私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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FILE.48 進形態

 速水黒羽を中心として、鬼のように強く風が巻き起こる。

 

「これが私の、テイルシャドウの……アンリミテッドチェイン!!」

 

 あれが、黒羽のテイルギアが進化した進化形態……究極のテイルシャドウ!

 黒羽の小さな胸に被せられたエヴォルブアームズに全くパッドは入っておらず大きくなってはいないが、それ以外の部分は全てが鋭利に、より攻撃的にパワーアップしている。

 

『テイルシャドウのエヴォルブアームズ、アンリミテッドブラですね!!』

 

 アンリミテッドブラ……!!

 とても強そうな響きだ!………ブラジャーじゃなければもっとカッコイイんだけどね。

 自らの装甲以外にも、彼女が手にしている武器は先程のノクスアッシュよりも刃が大きく先端にも新たな刃がつけられ、より迫力あるデザインへと進化している。

 しかも周りにはスパークが迸り、進化した彼女をより引き立てている。

 

「ホワイト、今日はゆっくり休めるわね」

「……じゃ、遠慮なく」

 

 黒羽は自分で決着をつけるつもりだと、私に手を出すなと遠回しにそう言っている。

 まあ、私が手を出したところであのサラマンダギルディは歯が立たないだろうし、素直に黒羽に任せるのが吉だ。

 テイルシャドウの迫力ある進化形態を見て、先程まで見境なく攻撃をしていたサラマンダギルディは大人しくなりその場に立ち尽くす。

 

「ぐう…………テイル……シャド……」

「サ、サラマンダギルディが……」

『サラマンダギルディが正気に戻りかけているようですね』

 

 黒羽の迫力に圧倒されたのか、サラマンダギルディが正気に戻りかけている。

 

「ぐおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 一瞬自分を取り戻しかけたみたいだが、再び雄叫びをあげ、周りの物を破壊しはじめてしまった。

 

「があああああああ!!」

 

 突如として手のひらから紅い光球を作り出し、サラマンダギルディは上空へと打ち上げた。

 

「何あれ……ってなんか熱い!?」

 

 ある程度の高さまで上がると光球は止まり、眩いばかりの光と熱波が周囲へと降り注ぐ。

 これはまるで、太陽!?

 

『これは、おそらくサラマンダギルディが先程見せたサンプロの進化版です。解析によると……対象を一人から半径二キロにいる全ての人にまで広げ、真夏と同じレベルの太陽光や熱波、紫外線や赤外線に至るまでをあの玉から放射しています!』

『奏、すぐ日焼け止めクリームを塗って!!』

 

 フレーヌの言うことは確かなようで、まもなく汗が私の肌の上を流れていく。 だが残念なことに、秋のこの時期に日焼け止めクリームは持ち合わせていない。

 その様子を黙って見ていた黒羽は決然と目を見開き、進化したノクスアッシュを構える。

 少しだけ、彼女の頰に汗が滲んでいるのが見えた。

 サラマンダギルディに正気がなく、黒羽が何も言わなくてもわかる。

 アルティメギルを潰すという覚悟を強め、風に舞う黒いツインテールが最終激突の合図となり、攻撃が始まる。

 腕を地面に着き、先程と同じように尻尾を伸ばし叩きつけようとする攻撃を黒羽は素手で薙ぎ払い迎撃する。

 

「ぐお!?」

 

 尻尾が千切れたとこで黒羽はサラマンダギルディの少しの隙をつき、ノクスアッシュの柄で叩きつける。

 続いてサラマンダギルディが仰向けに倒れると顔面に容赦のない膝打ちを食らわせ、さらに進化した斧で斬りつける。

 

「ぐあああああああ!!!」

「!?」

 

 しかし、いつの間にか再生していた尻尾により攻撃は防がれ黒羽は強かに叩きつけられた。

 

「ちっ!」

 

 ビルの屋上から落ちるすれすれのところで斧を突き刺し何とか落下せずにすんだ。 ただそれだけでは終わらず、黒羽の背後からまた黄金の尻尾が迫ってくる。

 

「はああああああああ!!!」

 

