奏が己のツインテールとテイルギアの核となっている楓のツインテール属性と対話し、認められた事で到達した形態。 装甲などに大きな違いは無いものの、一番変わったところは頭のツインテールの毛先が淡い紫色のメッシュが入っているところ。 ツインテール属性の力を解放した事で今までよりも遥かに戦闘力が上がり、聖の五界の幹部に太刀打ちできるほどになった。 また、この形態こそがテイルホワイト本来の形態であるため、認められた奏は変身するとこれからは常時この形態となる。
武器:アバランチクロー
必殺技:アイシクルドライブ
異空間に浮かぶ奏の世界を侵攻しているアルティメギルの母艦の大ホールは悲しみにくれるものが続出していた。
「また同胞達が散っていった……」
「聖の五界のやり方は本当に正しいのですか!?」
「どうなんですか!? エンジェルギルディ様!!」
シャークギルディ部隊の残存兵達は最近の兵の減り方が尋常ではない事に気がつき、とうとうエンジェルギルディへ抗議を始めた。
「まあまあ、闘いの上での犠牲者はつきものですわ。 散っていった同胞達は決して無駄ではありませんわ」
この状況下で全く慌てる事のないエンジェルギルディを見て、大ホールの隊員達はだんだんと静かになっていく。
そんな中、有望株のウォルラスギルディが口を開く。
「しかしエンジェルギルディ様……。 既に聖の五界の四幹部の内、三人の幹部が散っておられるのですが……」
「それがどうかしまして?」
「え?」
予想外の反応をするエンジェルギルディにウォルラスギルディは拍子抜けする。
「幹部が何人散ろうとも、此処には皆さんがいるではありませんか。 それに……いなくなったら補充をすればいいだけですわ」
意味深に笑うエンジェルギルディの背後から二つの影が現れるとゆっくりと前に出てきた。
「右の者はオベロンギルディ、左の者はケットシギルディ。 実力は四幹部には及びませんが……」
エンジェルギルディの発言に前に出てきた二体はズッコケる。
あまりにも古い、昭和のボケのような事をかまされ大ホールのエレメリアン達は反応することが出来ずに静まり返ってしまった。
「……なはは」
空気に耐えきれなかったのか、大ホールの何処からか無理やりでてきた笑いがだんだんと広がっていく。
「私が欲しいのは笑いではなくお嬢様属性なのですけれど」
小さな声にも関わらず、大ホールの全てのエレメリアンに聞こえた冷たい声を残してエンジェルギルディは大ホールから出ていく。
「あれ、俺らは出動すんの?」
「と、とりあえず行くとしましょうか……」
先ほど紹介されたオベロンギルディとケットシギルディも困惑した様子で話すと足早に大ホールから出ていった。
静かだった大ホールだが、今度はそこらかしらから大きなため息が聞こえてきた。
「皆さんは聖の五界様の作戦に疑問を抱いている……。 私ができることはないものか……」
頭を抱える老兵、サンフィシュギルディの元へその聖の五界のメンバーが歩み寄ってきた。
「これが隊長のやり方よ。 ま、割り切ってやるしかないんじゃないの」
聖の五界の四幹部の最後の一人、水のウンディーネギルディ。
「私なんて長年一緒にいて最初は疑問に思ったけど……首領様のためと思えば全てに納得できるしね」
大ホールのエレメリアン達に手を振るとウンディーネギルディはエンジェルギルディ達とは別の出口から出ていった。
◇
今はもう秋だ。
肌寒い気温も、唐紅の紅葉も、秋の到来を私たちに教えてくれる。
そして、秋といえば一つのビッグイベントがある。
うちの高校に限らず全国共通の事だけど、初夏に体育祭、二年生は冬に修学旅行と相場は決まっているものだ。
あれ、何かたりない?
そう、秋にある、高校だからこそできるビッグイベントとは━━━━
『そのは祭! 始まりまーす!!』
そう、文化祭!
放送部員の元気な合図とともに学校の正門が開かれ、まだかまだかと待っていた父兄の皆さん、友達、近所の方々などなど色々な人たちがぞろぞろと学校に入ってくる。
去年にも私は経験してるけど、やっぱしこの高校は文化祭の力の入れようが半端ない。
ただ……去年と決定的に違うところがあった。
「はあ……」
廊下から中庭を見下ろすと思わずため息が出る。
サッカーコートと同じかそれ以上の広大な中庭に露店がたくさん並べられている。 が、そのほとんどがテイルホワイトテイルホワイトテイルホワイト……手作りの関連グッズばかりだ。
「テイルホワイト焼きそば売ってるよー!」
ただの焼きそばにテイルホワイトという名前をつけただけの物も存在している。……それで売れてるんだから上手い商売してるね。
去年はもっと色々なものが出てて見て回るだけで飽きなかったけどなあ……。 自慢じゃないが今年は''どうせテイルホワイトでしょ?''そういった感じかな…。
ていうか、文化祭実行委員かなんかが重複しないように調整するもんなのかと思ってたのに。
まあ、そんなこと思ってるけど私がいるクラスはお察しの通り、テイルホワイトの劇。 ……しかもテイルホワイトの劇はうちのクラス含め五つはあるらしい。
文化祭実行委員さん、仕事をお願い!
