私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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〈アルティメギル・シャークギルディ部隊艦〉
奏の世界の属性力を奪取するために異空間に停泊する基地。 元はシャークギルディ部隊の艦だったが、補修部隊が到着するたびに新たな艦が繋がっていき、当初の倍の大きさとなった。 現在はウンディーネギルディの要望により、艦の三分の一が女性型エレメリアン専用のフロアとなっている。

〈テイルスペース(フレーヌ基地)〉
学校の地下に建設された対エレメリアン用の基地。 テイルホワイト、テイルシャドウ両者をバックアップするための、メンテナンスルーム、トレーニングルーム、使われた事のないプールなどを完備している。 メインルームには地球上どこにエレメリアンが現れても速やかに検知し、場所を特定するモニター。 速やかにその場に転送する事の出来る空間跳躍カタパルトが設置されている。 その他フレーヌの寝室、シャワールームなどもある。 名前をつけたのは黒羽。


FILE.55 絶望の季節、そしてエロゲー

 今まさに、漆黒の斧が罪人へ振り下ろさんがために大きく発光している。

 

「ノクスクライシス!」

 

 高校の小さなステージの上でキャット……ケットシギルディは、シャドウの必殺技を避けることもなく静かに散っていった。

 恐らくステージから降りなかったのはたくさんいるお客さんが闘いに巻き込まれないようにという気遣いだろう。

 サラマンダギルディもそうだったけど、聖の五界も今までのエレメリアンと同じく武士道に近いものを持っているらしい。 ただエンジェルギルディが過激なだけなのかな……。

 ていうか、シャドウが全部やってくれたおかげで今回私はただ見てるだけだったな。

 

「さあ、サインが欲しければ並んでちょうだい。 色紙でも服でも、特別に一回五千円よ!」

 

 た、高い!?

 当然そう思ったのは私だけではないらしく、劇を見にきていたお客さんはどんどん席を立ち体育館の外へとダッシュで出ていく。 なんと十秒もしたら、体育館の中には私とシャドウだけになってしまった。

 

「うーん、アルティメギルの連中なら喜んで欲しがるんだけどねえ…。 人間っていうのは中々複雑なのね」

 

 前から思ってたけど、自分の事に関しては思考がかなりポジティブだなこの人。

 そういえば、フレーヌの姿が見当たらないということは体育館の外へと逃げていったみたいだ。

 私が愛想笑いしてる中、ここで不幸な生徒が体育館へ入ってきた。

 

「お、次演劇部なのにガラガラだなー」

「ラッキー!」

 

 嵐と、嵐と同じサッカー部の真部だ。

 二人がこちらに気づく前に、シャドウは二人を見つけるとステージから飛び降り目の前に立つ。

 

「嵐君、ちょうど良いところに来たわね。 サインしてあげるわ。 横の君もね」

 

 するとシャドウは半ば強引に自分のサイン色紙を渡す。

 状況を察したのか二人ともだんだんと顔色が悪くなっていく。 ……なんかかわいそうになってきた。

 

「はい、五千円よ」

 

 なんの悪気も感じない百点満点の笑顔と、相手がテイルシャドウということで嵐も真部も渋々財布を出し、五千円札をシャドウへと手渡した。

 

 後にこの事件が高校から私の町全体へと広がり、テイルシャドウの評判がさらに悪くなったことは言うまでもない。

 

 

 長かったようで短い文化祭が終わってから今日で三日目。

 一日目こそ本物のエレメリアンが現れるハプニングがあったものの、二日目は特に大きなハプニングもなく文化祭は進み無事に終えることができた。

 特に中学生の時の同級生達が劇を見にきてくれたのには驚いた。

 皆全然変わっていなくて、楽しくおしゃべりできたのはよかったと思う。

 そして今日、気の抜けた雰囲気の中、先生の一言でクラス中からブーイングが巻き起こる。

 

「というわけでテイルホワイトも大事だが、もうすぐ期末テストだ。 赤点とったら冬休みは補習を受けてもらう」

 

