るくホワイトな職場があったであろうか。

 しかし、長くは続かなかった。 ホワイトな職場は一瞬で真っ黒な職場に染め上げられる。

 

「あの……申し上げにくいのですが……」

「なんでしょうかサンフィシュギルディ殿、貴殿も喜んではどうです?」

 

 テーブルに片足をのせ腕を組みながら笑うウォルラスギルディ他、大ホール全てのエレメリアンにサンフィシュギルディは弱々しく話し始める。

 

「只今、頂いたメールによると……その……この世界へ……聖の五界(セイン・トノフ・イールド)の出撃が決まりすでに……こちらに向かっているそうです……」

 

 時が止まった。

 そう表現するのが一番正しいと言わざるをえない程、一瞬で大ホールは静かになった。

 美の四心、貴の三葉、死の二菱、神の一剣、ハート、クラブ、ダイヤ、そしてスペード。

 アルティメギル四頂軍の裏にあるもう一つの部隊、聖の五界の出撃がとうとう決まったのだ。




一年の空白を得て、真実と新たな部隊が……!?
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