 尻尾を受け止め、逆に黒羽はそれを一本背負いのように投げ、サラマンダギルディはビルの外壁へと叩きつけられ、ガラスを破るとビル内へと転がっていった。

 それを見た黒羽はまた直ぐに尻尾を引き、ビル内からサラマンダギルディを引きずり出すと今度は高く跳躍し屋上の床へと叩きつける。

 

「ちょっと、ビルは壊しちゃダメだからね!」

「わかってるわ」

 

 本当にわかっているのだろうか。

 しばらくして再び煙の中から現れたサラマンダギルディは頭を抱え先程よりも苦しそうに唸っている。

 

「さあ、何をする気?」

「ぐがが…………!!」

 

 サラマンダギルディは腕を胸の前でクロスすると自らの腕についていた鋭利な爪を更に伸ばし剣のようにすると、再び疾駆し剣撃の嵐を浴びせる。

 

「ぐはあああああああああ!!!」

 

 黒羽は剣撃の嵐を一つ、また一つ進化したノクスアッシュで弾き隙を見つけては斬りかかる。

 

「はああああ!!」

 

 大きく振りかぶり、振り下ろしたノクスアッシュと爪の剣が交錯し火花以上の黒炎があたりに噴き散る。

 両手を上段へと構え、無防備になったサラマンダギルディの横腹へ黒羽は渾身の蹴りをいれた。

 

「ぐ…………」

 

 僅かな呻き声をあげながら、サラマンダギルディは地面を抉り後退していく。

 その隙をつき、黒羽は進化したノクスアッシュで浮いている光球を一閃。 すると浮いていた光球は散り、周囲の温度が下がっていった。

 

『奏、肌大丈夫?』

 

 通信が入ると志乃の声が聞こえてきた。

とりあえず二の腕を見てみると、どうやらまだ焼けていないようだ。

 

「うん、大丈夫」

『良かったな』

「うん……え?」

 

 安堵した声が聞こえて思わず返事をしたけど、その声は嵐だ。

 

「なんで嵐が私の肌の心配してんの」

『な、流れだよ流れ!!』

『黒羽さんが闘っているのに二人でラブコメはやめてください!』

 

 サラマンダギルディは黒羽の行動を邪魔できずにいるとやがてその場に倒れこみ、頭を抱え唸る事しかできていない。

 

「サラマンダギルディ、馬鹿な事はもう止めなさい」

 

 サラマンダギルディを心配する黒羽の言葉は届いているのだろうか。変わらずサラマンダギルディは唸る事しか出来ない。

 

「あなたは真剣に私と、オルトロスギルディと闘いたいと言ったはず……それがこれだって言うの?」

 

 サラマンダギルディの近くまで黒羽は歩み寄る。

 

「ぐぐ……があ!!!」

 

 強烈な右ストレートをサラマンダギルディは繰り出す。 が、黒羽は楽々とそれを左手で受け止めた。

 

「……悪いわね」

 

 サラマンダギルディの腕を弾き、今度は黒羽が左手で渾身のストレートをサラマンダギルディの顔面へと放つ。 当然、サラマンダギルディは吹っ飛び、コンクリートを砕いていく。

 

「ブレイク……レリ━━━━ズ!!」

 ビル全体が地震のように揺れると同時に、アンダースーツと一体化していたアンリミテッドブラがノクスアッシュの柄に合体。

 地面へと斧を振り下ろし、そこから巨大なオーラピラーがサラマンダギルディの足元から発生し空へと持ち上げる。

 

『空中で相手をバインド!? オーラピラーをこのように使うなんて……!!』

 

 シャドウの放ったオーラピラーはサラマンダギルディを空中でバインドし、身動き取れない形にしている。 その様はサラマンダギルディ自身が太陽となっているように見えた。

 黒羽の進化した腰の装甲から蒸気が噴き出し彼女自身もバインドしたサラマンダギルディよりさらに高く空へ飛んだ。

 

「ルナティック━━━━━━━━クライシス!!」

 

 サラマンダギルディ目掛けて斜めに落下し、その勢いのままノクスアッシュで真一文字に切り裂く。

 必殺の一斬に、サラマンダギルディは空中で爆発し、ビルへと落下した。

 