 悪意に満ち溢れた笑いを見せると、担任は教室から出ていった。

 帰る準備をする人、部活の準備をする人、なぜか教室から動こうとしない人などいる中いつものようにテイルホワイト関連の話が聞こえてくる。

 

「この後どうする?」

「テイルホワイトの写真展に決まってんじゃん!」

「でも四日くらいテイルホワイト現れてないからそろそろ出てくるかもしれないぜ? 俺の予想するポイントは……」

 

 普通は期末テストの話が聞こえてくるはずなんだけど……。

 それに最後の男子が言っていたテイルホワイトが現れるポイント予想は可哀想な事に当たった試しがない。 そもそもエレメリアンが現れたところに私が行くわけだから、ここにテイルホワイトが現れるっていうのは違うような気もする。

 いつも通り、必要な教材を鞄へと詰め私は席から立ち上がる。

 向かうは地下の基地、テイルスペース!!

 

 

 ウィンウィンといった未来的な機械音がする基地の中で繰り出されるは━━━━渾身の土下座だった。

 

「な、何やってるんですか……?」

 

 土下座をする私に疑問を持ち、フレーヌはタイピングをやめ椅子を回転させこちらを向く。

 

「もうすぐ期末テストだからね。 奏はバリバリの文系だから、今度の数学や科学がヤバイみたいでねー」

 

 私の代わりに志乃が解説をしてくれた。

 言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、高校一年の時からこの前のテストまでは一応赤点は回避できていた。 ただ、ここにきて毎日エレメリアンと闘っていたつけが回ってきたのだ。

 授業中に現れ、家で宿題しようとすれば現れと、今回はろくに復習もできずどこからどこまでがテスト範囲なのかすらもわかっていない。

 思わぬところでエレメリアンの迷惑さを実感したのだ。

 私は志乃に促され頭をあげた。

 

「数学くらい教えてあげるから平気だよ」

「さすが志乃……! 愛してるよ!!」

 

 私の前にいる志乃を感謝の気持ちを込めて抱きしめる。

 

「あれ、なんでトカゲがいるんでしょうか……」

 

 基地にトカゲがいたらしく、フレーヌは「えいっ」といってボタンを押すとトカゲは何処かへ転送されていった。

 

「そういえば、私数学は得意だけど科学は教えるほど出来ないよ?」

 

 前に志乃にそう聞いた時からどうしようか迷っていた。

 だけど、私にはつよーい味方がすぐそばにいたのだ!

 

「フレーヌ、私に勉強を教えて!」

 

 テイルギアの開発や、この基地、まさに科学の結晶体とも呼べるべきフレーヌなら高校の授業くらいなんともないはずだ。

 フレーヌに向け、期待の眼差しを送る。

 

「私は確かに天才科学者ですけど、専門分野というものがあってですね……」

「え」

 

 帰ってきたのは思いもしない答えだった。

 

「私は奏さん達が現在学習しているような事は正直疎いんです。 私の専門分野は主に属性力関連の事で……あれ、奏さん?」

 

 こんな単純な事に気がつかなかったなんて……!

 非常にまずい。 このままじゃ数学はどうにかなったとしても、科学で赤点を取ってしまう……!!

 そうなったら、私の冬休みが……!!

 

「ふぐううううううう……っ!」

 

 自分でも気づかないうちに嗚咽を漏らす。

 

「泣いてるんですか!?」

「それも力強く!」

 

 勉強に関しては一定の水準を保ってきたはずなのに……こんなところで躓くなんて。

 唯一の希望も砕かれた私の前に広がるは漆黒。

 白銀に輝いていたテイルホワイトのツインテールさえも、今の私が変身すると真っ黒になりテイルブラックと化してしまうだろう。本物のようにマッチョ使いにはならないけど。

 私の泣き声が木霊する中、突如一斉に基地のアラームが鳴り響き、私の声は聞こえなくなる。

 

