身長:268cm
体重:380kg
属性力:日焼け属性(サンバーン)
アルティメギル四頂軍の裏部隊、聖の五界に所属する戦士。
隊長であるエンジェルギルディとは旧知の仲であり、互いに実力を認めている。 副隊長となっているが彼自身部隊を率いるのに自信が無く、たびたびウンディーネギルディにその事をからかわれている。 また、他のエレメリアンより情に厚く属性力を奪えない事もしばしば。
オルトロスギルディとはライバル関係にあり、彼が消えた理由を察し、全力の勝負を誓った。
奏達が通っている園葉高校からバスで一時間ほどの所でサッカーの試合が行われていた。
白いユニフォームの高校が園葉高校、黒いユニフォームが他の高校であり、試合は白の園葉高校がリードしている。
練習試合にも関わらずこの試合にはプロのスカウトも多数見に来ているようだ。そして、プロのスカウトが最も注目しているのが背番号七番をつけた選手、嵐 孝喜だ。
高校一年の時から先輩を押し退けレギュラーを奪取して以降全ての大会に出場し、チームを勝利に導いてきた。 プロを目指す孝喜にとっては一試合一試合が大切と、決して手を抜かずに天才的なプレーを披露してきた。 彼にとってのサッカーはポニーテールと同じぐらい大切なものだ。しかし、今日はやけにミスが多い。
「うわっ!」
自身のあるドリブルをすれば相手にボールを奪われ、カウンターを仕掛けられる。
「おらぁ!!」
失敗を払拭するために、右足でシュートを繰り出せばクロスバーの大きく上をいってしまう。
孝喜の高校がリードしているものの、彼のミスが目立つ形で前半は終了しハーフタイムに入った。
孝喜はベンチに座り、汗を拭きながらスポーツドリンクを飲む。
前半のプレイを見て心配したチームメイトが話しかけてきた。
「おい孝喜、お前らしくないけどどうしたんだよ。 大丈夫か?」
「あ、ああ……」
口ではそう伝えてはいるが全然大丈夫ではない。
(速水のことがあったこんな時に試合なんて……集中できねーな……)
タオルを頭に被った孝喜の元へまた一人歩いてきた。
「嵐君……大丈夫?」
孝喜が顔を上げるとそこに立っていたのは高校のジャージを着たサッカー部のマネージャーだ。
部員の皆からは可愛い上に性格もいいと人気も高いが孝喜はそんな事より彼女がポニーテールである事に喜びを感じていた。
「彩か、俺は平気だよ」
彩と呼ばれた彼女は心配しながらも他の部員のところへと歩いていく。
最近までは彼女のポニーテールはとても素晴らしく輝いていた。……今もそうなのだが、孝喜がテイルホワイトもとい奏に協力する様になってからはツインテールが自分の中で大きくなり始めている。
(ツインテール嫌いの理由を作った男が何考えてんだか)
大分息が整ってきた所で孝喜は監督に話しかける。
ハーフタイムがまだ残っている事を確認すると孝喜はパーカーを羽織りグラウンドから離れていく。
校門を開け学校の周りの農道を孝喜は歩く。
自分が普段通っている高校の周りとは景色が違い、いい気分転換になる。
青い空と一面に広がる田園風景を見ながらまた、孝喜は考え事を始めた。
「奏と俺じゃ……闘ってる相手が違い過ぎるよなー……」
地面に座り込み、一言呟く。
孝喜が始めてテイルホワイトを興味を持ったのはいつだっただろうか。 テイルホワイトが現れはじめてからクラスの連中も、部活の連中もそしてテレビや新聞などといったメディアまでもがテイルホワイトの話題を毎日の様にしていた。 勿論、孝喜はツインテールである彼女が周りの人達から持て囃されていたのが最初は気に入らずテイルホワイトの話題に参加しようとは思わなかった。 そんな孝喜以外にも、テイルホワイトについて語ろうとしなかった人がいた。
(今思えば、奏が変身してたんだし当然か……)
クラスメイトの奏もまたテイルホワイトについてはあまり語ろうとせず、自分と重なって見えた。
そんな奏の姿を見て、奏がツインテールにしなくなった理由を作った孝喜はテイルホワイトについて調べ始めた。 そしてテイルホワイトが信念を持って闘っていることを知り、ようやく彼女のことを応援するようになった。
孝喜は右腕に着けているリンクブレスを具現化し、まじまじと見つめる。
(そんでこのブレスを貰ったんだよな。 だけど……)
女に闘わせておいて自分は安全な基地で様子を見ているだけ、孝喜はそう考えもっと力になれないかと思案している。
ハーフタイム終了が近いのに気づくと立ち上がり高校に向かって歩きだす。
「ひっ!」
自分が通った後、草がガサガサ揺れる音が聞こえた。 次第にどんどん音は近くなり、道に面した草が揺れる。
(く、熊か!?)
