フレーヌがアンリミテッドブラを解析して開発したテイルホワイト専用の強化装備。テイルブレスに直接ジョイントし、バイザーを引くことでチェインエヴォルブする。 手前に引いた際テイルブレスの核が露出し、オーラピラーの発動を可能にする他エヴォルブバイザーの内部を通る事でより強力なオーラピラーとなる。 デザインは黒羽であり、変身時の掛け声も黒羽が発案した。
周辺にある大岩が砕けてあたりに散らばっていく。
地面が抉れ、近くでは崖崩れが起きており、それはこの闘いの壮絶さを物語っていた。
私は今、志乃とエレメリンクを発動させトライブライドとなり、なるべく遠距離からの攻撃を行っていた。
「何か面白い事を期待していたが……結局は変わらんか!」
フロストバンカーから放たれる光線はシャークギルディの持つ三叉の槍
『すみません……奏さん。 まさかエヴォルブバイザーが起動しないなんて……』
「別に気にしてないって。 またの機会に使わせてもらうからね!」
『奏さん……』
チラリとテイルブレスにセットされたエヴォルブバイザーへ目をやると、やはり先ほどと同じだ。確かにバイザーの発動手順は踏んでいるが、全く起動していない。
とりあえず私は近距離での力勝負は不利と判断、トライブライドになり闘っているというわけだ。
「わざわざ日を改めたのだ。少しは変わったところを見せてもらうぞ」
私の放った光球をなんとシャークギルディは
なんとか全て避け切ったところへシャークギルディは瞬間的に近づき槍を振り下ろしてきた。
「っあ……!?」
フロストバンカーは粉々に砕け散り、私も吹き飛ばされ岩肌に激突した。
体中に走る痛みに耐える中、通信機越しに基地の会話が聞こえてくる。
『おい、お前ら! 早く伊志嶺の助けに行ってやれよ!!』
『……ホワイトが自分で望んで闘っているのよ』
『そんな事言ってると手遅れになるぞ!!』
基地にいる嵐は今にも黒羽に掴みかかりそうな勢いだ。
「やめて、嵐! ……私は自分で決着をつけるの」
『か、奏……』
奏って呼ぶな。
エレメリンクを解除し、ツインテールへと戻った私は今度は両手にアバランチクローを装備した。
目の前にいるシャークギルディ、明らかにこの前戦ったときより強くなってる……!
「我は言ったであろう。 お前という強敵と闘い強くなった、とな」
なるほど、この前私と闘ったことでまた強くなったって事かな。
これがシャークギルディか……。
闘いが長引くととても厄介な事になりそうだし、これはさっさと決めてしまうべきだ。
「やってるねえ」
フルパワーで必殺技を決めるためにこれからブレイクレリーズしようかというところで、緊張感のない間の抜けた声が戦場に木霊した。
「ウンディーネギルディ殿、そなたはまたも邪魔をする気か!」
「まあまあ」
ウンディーネギルディ、やっぱり生きていたらしい。
よく見ると前まで無かった傷がお腹あたりにできているけど、レッドの必殺技を浴びた時にできたものかな。
『黒羽さん、紅音さん。 お願いします!』
フレーヌが二人に向けて話しかけるとまもなくテイルシャドウとテイルレッドが現れ、私とウンディーネギルディの間に立つ。
う、気まずい。
昨日の事が頭をよぎり、ついテイルレッドが目を逸らしてしまった。
「ウンディーネギルディ、あなたにこの闘いの邪魔はさせないわ」
すぐさまシャドウはアンリミテッドチェインになるとノクスアッシュトリリオンを構える。
シャドウに続きレッドも同じようにブレイザーブレイドを構えるとウンディーネギルディは呆れたように首を振った。
「そんな事言ってもこっちは予定合わせられないから。もう''向こう''では始まっちゃってるみたいだし」
そう言ってテイルレッドへ視線を向けた後、指をパチンと鳴らすと、彼女の背後にこれまでよりも大きな極彩色のゲートが生成された。
「私はマーメイドギルディの実験を利用して強くなる。 そして科学班の最高責任者に……!」
ウンディーネギルディが腕を空へ掲げると同時に、いつもより大きい極彩色のゲートから次々と黒い物体が出てきた。
最初はモケモケかと思ったがそうではない。 皆が違う、特徴的なシルエットを持っている。 ゲートから出てきたのは黒いエレメリアンだ。それも一体、二体の話じゃない。
ゲートからは三体、四体、十体、五十体……まだまだ出てきている。
「なんなのこいつら……」
黒いエレメリアンはウンディーネギルディの真横で歩みを止め、綺麗に整列した。 不気味に感じるほど、静かに、全く動かなくなった。
「言ったでしょ? これはマーメイドギルディの実験の成果。 オリジナルのエレメリアンが存在する限り命令すれば忠実に属性力を奪ってくれる……最高の操り人形!」
つまり……今からこいつらを使ってこの世界の属性力を全て奪うつもりだろう。絶対にそんな事をさせない!