 

 力無く落下し、地面に衝突したサラマンダギルディ。 再び黒羽と共に歩み寄るとサラマンダギルディは最終闘体から元の姿に戻っていた。

 

「サラマンダギルディ、あなたとの最後がこれだなんて残念で仕方ないわ」

 

 どうやらまだサラマンダギルディは息があるようで、首だけを僅かに動かし口を開いた。

 

「俺は……同胞を守りたかったんだ。 訳のわからない発明品で、同胞を傷つけたくはなかった」

「わかってるわよ、それくらい」

 

 そう言うと黒羽はその場にいるサラマンダギルディから歩いて離れていく。

 

「ちょ、ちょっと黒羽……」

「やめてくれ」

 

 黒羽を呼び止めようとしたがサラマンダギルディに止められる。

 

「最後は……見られたくはないのでな……」

 

 そう言っている間にも黒羽はどんどんサラマンダギルディから遠くへ歩いて行くと別のビルへとジャンプしていき、やがて姿は見えなくなった。

 

「テイルホワイトよ……頼みを聞いてくれ」

 

 私が頷くとサラマンダギルディは遺言のように重々しく言葉を紡いでゆく。

 

「オルトロスギルディはたくさんの戦士のツインテール属性を奪ってきたが、速水黒羽はツインテールの戦士を泣かせた事はないのだ。 信じては貰えんだろうが……この俺も……」

 

 サラマンダギルディが私に忠告してきた時からなんとなく、彼が普通のエレメリアンではないと思っていた。

 でも━━━━

 

「そんな事改めて言われなくても黒羽のこと、信じてるし」

 

 少しだけ笑みを浮かべサラマンダギルディは続ける。

 

「頼もしいな。お前のような奴が我が隊の隊長なら、少しは俺の運命も……変わったのかもしれない」

 

 私はサラマンダギルディに違和感を感じた。

 

「あんた、本当は正気に戻ってたんじゃ……」

 

 サラマンダギルディは満足気に笑うと、体の至る所から放電が始まる。

 

「忠告することがもう一つある。 我が隊の隊長エンジェルギルディは底知れぬ闇と力の持ち主、今のお前達では倒せまい」

「無視したうえに余計なお世話すぎるけど……」

 

 体の放電が一際大きくなり、サラマンダギルディが爆散するまであと十秒もないと言うところで、最後の一言を発した。

 

「人間の底力、羨ましいな……」

 

 私が少し離れたのを見届け、サラマンダギルディはその場で爆散し、属性玉が私の元へふわふわ飛んできた。

 自分を犠牲にし、部下の事を誰よりも想いすぎた誇りある戦士は満足した表情でこの世界から姿を消した。

 

 

 異空間に浮かぶアルティメギルの艦。

 いつもの大ホールのある艦とは別の聖の五界が乗ってきた艦にその隊長エンジェルギルディとウンディーネギルディはいた。

 

「サラマンダギルディが……わかりましたわ」

 

 薄暗い部屋の中でエンジェルギルディがどんな表情をしているのか、ウンディーネギルディにはわからない。

 

「サラマンダギルディを討ったのはオルトロスギルディの影、改めテイルシャドウ、新たな戦士らしいね」

 

 ウンディーネギルディがパソコンをカタカタ操作し、シェルギルディの送ってきた画像をエンジェルギルディへと見せる。

 

「なかなか見事なツインテールですわね。 でもお嬢様力はテイルホワイトには遠く及びませんわ」

 

 お嬢様属性の持つエンジェルギルディにしかわからない単語をいきなり話され、当然ウンディーネギルディは困惑し黙り込む。

 

「と、ところでサラマンダギルディにゴッドブレスを使わせたのは計画の内なの?」

 

 シーンとした空気に我慢できずに話題をそらす。

 パソコンを閉じ、ウンディーネギルディはまっすぐエンジェルギルディを見据えた。

 

「どうでしょうか? 何にせよ貴重なデータが手に入りましたわね」

 

 エンジェルギルディはテーブルに置いてあった本をとるとペラペラとページをめくっていき、何十ページが進んだところで手を止めウンディーネギルディへと見せる。

 