警戒しつつ後退りすると、背の高い草の中から現れたのは熊ではなく、人間の女の子だった。 女の子は道に出た途端嵐に気がつく事無く、その場に倒れ込んでしまった。
「お、おい……平気かよ……!?」
見捨てるわけにもいかず孝喜が女の子に近づいて行きその顔を確認すると再び声を出す。
「お前……速水黒羽!!」
声をかけるが既に彼女は目を閉じ気絶してしまっている。
孝喜が顔以外にも目を向ける。 彼女はいつもの鎧を纏っておらず、着ているセーラー服の様な服もボロボロになってしまっている。
これだけの姿をしていると孝喜にも黒羽の作戦が失敗に終わったことがすぐに察する事ができた。
フレーヌに連絡するのが一番だとは思ったが奏が言っていたフレーヌへの連絡アプリは孝喜のスマホには入っていない。
「嵐君?」
「さ、彩!?」
どうしようか悩んでいるとマネージャーの彩に声をかけられた。
どうやらハーフタイムが終わりそうだが、グラウンドに現れない孝喜を心配して探しまわってくれていたらしい。 彼女もまたサッカーをしていたかの様に息が切らしている。
「え、と……その女の子は」
当然、孝喜の後ろにボロボロで倒れている黒羽について質問してきた。
「えーと……この娘はその、知り合いで……」
苦しい言い訳をしながらも最善策を考える。
「どうすりゃ……奏に連絡だ!!」
「奏?」
一応持ってきていたスマホを取り出し中の電話帳を開く、が。
「やべ……番号分かんね」
電話帳の''あの行''を探しても''かの行''を探しても彼女の連絡先は見当たらない。
「いつも一緒に居たのに何やってんだ俺━━━━!!!」
頭を抱え、孝喜はこれまでの事を後悔した。
「……」
孝喜の様子を見て彩はジャージのポケットからスマホを取り出し操作しはじめた。
「なんかよくわからないけど、奏の電話番号ならわかるから」
いち早く電話帳の中にある奏の電話番号を探し出し通話ボタンを押す。 するとすぐにスマホを孝喜に差し出してきた。
やがてコール音が止み、通話に出る音が聞こえた。
『もしもし彩? どかしたー?』
奏の声が聞こえすぐに孝喜はスマホを取り応答する。
「おい奏!」
『え、なんで嵐!? てか、奏って呼ばないでって!』
「んな事どうでもいいんだ! 速水黒羽がボロボロで倒れてんだよ、どうにかしてくれ!」
『え、速水が!? わかった、フレーヌに伝えてみる』
お礼を言うと孝喜はスマホを彩に返す。
「悪いけど俺は後半には出れないって監督に伝えてくれ」
「う、うん……。 なんか複雑な事情があるんだよね?」
孝喜は彩の言葉になんて返せばいいかわからず、俯いている。
まさかこの速水黒羽が今この世界を侵略しようとしているアルティメギルの人で裏で反逆を企んでいたなんて説明できるわけがない。
何も言えない事を察したのか、彩は笑顔で頷くと試合を行なっていたグラウンドへと走っていった。
◇
電話を受けた後、私は急いでフレーヌの基地へと戻ってきていた。
私は嵐から聞いた事をそのままフレーヌに伝える。
「あの人が!? 」
当然フレーヌは驚き、すぐに嵐と速水の居場所を特定した。 どうやら嵐の着けているリンクブレスにはGPS的なものが入っているらしく、何処にいるか筒抜けらしい。自分のテイルギアにも入っているのだろうか……。
「転送します!」
宙に浮かんだモニターの画面に表示されているトランスの文字をタッチすると近くにあるカタパルトが光りだす。
カタパルトの光が収まるとそこには嵐と、ボロボロになっている速水の姿があった。
どうやら意識はないらしい。
「すぐにメディカルルームへ!」
いつの間にそんな部屋が……。
嵐が速水を背負い、フレーヌに案内され通路へと歩いていく。
「あれ?」
嵐に背負われ、速水は離れていく。
「どうかしたの?」