「エレメリアンです! 場所は……この国で有数の名高い大学のようですね」

「なんてタイミング……」

「えっと、奏さん大丈夫ですか?」

 

 椅子を回転させこちらを見るフレーヌ。

 私は立ち上がり、静かにブレスを胸の前に持ってくるとテイルギアが起動し変身が完了した。

 私の視界にごく僅かに映るツインテールは白と、淡い紫色でどうやらいつも通りらしい。

 

「確かにテストは絶望的だけど、私はテイルホワイトだからね」

 

 カタパルトの中へと入り、転送されるのを待つ。

 

「どうか、お気をつけて」

 

 光に包まれる直前、フレーヌの声が聞こえ私は親指をたてる。

 学校でのテストなんて今は関係ない。

 ただ、私はテイルホワイトとしてツインテールを守るだけだ。

 

 

 奏の世界を侵攻するアルティメギルは現部隊長であり聖の五界隊長であるエンジェルギルディの指示のもと、皆が大ホールに集合していた。

 それぞれが緊張しているのは目に見えて明らかだ。

 エンジェルギルディは周りを見渡すと登壇台の上に立ち、口を開き始める。

 

「ただいま、シャークギルディ部隊所属のロブスタギルディさんが出撃されましたわ。 彼は短期間の間に素晴らしいパワーアップを遂げましたの」

 

 ロブスタギルディといえばシャークギルディ部隊の中でも一二を争うほど臆病かつ実力が低かった者として有名な事は.この艦にいる誰もが知っている事だった。

 当然その彼が出撃し、どんな特訓をしたのか、隊員達は興味を持つ。

 

「私と聖の五界の頭脳であるエントギルディが考案した『エロゲミラ・レイター』と『メロゲイマ・アニトュラー』を合成させた『エロゲック・ルーワー』の賜物ですわ!!」

 

 途端に大ホールは静かになった。

 一応質問をと一体のエレメリアンが手を挙げ、エンジェルギルディも質問を許可した。

 

「なんとなく察しているのですが……それはどういった修練なのでしょうか?」

「あら、申し訳なかったですわ。 この『エロゲック・ルーワー』は端的に話すと自分を主人公としたエロゲーを作ってもらうのですわ」

 

 再び大ホールは騒然とし始める。

 そんな中、またも質問をと一体のエレメリアンが挙手をする。

 

「しかし、我はコンピュータに疎くエロゲーを作るなどとというのは……」

「ご安心くださいませ。 その事を考え、修練を受けて頂く方は脚本を書いてくださればいいですわ。 プログラミングはエントギルディが、イラストCGはビートルギルディ仕込みの画力を持つフラウギルディが担当致しますわ」

 

 おおお、という声が大ホールの至る所が聞こえてくる。

 中にはそこまでの修練を感じないのか、一応その修練をしたいという者が挙手をし始める。

 自分好みの脚本で、エロゲーができる。 この言葉だけを聞けば、拒否するものなどいるはずもない。

 だが次の一言で、大ホールは水を打ったように静かになってしまう。

 

「ただし、これで修練は終わりではありませんわ。エロゲーが完成したらこの大ホールで皆に守られながら自分のエロゲーを思う存分プレイしてもらいますわ。 ここまでが私の超修練『エロゲック・ルーワー』ですわ!!」

 

 恐ろしい修練だった。

 ただ自分の作った自分好みのエロゲーをプレイできるならそれはご褒美にも近かった。 しかし、それを大衆の目の前でプレイするのは難易度が跳ね上がるレベルの話ではない。

 普通のエロゲーでさえも仲間に見つからぬようコソコソと自らの部屋で行うものであり、大衆の前でやるなどもってのほかだ。

 先程まで手を挙げていたエレメリアン達も気づかれぬようそっと手を下ろしていく。

 

「ロブスタギルディはこの修練の内容が漏れないよう、極秘に聖の五界の隊員の目の前でプレイしてもらいましたがそれでもかなりの効果がありましたの。そして、既に『エロゲック・ルーワー』に挑戦する方がこの中にいますわ」

