身長:177cm
体重:221kg
属性力:涙属性(ティアー)
聖の五界の幹部である女性型エレメリアン。 子供っぽい性格であり、誰とでもフランクに会話する。 隊長であるエンジェルギルディからの信頼も厚く、聖の五界で唯一単独行動を許されている。 その一方、サラマンダギルディからの評価は低い。 悲しみで溢れる涙が好きであり感動して流す涙には興味がない素振りを見せる。 また、アルティメギルの科学班との太いパイプがあり、秘密裏に試作品を手元に忍ばせ実験を繰り返している。
私がメディカルルームという部屋へとついた時、既に速水はベッドに寝かされていた。
こう見ると何だか死んじゃったみたいだけど速水はちゃんと生きてる。 意識がまだ戻らないらしい。 ゲートに消えた後、一体何があったんだろう。……なんとなく想像はつくのだけど。
「そういえば、嵐は試合終わったの?」
すっかり忘れてたけどサッカーの試合してた嵐がなんで速水は見つけられたんだろ。
「いや、ハーフタイム中に交代してくれって彩にな。監督に頼んでくれって言ったんだ」
……ハーフタイムってなんだろ。
とりあえず早退みたいな感じだろうか。 それで多分あってる、うん。
そうこう話しているうちにフレーヌがメディカルルームのさらに奥にある部屋から出てきた。
「黒羽さんですが、体に致命的なダメージは見られません……。 もしかしたら心の問題かもしれないですね」
そう言われると、確かに着ている服はボロボロだが顔や腕や足にはあまり傷がついていない。
「心って、もしかして属性力を……」
体にダメージがないなら、心。
心といえば志乃の言う通り、私たちはまず属性力を思い浮かべる。 なんたってそれを守るために闘っているんだから。
「いえ、黒羽さんはツインテールのままなので少なくともツインテール属性は無事ですね」
そういえば、私が初めて変身した時や、テイルレッドの世界から帰って着た時にツインテール属性を盗られた人達はツインテールが解けてたっけ。
「なあ、速水を見つけた時から気になってたんだけどさ……速水は何握ってんだ?」
嵐が指を指しながら話す。
確かに、嵐の言う通り速水は手に何か握っている。 よっぽど大切なものなんだろうか、気絶する時に握ってそのままなのかな。
それにしても……速水の服装やっぱり何処かで見た気がするけど……もう少しで出てきそうなのに出てこない。 この微妙な感じ私嫌いなんだけどなあ。
「しっかしな。最初に速水に攻撃されてからそんなに経ってないのに俺が速水を助けるなんて自分でも夢みたいだわ」
ゆ、夢……。
そうだ━━━━
「━━━夢だ!!」
フレーヌ達三人の方を見て、私は思い出した事を話しだした。
「私、前にフレーヌに不思議な夢の話したよね?」
「ええ、そういえば……」
「その夢の中に速水が出てきてさ、そん時着てた服が今速水が着てる服と全く一緒なの!」
間違いない!
最近は収まっていたけど、一時期よく見ていた夢の服と同じだ。 喉につっかえてた物が取れた気がして何だか気分が良くなってくる。
「うーん、確かに服が同じでもそれを意味するものがわからないとですね……」
「あ……」
まあ確かに、服が同じだからなんなんだろ?
