性別:女
年齢:18歳くらい
身長:154cm
体重:44kg
元アルティメギル所属。正体はオルトロスギルディの半分であり影。そして意思を持った最終闘体の姿だった。 アルティメギルの首領にオルトロスギルディとして従うフリをする一方、裏ではフレーヌにテイルギアの技術を託すなどしてアルティメギルの壊滅を狙っていた。 彼女のこの姿は以前にオルトロスギルディとして闘ったことのある''カエデ''そのものであり性格も若干影響されている。
どうして私はこんなところに居るんだろう。
空を見れば天高く高層ビルがそびえ立ち、地面を見れば少しおしゃれなタイル調のアスファルトが一面に広がっている。 そして左右を見れば人、人、人、人だらけ。
取り敢えず近くにあるベンチへ腰掛け、遠い空を眺めていると、私をこんな所へ連れて来た人物が駆け寄って来た。
「ほい、ジュース」
「ん、ありがと」
炭酸のジュースをその人物から受け取り、蓋を開け一口飲み込む。 隣に座った人物もまたジュースの蓋を開け、一気にグビグビと飲んでいく。 よっぽど喉が渇いていたらしい。
「それで、こっから何処行くの? 全部奢りって言うからついて来たんだけど」
「え、そうだっけか……?」
「冗談」
少しからかってみたけど、想像以上に慌ててしまったみたい。 流石にどんな相手だろうと一方的に奢られるのは私はあんまし好きじゃないし、彼氏や旦那じゃあるまいし。
「でもよ、伊志嶺がOKしてくれるとも思わなかったから少しビビったぜ」
おそらく、今のこの状況の一緒にお出かけしている事を指している。
「別に、嵐にはいつもお世話になってるからね。 ……主に属性力の方でね」
事の発端は速水がテイルシャドウとなった翌日、学校で嵐が三日後一緒に出掛けて欲しいというお願いをしてきたところからだ。 当然、私は気がのるはずもなく最初は断ったけど、理由が理由なので承諾し今に至ります。
結局、サラマンダギルディが消えた後も、新しいエレメリアンが現れる事もなく、世界が消える事もなく、今のところはまあ平和だ。
しばらくこの平和を満喫していたいところだね。
……そういえば、付き合った時一度もデートとかしてないから嵐と二人で出掛けるのはこれが初めての事だ。
「そうだ、お昼は奢ってくれるって言ったよね!」
「ああ、それは確かに言った」
一応確認のためだけど一方的に奢られるのが嫌いなだけで私は奢られるのは嫌いじゃない。 あとでちゃんと何かしらお礼はするつもりだ。
私と嵐はベンチから立ち上がり、目的のお店へと歩を進める。
「そういや、ちゃんと俺の言ったようにしてくれたか?」
歩きながら嵐が話し始めた。
「あー、フレーヌ達には秘密って事でしょ? 秘密にしといたけど、何で秘密にする必要あるわけ?」
何か恥ずかしい事や、犯罪をするわけでもない。 ただ出掛けるだけなのに何を秘密にする必要があるんだろう。 わざわざ待ち合わせの駅も最寄りから二駅ずらしてたし。 フレーヌに頼めばカタパルトですぐ目的地へと行けるんだけどな……。
休日なだけあって電車は混んでたから、私はやっぱりカタパルトの方が良かったかなぁ。
それによくよく考えたら私たちがしてるブレスには確かGPSが……
。
「いや、あいつら……特にフレーヌはめんどくさい事になるかなって」
「めんどくさい事?」
「えっと、なんでもない。こっちの話だ……」
よくわからないけどフレーヌはあれかも、聖の五界が来てるのに呑気にお出掛けとかそう言うのかな? このことは特に追求もせず他の話へと移っていく。
クラスの男子の変な話とか、サッカーの試合の話とか歩いている間色々話題は尽きなかった。
そうこう話している間に、私が行きたかった目的のお店の看板が見えてきた。