 

 当然大ホールにいる隊員達皆がざわめき出す。

 そんな中、この悍ましい修練を乗り越えんとする者が手を挙げエンジェルギルディの隣へと出てきた。

 

「ウォルラスギルディ……!」

 

 八重歯を愛し、八重歯を武器とする若手の有望株、ウォルラスギルディだ。

 オルトロスギルディの教えを受け、オルトロスギルディが散った後も黙々と修行を続け、実力は隊の中でも相当なものへと成長していた。

 ウォルラスギルディは黙ったまま一礼すると大ホールの真ん中、真ん中のテーブルの中央へと座りパソコンを立ち上げた。

 ホーム画面に新たに追加されたアイコンをクリックすると早速ゲームが始まる。

 エンジェルギルディが根本のキーボードを操作すると、ウォルラスギルディが今まさに始めようとしているゲームのタイトル画面が大ホールの天井に吊るされている大きなモニターに映された。

 

「ぐっ……!」

 

 ここにきて初めてウォルラスギルディの表情が変わった。

 

「では、スタートをお願いしますわ」

 

 スタートをクリックすると既に作成されたプロフィールが表示され、すぐに物語は始まった。

 

『ウォルちゃん、元気なさそうだけど……どうかしたの?』

 

 大ホールの隅から隅まで響き渡るツインテール+八重歯美少女の声。

 覚悟を決めていたはずのウォルラスギルディの手が止まり、動かなくなった。

 

「あら、どうかしまして? 修練はまだ続いていますわよ」

「も、申し訳ありませぬ……。 エンジェルギルディ様、どうか……どうか未読スキップを可能にしては頂けますか!!!」

「それでは修練の意味がありませんわ」

「ぐう……!」

 

 再び画面に向き直り、ウォルラスギルディは未読スキップを使用する事なくゲームを進めていく。

 

『ダメだよぉ……。 ウォルちゃんてばせっかちなんだからぁ〜』

 

 気づけば一時間ほどたっていた。

 ウォルラスギルディは既に満身創痍で、震える手で選択肢にカーソルを合わせる。

 

「ぐあああああああああああああああああああああ!!!」

 

 悲鳴をあげ、ウォルラスギルディはとうとう椅子から転げ落ちてしまった。

 

「あらあら、耐えられなかったみたいですわね。 戦闘員達、ウォルラスギルディを連れて行きなさい」

 

 エンジェルギルディがパンパンと手を叩くと隅の廊下から戦闘員達がモケモケと現れ、ウォルラスギルディを担いでいった。

 

「さて、皆さん……あら?」

 

 深いダメージを受けたのはウォルラスギルディだけではなかったらしく、大ホールにいるほぼ全てのエレメリアンはこの一時間の中で机に突っ伏してしまっていた。

 

「ま、面白かったし良しとしますわ」

 

 満足気なエンジェルギルディの声は、大ホールにいるエレメリアン達には届いていなかった。

 公開処刑という名のエンジェルギルディの遊戯はここに幕を閉じた。

 

 『エロゲック・ルーワー』という修練はこの日以降挑戦される事が無くなり、幻の修練として語り継がれていったという。

 

 

 国内有数の名門大学に現れたのは、何やらカニのようなエビのような、はたまたザリガニのようなエレメリアンだった。

 既に私とエレメリアンの周りには大学生達がワラワラと集まってきている。

 

「一応聞いておくけど、あんたは何ギルディで何属性なの?」

 

 私の言葉に反応し、おそらく……エビギルディは大きな体を揺らして一歩近づく。

 

「知りたいか!?」

「いや……別に聞きたくないけど。お決まりっぽいから聞いて━━」

「我はあ!ロブスタギルディ!!」

 

 少しめんどくさいエレメリアンらしい。

 ロブスタっていうとロブスターだろうからエビのはずだ。

 エビのくせになんでこんな暑苦しいんだろう。

 なんかツインテイルズの世界に行った時に闘ったモスギルディを思い出す。

 

