私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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FILE.41 首領の力

 速水がゲートをくぐった後、私たちはすぐフレーヌの地下基地へとワープ、帰ってきていた。

 基地に帰ってきたところでようやくテイルホワイトの変身を解き、ホッと一息をつく。

 志乃と嵐もそれぞれ椅子に腰掛けリラックスしている。

 闘いの後に速水によって聞かされた衝撃の事実、フレーヌがテイルギアを開発し、一人の戦士を見つけアルティメギルに対抗できるような戦士を育てる。

 今まで闘ってきたこと全てが速水の計画した作戦だったんだよね。

 まあ、結果的に私の世界は守れているわけだから私は別にこの事に関して速水を恨んじゃいない。 だけど、フレーヌはどうなんだろうか。 今までやってきたことは荒れ道を進むのではなく既に舗装された道を歩いてきたようなものだと思ってしまったら、科学者として傷ついてしまうのでは、そう心配していた。

 恐る恐るフレーヌの様子を伺ってみる。

 

「なるほど……私は決められたシナリオ通りに動いていた、ということですか……」

 

 大きなメインモニターの前に立ち、キーボードをいじるとホーム画面からテイルギアの各種装甲が詳しく書かれている画面へと変わる。

 私の距離からは、少しフレーヌの肩が震えているのぐらいしかわからない。

 しばらく沈黙が続いたが、それを破ったのは意外にもフレーヌだった。

 

「ふふ……ふふふ」

「お、おい……」

 

 微かに笑い声のようなものが聞こえ心配になったのか嵐がフレーヌに駆け寄り声をかけた。

 

「は━━━━っはっはっはっは!!」

 

 両腕を自分の腰に当て、上を向きながらフレーヌは笑いだした。

 例えるならそう、まるで属性力を奪った直後のエレメリアンのような笑い方だけど……。

 

「面白いじゃないですか……!」

 

 とってもわるーい顔をしながら両腕を腰から離し、今度は握り拳を作る。

 

「あの、フレーヌ……傷ついてたりしない?」

「まさか、逆に感謝してますよ! エレメリアンへ私の世界が侵略された復讐ができるんですから!!」

 

 おお、フレーヌが燃えている。

 かつてここまで燃えていたフレーヌがいたであろうか。 いや、いない。

 

「ですが、私もやはり皆さんに謝らなくてはなりませんね。 結局のところ、私がこの世界に来て奏さんをツインテールの戦士へと選んだ事であなた達を闘いに巻き込んでしまったんですから……」

「元気になったかと思えば……私は覚悟を決めて闘ってる。 悔やむ必要なんてないよ、フレーヌ」

 

 これは私の本心だ。

 既に私は心に決めている、ツインテールによるくだらない闘いを止めるため、私が育ててしまった属性力を守るため、そのために闘っているんだ。

 ボコボコにされようが私が属性力を奪われようが、私は自分の世界だけでも守る覚悟はできている。

 

「私だって最初は奏の手伝いできなくて悔しかったけどさ、今はフレーヌがリンクブレス作ってくれたおかげで少しでも手伝いできてるような気がして……つまり、えーっと……全然迷惑なんて思ってないからね!!」

「俺もまあ、フレーヌがこの世界に来たおかげで疎遠だった奏とまた話せたようなもんだし……」

「ほら、みんな迷惑なんて思ってないんだって」

 

 二人の意見を聞き、フレーヌに伝える。フレーヌがこの世界に来て、迷惑している人間なんて誰一人としていないんだから。

 

「スルーかよ……」

 

 小声で嵐がなんか言った気がするが関係無さそうな話なのでそのままにしておく事にする。

 

「それにテイルギアとかは速水の思惑通りだったとしてもさ、フレーヌは色々な発明してきたでしょ」

 

 特にエレメリンクを任意で発動できるようにしたリンクブレスは大発明だろう。

 

「え、ええ……まあ」

 

 少し顔を赤らめているし、どうやら照れているらしい。

 普段は天才科学者しててもこういう時にする反応は私が中学生くらいの歳と一緒で、なんだか可愛らしい。

 

「速水さんは、大丈夫かな……」

 

 志乃が心配そうにつぶやき、また基地に沈黙が生まれる。

 ''この手で首領を討つ''と速水は言っていたけど、エレメリアンをアルティメギルを束ねる首領が容易に倒せるとは思えない。 もし討つのに失敗した時、速水は━━━━考えたくはない。