「あ、奏ー!」
「彩、どかしたの?」
「どかしたじゃないって!あと三十分で始まるから早く衣装に着替えないと!」
「あー、そうだった」
クラスのためとなると断りきれないと劇の出演を承諾してしまったあの時の自分にアバランチクローを叩き込みたい……!
彩に手を引かれ、体育館の裏にある更衣室へと連れていかれた。
既にクラスの女子達が自分の衣装へと着替え始めている。
「じゃあこれね!」
そう言って彩が私に手渡してきたのは黒い全身タイツとやたら装飾が多くて動きづらそうなダンボール……もとい着ぐるみを渡してきた。
「は、ははは…」
クジで決まったんだからしょうがない。
そう思ってた数日前の自分にアイシクルドライブをお見舞いしたい気分だ。
そう、私の役はエレメリアン。
テイルホワイトなのにエレメリアン。
エレメリアンなのにテイルホワイト。
ある種これは哲学ではないだろうか。
「お、やっときた!」
意気揚々とエレメリアンとなった私の前に現れたのは白銀のツインテールに、白い装甲、そしてアバランチクローを両手に抱えた志乃だった。
なんと志乃はテイルホワイト役に一番に立候補し、壮絶なじゃんけんの末に役を勝ち取ったらしい。
男子達も志乃ならと言うことで快く了承してくれたようだ。 ほら、志乃って可愛いからね。
うーん……こう改めて見るとテイルホワイトの衣装はかなりクオリティが高い。
自分のつけているエレメリアンスーツと比較すると悲しいくらいに力の入れようが違う。
「似合うね、志乃」
「うん! ちょっとだけ胸が苦しいけど……」
「え?」
そういえば、家庭科部の子が写真や動画などあらゆるものを駆使して衣装を製作したんだっけ……。
なんで志乃のオーダーメイドじゃないのよ!!
私に傷を負わせないで!
エレメリアンの被り物のせいで私の泣き顔は見られてない……はず。
「さ、公演十分前だしステージ行くよ」
「彩監督、了解です!」
「私は演出だよ」
ステージに行くのにもやはり歩きにくかった。
なんとか到着し、舞台裏で待機していると公演開始のアナウンスが入りカーテンがゆっくりと開いていく。
私はエレメリアンの役なので最初からは登場せず物語の中盤あたりからいきなりステージに飛び出す感じだ。
劇は脚本通りに進み、いつしかステージ上にはエレメリアンの周りにいる全身黒タイツのモケモケがぞろぞろと現れ始めた。 確かモケモケ役もクジで決めてたけど……それを見ると私はマシなほうだったのかも。
「さ、出番だよ!」
演出の彩に肩を叩かれ、いざ出陣!
『ふふふ、この世界にある生きとし生けるツインテールは全て我等のものだあ!』
ツインテールにしたクラスメートの腕を掴みまずはお決まりのセリフ。
『もけもけ!!』
『もけ!』
『モケ━━━━!!』
どうやらモケモケ役の人たちもかなり練習したみたいだ。 特に最後の鳴き声というかモケモケの声はかなり本物に近いと思う。
『さあ戦闘員達! ツインテールを我の前に集めてもらおうか!!』
セリフも忘れてるところもないし、無事に演劇は終われそうかな。
「ははは……あいつ、ノリノリじゃねーか」
舞台袖で嵐が何か言っている気がしたけど、この位置からは正確には聞き取れなかった。
劇は順調に進んでいきクライマックス、いよいよテイルホワイトが現れる。
『そぉこまでよ! エレメリアン!!』
ステージの照明が一旦消える。
『な、何者!?』
ステージの天井近くに設けられた足場から志乃ホワイトが現れ、スポットライトを浴びながら飛び降りるとともに一体のモケモケを斬りつける。
『私は、ツインテールをこよなく愛しこの世界を守るツインテールの美少女戦士!』
あれ、私こんなこと言ってないよね!?
