私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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聖の五界(セイン・トノフ・イールド)

一向に奏の世界の属性力を奪えないシャークギルディ部隊に代わり、新たに現れた部隊。 その実力は未知数でありアルティメギルに属するエレメリアンでも存在を知るものは少ない。 エンジェルギルディを隊長に四体の幹部を中心に作戦が進行される。 聖の五界の本来のアルティメギルでの役割はアルティメギル四頂軍によって属性力が奪われた世界、または奪う事の出来なかった世界を必要か不必要か判断し世界そのものを消滅させることである。

隊長:エンジェルギルディ
副隊長 火の幹部:サラマンダギルディ
科学者 水の幹部:ウンディーネギルディ
風の幹部:???
地の幹部:???



FILE.49 宣戦布告

 世界の狭間に鎮座するアルティメギルの母艦。 その中に位置する大ホールの中央のテーブルにあまり見慣れない隊員が座っている。

 一体は女性型で優しい森を思わせる柔らかな緑色のエレメリアン。 一体のエレメリアンは先程のとは対照的に筋骨隆々で暗い茶色を全面に押し出したエレメリアン。

 その二体のエレメリアンが黙って椅子に腰掛けていると大ホールの隅にある薄暗い廊下からエンジェルギルディとウンディーネギルディが現れた。

 緑色のエレメリアンは二人が見えたと同時に椅子から立ち上がり深々とお辞儀をした後、手を顔に近づけ敬礼する。

 

「遅れてしまい申し訳ありません。聖の五界の風の幹部、シルフギルディ只今到着致しました!」

 

 椅子に座り、手を組んだままだが続けて暗い茶色のエレメリアンも口を開く。

 

「同じく地の幹部、ノームギルディ。 遅れて悪かったな」

 

 エンジェルギルディはノームギルディの行動を特に正すこともなく、いつものように笑顔で話し始める。

 

「待っていましたのよシルフギルディ、ノームギルディ。 あなた方の活躍なく、聖の五界は名乗れませんわ♪」

 

 手を合わせて喜ぶエンジェルギルディにシルフギルディはホッとした様子だ。

 

「遅くなりましたがこれで我々風、水、地、火が揃いましたね!」

 

 背中についている透明な羽をピコピコと元気に動かしながら拳を握るシルフギルディ。

 だが、エンジェルギルディは先程までの笑顔は消え暗い表情をして何も答えない。 かわりに後ろにいたウンディーネギルディが口を開いた。

 

「残念ながら四大精霊が揃うことはもうないんだよねえ」

 

 当然シルフギルディとノームギルディは意味がわからず、ただウンディーネギルディの次の言葉を待つだけだ。

 

「なんたって……火のサラマンダギルディがツインテールの戦士にやられてしまったんだもの」

「え!?」

「なんだと……」

 

 シルフギルディとノームギルディそれぞれが大仰に驚く。

 

「ほ、本当ですか!? 」

 

 シルフギルディがエンジェルギルディに話しかけるとようやく口を開く。

 

「ええ、残念ながら処刑対象であるオルトロスギルディの影によってサラマンダギルディは昇天していきましたわ」

 

 テーブルの上にあるパソコンを操作し、テイルシャドウがサラマンダギルディを必殺技で倒すところが映される。

 

「彼奴がオルトロスギルディの影か……。 さすがツインテール属性の塊、底知れぬ」

 

 フムと手を顎に当てながらノームギルディは映し出されたテイルシャドウをまじまじと見つめる。

 しばらくすると、ノームギルディは何かに気づいたように顎から手を離し、画面の端に写っているもう一人の戦士に注目した。

 

「こいつが噂のテイルホワイト……」

「ええ、シャークギルディやオルカギルディを一人で倒した強者ですわ」

 エンジェルギルディに説明されるも、ノームギルディは何かを考え黙り込む。

「ノームギルディの察する通り、彼女は自らのツインテール属性を極められていませんわ」

 

 パソコンを操作しエンジェルギルディは今までのテイルホワイトの戦闘映像を流し始めた。

 初戦のウーチンギルディ戦、新たな進化をアルティメギルにお披露目したオルカギルディ戦、さらに強さを増したメガロドギルディ戦。映像が切り替わるたびに彼女の攻撃は強さを増している。

 その映像の違和感をノームギルディは感じ取った。

 

「ツインテールは……変わっていない」

「その通りですわ。 アルティメギルの闘ってきた戦士は強くなる度ツインテール属性を高め、自らのツインテールを美しくしていきましたわ。 テイルホワイトには……それが見られませんの」