 そもそも、速水に全く歯がたたなかった私が協力したところでそれは本当にベストな選択なのかな……。

 だって、もし……もし速水が勝てなかった相手に私が敵う可能性なんて微塵もないだろう。

 

「速水さんが奏さんに襲いかかった理由は鍛える目的以外にもきっとあったんですよ」

 

 私の心情を察したのかフレーヌは静かに話し始めた。

 

「私は初めてこの世界に来た時にも言ったはずです。 ''ツインテール属性そこが最強である''と。 そして、速水さんは''ツインテールを裏切る''といった」

「つまり私に、ツインテールを受け入れさせようとしてたって事?」

 

 フレーヌはコクッと頷く。

 

「奏さんはツインテールを''嫌い''と言いつつもアルティメギルに対抗できる属性力をお持ちです。 もし、奏さんがツインテールを''好き''になった時、属性力がどうなるか……想像もできません」

「奏がツインテールの事を好きになればさらにテイルギアの力は高まるってことね!」

 

 今回はやけに志乃は理解が早かった。

 私は常に全力で闘っているつもりだったけど、私のツインテール嫌いが私自身を縛りつけていた。 ……ただ、だからツインテール好きになれと言われてもキツイけど。

 

「私がツインテール嫌いなのは最初から変わんないし、これからも変わるつもりないからね」

 

 拳を高く上げて宣言する。

 何故か周りからため息のようなものが聞こえた気がした。

 

 

 マルチバース・キューブ。

 アルティメギル首領が座する首領の間はそう呼ばれる多次元空間の最奥に存在している。

 示されたルート通りに行かなければ決して会えず、ルートから外れれば永遠にこの空間を彷徨い続けることとなる。

 アルティメギル首領には謁見するだけでも命を懸けなければならない。

 

「このタイミングで首領様がお呼びになる理由は……」

 

 今回は白いローブを着ず、オルトロスギルディは首領への順路を重い足取りで歩いている。

 しばらく歩くと天井から風呂敷状に撓んだ光が差し込みオルトロスギルディを包み込んだ。

 

 

 宇宙をそのまま凝縮したような、星の輝きをあまさず散らしたような、神聖さと荘厳さを兼ね備えた空間にアルティメギルの首領はいた。

 さらに部屋の奥へと進むと煌めくオーロラのカーテンがヴェールに守られた空間がある。

 

「久方ぶりだな、オルトロスギルディよ」

 

 ヴェール越しに途方も無い威圧感が鎮座し、口を開く。

 

「首領様、お久しぶりにございます」

 

 オルトロスギルディは跪き、顔を上げずに応える。

 

「今宵は余がそなたを此処へ招いた。 何故かわかるか?」

「…………」

 

 オルトロスギルディは首領の命により、属性力が奪えないシャークギルディ部隊の兵士の育成係に任命された。しかし、その後も結果は変わらない。

 オルトロスギルディは叱責も覚悟の上だった。

 

「……ふむ。そなたが育成した兵士であれとその世界の属性力は奪えぬか」

 

 叱責も覚悟の上だったが、首領から発せられたのは納得の言葉。

 意図が読めないオルトロスギルディの前へ一つの将棋盤が現れた。 ……おかしい。 将棋なのに相手は歩兵が一人、何故かこちらはその歩兵を除いた全てという配置となっている。……将棋なのに。

 

(ナニコレ?)

 

 オルトロスギルディの中にいる速水黒羽も、目の前に現れた将棋盤の意味は分からなかった。

 

「これはそなたの部隊の状況である」

「え?」

 

 将棋盤の上に指が浮かび上がり全ての駒が次々と前へ進み、消えていった。 当然、駒の進め方はめちゃくちゃで、角も香車のような動きでぐんぐん前に進んでいく。

 テイルホワイトにやられている、ともとれるような気もした。

 将棋盤の駒があらかた無くなると今度は平たい、コインのような黒い物が将棋盤に置かれる。

 

「そなたはこうはなりたくはないだろう?」

 

 何が起きたのか、オルトロスギルディにも中にいる速水黒羽にもわからなかった。

 もはやオルトロスギルディはどういうリアクションをとればいいのか全く分からずただ、話を聞くだけだ。

 何を暗示しているのか、これがどうなるのか、話に関係あるのか、全てがわからなかった。

 

「ハイ…………」

 