志乃が心配してくれたようで話しかけてくる。
心配事ではないし、今はあんまし関係ないかもしれないけど。
「いや、なんか速水のあの姿って何処かで見た覚えがあるなーって…」
肝心の部分が思い出せない。
「でも黒羽っていつもテイルギアみたいなの着てたし……ボロボロだけど、どこにでもあるようなセーラー服だし勘違いじゃない?」
志乃の言う通りで、私はそれを解ってはいるけど……勘違いなどではなく、絶対に私はあの服を見ている。
それといつの間にか志乃が速水の事を黒羽と呼んでる。
「私達も行こ!」
そう言うと志乃はフレーヌと嵐を追って駆け出す。
そうだ、とりあえず今は速水の事だ。 彼女がゲートを通って姿を消してから後の事を、詳しく聞かなければいけない。
◇
奏達の世界へと進行しているアルティメギルの基地。
その中心に位置する大ホールは冒険者達が集う酒場のように多くの勇者を迎え、語り合わせ、戦地へと送り出してきた。
怒号にも似た討論や、隊員同士での喧嘩もあり活気溢れる場所だった。
しかし、新しく迎えられた勇者━━━アルティメギル聖の五界により酒場は火が消えたようにしんみりと、静かになっていた。
もはや恒例となっていたイラスト修行もせずに、だ。
「ねえねえ、最初は誰から行くの?」
中央の大テーブルで退屈そうにウンディーネギルディはサラマンダギルディに尋ねた。
「まだ隊長は到着していない。 焦るな、ウンディーネギルディ」
そう言うと静かな大ホールの天井から吊るされているモニターの画面にテイルホワイトの戦闘映像が流れ出す。
やがてその映し出されている戦闘の中で同胞のエレメリアンが爆散し、テイルホワイトがカメラマンに手をかけたところで映像は途切れた。
「へえー、中々可愛い子ねえ」
ウンディーネギルディが目の前のパソコンを操作し、テイルホワイトの顔が大きく映し出されたところで映像を止める。
「銀色の髪の毛に碧眼かあ。 すんごい涙が似合いそうな顔してるねえ♡」
ウンディーネギルディはすぐさまスクリーンショットをし、画像を編集、テイルホワイトの頰に涙を流す。
そして自らのパソコンを大テーブルの皆に見せ恍惚の表情をした。
「……そんな事よりも、無害なカメラマンに手を出すとは……テイルホワイトも''アレ''と同じく中々凶暴なのか?」
サラマンダギルディが強引にテイルホワイトの話題へと持っていった。
まるで、何処かの世界にはエレメリアンを見ると破壊したくてしょうがなくなる人間がいるのだと、言っているかのよう。
「いえ、撮影をしていたアルティロイドは無事に帰還しています。 どうやらカメラの電源を落としただけだと思われます」
大テーブルにいるエレメリアンが説明すると、サラマンダギルディは顎に手を当て何やら考え事を始めた。
「いえ、私にはわかりますわ」
暗く、しんみりとした大ホールに一人の女性の声が響いた。
その女性の声の持ち主はゆっくりと床をカツカツ鳴らしながら大ホール中央へと近づいてきた。
「あ、あなたは聖の五界隊長のエンジェルギルディ様!?」
サンフィシュギルディの言葉を聞き、大ホールにいる聖の五界の隊員以外のエレメリアン達は一斉に立ち上がり、皆が礼をした。
「よろしいですわ、そのようにかしこまらなくて」
椅子に腰掛け、優しい声色で皆に伝える。
「わかっておりませんわね、サラマンダギルディ」
「な、なんのことだ」
エンジェルギルディはサラマンダギルディの前にあるパソコンを操作し、大きくテイルホワイトを映し出した。
「この立ち方や言葉使い、そして目……彼女は中々のお嬢様と見て間違いありませんわ」
エンジェルギルディでしかわからないであろう事を告げられサラマンダギルディは言葉に詰まる。
「隊長、首領様への御用はもう終わったのか」
