テイルホワイトがブレイクレリーズする事で発動させる必殺技。 両の手のアバランチクローを頭上に合わせ、腰にある装甲のエクセリオンブーストから属性力を解放しトルネードのように回転しながらエレメリアンを突き破る。 テイルホワイトの最も使用頻度の高い必殺技。
〈クレバスドライブ〉
テイルホワイト・トライブライドがブレイクレリーズする事で発動させる必殺技。 フロストバンカーのメインの砲身とサブの砲身二つから光線を三つ編み状に発射し、エレメリアンを捉えると光線をレールのようにして滑走し直接、フロストバンカーを懐へと叩きつける。
〈ブライニクルスラッシャー〉
テイルホワイト・ポニーテールがブレイクレリーズする事で発動させる必殺技。 ブライニクルブレイドから殻を破るように冷気を噴出させると同時にエクセリオンブーストから属性力を解放、一瞬で近づき相手の頭上から一閃する。
学校の地下に広がるフレーヌ基地・テイルスペースのメインルームにて、フレーヌは必死に情報収集をしていた。
一度倒したはずのエレメリアンが再び現れた事に驚いているのは奏だけではない。
忙しなくキーボードを叩く音は部屋中に反響している。その音は、フレーヌの焦りそのものと言えた。
「まさか……! アルティメギルはどれだけ作戦を用意してるっていうの……」
心の声が外へと漏れ出てくる。
自分の世界を守ってくれていた戦士は、ここまで気づいていたのか。 たった一人で闘っていた戦士は、この事実をどう受け止めたのか。
受け入れられない現実を受け入れるべく、フレーヌは深呼吸し、再びキーボードを操作する。
「シャークギルディの復活……。神の一剣のエレメリアンの仕業に違いないわ」
「黒羽さん、いつのまに!?」
いつの間にか後ろに立っていた黒羽は状況を冷静に分析する。
「私も会ったのは首領に処刑されそうになった時が初めてだけど……。神の一剣の戦女神ヴァルキリアギルディ、おそらくあいつがシャークギルディを復活させたのね」
「ど、どうして教えてくれなかったんですか!?」
「本当に復活させる能力があるのかどうか不透明だったし、教えたとしても対処のしようがないから」
「そんな……」
淡々と話す黒羽から、テイルホワイトが映っているモニターへとフレーヌは目を移す。
基地に先程までの騒々しさはなく、今度はいやに静かとなっていた。
◇
先程まで闘っていたウォルラスギルディとの間に降り立った私と同じく白が強調されたエレメリアン。
私が変身して闘う切っ掛けとなったともいえるアルティメギルのシャークギルディが悠然と仁王立ちしている。
確か、シャークギルディと闘って私が勝ったのは7月だったはず……実に三ヶ月ぶりの邂逅となった。
一週間前にはテイルレッドがこの世界に現れたり、今度はシャークギルディが復活したり……色々な事が起こりすぎだ。
でも、何はともあれ私はシャークギルディを一度倒しているんだ。 それにあの時よりも私は強くなっているし、闘うくらいならどうって事はないはず。
「復活するのが遅かったね! 私をあの時の私と思ったら大間違いだから!」
右手に残った片方のクローを構える。
シャークギルディは貧乳槍を地面へと突き刺すと腕を組み、私を見下ろす。
「ああ、理解している。 お前は強くなった、我と闘い勝利を収めたあの時よりも……」
「わかってるみたいじゃん。 だったら聖の五界を説得でもしてこの世界から引き上げてくれる?」
こんな事を口にしてはいるけど、そんな事をしてくれる訳が無いのはわかっている。
ただ一分でも可能性があるなら、言わない理由にはならない。
「フッ……お前が強くなっている事など想定内の事に過ぎん。 だがな、我もただ復活したわけでは無い。 お前に敗れた時より、我もまた強くなって蘇ったのだ」
「まあ、そうだよね」
油断していたとはいえアバランチクローを弾き飛ばし、完全に使い物にならなくしてしまったんだ。
薄々そんな感じはしていた。
覚悟を決め、クローを構えてシャークギルディに今まさに飛びかかろうとした時、その相手から予想しなかった事が言い渡された。
「闘うのは今ではない」
「え?」
貧乳槍を自らの掌から消滅させるシャークギルディを見て、その言葉が確かなものだと感じ取った。