 

 テイルホワイトがアップになったところで映像を止めるエンジェルギルディ。

 

「彼奴のツインテールが輝く時、属性力が解放される……と?」

「ええ、あの状態でシャークギルディ達を倒してきたのですからそうなった時の我が組織の被害は計り知れませんわ」

 

 エンジェルギルディがパソコンのカーソルを右上に移動させ、赤いバツをクリックすると動画は消え青いホーム画面へと戻った。

 

「━━━━そうなる前に、属性力を頂きましょう」

 

 

 とうとう十月に突入し、季節はすっかり秋へと変化していた。

 そしてここは昼休みの教室、食堂に行く人が多いが私と志乃は二人の机を近づけ家から持ってきたお弁当を食べていた。

 

「え、あの人も来るの!?」

「志乃ってファンだったの?」

「うんうん、ドラマに出てるの見てかっこいいなーって!」

 

 先日、私のお母さんから言われたパーティの事を志乃に話したところ、パーティに来る俳優の一人が今人気らしい。……自慢じゃないけどテレビをつけたらテイルホワイトテイルホワイト報道されてるせいで最近その方面に疎くなってきている。

 

「奏も行ってくれば良かったのに」

 

 玉子焼きを食べ、美味しそうな表情を見せながら志乃は話す。

 

「私はもう興味ないって。 参加者はどっかの社長令嬢とかよく来るみたいだから私には合わないの。 それと、食べるか話すかどっちかね」

 

 私は弁当箱を包み、自分のバッグへと戻す。

 

「奏も充分お嬢様って感じするよ?」

「どこがよ。 ないない」

 

 確かに普通の人にとっては特殊な家庭ではあるけど、執事はいないし普通の住宅街に暮らしてるし普通に歩いて学校来てるし。 まあ、リムジン乗って執事やメイドさんを従えて登校するのも、昔は憧れてたっけ。

 気づけば食堂に行っていた人たちもクラスに戻って来ており、騒々しくなってきた。

 

「ほれ、次体育だしそろそろ着替えに行こ」

 

 気づけば昼休みも残り五分をきっている。

 体育はジャージに着替えないといけないし、他の授業よりも休み時間に自由にできないのがちょっとムカつくものがある。

 

「はい、奏お嬢!」

「なに言ってんだか」

 

 ぞろぞろと更衣室に向かう女子達を追いかけ、私と志乃も教室から出ていく。

 

 

 五時間目と六時間目もこの通りあっという間に終わり放課後、私と志乃で一緒に下校している。

 ただし、向かっているのは家の方向ではない。

 

「そういえば、半年くらい前もこうやって二人でこの道歩いてたねえ」

 

 紅葉が綺麗な並木道を歩きながら志乃が言う。

 

「バターパット最近行ってなかったもんね」

 

 半年も経っていないか。おそらく五ヶ月くらい前に二人でバターパットへ行き、フレーヌに出会い、今の私があるんだっけ。

 

「さ、入ろ!」

 

 いつの間にかバターパットへと到着していた様で先に志乃が、続いて私が扉を開け中に入っていく。

 喫茶店によくある扉を開けると鳴るカランカランという音も健在で少し安心する。

 店内を見回すとやはりお客さんは少ない。

 五ヶ月くらい前と違い、私たちがよく座っていた席も空いており二人でそこに座る。

 

「そういえば異世界の喫茶店に行ったって言ってたよね?」

 

 マスターに注文したコーヒーが届いたところで志乃が話しだした。

 

「そうそう、私みたいに別の世界から来たって人達がたくさん集まってるって言われて行ってみたら閉まっててさ」

「なーんだ、異世界の人ってどんな人がいたのか知りたかったのにー」

「私があった人はシルクハット被ってて顎髭少し生やしてて、確か見た目は三十代くらいだったかな」

「もしかして中世のヨーロッパみたいな世界から来た人だったりしてね」

 

 そう言うと志乃は笑い、それにつられて私も笑う。

 あの人はあの世界が気に入ったと言っていたけど、やっぱり私は志乃達がいるこの世界が大好きだし戻ってこれて良かった。

 

 

 気づけばバターパットに入ってから一時間、時間は午後五時半となっていた。

 

「じゃあ帰ろ……あれ?」

 

 帰る準備を始め、会計するため席を立ち上がろうとした時、店内が異様な雰囲気に包まれる。

 流れていたクラシックが止まり、かわりにおかしなBGMが流れ始めた。

 これは……前に経験したのと同じだ!