なんで私は服が同じなくらいではしゃいでいたんだろう……。 なんか恥ずかしくなってきた……。
「多分、それは私じゃない……」
私たちの後ろ、メディカルルームから突如声が聞こえみんな振り返る。
「く、黒羽さん!」
いつの間にか意識を取り戻した速水が上体を起こし、多少息を切らしながらこちらを見ている。
「感謝してくれよなー?俺が見つけてやったんだから」
「ええ、ありがと」
嵐がすんごい嫌味ったらしいが素直に速水は嵐にお礼を言った。 予想外の反応だったのか嵐もどんなリアクションをすればいいのかわからないらしい。
速水はお礼をした後あたりをキョロキョロと見回し、私と目があった。
「あなたがテイルホワイトね」
「よくわかったね」
フレーヌご自慢のスーパーイマジンチャフ、またも敗れる。
「後ろの君達はあのイベント会場にいたけど、あなたはいなかったし。 ツインテール嫌いがビンビン伝わってきて私には嫌なオーラ出してるから」
随分と生意気な事を言ってくれる。
あの時、頭を下げたのは一体何だったんだろう。
「あはは……ご無事でなにより」
「ええ、あなたにツインテールの良さをわかってもらうまで私は闘い続けるつもりだからね」
「あはは……」
私が心配してたのわかってんのかなこの娘は。
きっと今の私の顔、引きつってるだろうなあ。
「それで、私が見た夢が速水じゃないっていうのはどうして?」
私の夢の事について何か知っているなら早く教えて欲しい、その一心だ。
速水は自分のツインテールを掴み、静かに話し出す。
「おそらくそれは''カエデ''と呼ばれていた、私の元となった娘よ」
「元って?」
フレーヌはなんとなくわかっているようだが志乃が私と嵐の言葉を先取りしてくれた。
「オルトロスギルディが最終闘体になる前にもっとも苦戦した美しいツインテールの戦士よ。 おそらくその娘の印象がもっとも強かったから最終闘体に影響してこの姿になった」
最終闘体と言うと、シャークギルディがメガロドギルディになった時もそんな事を言っていたような。 極めた先がまさか人間だなんておかしな話だ。
「それだけじゃ、奏さんの夢にそのカエデという少女が出てきた理由が見えませんね」
「理由はわかるわ。だって私は、そのカエデのツインテール属性をテイルホワイトのテイルギアに埋め込んだんだもの。 テイルギアの中のツインテール属性があなたの夢に入り込んできたんでしょうね。……何でかはわからないけど」
それじゃあ私は、今まで速水とよく似た……というか速水の元となった異世界の人間を見ていたわけなのか。じゃあ服が同じなのも大方そのカエデの服をオルトロスギルディが見ていたからってわけか。でも、カエデは何で私の夢に………。
「そろそろ本題を話すわよ。……近いうち、この世界には他に類を見ない危機が訪れるわ」
速水はベッドから立ち上がり、そう言いながらこちらに歩を進めた。
「危機?」
速水は何かに怯えているのか、ずっと握っている拳を震わせている。
「わかるでしょうけど、私は首領を討つことはできなかった。 そして私は……処刑された」
速水の言っていることが理解できない。
首領を討つのに失敗したのは予測できたけど、速水は私たちの目の前にいる。 属性力を奪われたわけでもない、もちろん命だって無事なのに。
速水はフレーヌの前に立ち、ずっと握っていた拳を開く。
これは……属性玉だ。速水はずっと属性玉を握っていたらしい。しかもこの属性玉は━━━━
「━━━ツインテール属性の属性玉!? 一体どこで!?」
中央に浮かんでいるマーク、それは私が変身した時にテイルギアに浮き出るエンブレム、ツインテール属性のものだ。
最強の属性玉なだけあって希少価値も高いと知っているフレーヌは勿論、私達も驚きを隠せない。
「私の本体であるツインテール属性を持つオルトロスギルディが処刑されたのよ。 そのせいで私はオルトロスギルディとして使っていた力を失って……本当にただの人間になってしまったの」
悔しそうに涙を流す速水はさらに続ける。
「私が生きていられるのも咄嗟の判断で私を分離させてくれたオルトロスギルディとただ一人の部下のおかげなのよ」
そして、あの時よりも深く頭を下げた。
「改めてお願い……私と闘って……」
そんなお願いの仕方をされたら……断れないじゃないか。
自分の世界を守るために闘う私と、アルティメギルを滅ぼすために闘う速水。 こう考えると闘う理由にだいぶ差があるように感じる。 それに私は速水よりも弱いのだ。
正直、私にはアルティメギルを滅ぼすなんて果てしなく遠いものだと思っている。だけど、私と速水とではゴールの距離が違うだけで途中まで一緒にペースを合わせ、走ることはできる。
だから、
「アルティメギルの全てを倒すなんて途方もない事を約束はできないけど、せめて手伝いだけはさせて」
そう言い、私は速水の肩を叩く。
彼女は自分という存在が生まれてからずっと一人で闘ってきたんだ。 自分がエレメリアンから生まれたという事を受け入れ、自分と闘ってくれる人を求めるためにフレーヌにテイルギアの技術などを託した。 その技術を使って闘っている私が手伝わなくて誰が手伝うというんだ!