てっきり、今ここで壮絶な闘いが始まるのかと思っていたんだけど……。
「てか、あんたはじゃあ何しに出てきたわけ?」
極彩色のゲートを開き、先にウォルラスギルディを通らせ自らも入ろうとしているシャークギルディは私の言葉で歩みを止めこちらへと振り返る。
「我に勝利したテイルホワイトのツインテールがさらに輝きを増したと聞き、一目見たいと思ったのだ」
……何だろう、この感じは。
貧乳貧乳とばかり言っていたけどやはりシャークギルディもツインテールを崇めるアルティメギルの一員なんだ。やっぱり、こいつらはすっごくアホらしい。
シャークギルディは白く逞しい腕をゆっくりと上げ、私を指さした。
「黄泉より参った我の力、いずれか味わう事になろう。 それまでに覚悟を決めておけ、中途半端な乳のツインテール戦士、テイルホワイトよ!!」
「だから……これくらいのサイズが一番いいんだってばああああああ!!」
私の叫び虚しく、シャークギルディはそのままゲートへと入っていきその場には私だけが残された。
『奏さん、驚いているのは私も同じです。 とりあえず基地に黒羽さんがいるので三人で今後の対策を考えましょう』
シャークギルディが現れてすっかり冷静さを失っていたが、私は登校中に来たんだっけ。
ウォルラスギルディだけが相手だったなら時間は余裕だったろうけど、シャークギルディの乱入でかなり遅くなってしまった。
「フレーヌ……今何時?」
『え? えーっと、今八時三十分ですね』
「ち、遅刻……」
◇
シャークギルディの復活が明らかになったその日の放課後、私たちはフレーヌ基地での作戦会議を開いていた。
内容はもちろん、復活したシャークギルディについてだ。
シャークギルディが復活したカラクリについては黒羽からの説明で大体理解する事ができた。
要はアルティメギル四頂軍と呼ばれるエリート部隊の集まりの神の一剣のエレメリアンがそのような能力を持っている、ということらしい。
「今はシャークギルディだけみたいだけど、次々と復活させられたらどうするの?」
「……一体一体、また倒すしかないわね」
私がテイルホワイトになってから百体以上は絶対に倒している。
それが一斉に蘇って、聖の五界と一緒に攻めてきたりしたら……とても太刀打ちできる気がしない。
「こちらの戦力は奏さんのテイルホワイト、黒羽さんのテイルシャドウ……そして紅音さんのテイルレッドです」
「あ、紅音を闘わせて平気なの!?」
「本人たっての希望なんです。 一度変身してもらいましたが健康に異常は見られませんし、彼女の……テイルレッドの力は私たちにとってとても大きなものですから断る理由はありません」
「ただし、テイルレッドは切り札にしましょう」
私もフレーヌも、黒羽の提案に異議はなかった。
最初よりも彼女はだんだんと明るくなっているし、テイルレッドに変身しても問題はないとしても……あくまでこれは私達の世界の問題だ。
偶然この世界にきてしまった彼女にあまり迷惑はかけたくないのだ。
しばらくの沈黙の後、口を開いたのは黒羽だった。
「次々とエレメリアンが復活するって話だけど……可能性はかなり低いと思うわ」
「ほんと!?」
「今のアルティメギルは究極のツインテールと呼ばれるテイルレッド、及びツインテイルズの属性力を最優先で狙っている筈。 その能力を持つヴァルキリアギルディが首領の期待に背く真似をするとは思えないから」
そうか……。
長くこの世界にいたらそれだけツインテイルズの世界に侵攻するのが遅れてしまうんだろう。ただ、ゼロとも言えない。
「ただ、その時がくるまでこの事は私達三人の秘密に━━━━」
「━━━何が秘密なんだ?」
「うええええええ!? 紅音がなんでここに!?」
急に現れた紅音の横にはキョトンとした顔の志乃もいる。
私だけが大きな声を出して驚いてしまったけどフレーヌも黒羽も口をあんぐり開けているところを見ると、かなり驚いているようだ。
「一週間前に来たきりだから、志乃に基地を案内してもらってたんだ」
そういえばさっき志乃とコソコソ話してたっけ。
確かフレーヌもそれに賛成してたけど……この部屋に鍵をかけるのを忘れてたのか……?