「ゴッドブレスの設計図……まさか、量産しろと?」

「ええ、科学班と太いパイプを持つあなたなら容易いことではなくて?」

 

 無言でウンディーネギルディは本を受け取る。

 

「そういえば、テイルホワイトはどうですの?」

「どうって?」

「テイルホワイトの属性力は妖艶でいてかなり魅力的ですわ。 ですが、正直そこまでの強さは感じられませんし、彼女が私達と対等に闘えるとは思えませんの」

 

 後ろにあったソファーへと腰掛け、エンジェルギルディは続ける。

 

「ですが、私にわかるのですわ。 彼女が底知れぬ力を秘めていると……」

「あれが? 私にはただの何処にでもいるツインテールの戦士って感じだったけど」

「まだまだですわね、ウンディーネギルディは」

 

 呆れ気味にエンジェルギルディは呟き、ドアへと歩いていく。

 

「テイルホワイトが力を解放した時、私たち最大の脅威になりかねませんわ」

 

 ドアの前で立ち止まると再びウンディーネギルディと向き合う。

 

「芽は、潰しておくのが最良の選択ですわ」

 

 そう言い残し、エンジェルギルディはドアを開け部屋を出ていった。

 

 

 放課後、何処に寄り道をするわけでもなく家に帰り制服のままリビングのソファーへとダイブした。

 

「ちょっと、制服シワになるでしょ?」

 

 台所から私のお母さんが登場する。

 

「疲れたのー」

 

 特に何かを言うこともなく、お母さんはリビングから出て行った。 おそらく二階にでも上がって洗濯物を取り込みにでも行ったんだろう。

 ソファーの上で仰向けになり、リモコンをとってテレビをつける。

 夕方のニュース番組では変わらずテイルホワイトの事を取り上げ、今までの闘いのVTRを流している。

 

『ここで、先日現れた新たな戦士のVTRをごらんください』

 

 そう言うと画面が切り替わり、テイルシャドウがデカデカと映し出される。

 

『先に言っておくけどテイルシャドウのグッズを出す場合利益の八十パーセントは私によこしなさい。 同意できないなら私のグッズは作らせないから』

「何言ってんのこの人……」

 

 VTRはそこで終わり、再びスタジオに戻るが案の定司会者やアナウンサーは苦笑いしている。

 特にテイルシャドウに触れることもなくニュースは今週の天気コーナーへと移った。

 

「奏、来週の日曜日空いてる?」

「え、空いてるけど?」

 

 いつの間にか戻ってきてたのお母さん。

 お母さんはやたら高価そうな服が二着持っていて……。私としては猛烈に嫌な予感がする。

 

「じゃあ恒例のパーティにはどっち着てく?」

 

 私のお母さんは元人気女優だ。

 芸能界の付き合いとかそういう理由で毎年パーティに行っていたらしく女優を引退してもそのパーティは毎年行っている。

 結構有名な人とか来るみたい。

 

「行かないって……毎年やってるねこのやり取り」

「だって小さい頃はついてきてたじゃない」

 

 そりゃ私も小さな時は楽しかったけど、今は挨拶やら人付き合いやらめんどくさくて……いつしか行かなくなってしまった。

 

「今と昔は違うもん」

「今年こそはって思ったのにー……」

 

 口を尖らせながらお母さんはリビングを出て行った。

 歳を考えなさい、歳を。




テイルシャドウ・アンリミテッドチェイン

黒羽が自らのツインテール属性を極め、オルトロスギルディが核であるテイルギアと非常に相性が良かったため変身の兆しはあったもののなかなか成功しなかった。 しかし、ただ一人の部下であるフェンリルギルディから最後に託されたブラジャーがトリガーなって変身した強化形態。 全身の武装がより強固に鋭利に進化するとともに武器であるノクスアッシュにも大幅な強化がなされた。 なおアンリミテッドブラにはパッドが入っておらず、装着した黒羽の胸は一ミリたりとも大きくなっていない。

武器:ノクスアッシュトリリオン
必殺技:ルナティッククライシス
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