 首領は恐ろしい。

 自分が知らない物、未知への恐怖はエレメリアンであるオルトロスギルディさえも震え上がらせた。

 

「余の言葉の意味がわからなくなった今、そなたに用はない」

 

 最後の通告はあっさりと、突然告げられた。

 今まで首領の言葉を理解していた事など数える程度しかないが……それを言う余裕はない。

 ヴェールの向こうでパチンと指を鳴らす音が響くとヴェールのかけられた一角の横に極彩色のゲートが出現し、中から一体のエレメリアンが現れた。

 

「貴様は……!?」

 

 純白の白を基調とした鎧に彩られた麗美なる要望。

 天使の輪のように頭部に輝くパーツは女神のような気高さを溢れさせ、双眸は穏やかだ。

 腰部から後ろに燕尾服のように伸びた布も鋭利な美しさを感じる。

 腰や腕に纏わせている長い一本の布は天女の羽衣を思わせる。

 何より目を惹くのは背中から左右対称に生えている計四つの大きな天使の羽。

 アルティメギルでは数少ない女性型のエレメリアンだ。

 

「エンジェルギルディ! 貴様、何をしに此処へ来た!!」

 

 オルトロスギルディの疑問を答えたのは首領だった。

 

「そなたの部隊には既に我がアルティメギル四頂軍の裏部隊が出撃している。 そなたは、用済みだ」

(なんですって!?)

 

 再び告げられる解雇通告。

 さらに首領はオルトロスギルディの前に首領の腕が具現化し、強烈な衝撃波が放たれる。

 

「せめてそなたのツインテール属性は……有効活用してやろう」

 

 かっこいいセリフ言おうとしたが思いつかず、仕方なくそう言ったようにも聞こえる。

 

「ぐう……ぐああああああああああ!!!」

 

 オルトロスギルディが光に包まれる、その光は二つに分離し、弾かれる。

 

「きゃあ!!」

 

 オルトロスギルディと速水黒羽が強制的に分離させられた。

 

「ぐああああああ!!!」

 

 悶え苦しむオルトロスギルディ。

 

「オルトロスギルディ!!」

 

 速水の悲痛な叫びも虚しくオルトロスギルディはどんどん小さくなりツインテール属性の属性玉へとなってしまった。

 

「やはり、中に存在していたか」

 

 速水はすぐさまオルトロスギルディの属性玉を拾い上げ、漆黒の太刀を生成するとヴェールの奥、首領へ向かい走り出す。

 

「首領!あなたはここで私が倒すわ!」

 

 ヴェールへ向かい漆黒の剣を振り下ろす。 しかしそれは瞬間的に前へ移動したエンジェルギルディによって防がれてしまった。

 

「オルトロスギルディの処刑は首領様が致しました。 貴女は私が処刑致しますわ」

 

 気高く、お嬢様の様な言葉使いで淡々と話すエンジェルギルディ。

 エンジェルギルディに妨害され、大きく後ろへ跳んだ速水黒羽だが身体に纏っていた装甲に異変がおきる。

 

「これは!?」

 

 彼女が纏っていた装甲は煙のように完全に消え、身体には普通のセーラー服しか残らなかった。

 

「オルトロスギルディというパスが消えた今、そなたはただの''人間''だ」

 

 速水の異変をいとも簡単に説明する。

 

(まずい……!)

 

 不利を悟り後ろを振り向く、しかし━━━

 

「逃すと、思うか?」

 

 首領の間にもう一体、戦場の戦女神を思わせるエレメリアンが現れていた。

 

「これはヴァルキリアギルディさん、ご機嫌よう」

 

 エンジェルギルディが速水黒羽の前にいるエレメリアンに向かい腰部から伸びる布を広げ上品に挨拶をする。しかし、ヴァルキリアギルディと呼ばれるエレメリアンは返答はせずただ、装飾のないシンプルな神の槍を速水に向けていた。

 ジリジリと両側からエレメリアンに追い詰められていく。

 

「さて、頂きますわよ」

 

 属性力奪取のための光輪を出現させるエンジェルギルディ。

 

宇宙の紐(ストリング・セオリア)……。もはや貴様はその輪から逃げられん」

 

 輪の名前を初めて聞いたのか、速水とエンジェルギルディは言葉を失くし、一瞬の間が生まれる。 唯一、ヴァルキリアギルディのみが首領の言葉をしかと耳に入れ、力強く頷いていた。