「なら、早速新しいテイルギアの製作に取り掛かります!」
フレーヌがどこからともなく白衣を取り出し派手に羽織る。
「本当にフレーヌを選んで良かったわ……。よろしくね」
涙を拭きながら速水は握っていたオルトロスギルディのツインテール属性の属性玉をフレーヌに差し出し、フレーヌはすぐさま受け取る。
「テイルギアの各パーツや装甲などは予めデータに入っているものを使います。なので恐らく二時間ほどでテイルギアは完成すると思いますのでそれまでゆっくりしていてください」
そう言うとフレーヌはメディカルルームを出ていき、恐らく基地の奥の方にある研究ラボへと向かったのだろう。
二時間ほどでできてしまうのも驚きだしすんなりとテイルギアを作ろうとするフレーヌは年下ながらやっぱ頼り甲斐がある。 ていうかフレーヌがもしものためにテイルギアをもう一つ作ろうとしていたなんて全然知らなかったなあ。
速水を含めた私達四人もメディカルルームを出てたまに会議をしている部屋へと移動しようとした時、図ったようなタイミングで基地の警告アラームが鳴り響いた。
エレメリアンが出現したんだ。
急いで普段集まる部屋へと向かうとモニターには出現したエレメリアンがデカデカと映し出されていた。
「とうとうきたわ、聖の五界……!」
映し出されているエレメリアンを見て速水はすぐに新たな敵だと確信したらしい。
私はテイルホワイトへと変身、空間跳躍カタパルトの中へと入る。
「聖の五界は今までのエレメリアンの比の強さじゃない。 ツインテール属性でなければ勝てないわよ」
言葉だけ聞くとふざけているように見えるけど、そう言う彼女の顔はいたって真剣そのものだ。
アルティメギルにいたからこそ、その聖の五界とやらがどれ程の物かわかっているのだろう。
「何度も言わせないで、私はツインテールが大っ嫌いなの」
親指を立て、私は自分でもわかる満面の笑みをしながらエレメリアンが出現した場所へと転送された━━━━
「あれ? 私の学校……て事は真上じゃん!」
光が晴れて見えてきたのは毎日必ず見る校舎とグラウンドだった。
そういえば、前にも体育祭時だかにエレメリアンが出てきたことがあったっけ。 あの時と違って今日は生徒もいないのが気楽だけど。
……妙だ、カタパルトで転送されてきたという事は私の学校にエレメリアンがいるはずだけど、グラウンドにそれっぽい影はない。
「カタパルトの故障……ッ!?」
背筋を冷たいものが走り、私は咄嗟にその場から跳躍し離れる。
直後、私のいた場所が爆発した。
土煙が舞っており、確認は出来ないけど間違いなくエレメリアンだ。
「……」
私は土煙の中に浮かぶシルエットを凝視する。
攻撃してきたエレメリアンは何も言わず、自ら土煙を払い私の前に姿を現した。
「ひ!?」
姿を現したエレメリアンは私が今まで対峙してきたエレメリアンとは異色の姿をしている。
全ての生命の道理を覆すそのエレメリアン。
恐ろしいまでに黒く、威圧感を放つそのエレメリアンには━━━━首がない。
「あれ?」
いや、よく見ると首らしき物はついている。しかし、その事が分かっていてもこのフォルムはどうも気味が悪い。
まるでゾンビを相手にしている様な感じだ。
「あんた、随分と静かじゃん?」
「…………」
私に攻撃した後もする前も、目の前の怪物は一言も発しない。
『デュラハンギルディ……エレメリアンとしての本能だけを持っているだけの様なやつよ』
通信が入り聞こえてきた声はフレーヌではなく速水だった。
それまた聞いたことのあるような……ないような名前だ。
それにエレメリアンとしての本能は恐らく属性力を奪うこと、デュラハンギルディを逃すわけにはいかない。