「ふざけるな!!」
痛みに耐えながらアバランチクローを構え、突撃しようとしたがシャークギルディが放った怒号によってその場に踏みとどまる。
「そのような紛い物の手で人間の属性力を奪うだと!? 許されることではない。人間の属性力を奪えるのは命をかけて闘う……心ある我らのみだ!!」
「亡者が偉そうによく言うね。 でも安心して、私はマーメイドギルディの実験を利用させてもらうだけ。 はなからこの人形達に属性力を奪わせるつもりはないから」
呆れた声を上げながら、ウンディーネギルディは鞭を取り出し地面へと叩きつける。
「だけど、私の前座として活用はするわ」
綺麗に整列された何百にもなった黒エレメリアン一斉に顔を上げ、瞳に赤い輝きを灯した。
「来るぞ!!」
レッドの叫びとほぼ同時に、何十もの黒エレメリアンが私達に向かいはじめた。
私よりもウンディーネギルディに近い位置にいた二人がまず、黒エレメリアンの猛攻を受け始める。
「残念だけど……この数だと二人だけでは抑えきれないわ……!」
シャドウとレッドがそれぞれ、私達の方へ向かって来る黒エレメリアンに攻撃を浴びせていく。 しかし、まもなく倒し損ねた黒エレメリアンが私に向かってきた。
「ホワイト!!」
「っ……!」
レッドが私の身を案じて声を上げる。
私は想像以上に先ほどのシャークギルディとの闘いでダメージを負ってしまったらしく体がうまく動かなかった。
黒エレメリアンが目の前に接近し、闇色の腕を腕を振り上げた。
『奏さん!!』
腕が振り下ろされるまさにその時、黒エレメリアンが突如爆発した。 さらに、近くに接近していた黒エレメリアンも続けざまに爆発していく。
「訂正しよう。 お前ら紛い物は戦士と闘うことも許されん」
シャークギルディは私に向き直り、声かける。
「大丈夫か」
「大丈夫か、じゃないって。あんたがここまで痛めつけなきゃどうにかできたのに。 ……ま、助かったけどね」
ヨロヨロと立ち上がり、嵐とのエレメリンクでポニーテールとなる。
ポニーテールの形態なら装甲も少ないし、体が痛い今ならこの方が良いという判断だ。
「ならせめてもの償いだ。 我も闘わせてもらう、この紛い物供とな!!」
シャークギルディは物凄い速さでシャドウとレッドの前へ移動し、次々と
シャークギルディの加勢で先程よりも余裕ができた二人も、周りに散り、取りこぼした黒エレメリアンをそれぞれ倒していった。
「グランドブレイザー!!」
必殺技を発動させブレイドをそのまま地面へと突き刺すと、地面から炎が吹き上がり、一気に何体もの黒エレメリアンを消滅させる。
「ルナティック、クライシス!」
光の刃を出現させ、斧で一閃すると目の前にいた黒エレメリアンは勿論のこと、一閃した衝撃波により遠くにいる者まで吹き飛ばし消滅させていく。
私も痛みに耐え、ブライニクルブレイドを手に持ち黒エレメリアンへ特攻する。
確かにモケモケよりも強いみたいだけど、最近で出てきていた硬いモケモケよりかは倒しやすい…!