 

「気をとりなおして……頂きますわ」

 

 速水に標準を合わせ、宇宙の紐(ストリング・セオリア)が発射される。だが、今にも属性力を奪われそうになった時、突如として首領の間に極彩色のゲートが出現し中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「早くこちらへ!!」

 

 すぐさま速水は極彩色のゲートに飛び込むと間も無くゲートは閉じられていく。

 

「やはり、協力者がいたか」

「さすが首領様です」

 

 この場にいるエレメリアン達には想定外の事態ではなく、予測されていたものであった。

 

「ヴァルキリアギルディ、そなたはしばし余の側にて待機だ。 そしてエンジェルギルディ、そなたが裏切り者とオルトロスギルディの影、そして裏部隊の隊長として属性力の奪取を命じよう」

「ははっ……!」

「……ええ、わかりましたわ」

 

 二体が同時に頭を下げると首領はヴェールの向こうで霞のように消え去る。

 残ったエンジェルギルディとヴァルキリアギルディもそれぞれ極彩色のゲートを生成し、消えていった。

 

 

 速水黒羽がゲートを抜けると、そこは何処かの世界のとても穏やかな草原だった。

 風が吹き抜けるたび、一面に生えた緑の葉や木が静かな音を立てている。

 その静かな草原に落ち着いた声が響く。

 

「ご無事ですか?」

「フェンリルギルディ……助かったわ……」

 

 酷く息を切らしながら速水はお礼を言う。

 追っ手が来ないのを確認し、取り敢えず一息をつく。

 

「オルトロスギルディが……私を助けてくれたわ……」

 

 目に涙を浮かばせ、速水は地面を拳で叩く。

 

「首領から攻撃を浴びた時、咄嗟にオルトロスギルディは私と自ら分離したのよ。 私を巻き添えにしないために……。さんざん私に憎まれ口を叩いておきながら、ね」

 

 両者にしばしの沈黙が生まれると、其れを嫌うかのように風が吹き抜け、木の葉を揺らす。

 

「でも、首領はその気になれば私を閉じ込めることも出来たはず……容易にゲートを抜けられたと言うことは……」

「首領様はわざと貴方を逃したと言うことですか……。ならばそれは一体何故……」

 

 嫌な予感が両者を襲い、その予感は早くも的中する。

 

「裏切り者を炙り出すため、ですわ」

「「!?」」

 

 速水とフェンリルギルディ、二人が振り向くとそこには音も無く現れたエンジェルギルディの姿があった。

 エンジェルギルディの言葉を聞いて速水は首領の意図がわかった。  フェンリルギルディを炙り出すのは勿論、速水に希望を与えた後絶望に叩き落とすためだ。

 

「待ちなさいエンジェルギルディ! 反逆は私一人で考えた事、フェンリルギルディは何の関係もないのよ!!」

「残念ですけれど、そうはいきませんわね」

 

 再び属性力奪取の光輪を出現させ、弾丸のように速水へと発射させる。しかし、今度はフェンリルギルディが自らの拳で光輪を破壊し速水の属性力を守る事に成功する。すると、フェンリルギルディは再び極彩色ゲートを生成し、速水をその中へと放り込んだ。

 

「貴方は属性力を奪われるわけにはいかない! 貴方は、貴方の属性力を守ってください!!」

「待ちなさい、フェンリルギルディ!!」

 

 速水がゲートに飲み込まれるのを確認するとフェンリルギルディはゲートを消すと同時に武器を手元に出現させ、エンジェルギルディに向かい疾駆した。

 

 

 心地の良い風が吹き抜け、あたりの草を優しく揺らす。

 

「まずは、一人目」

 

 エレメリアン同士が激しい戦闘を行ったにも関わらず、あたりの風景は何も変わらないままだ。

 一際強い風が吹き抜け、あたりの葉と花が舞い上がりエンジェルギルディを包みこむ。

 その手には下着属性(アンダーウェア)の属性玉が優しく握られていた。

 

「今度のツインテールは、いかがなものでしょうか」

 

 微かに笑みを浮かべると、手に持っていた属性玉を空へと投げ捨て極彩色のゲートを生成し、その中へエンジェルギルディは姿を消した。

 投げ捨てられた属性玉もまた、ゲートの中へと消えていく。 その哀しい輝きを鈍らせる事はなく━━━━




遂に現れた聖の五界、果たして裏部隊の力とは!?
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