紅音の言動を見て、黒羽は何かに気づいたらしく私の近くに歩いて来た。
「まるで男みたいな話し方するのね」
そういえば黒羽はテイルレッドがこの世界に来た日から紅音にはあってなかったっけ。
紅音は記憶喪失直後の状態から日が経つにつれ、だんだんと素を出してくれるようになっていた。
口調に関しては、記憶がなくなる前から男口調だったのは異世界でみたネット記事や映像で知ってたし私はそこまで違和感を覚えなかったけど。……まあ年頃の女の子が俺とかいうのはどうかと思う事もあるけど、私が言うことでもないし。
「話し方って言えば黒羽だって初めてあった時はお嬢様言葉みたいな感じだったじゃん」
今は普通の話し方だけど、初めて会った時黒羽は無理にお嬢様のような口調で喋っていた。
なかなか聞くタイミングがなくてその事も忘れていたけど、今思い出した。
「あれは私じゃなくてオルトロスギルディのほうよ。 女として最終闘体に覚醒して、必死に女になるように努力していたのよ」
「へー……」
とても衝撃的な事実だった。
その話を聞いてしまうと、私達の仲間になる前に会った黒羽はオルトロスギルディの可能性も可能性もあったわけか。
うーん、ややこしい。
「きっと紅音が男の子っぽいのは周りが男の子ばっかだったからじゃない? ほら、髪のケアとか結構……適当だったし!」
ここ何日か、一番紅音と絡んでいたのは志乃だ。
一緒にいるうちに志乃も紅音の男のような言動を何回も見ているのだろう。 その一つが、女としては身につけておかなければならない髪のケアだったわけだ。
「そ、そうだったかな……。 でも確か、幼馴染が女の子だったような気がするんだ」
「じゃあその女の子が男勝りな性格だったのかも知れませんね」
フレーヌはそういうけどそんなのありえない……ありえなくもないか。
ツインテイルズの一人のテイルブルーはまさに男勝りな感じだったし……。 もしかしてテイルブルーが幼馴染だったりするんだろうか。
「ところで、さっきまでなんの話し」
「あー!! 紅音確か基地の探検中だったんだよね!? だったら早く見てきたほうがいいと思うよ!?」
紅音の体を回れ右させ、志乃の元へ歩かせる。
「でもほとんど基地は回っちゃった」
「志乃!」
志乃の顔を見ながら目をパチパチしたが、察してくれただろうか。
私を見た後に志乃はフレーヌと黒羽を順番に見るとどうやら察してくれたらしくニコッと笑った。
「一緒に基地を案内したいんだね!」
親指をグッと立て、満面の笑みを浮かべる志乃。
眩しすぎるその笑顔に私とフレーヌは反論する事が出来ずに、志乃と紅音の基地探検に同行することとなった。……いつのまにか黒羽消えてるし。
◇
奏の世界を侵攻中のシャークギルディ部隊の艦と聖の五界の小型艦がドッキングし、さらに大きくなった艦の大ホール。
転々と灯りがついてはいるものの、大ホール全てを照らすことはなく、部屋全体は薄暗い。
その大ホールの中心にある大きな丸テーブルの周りのみが明るく照らされており、そのテーブルに向かい座するエレメリアンがよく見えるようになっている。
かつて、シャークギルディが座していた派手な装飾が目立つ椅子は空けられたままに、その右に、サンフィシュギルディ、エンジェルギルディ、ウンディーネギルディ……現在の部隊の幹部達が続く。
静かなホール内に、だんだんと足音が響いてきた。 それはホールの外からこちらへと向かってくるように聞こえる。
やがて大ホールの隅にある薄暗い廊下から神秘的な白い体躯のエレメリアンが現れた。
白いエレメリアン━━━シャークギルディはゆっくりと歩を進めると、実に数ヶ月ぶりに自身の椅子へと腰掛けた。
シャークギルディが腰掛けるのと同時にエンジェルギルディは立ち上がり、登壇台へと立つと口を開く。
「あなた達の望まれていたシャークギルディはここに復活致しましたわ!」
拍手をするもの、震える声でその名を呼ぶもの、両手をあげ喜ぶもの……エンジェルギルディから伝えられた事実に大ホールのエレメリアン達は一気を活気を取り戻した。
「それでも、一度負けてるじゃない。 所詮ただの部隊の戦士に私達と闘えるだけの力があるとは思えないけどねえ」
皆が喜びの声をあげる中でのウンディーネギルディの言葉は、逆に目立つものとなる。 周りが「なんだこいつは……」と思っている中、それを知ってか知らずかウンディーネギルディはさらに続けた。
「シャークギルディも知ってるだろうけど、テイルホワイトは君が闘った時以上に強くなってる。 それに加えてテイルシャドウという新戦力までも加えてるの。 ま、君は無理せず安全なとこから指揮してくれればいいわ」