オーラピラーを地面に向けて放ち、自分を中心として何体かの黒エレメリアンを拘束する事に成功した。
「ブライニクルスラッシャー!!」
回転しながら斬りつけると、拘束されていた黒エレメリアンは次々と爆発していく。
尚も黒エレメリアンへと向かう私達に、フレーヌから通信がはいった。
『黒いエレメリアンの数は残り二百体程です!』
「ゴールが見えてきたな!」
終わりが近づき、さらに勢い付いた私達を見てウンディーネギルディは焦るどころか不敵な笑みを浮かべている。
「残念ざんねーん。 ''向こう''ではまだまだ作られてるみたいだよーん♪」
再び大きいゲートが開くと、再び黒エレメリアンが出現し、そのまま私達に向かってくる。
しかも今度は出てくる黒エレメリアンが収まる気配がまるでない。 ざっと見ただけでも最初の数よりも明らかに多い。
『なんだよ……あの数……』
基地にいる嵐も目の前の状況を見ているんだろう。
よく聞くけど体験したことのなかった、数の暴力がここまで辛いものだったなんて……。
「それじゃ調整も終わったことだし。ここからは私を見てもらうおうかな」
そう言ってウンディーネギルディは紫色の属性玉のような物を取り出す。
あれはひょっとして……。
「ゴッドブレス……!」
「違うわ、テイルシャドウ。 これはゴッドブレスなんかよりももーっとすごい私の発明品……名付けるなら''
ゴッデス……女神か。
女神が神より上なのかどうかは置いておくとして、前よりも厄介な発明だというのは間違いないだろう。
ウンディーネギルディは愛おしく
「あっははははははははは!! これ、いいわ━━━━!!」
『いけません! ウンディーネギルディは自身を強化するつもりです! 無防備な状態である今の内なんとか攻撃を……!』
「ごめん……! そうしたいのは山々だけど!」
私は勿論のこと、他の二人も同じだ。
「手が離せないわ……!」
「キリがねえ……あれ?」
突如として、私達と闘っていた黒エレメリアンが消えていく。
いや、消えているんじゃない……
よく見るとゲートから出てくる黒エレメリアンも出てきた直後にウンディーネギルディに吸収されている。
「やめるのだ! ウンディーネギルディ殿!!」
ウンディーネギルディの異常な進化に、同じエレメリアンとして見過ごせないシャークギルディが声を上げて止めに入る。
「ぐあああああ!!」
突如ウンディーネギルディの体から漆黒の腕が現れ、シャークギルディは叩きつけられると吹き飛ばされてしまった。
何体もの黒エレメリアンを吸収するうちにウンディーネギルディの体は黒エレメリアンと同じように漆黒となり、体躯もどんどん大きくなっていく。
そして、ウンディーネギルディの前に浮いていた
「はあああああああああ!!」
紫電が走り、周りの岩を砕く。
美しい女性を思わせた声もどんどん老人のようなしゃがれ声となり、腕も地面につくほどの長さとなった。
神秘的な水色だったストレートの髪の毛は濁ったように黒ずみ、顔に巻きついた。
もはや原型のない姿となってしまったウンディーネギルディは……ハッキリ言うと醜い姿になっていく。
進化が完了したのか、ひたすら吸収されていた黒エレメリアンはゲートから出てきたところで動きを止めた。
「あっはははは。 これで、これで私が一番だ!」
体躯はゆうに五十メートルは超えているだろう。
動き一つ一つに大地が震えるのを感じた。
「ウンディーネギルディ!!」
立ち上がったシャークギルディを一瞥すると軽く腕を振るった。
あたりに突風が巻き起こり、シャークギルディは再び吹き飛ばされ岩に叩きつけられる。
「私は、神……セドナギルディ。これこそが私の力……私の発明の力……!!」
水の精霊から神話で語り継がれる海の女神へ。
完成されたセドナギルディとの史上最大級の闘いが始まろうとしていた。
◇
私は自分の頬をパチンと叩き、気合いを入れた。
目の前にいるのは山にも匹敵する大きさとなったエレメリアン、セドナギルディ。
私がテイルレッドの世界で見た虫のエレメリアンよりも遥かに大きい。
確かに昔の私ならビビって動けなかったかもしれない。 だけどそれは昔の話だ、今は違う!