 すると不穏なBGMが小さくなり、誰かの声が店のスピーカーや私たちの携帯から聞こえ始めた。

 

『みなさん、御機嫌よう』

「これって……奏!」

「うん……!」

 

 お金をカウンターにいるマスターに叩きつけ、私と志乃は急いで店の外に出ると、それがあるであろう空へと目を向ける。

 やはり空には巨大なスクリーンができており、真ん中に一体の白いエレメリアンが立っている。

 あれは……コーラルギルディと同じような女みたいな体型をしている。

 

『私がこの世界の属性力奪取の任を新たに授かった聖の五界の隊長、エンジェルギルディですわ』

 

 エンジェルギルディ……!

 この白いエレメリアンがサラマンダギルディが言っていたエンジェルギルディなのか。

 

『やはり挨拶はレディーの嗜み……怠ってはいけないと思って放送していますの』

 

 それにしても……コーラルギルディと違って、やけに言動の一つ一つが女の子に近い。いや、どちらかと言うと大人の女性……もしくはお嬢様、だろうか。

 

『それでは挨拶も終えましたので……早速属性力を頂きますわね』

「「!?」」

 

 その言葉を最後にスクリーンは砂嵐に変わる暇もなく消えていった。

 

「奏……属性力を頂くって……」

「……フレーヌのところに行こう」

「うん!」

 

 今はそれしかない。

 そう思い、フレーヌの基地へと向かおうとしたところ右腕のテイルブレスが可視化しフレーヌの声が聞こえてきた。

 

『奏さん! エレメリアンが……四体同じ場所に現れました!!』

「よ、四体!?」

『既に黒羽さんが向かいました! 奏さんもお願いします!!』

「わ、わかった! 悪いけど志乃、バッグ持っててくれる?」

「うん!」

 

 通学カバンを志乃に預け、テイルギアを胸の前へと構えるとテイルホワイトへと変身した。

 そのまま跳躍し、エレメリアンが出現したという所へと向かった。

 

 

 四体のエレメリアンが同時に現れた場所は東京ドームらしいけど、東京ドームでどんな属性力を狙っているのだろうか。

 近くに着いたところでフレーヌにドーム内へと転送してもらい中に入った。

 周りを見渡すと空席しかない、つまり今日はこのドームは使われない事になっているらしい。 となると無人のこのドームに来た理由がますますわからなくなってくる。

 

「遅かったわねホワイト」

「シャドウ!」

 

 シャドウの前には四体のエレメリアンが腕を組み、こちらを威圧するように立っている。

 まず真ん中の筋骨隆々なエレメリアンが一歩前へと出てきた。

 

「我は聖の五界、地のノームギルディだ」

 

 続いて隣にいたノームギルディとは真逆の女性らしい体型をしているエレメリアンも続けて前へと出てくる。

 

「同じく、風のシルフギルディ!」

 

 ノームギルディとシルフギルディに続き、後ろにいた二体も前へと出てきた。

 

「シャークギルディ部隊、スターフィシュギルディ!」

「同じくシャークギルディ部隊、オクトパギルディ!」

 

 どうやら聖の五界の隊員は手前の二体だけで後の二体は違うらしい。

 聖の五界のエレメリアンが四体ではなく二体なら多少の気休めにはなる。

 

「行くぞ!!」

 

 ノームギルディの掛け声とともにヒトデギルディが私に、タコギルディが黒羽にそれぞれカットラスのような剣を手に襲いかかってくる。

 二人ともフォースリボンに素早く触れ、それぞれの武器を手にする事で二体のエレメリアンの攻撃をまず防ぐとすぐに反撃を開始した。

 

「でや!」

「は!」

 

 私は右足でヒトデギルディの胴に回し蹴りを、黒羽は左手でタコギルディの顔面にパンチをそれぞれ繰り出し、二体のエレメリアンはドームの芝の上を転がっていく。

 

「油断なさらない事です!」

「してないわ!」

 

 黒羽は休む間も無くシルフギルディに攻撃され、芝を削りながら後退していく。 さらにシルフギルディは黒羽に追い打ちし、私と黒羽はどんどん距離が離れていった。

 

『奏、危ない!!』

 

 志乃の声が通信機から聞こえ、後ろを振り返るとノームギルディが眼前にまで移動している。

 

「ふん!」

「きゃあっ!」

 