新しい発明品だろうか。 拳銃のような物を振り回しながらウンディーネギルディは話す。
ウンディーネギルディに銃を向けられたシャークギルディはピクリとも動かず、俯いたままだ。
全く反応してくれないシャークギルディにウンディーネギルディは「つまらない!」と言いながら銃を異空間へと放り投げる。
「まあまあ、これからは同じくこの部隊でやっていくのですから仲良くしてくださいまし」
なんとエンジェルギルディが登壇台から降りてわざわざ仲裁にやってきた。
「我が散ってからの……テイルホワイトのデータを見せてはくれないか?」
大ホールでのしばしの沈黙を破り、シャークギルディは立ち上がりながらそう発言する。
「ええ、もちろんですわ」
エンジェルギルディは快諾し、アルティロイドへと指示すると、せっせとモニターに映像の資料を集め、メインのモニターへとコードを繋いでいく。
迅速に対応し、アルティロイドが満足気に大ホールから出ていったところでエンジェルギルディからシャークギルディへリモコンが手渡された。 どうやら好きなタイミングで閲覧していいというらしい。
当然、シャークギルディは迷う事なく再生ボタンを押し、映像を見始める。
シャークギルディ自身が倒れてからの映像を確認しているため、気づけば映像を見始めてから二時間以上が経過していた。
『リンクドライブ……てとこかな?』
映像は聖の五界の先鋒であるデュラハンギルディをテイルホワイトがエレメリンクを駆使して倒したところまでようやく到達した。
既に大ホールにいた大半のエレメリアンは解散し、残っているのは映像の確認をしているシャークギルディ、エンジェルギルディ、ウンディーネギルディ、サンフィシュギルディのみとなっていた。
テイルホワイトのエレメリンクを駆使した必殺技が大写しになった後、場面が変わり、今度はテイルシャドウが大写しになる。
「この少女は………」
シャークギルディは陰ながら自分を鍛えてくれた少女がテイルホワイトと共に闘っている事に驚愕した。
「その娘はテイルシャドウ。 神の一剣に属していたオルトロスギルディの''影''ですわね」
「……なるほど」
エンジェルギルディから説明を受けたシャークギルディ。 全てを理解したのか、双眸は力強く輝きを見せた。
◇
シャークギルディが私の前に現れてから、三日が経ったが、シャークギルディどころか聖の五界、はたまた普通の部隊のエレメリアンすら現れる気配がまるでない。
外から戦力を蓄えているのか、新たな作戦を実行しようとしているのか。 ……一番最悪なのはシャークギルディのように私達が倒したエレメリアンを復活させようとしている場合だ。
一体一体は大したことないかもしれない。 しかし、複数体が同時に別々の場所に現れた場合、私と黒羽、そして紅音で守りきることが出来るのか……正直不安でいっぱいだ。
シャークギルディや、他のエレメリアンが現れないに関わらず、私と志乃、嵐、フレーヌに黒羽。そして、紅音といつものメンバーが基地に集まり対策を考えている。
「消滅したエレメリアンを復活させる能力があるというヴァルキリアギルディとかいうのを倒せば、心配する必要はなくなるんですが……」
そう言うとフレーヌはホワイトボードにそのヴァルキリアギルディというエレメリアンの予想図を描き始めた。
「ヴァルキリアギルディはアルティメギル四頂軍最強の部隊、神の一剣のエレメリアンよ。正直言って今の私達とは格が違うわ」
神の一剣か……。
確か、ヴァルキリアは戦場の戦女神と言われてると聞かされた。 まさに、神の名前にふさわしいってわけね。
でも、私と黒羽は……特に黒羽なんかは強化形態も手に入れて着実にパワーアップはしているはずだけど、それでも格が違うほどの強さを持っているのか……。
格が違うという黒羽の話に驚いているとさらに驚くべき事が黒羽の口から発せられた。
「そしてヴァルキリアギルディの属性はアトリキア……ツインテールにとって一番の天敵よ」
アトリキア……!?いや、アトリキアってなんだ。
理解していない私だけじゃないらしく、志乃も紅音も口をポカンと開けている。 それとは対照的に意味を理解しているのかフレーヌと嵐は驚き……というより絶句している。
「あの、アトリキアってなに?」
意を決して私はフレーヌ達に問う。
「アトリキアは……無毛……です……」
「え?」
「━━━━ハゲのことよ」
フレーヌの説明をもっと端的に黒羽は表現して伝えてきた。
別に属性を咎めるつもりはない……のだけど、流石に私も言葉が出なかった。