支えてくれた仲間達とここまで来た。 高い壁を乗り越えて来た。 なら、目の前ちある高い壁だって乗り越える事は出来るはずだ!
ブライニクルブレイドをセドナギルディへと突きつける。
「そんなにデカくなったところで、私達は倒せないから!」
今日はクリスマスなんだし、この闘いの勝利をこの世界の人たちにプレゼントしてみせる!
「中途半端な乳ゆえ、中途半端な覚悟をしているのではと危惧したが……絶望的な状況に関わらずその勢い。 さすが我の強敵だ、テイルホワイトよ」
こんな場面で話す事じゃないって。
それぞれ、ブライニクルブレイドと
「不敬な奴らめ……! 神となった私に逆らう事など許される事ではない!」
セドナギルディが腕を振り下ろすと、ゲートの前で待機していた黒エレメリアン達がさっきと同じように進撃をはじめた。
私達三人とシャークギルディを含めた攻撃により、黒エレメリアンはどんどん数を減らしていく。
「大人しく属性力をよこしなさい! そうすれば私はより偉くなれる!」
こいつ、出世のことしか頭にない!?
黒エレメリアンが散っていく様子を見ていたセドナギルディもついに動き出す。
足下の黒エレメリアンを自分で潰しながら接近したセドナギルディは、その長い豪腕を振るい地面に大きなクレーターを作った。
体がかなりの大きさなだけあって、動きはそこまで早くないのが幸いしたか、セドナギルディの攻撃をなんとか全員避けきっている。
「今よ、レッド!」
「ああ!!」
左の豪腕が地面についたところでシャドウとレッドが同時に斬りつけるとその腕は大きな音を立てて地面へと転がる。
『セドナギルディは道具に頼ったイレギュラーな進化なため、まだ本当の力を出せていないようです。今の内に、お願いします!!』
「なるほどね」
動きが遅い事や、攻撃が正確ではないのはそういう事だったわけか。
続けてセドナギルディは特に痛がる素振りも見せず残った右腕で同じように私達を狙って来る。
「ぬうおおおおおおお!!!」
シャークギルディが豪腕を受け止め、セドナギルディの動きを封じると三人は一斉に本体へと斬りかかる。
「ブライニクルスラッシャー!!」
「ルナティッククライシス!!」
「グランドブレイザー!!」
三人一斉にブレイクレリーズし、必殺技をセドナギルディの胴体目掛けて放つ。
しかし━━━━
「ぐあ!?」
顔に巻き付いていた髪の毛が突如蠢き、レッドを叩きつける。
「っ!!」
不意をつかれたシャドウも同じように叩きつけられ、地面へと落下した。
「っあああ!?」
『奏ー!!』
何度か髪の毛を弾き返す事が出来たが、次第に追い詰められ、体を絡まれてしまった。
脱出しようにも腕も絡まれブレイドを振る事もできず、想像以上に強い力で締められ全く動けない。
「フッフフフ……。神に刃向かう愚かな行動のせいで、あなたは敗北する」
「くうっ……!!」
なんとかしないと……!