「属性力……頂く……!」
「え!?」
小さな声で話したかと思えば、デュラハンギルディは瞬く間に私との距離をゼロにする。
デュラハンギルディは武器を使わずに己の拳で私に攻撃してきた。
「つぅ……!!」
かろうじて受け身はとれたけど、尋常ではない痛みが襲う。
受け方は今までのエレメリアンと同じようにしたはず、そうしてもここまでのダメージ。 速水の言っていた事は嘘では無さそうだ。 もしフォトンアブソーバーがなければ……想像はつく。
「なりふり構ってられない!」
フォースリボンに触れアバランチクローを両手に装備すると、デュラハンギルディ目掛けて疾駆し叩きつける。しかし、デュラハンギルディはそれをガードするとすぐさま無数の拳を繰り出してくる。
なんとかその一つ一つを受け止め、私は一回もしくは二回の攻撃を繰り返す。
私とデュラハンギルディとの決着はしばらくつきそうにはない。
◇
園葉高校のグラウンドで繰り広げられる闘いをその校舎の屋上から見ているエレメリアンがいた。
自身の属性力をあえて活性化せずにいる事でテイルホワイトや仲間にそのエレメリアンがいる事を把握できていないようにしている。
「あれがこの世界の戦士か」
「ええ、下見に来て正解でしょ?」
紅の体のエレメリアンと蒼い体のエレメリアン、サラマンダギルディとウンディーネギルディだ。
「最初は苦戦していたようだが、段々とデュラハンギルディと互角……それ以上に闘えるようになってきている。 なるほど、闘いの中で成長しているのか」
「エンジェルギルディ隊長はまず戦士を見極めるって言ってたもんねえ。 デュラハンギルディが倒されたとしても、それは作戦の一部なのかも」
紅と蒼、炎と水で反対の色と性質をしている彼らは心の中の考えも反対らしい。
サラマンダギルディは同胞が倒れて良しとするのが気に食わないのか、貧乏ゆすりを始める。
「ねえねえ、あなたが副隊長になった理由わかるの?」
「何?」
唐突に質問され、答えが出てこない。
答えを出さないサラマンダギルディに対してウンディーネギルディは話し続ける。
「自分でもわかってるんじゃない?''なぜこの俺が副隊長なのか、ウンディーネギルディこそが相応しいのではないか''ってね」
「前半は間違っていないが……後半は考えた事もないな。 それにウンディーネギルディ、貴様は面倒事が嫌いだろうが」
「へえ、わかってるね。 それで理由はわかるの?」
サラマンダギルディが下を向き黙っているとウンディーネギルディはフッとニヤつき話し出す。
「相手に対しての甘さを消すためよ」
「俺が……甘いだと?」
サラマンダギルディは立ち上がり、ウンディーネギルディを睨みつける。
「うん。あなた今までツインテールの戦士から属性力を奪った事、ないよね?」
「……」
戦闘力が高く、相手を追い詰めることまでできてもサラマンダギルディはツインテールの戦士からツインテール属性を奪った事はなかった。
反論できずに再びサラマンダギルディは座り込んだ。
「……何が言いたい」
拳を握り、サラマンダギルディは俯く。
「私達の部隊、聖の五界の隊員である以上貴方は甘さを捨てなきゃいけないってことよ。それ以前にエレメリアンとしても、だけどね」
ウンディーネギルディが放った言葉を最後に二人のエレメリアンの間に沈黙が生まれ、再びサラマンダギルディはグラウンドへと視線を移した。
「俺たちの部隊の性質上、わかってはいるのだがな……」
サラマンダギルディは気づいていなかった。
ウンディーネギルディの手の中に黒い菱形の宝石''首領の吐息(ゴッド・ブレス)''が握られていたことに。