何ヶ月か前に雑誌で話題になっていたカフェだ。 落ち着いたレトロな雰囲気が売りらしく女子高生に大人気で私のクラスの女子達も何回か行ったことがあるらしい。 私が志乃とよく行っているパターバットとはまた違う雰囲気がある。 ……ちなみに私はテイルホワイトとして闘っていたため流行りの場所にいく時間がなかった。 ようやく普通の女子高生と同じ事が出来るのだ。
心がフワフワするこの感じ、久しぶりだなあ。
「さ、早く入ろ♪」
「お、おい!」
嵐の手首を掴み、私は走って目当てのカフェへと早足で入店した。
カランコロンという定番の音を聞きながら、話題のカフェに心が躍る。
◇
奏と孝喜が並んで歩いている後ろ……百メートル程のところで二人を見つめる二つの人影がある。
一人はハンチング帽を目深に被り、コートの襟を立て探偵のような服装をしているが彼女の髪型や顔とは不相応に思える。 もう一人は彼女よりも小さく、白いニット帽を被り赤い縁メガネをつけているが自慢の赤い瞳は主張をやめておらず見るものを反射している。
「フレーヌの言う通りだね、まさかあの二人が一緒に出掛けてるなんて……」
帽子のツバを少し持ち上げ、クリッとした目を出し、前にいるフレーヌに話しかける志乃。 それに対しフレーヌはメガネを光らせ答える。
「フフフ、私のレーダーは強力なんです。奏さんが私たちに隠し事をしているのなんて仕草でわかりますよ」
「そ、そういえば黒羽はついてこなかったの?」
聞こうと思って忘れていたのか、何かヤバイものを感じたのか志乃がこの場に黒羽がいない事をフレーヌに問う。
「黒羽さんなら誘ったんですが興味ないと言われまして」
黒羽が興味ないと言う様が容易に想像する事ができ、苦笑いする志乃。
「ていうか、こんな格好してたら逆に目立つような……」
店のガラスに映った自分の姿をまじまじと志乃は見つめた。
この街中では志乃もフレーヌも明らかに浮いている。
「あれ? 二人を見失いました!!」
いつの間にか人通りがかなり多くなっており、どの道を曲がったのか、どの店に入ったのか背の小さいフレーヌではわからなくなってしまった。
当然、志乃も見ておらず完全に二人が何処に居るのかわからない。
「しょーがないね……帰ろ━━━」
「━━━━五十メートル先の飲食店に入っていったわよ」
「「え?」」
志乃とフレーヌが辺りをキョロキョロ見回してる中一人の女性が隣に立つ。
白いシャツに黒のベスト、薄茶色のスキニーという出立ちで綺麗な瞳を隠すサングラスをしている彼女だがもっとも目を惹くのは黒く輝くツインテール。
「く、黒羽!?」
「興味なかったんじゃ…」
ジト目で黒羽をみるフレーヌ。
「これから完全な人間として生きる身としては観察は怠ってはいけないと思ってのことよ」
「それはいいけど黒羽、その服どしたの?」
この世界に来て、仲間になった時から彼女は服がないといっていつものセーラー服を着ていたのだが、今は違う。 志乃も自分の服をあげるか一緒に買いに行く事を考えていた。 もちろん下着も。
「ホワイトの部屋から拝借したのよ」
「あっ……そう」
続けてどう拝借したのかフレーヌが聞くと平然とピッキングして家入ってと黒羽が答えている。
(か、帰りたい……)
そう思いつつ、志乃もフレーヌと黒羽の後をついて行くあたり、興味はあるようだ。
◇
うーん、やはり評判通り美味しかった。 一番美味しかったのはやっぱり看板のチーズケーキ! 値段もそれなりだけど市販のものとは格が違うのがもう見た目でわかった。勿論、味もそう。天にも登る気持ちを味わう事が出来た。
これだけで今日、嵐について来たのが良かったと思える。
ウキウキな私と対照的に嵐は何故か元気がない。
「お前、あんな食うのかよ……」
財布の中を見て落ち込んでいるようだ。 ……そういえばかなりたくさん注文しちゃったな。反省しておこう。
悪いことしたかな。