締め付けに耐えきれず、テイルギアの装甲から火花が散りはじめる。
「やめろー!!」
レッドが締め付けられた私の元へ跳躍し、手を伸ばす。
「うわあああああ!!」
しかし、その手は私に届かなかった。
私に対しての助けを防いだのは先ほどシャドウとレッドが落としたはずの左腕だ。
地面に叩きつけられたテイルレッドはよろよろと立ち上がり、驚愕する。
「なんで腕が……!?」
続けざまに復活した豪腕で、支えていたシャークギルディも吹き飛ばす。
「足がお留守よ!!」
セドナギルディの足下に移動していたシャドウによって今度は右足を斬りつける。
セドナギルディが一瞬揺らめき、その隙に私は髪の毛から脱出する。
「無駄な事は……やめたほうがいいんじゃない?」
次の瞬間、ゲート前に待機していた黒エレメリアンをセドナギルディは切断された足へと吸収させ元どおりの体となる。
「いくら私を傷つけようが、人形がいれば再生できる」
この方法で無くなった左腕を復活させたわけか。
『チートじゃねえか! どうすりゃいいんだよ!?』
確かにこのままいくら攻撃したところで毎回体を再生されたら終わりが見えない。 しかも厄介な事に、黒エレメリアンを吸収するたびにセドナギルディは体力も回復させているようだ。
「もう諦めちゃったの?」
そう言った直後、片方の眼から赤い光線を放つ。
連続で放たれる光線に、だんだんと疲れてきた私達は避けきれなくなっていく。
「ぐううおおおおおおお!!!」
シャークギルディが素早くメガロドギルディに変身し、私達に向かう光線全てを
シャークギルディこそが最終闘体とか言ってたけど、メガロドギルディとなった状態でも私と闘った時より比べ物にならないくらい強くなっているのが一目でわかった。
この強さならメガロドギルディとして闘ったほうがセドナギルディを追い詰める事ができるかもしれない。
だが━━━━
「━━━ぐっ!」
突如として、メガロドギルディの首筋が爆発した……! その場に飛び散る身体の欠片とともに、全身から放電を放ち始めている。
間も無く、メガロドギルディからシャークギルディへと戻ると放電は収まった。
膝をつき、息を整えるシャークギルディ。
「素の状態で力を大きくしすぎて、さらに強大な力を得る進化についていけてないのね」
悲しそうな顔をしながらシャドウは解説した。
そっか……。 それをわかってたから、この前私と闘った時にメガロドギルディにならなかったんだ。
膝をつくシャークギルディに、セドナギルディが豪腕を振るう。
私達は三人がかりで豪腕を抑えつけ、弾き返す。
「何をする!?」
「何って……今あんた私達を庇ってくれたじゃん。 私は奢られたら奢りかえさないと嫌な性格なの!」
さて、体の状態も大分よくなってきたしそろそろかな。
エレメリンクを解除し、ツインテールへと戻った私はすぐさまアバランチクローを両腕に装備した。
『皆さん、セドナギルディを倒すには黒いエレメリアンを利用しての再生をさせない事が重要になります。そうなると黒いエレメリアンを作っている根源をどうにかするしかありません!』
「黒エレメリアンはゲートから出てきてるからそれを壊せばいいって事?」
今もなお黒エレメリアンはゲートから出てきている。
あのゲートさえ無くせれば……!