 ノームギルディが軽く腕を振るっただけでフォトンアブソーバーを突き破りもろにダメージを受ける。

 筋肉モリモリな奴は速さがないとかいうけどそんな事は目の前のエレメリアンにとっては全く関係のない事のようだ。

 

「休ませんぜ!!」

「邪魔!!」

 

 飛び掛かってきたヒトデギルディを今度は両足でドロップキックをお見舞いすると、ドームの天井を突き破っていった。

 

「スターフィシュギルディィィィイ!! うおおおおおおおお!!」

 

 それを見たタコギルディが私に向かい突進してくる。

 

「てや!」

 

 今度は蹴りではなくアバランチクローによる一閃。 タコギルディの致命傷になるには十分だったようで、間も無くタコギルディは爆散した。

 その後、私は素早く振り返り、再びノームギルディに向かい疾駆した。

 

「さっさと終わらせるよ……! ブレイクレリーズ!!」

 

 ドームの中に降るはずのない猛吹雪が吹き荒れ、ノームギルディを取り巻き結界を形成する。

 

「アイシクルドライブ━━━━!!」

 

 周りに吹雪を纏い、渾身の必殺技を放つ。

 絶体絶命の状況にも関わらず、いやにノームギルディは冷静だった。

 

「これまでとは……」

 

 諦めの言葉にも聞こえたそれだが、すぐにその意出ない事をノームギルディは自らの行動で証明する。

 

「きゃあっ!!」

 

 自らの喉元にまで迫っていたアバランチクローを見事なアッパーで打ち払う。

 当然、弾かれた私はそのまま地面に激突し、ドームの人工芝に大きなクレーターを作ってしまった。

 

「あ……ぐぅ……」

 

 思ったよりもダメージが大きいようで立ち上がろうとしても体が動かない。 ただの芝ならともかく、人工芝の下はコンクリートだ。柔らかい土や砂の上に叩きつけられるのとはわけが違う。

 うつ伏せで横たわる私にノームギルディの足音が近づいてくる。

 

「この世界も……終わりだ!!」

 

 僅かに動く頭を上げ、ノームギルディを見上げるとその手にはこれまでにエレメリアンが属性力を奪ってきた光輪が握られていた。

 

(ここで……終わるわけ……には!)

 

 抵抗しようとも体が動かず、光輪がどんどん私へと迫ってきていた。

 

 

 ドームの中で奏の属性力が奪われそうになっている今その時、ドームの外にある遊園地では激闘が繰り広げられていた。

 黒と緑の光がぶつかり合い、赤い火花が辺りに飛び散る。

 

「サラマンダギルディの時も思ったけど、あなた達四大精霊がこの段階で出てくるってことはエンジェルギルディは余程焦っているんでしょうね」

 

 ノクスアッシュ振るう黒羽が少しだけ余裕の表情を見せる。

 

「ふん! オルトロスギルディなんかに隊長の思惑がわかるわけないです!!」

 

 背中に生えている四本の羽根を使い、黒羽を追い詰めるシルフギルディ。

 

「私は……テイルシャドウよ!」

 

 ノクスアッシュで四本の羽根全てを弾き、ガラ空きとなったシルフギルディの胴へ蹴りを入れた。

 追撃しようとした時、フレーヌから通信が入る。

 

『黒羽さん、奏さんが危ないです! どうやらこちらの通信が聞こえてないみたいで……!!』

「わかったわ」

「行かせるわけないじゃないですか!!」

 

 ドームに向かおうとした時、目の前にシルフギルディが現れ再生した四本の羽根でまた、激しい攻撃を仕掛けてくる。

 

「邪魔しないでちょうだい。 進化、エヴォルブアームズ!!」

 

 シルフギルディを突き飛ばし、素早くアンリミテッドブラを取り出すと自分の胸に被せ黒羽はアンリミテッドチェインへと変身した。

 

「ノクスアッシュトリリオン!!」

「な、なに!?」

 

 進化した斧の一斬で四本全てを切り裂き、シルフギルディは地面へと落下し、叩きつけられる。

 

「ルナティックゥゥゥックライシーース!!」

 

 黒羽も落下し、その勢いのまま進化した斧で地面に倒れているシルフギルディを一閃した。

 

「すみません……隊長……!」

 

 その言葉を最後にシルフギルディは爆散し、属性玉を黒羽は回収すると素早くドームに向かって走り出した。

 

「待ってなさい、ホワイト」

 

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