「まあまあ、次は私が奢るからさ!」
嵐の背中を押し、次の目的地へと向かう。
次は嵐が行きたいと言っていたこの近くに新しく出来た大きな水族館だ。 なんでも日本では貴重なジンベエザメが飼育されているらしい。
そういえば、嵐が魚好きって言うのも初めて知った。 ……属性力に魚属性とかあるのかな。
水族館行きの無料バスへと乗り、私と嵐は水族館へと到着した。 二人分のチケット買い、中へ入るとまずはお触りのコーナーだ。 ウーチンギルディ……じゃなくてウニやナマコといった生物を直接手で触る事ができるらしい。
「あれ? 奏触んないのか?」
颯爽とスルーしようとしたのだが嵐に呼びかけられ歩を止める。
「ナマコはちょっと……」
なんとなく嵐は察してくれたのか、特に追求もせずドーム状の廊下を歩き出した。
「私ナマコ触るの初めてなんだー♪」
「私もです! プニプニしてますねっ!」
「こ、これを人間は食べるのね……」
なにやらさっきのお触りコーナーでやたらと盛り上がってる女の子がいるらしい。 チラッと見たところどうやら三人組のようだ。 二人は私と同じぐらいの身長で後の一人は小さめだけど、高校生だろうか。
前を歩く嵐の元へ駆けるとすぐに次のエリアへと入る。
「ここは……熱帯魚やらがたくさんいるみたいだな」
めんどくさくて説明を省いたね、嵐。 まあ私も説明なんて出来ないけど、ようはメジャーな魚がたくさんいる場所ってところかな。
一際目立つ大きな水槽には大小様々な魚が泳いでいる。
「スズキ、マグロ、クラゲ、ジェリーフィッシュギルディ、シーホースギルディ、クラーケギルディ、シャークギルディ……あれ?」
「おい……大丈夫か?」
「う、うん……」
私としたことが…闘ってきたエレメリアンが海洋生物ばかりだからそれを見ると無意識に頭の中に浮かんできてしまう。 これはある種の職業病だろうか。
水族館ですら闘いを忘れさせてくれないエレメリアン……許すまじ!
「うわー、おっきいねえ」
「私もこんな大きな水槽は初めて見ました!ですが私の世界では━━━」
「なんだか前いた場所を思い出すわ……」
先ほどのお触りのコーナーにいた三人組だろうか、彼女達もどうやら順路に沿って水族館の中を見て回っているらしい。
「この先でイルカショーあるらしいし行こうぜ伊志嶺」
「ん」
そう言われ会場に向かうとかなりの混雑具合だ。 前の方に座ると水がかかるのはわかりきっているため上の方の席を陣取る。
さっきの三人組も会場に入るなりなんと不自然に空いている最前列中央の席へと座った。水を被りたいのか、それとも知らないのか。
イルカショーまで嵐と話をして暇を潰すことにした。
「ドルフィンギルディっているのかな」
「え?」
「いやー、私まだ闘ったこと無いからさドルフィンギルディと。 もしいたらオルカギルディ見たいにマスコットを前面に押し出した感じなのかなーって思ったり」
「専門家かよお前」
そうこう話している内にイルカショーは始まり、可愛いイルカ達が会場のプールを右へ左へ泳いでいく。
「わー!!」
可愛い、とても可愛い。スマホのカメラでの連写が止まらない。 なんかこう、日頃変態達の相手をしていたため汚れていた心を綺麗に浄化してくれるような気持ちだ。
トレーナーさんの合図に合わせ、高いところに吊るされたボールを触ったり、大ジャンプをしたり、フラフープのような輪をくぐったり…そしてクライマックスの……イルカによる観客への水かけ……。
「ビショビショだよー……」
「わ、わざと水をかけましたね!」
「……寒い」
やっぱり前に座っている三人組はみんな綺麗にイルカから水をかけられてしまった。 今日は結構気温低いし、なんだか可哀想だな。
ショーも終わりぞろぞろとお客さんが帰っていく中、私と嵐は次はどこに行こうかと席に座ったまま思案している。