話題を変えるしか逃げる術はなかった。
「ええ、反逆者を討てとの命令でしたわ」
先ほどまで静かでしんみりとしていた大ホールが途端にざわめき出す。
「聖の五界にも、この隊の皆さんにも伝えなければなりませんわね」
そう言うとまたエンジェルギルディは立ち上がり周り全てのエレメリアンに聞こえる声で話しだした。
「私が討てと命令されたのは、この部隊にいたオルトロギルディですわ。 そして、オルトロスギルディは姿を変え、この世界に戻ってきていますわね」
当然、大ホールは騒然となる。
「オルトロスギルディ隊長が……」
「まさか、そんな……」
「それ見たことか」
オルトロスギルディがいなくなり、哀しむ者もいればわかっていたと言わんばかりの者もいる。
「あの、姿を変えたと言うのは?」
ウォルラスギルディがおそるおそる気になっていた事をエンジェルギルディへと尋ねた。
「いい質問ですわね。 オルトロスギルディは処刑される寸前、人間の少女と分離しましたの。その少女が、オルトロスギルディの影がこの世界にいるということです」
大ホールにいるエレメリアンには言っている意味がよく理解できていないようで、騒然としていたホールがまたも静かになってしまった。
「そして、私たち聖の五界とシャークギルディ部隊の混合部隊はこれよりテイルホワイト及びオルトロスギルディの属性力を貰い受けに参りますわ」
いつの間にかエンジェルギルディは登壇台の上へと立っており、隊長らしく大ホールの戦士達へと宣言した。
エンジェルギルディが宣言した直後、大ホールの隅にある通路から一体のエレメリアンが現れた。
「まず最初に行くのはあなたですわ」
その戦士はエンジェルギルディが立つ登壇台の前へと立つと彼女に向かい跪く。
それを見た聖の五界の隊員は驚きの声をあげた。
「いきなりこいつを出撃させるのか?」
驚きの表情を隠しきれないのはサラマンダギルディ。
「へえ、涙見られそう♡」
サラマンダギルディとは違い、楽しくてしょうがないというウンディーネギルディ。
その他のメンバーも色々な反応をしているが、驚いている隊員が多数だ。
聖の五界以外の隊員は現れたエレメリアンが何者か知らない故、驚くことなくジッと見つめている。
「デュラハンギルディ、私たちの先鋒として見事ツインテールの戦士を倒してくることを期待しますわ」
「……わかった」
デュラハンギルディと呼ばれたエレメリアンは一言だけ発し、再び大きな体を揺らしながら大ホールの隅の通路へと消えていった。
「いきなりデュラハンギルディからとは、奴は何をしでかすかわかったもんではないぞ」
デュラハンギルディが消えた事を確認した後、エンジェルギルディにサラマンダギルディは問い詰めた。
「あら、この世界のツインテール戦士を見極めるにはうってつけの相手ですわ」
エンジェルギルディの言葉を最後に、また大ホールは静まりかえる。
やはり聖の五界が到着した今自分たちは必要ないのだ、と誰もが心の中で感じている。
その時、心を見透かしたかのように、エンジェルギルディは手をパンッと叩いた。
「もちろん、私はあなた達にも期待していますわ。 今までテイルホワイトのことをよく見てきたはず、いつかその経験が生きる時が必ずきます」
残存部隊を気にかけてくれるエンジェルギルディの心の広さに誰もが感動した。
「なので、強くなってくださいまし」
その言葉に、大ホールにいる残存部隊の戦士達の頰に熱き涙が流れる。
「期待しておりますわ」
戦士達の敬礼を受け、エンジェルギルディは登壇台から降りホールを後にする。
薄暗い廊下を歩く彼女の羽根に、先程とは打って変わり活気付き始めたホールの喧騒が届く。
「ちょっとこの涙は私的にないなぁ……」
活気付く大ホールの中で、ウンディーネギルディは苦笑いしながら静かに呟いた。