う、うん。 そりゃ色々な趣味を持つ人がこの地球には七十億人いるんだもの。 もちろん、その中には私には理解できない属性は山ほどあるわけだし。 別にツルツルの人が大好きだって人がいてもなんらおかしくはないよね。 うん。……少なくとも私の周りには居なかったけど。
あれ……? でも確かエレメリアンは全員がツインテール好きとか言ってた気がするけど。
疑問に思ったのは私だけではないようで、紅音が口を開いた。
「ツインテール好きなのに無毛好きって矛盾してないか?」
「ええ。 ヴァルキリアギルディ自身も、自らの属性力に悩んでいた……」
黒羽はやけにヴァルキリアギルディについて詳しい。同じ神の一剣だったから思うところがあるのだろうか。
暗い雰囲気漂う中、黒羽は椅子から立ち上がり、コンソールルームから出ていこうと歩き出す。
「どっか行くのか?」
嵐が口を開くと、黒羽は歩みを止めて振り返る。
「トレーニングルームを借りるわ、フレーヌ。 ヴァルキリアギルディの件も気がかりだけど、まずは聖の五界。 その部隊を倒さない限り、この世界に夜明けはないわ」
普段使われていないトレーニングルームを使うほど、切羽詰まった状況になってきているということだろう。
黒羽は私に視線を移しながら話し始めた。
「それと、奏。復活したシャークギルディは元々アルティメギル首領にそのポテンシャルを認められて一部隊の隊長になった 」
「シャークギルディが……アルティメギルの首領に……」
「貴女が勝った時、シャークギルディは自身の力を制御できていなかったはず。 同じ過ちを繰り返すほど、奴は緩くない。 絶対に油断しちゃダメよ」
そう言うと黒羽は振り返り、コンソールルームから出て行った。
「黒羽さんも言葉ではアレですけど……奏さんを心配してくれてるみたいですね」
フレーヌはそう言うけど、私もわかっているし大丈夫。 もちろん志乃も嵐も、きっと紅音も黒羽の不器用な性格はわかっているだろう。
「それじゃ、ゲームでもしましょうか!」
「え、この状況でやんのか!?」
「ええ、常に心を強くすることは大変ですからね! たまには息抜きも必要ですよ? もちろん、後で黒羽さんにも参加してもらいます」
そう言いながらフレーヌは壁のボタンを押すと私達の前のテーブルが床に沈んでいき、ボードゲームのような物が乗ったテーブルが上がってきた。
……科学が発展した世界から来てるはずなのになんだろう、このミスマッチ感は。
◇
「中間はこれで終わりだ。 寄り道せずに帰んだぞー」
担任の先生の気だるい挨拶とほぼ同時に学校のチャイムがなった。
ピリピリした空気から解放されたクラスメート達は思い思いの会話をしながら教室に残ったり、部活へ向かったり……。 当然、私もその一人だ。
ヤマを張ったおかげで、懸念材料だった科学のテストは自己採点では六割は堅いと踏んでいるけど……どうなることやら。
「かーなで! 早く基地行こっ!」
流石に志乃は余裕あるなあ……。
軽く首肯し、私が鞄を持つと志乃はダッシュで教室から出て行った。 はやく紅音に会いたいんだろう。
紅音はフレーヌと一緒に暮らしてるけど、やっぱ一番仲良いのはと聞かれるとそれは志乃になるだろう。
「おい、伊志嶺」
歩いて追いかけようとすると声をかけられたので振り返る。
声でわかっていたが嵐だ。
「俺も行くぞ」
「テスト終わったし部活始まるんじゃないの?」
「ふっふっふ、サッカー部はテスト明けから一週間休みなんだよなー」
そんな自信満々に言われても……。
ていうかこの高校なサッカー部は一応全国に名は知れてるらしいけど……練習しないでいいのかなあ。まあ、私が心配することじゃ無いんだけどさ。
ふーん、とだけ答えて私は先に歩き出す。
「なんだよ、孝喜。 いつの間に伊志嶺とイイ感じなってんのさー?」
「より戻ったのか? おおん?」
「ち、ちげーよ!! てかなんで知ってんだ、お前ら!?」
なにやら後ろが騒がしい……。何話してんだろう、教室全体が騒々しくてよく聞こえない。
教室から出て歩こうとすると今度は何人かの女友達に肩を叩かれ止められた。
「いいねえ、奏。 嵐君って将来はサッカーのプロ選手内定してるようなもんだし……」
「羨ましいよ、奏ー!!」
「ま、私はテイルホワイトがいるからそこまで羨ましくは無いけどねっ!」
……本当に何の話をしてるんだ。 それと、この国では同性婚は認められてないからダメね。
私が適当に返事をすると、何故か「キャーッ!!」と叫びがら廊下を走っていった。 先生に怒られるよ、走ったら。
「さっさと行くぞ、伊志嶺!!」
「え?」
女子達と同じように嵐も教室から全速力で廊下を走っていく。
次に私が嵐を見かけたのは渡り廊下で生徒指導の先生に怒られているところだった。
時間かかりました……。