『テイルホワイトよ!!』
いっせいに全てのスポットライトが志乃ホワイトに向けられ最高の決めポーズが披露された。
名前が出た途端、体育館にいる全ての観客から歓喜の声と拍手、はては指笛のようなものまで聞こえる。
この圧倒的な威圧感……。エレメリアンは私以外にこの感じとも闘っているのか…。
『現れたなテイルホワイト! 先ずはお前のツインテールから頂くことにするぞ!! ゆけ、戦闘員達よ!!』
『もっけーい!』
『もけっもー!』
『モケ━━━━!!』
ステージにいる総勢五体の戦闘員が志乃ホワイトへ襲い掛かる。
志乃ホワイトはアバランチクローで五体全ての戦闘員を攻撃するとみんなパタパタその場で倒れ、目立たないように舞台袖へと戻っていった。
『やるなテイルホワイトよ。 ならこの私が直々に相手をしようではないか!』
茶色の大剣(補足するとダンボールの色のまんまだよ)を構え志乃ホワイトへ振るう。
志乃ホワイトは見事に左手のクローで大剣をガードすると開いている右手のクローでカウンター攻撃をしかけ、見事にヒットさせた。
オオオォォ……観客も今の所満足そうに声をあげる。
『私のツインテールは希望! 光! そして全てよ!!』
こんなことを言った覚えはないのだけど猛烈に顔が熱くなってきた。
『や、やめてー!!』
大剣をぶん回し、最後に向けた体制をとる。
「ありゃ演技じゃねえな……」
舞台袖にいる嵐もテイルホワイトが言った事もなく、聞いたことのないセリフに困惑しているのか、思わず何かを話してしまっている。
大剣をブンブン回す私を見て志乃ホワイトもアバランチクローを構え、最後の一撃に向け気合を溜め始めた。
『覚悟しろ! テイルホワイトォォォ!!!』
大剣を逆手に持ち、目の前のテイルホワイトへ向かい少しゆっくり目に走り出す。
『ブレーイクレッリーズ!!』
『えいやー!』
大剣の一斬をヒラリとかわすと志乃ホワイトは両腕のアバランチクローで私のお腹部分を一閃、ここに志乃ホワイトの勝利が確定した。
『ぐ、ぐわー……』
パタリとその場に倒れこむ私。
あとは志乃ホワイトと属性力を奪われかけた少女が話すだけで劇は終わりで、私はこの場で倒れていればいい。
『はい! あなたがツインテールを愛する限り、私はどこにでも駆けつけ、あなたとこの世界のツインテールを守ってみせます!』
劇の完成度は贔屓目なしでもかなり高いと思うのに……。 時々出てくる私が言ったことのないクサいセリフは如何なものだろうか。
……そういえば、確か台本にはブレイクレリーズのセリフはなかった。 おそらく志乃のアドリブだろうけど、やっぱ半年間私の闘い見てきてくれてるし脳裏に焼き付いてるんだろうか。 ちょっと嬉しく感じるな。
そして、幕が降りるとともに始まりの時と同じくアナウンスが入った。
『これにて、''美しき戦士テイルホワイトVS最低最悪の醜い怪物''は終了となります』
タイトルも、もう少しどうにかならなかったのかなあ……。
◇
一回目の劇を終えたことで、私のクラスの今日の公演は終わりだ。
さっきも言った通り、テイルホワイトに関しての劇が五つもあるのに加えてテイルホワイト以外の劇も二つほどあるため午前の部午後の部といったようなものができなかったらしい。
ただ、一回しかないから全力でやりきれるということもあるし別に私は構わないけどね。
「お待たせー、奏ー!」
制服へと着替え直した志乃が現れ、軽く頷くと二人並んで廊下を歩き出す。
「あれ、フレーヌは何してるの? 一緒に見て回ろうって言ってたのに……」
「ああ、なんか自分の世界じゃこんなイベントなかったみたいで一人でどっか行っちゃった」
うん、あんな好奇心に溢れた眩しい顔を見せられたらダメなんて言えなかった。
「成人してるって言っても根はこっちの世界の中学生とそんな変わんないみたいだね」
確かに。でも、中学生であそこまで興奮するのもなかなかいないような気もするけど。
「じゃあ、黒羽は?」
黒羽はエンジェルギルディが目の前に現れた日に姿を消してから見ていない。
なんとなくわかっているような素振りは見せていたけど、自分を慕ってくれていた部下が居なくなったのを実感して落ち込んでいるのだろう。……ってフレーヌが言ってた。
「フレーヌに連絡とれればお願いねって言っておいたけど……多分来ないんじゃないかな」
年に一度の行事に辛気臭い話題は似合わない!