「じゃあ深海コーナーだな!」
パンフレットを見ながら話していた嵐が立ち上がり歩き出すと私も続いて立ち上がり後についていく。
深海コーナーとはその名の通り深海をモチーフにしているエリアであり、通路は薄暗く軽くグロテスクな魚達が飼育されている。
この前に闘ったデュラハンギルディもなかなかのもんだったけどここにいる魚達モチーフのエレメリアンが出てきたらなかなかの容姿なんだろうな。 でも確かチョウチンアンコウとは闘ったような気がするな……。
それにしても、やっぱり怖い。
「お、おい大丈夫か?」
「え? あ、ごめん」
私としたことが無意識に嵐の服の裾を掴んでいたらしい。
時々立ち止まり、珍しい魚を見ては次の水槽へ、それを何度か繰り返し深海コーナーを抜けた。
「最後は目玉のジンベエザメだな」
まさにジンベエザメの為だけのコーナーだ。
水槽は映画のスクリーンよりも全然大きいけど、中を泳ぐジンベエザメは窮屈そう。 ここまで大きい魚がいるもんなのかと思う。
大きな水槽を全体的に眺めることができる所に設置された椅子へと座りボケーっと見つめる。
「少しはリラックスできたか?」
隣に座っている嵐が話しかけてくる。
薄暗いエリアなこともあり、顔ははっきりとは見えない。
「まあまあ、かな」
最初は全然気が進まなかったけど来てみるとなかなか楽しかった。
(嵐と付き合い始めた時は、こういう事したかったんだろうなあ……)
昔の私なら嵐が大好きになっていたかもしれないけど、今の私じゃそうもいかないんだよね。
「おっきいよこのクジラ!」
「ジンベエザメです! 哺乳類ではなく魚類です!」
「へえー」
薄暗い中、すっかり覚えてしまった三人組の声が響く。
今度は二人じゃなく、志乃達も一緒にこれたらいいな。
◇
「ええ!? 後つけてたの!?」
嵐とお出かけした翌日、学校の帰りに志乃から告げられた。 私としては志乃達に話してないから全然尾行されてるとも思わなかったけど。
「ご、ごめんね……。 フレーヌがどうしても聞かなくてさ」
そういえば前もフレーヌは嵐の事かなんかで色々暴走してたような。
「それにしても凄いね。 全然気がつかなかったし、探偵にでもなるの?」
正直普段エレメリアンと闘っている私としては気配には敏感だと思っていたから少しだけショックだ。 聞けば私と嵐が駅で合流してから水族館を出るまでつけてたと言うからさらに驚いた。
「フレーヌがイマジンチャフを使ってて」
「あっ、なるほど」
認識攪乱なんか使われちゃ、三人の尾行に気づくわけはないか。
……なんかアルティメギル以外でイマジンチャフが破られなかったのって珍しいような。
「まあ、私もイルカに水浴びせられたり散々だったけど」
そう言うとテヘッと笑う志乃。
そうか、水族館でしょっちゅう見かけたあの三人組は志乃とフレーヌ、そして速水だったってわけか。 確かに今思えば完全にあの三人なのに、イマジンチャフって凄いんだなと改めて実感する。
「今度はみんなで水族館行こうと思ってたけど、行った事あるなら予定変更ね」
「じゃ、アルティメギルを倒したお祝いに奏の家でパーっとパーティーでも!」
「はいはい」
手をプラプラさせて志乃の返事に答えていると突然志乃がその手を両手で握りしめた。
「約束ね!」
真剣な目をしているが口元は笑っている。
「もちろん」
私も志乃の手の上に自らの手を重ね、答える。
志乃は私達がアルティメギルを倒してくれると信じている。 今度の部隊、聖の五界の本当の力を私はまだ体感していないんだと思う。
聖の五界の先鋒、デュラハンギルディを倒してから間も無く一週間、次は一体どんな手を仕掛けてくるのだろうか。
今回は初めてアルティメギルとは無縁の日常回です。
実はデート的なのは前から書きたかったんですが、中々の難しさです。