「そしてえ! 我のお!属性力はあ!理系女子イ!!」

「は?」

「サイエンスガールウウウウ!!!!……おばぁ!?」

 

 とても耳障りな暑苦しいロブスタギルディの腹部に、私の拳が見事にヒットした。

 私の不意打ちのせいで、ロブスタギルディは地面を転がっていき、端の植え込みに入ったところでようやく止まった。

 

「どうやら私はあんたとは対の関係みたい。はやく終わらせよ」

「くそっ! これだから文系は……」

 

 植え込みから起き上がる時に何やらブツブツ言っている。

 全ては聞こえなかったけどやっぱりこのエレメリアンはムカつく。

 

「悪いが俺は文系女子に興味はない! テイルホワイトオオオ!お前とはあああ!戦えんっ!!」

 

 殴られてもいちいちポーズを決めているところがまた暑苦しく、みていてなんだかムカついてくる。

 

「な、なんですって……? そんなの聞けるわけないでしょ!」

 

 瞬間的にエレメリンクし三つ編みへとなると、そのままフロストバンカーから複数の光線をロブスタギルディに向けて発射する。

 

「サイエンスガールウウウウウウ!!!!」

「や、やるじゃない……!!」

 

 暑苦しく、ムカつくエレメリアンだが実力はなかなかのもののようで奇妙な掛け声とともに腕の大きなハサミで光線を真っ二つにした。

 ロブスタギルディの横で光線は爆発し、全くダメージを与えられていない。

 

「我はなあ!エンジェルギルディ隊長のなあ!新たな修練を乗り切ったのだぞお!? 生半可な文系の攻撃が効くわけがないのだあああああ!!」

 

 あまりにも気合が入りすぎて声が裏返ってるんだけど……。

 ていうか光線に文系とか理系とかあるのだろうか。 おそらくないだろうけど。

 私が再び光線を撃とうとしたその時、大学の建物の屋上からアンリミテッドチェインとなったテイルシャドウが飛び降りて━━━━

 

「ノクスクライシス・ディミヌエンド━━━━!!」

「ぐおおおおおおおおおおお!!」

「ええええええええ!?」

 

 ノクスアッシュが分離し彼女の足に装着され鋼すらも切り裂くようなかかと落とし、シャドウの新たな必殺技であっけなく勝負はついてしまった。

 

「ふ、何が理系文系よ。 数々の異世界を渡り歩いてきた文武両道の私が負けるはずがないわ」

 

 カメラを意識し、かっこよく決めようとしているのだろうけどシャドウが現れた瞬間にギャラリーはどんどん遠くなっていく。まあ……油断してたらお金とられるしなあ……。

 そういえば、今文武両道って言ったよね。

 

「ねえ、黒羽。 文武両道って本当なの?」

 

 未だにカメラ意識のシャドウに近づき話しかけると、ギャラリーがいない事に気づきようやくいつものシャドウへと戻る。

 

「シャドウよ、テイルシャドウ。 さっきも言った通り、オルトロスギルディとして色々な世界を回ってる時につけたくもない知識がどんどん増えていったの。 この国の育成機関に入る事だって難しくもないわね」

 

 どうやら神様は私に救いの手を差し伸べてくれたらしい。

 自分でも気がつかないうちに、私はテイルシャドウへ素早く駆け寄り、彼女の手を握っていた。

 私の行動に驚いたのか、シャドウはあたふたしている。

 

「お願いがあります。 テイルシャドウさん」

「な、なに?」

「私にサイエンスを教えてください!!」

 

 しばらく沈黙が続いたが、シャドウの言葉によってそれは終わった。

 

「意味がよくわからないけど、わかったわ」

「ほんとに!? ありがとー!!」

 

 これで冬休みに補習に出なくて済むと思うとかなり心が楽になった。

 

『大丈夫なんですかねえ……』

 

 フレーヌが通信でなにやら話していたようだが、気分が最高潮になっている私は何を言ったのか全く気にしていなかった。

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