昇降口のあたりでもらった手元のパンフレットへ視線を落とす。
大きく可愛らしい字でそのは祭と書かれたそれを開くと先ず目に飛び込んでくるのはテイルホワイトテイルホワイトテイルホワイト……。
テイルホワイト推しが多すぎてその他の出し物がういてみえるという異常事態。
「それで志乃は何処行きたいの?」
あてもなく歩き始めてしまったけど、志乃が行きたい場所があるなら優先したい。
「ふっふっふ、文化祭の定番といえばなんだと思う? それが私の行きたいところ!」
「なに、いきなりクイズ?」
いきなりすぎてビックリしたけど、付き合ってみるかな。
文化祭の定番……か。
やはり一番に思いつくのは劇だよね。 一年の時も色々なクラスが演劇部が体育館でやっていたしね。 でも、おそらくそれはハズレだ。理由は去年、志乃を演劇を見るのに誘った時に断られてるから。 映画とかもそうだけど、志乃は暗い場所で長く座っているとすぐに眠くなってしまうからね。
二番目は……飲食系かな。
最近の高校じゃ厳しくて料理したものを売れないなんてよく聞くけど、うちは衛生面を特に気をつけ、先生方や生徒会からOKが出れば出店を許可されている。ただ、さっき志乃はタコ焼き食べてお腹いっぱいって言ってたからこれもハズレかな。
となると三番目は………お化け屋敷?
「正解はお化け屋敷でしたー!」
「まだ答えてないんですけど……」
「だって着いちゃったし」
「え?」
いつの間にか私はお化け屋敷へと誘導されていたようだ。
だけどなんだこれ、ただの文化祭のお化け屋敷だってのにすごい行列……かなり待ちそう。
とりあえず行列の最後尾に並ぶと志乃がドヤ顔で語り出した。
「説明すると、このお化け屋敷は普通の教室の二倍はある音楽室が使われています! そしてお化け屋敷を作っているのはオカルト部の人達でそのクオリティはレジャー施設にも負けないという評判が広がり、この高校や近所の人はもちろん他校の生徒や隣の県からわざわざ足を運ぶ人もいるの!」
「ふーん、そんなに怖いんだ」
確かに入口や音楽室の壁の装飾品はかなりクオリティが高い。 これ本当にダンボールなのかな……。
そもそもオカルト部なんて部活あんの初めて知ったよ。
「あれ、でもなんで音楽室なの?」
広さが必要だというのならこの高校には多目的ホールがいくつもあるんだけど。
「それは音楽室が完全防音だからだよ。 外に中の叫び声が聞こえないように三年くらい前から音楽室を使うようになったんだって」
「へえー、怖いんだ……」
先に言っておくけど私はお化けなんて信じてないし別に苦手というわけでもない。 そもそも私は異世界の物凄い科学力でエレメリアンと闘っているんだ。 そんな私がお化けとか非科学的な事を信じるわけがない……うん。
志乃によるオカルト部のお化け屋敷のありがたーい説明を聞いているうちに列はどんどん進みいよいよ私たちの番となる。
入口にいる前髪で目の隠れた生徒に暗闇を照らすには正直頼りないペンライトを渡され、真っ黒な布を潜りお化け屋敷へと足を踏み入れた。
真昼間だというのに中は想像以上に暗く、何処からか水の垂れる音が聞こえてくる。
私と志乃、二人ともゆっくりゆっくりと道なりに沿って歩いていると突然志乃が声をあげた。
「ひっ! な、なんか変な物が顔に当たった!! ま、また当たったああああああ!!!」
「ちょ、志乃!?」
よっぽど驚いたみたいで私に返答する事なく志乃は走って先に行ってしまった。
まったく、お化け苦手なら無理する事ないのに……。
おかげで一人になってしまった……。
「何に驚いたのか……ひゃ!」
顔にプルプルと弾力のある物があたり思わずへんな声が出てしまった。
恐る恐る弾力のある謎の物体Xを確認してみる。
「て、コンニャク………」
なんて古典的なんだろう。
ていうかコレで驚く志乃は、ピュアなのかな……それともアホなのかな。
ていうか志乃からの説明だと県外から来る人もいるんだよね? 確かに周りの装飾品は見事なものだけど、仕掛けがコンニャクじゃかなりお世辞にもレジャー施設に並ぶとは思えないんですけど…。
天井からしつこいくらい吊るされているコンニャクを右へ左へ避けながら歩いていると、道の真ん中に黒い影が見えてきた。
(ひ、人!?)
あまりの恐怖に足に力が入らず前へと進む事が出来ない。
私を待ち伏せしてるようなあの人影は何なの━━━━!?
高校のイベント回です。
補足です。
テイルホワイトの今までの強さは''ポニーテール≧トライブライド>ツインテール''でしたが本来の力を得た事によりツインテール>ポニーテール≧トライブライドとなりました。