「いや、ゲートは我らアルティメギルに属する者はいくらでも生成できる。 例えゲートを潰したところでセドナギルディが再び生成するだけだ」
「じゃあどうするんだ?」
テイルレッドが迫り来る黒エレメリアンを叩き斬りながら問いかけた。
「テイルホワイトよ。ゲートの向こうの世界に行き、戦女神を止めてくれ」
「ゲートの、向こうに!? てかなんで私!?」
最初は疑問に思ったが周りを見回すとすぐ理解した。
シャドウもレッドも、私以上に黒エレメリアンと闘っていたせいで酷く疲れている。 そんな二人にゲートを通れなんて酷な話だ。となると消去法で私が行くこととなるのは当然だ。
『ダメです奏さん! 生身でゲート内に入るのは危険すぎます!』
私達よりその辺の事情に詳しいフレーヌは当然反対している。
だけど、やらないとセドナギルディは倒せない。
「ごめん、フレーヌ。 私何もしないで後悔するのが一番嫌いなの」
『奏さん!!』
セドナギルディが腕を上げるとゲート前に待機していた黒エレメリアンが再び蠢き出し、セドナギルディを通り過ぎる。
「やるよ、シャークギルディ」
シャークギルディは黒エレメリアンが出てくるゲートを指差した。
黒エレメリアンの根源はあの先にいるのなら、あのゲートを通る事は大前提だ。 となると必然的に、目の前に広がる漆黒の大地を通る必要がある。
『奏さん、私はあなたを闘いに巻き込んだ責任があります……。 その責任としてあなたを無事に元の生活へ戻さなければいけません』
基地で志乃と嵐がなだめてくれたおかげか、先ほどよりも落ち着いた声音で話すフレーヌ。
『もしそのゲートを超える事で、奏さんが元の生活に戻れるなら……止めません』
「大丈夫、私を誰だと思ってるの?」
漆黒の大地と、海神を前にして笑顔で堂々と宣言する。
「━━━━私はツインテールが世界一大っっ嫌いな女子高生、伊志嶺奏よ!!」
言葉と同時に疾駆し黒エレメリアンを弾きながら、ゲートに向かっていく。
対応できないところから来る攻撃は、シャドウとレッドがうまい具合に対処してくれるおかげで目の前の黒エレメリアンに集中する事ができる。
「テイルホワイトオオオォ!!!」
セドナギルディがゲートの前に立ち、眼から光線を放たれると、ガードはせずに右へ左へと危なげなく避けていく。 避ける事で目標に当たらなかった光線は周りにいる黒エレメリアンを巻き込み大爆発を起こす。
セドナギルディの足元まで接近すると、通り抜けざまにクローで攻撃。 走っていたおかげで勢いがつき、セドナギルディは転倒する。
が、ここに来てゲートから今までの比ではない量の黒エレメリアンが出現した。
「邪魔! はああああああああああ!!」
走りながら普段の要領でブレイクレリーズする。 しかし、今回の必殺技は今までのアイシクルドライブとは違う。
回転しても敵に突撃する事なく、その場でアバランチクローを掲げる。
すると、私を中心として吹雪を伴った竜巻が発生し近くにいる黒エレメリアンをどんどん吸い込み、中へと閉じ込めていく。
咄嗟に考えたにしてはなかなかよくできた技だ!
私の新たな必殺技━━━━
「━━━━ホワイトアウトドライブッ!!」
新たな必殺技名を叫ぶと同時に竜巻が爆発し、中に閉じ込めていた黒エレメリアン全てを撃破した。
爆発した氷がキラキラと地面へと落ちる中、クローを肩に移動させゲートへと走った。
「テイルホワイトよ、これを持っていけ!!」
ゲートに入る直前にシャークギルディから投げ渡されたのはかつての武器、スモールバスティラスだ。
「その槍ならば、必ず貧乳の姫のもとへと導いてくれるはずだ!!」
理解した私はしっかりとスモールバスティラスを握りしめる。
「すぐ戻ってくるから……みんな!!」
『お願いします、奏さん!!』
フレーヌからもらった通信を最後に、私はゲートの中へと入り込んだ。
◇
セドナギルディが足にできた傷を黒エレメリアンで癒し、再び立ち上がった。
「テイルホワイトが何をしようと、あなた達の勝利はない、ありえない!」
絶対的な自信を持ち、セドナギルディは両再び腕を振るい攻撃をはじめた。
「お前達、テイルホワイトが紛い物を片付けるまで……耐えるのだ!!」
「言われなくても……!」
「ああ、わかってるぜ!」
セドナギルディと黒エレメリアンに対抗しようかというところで、レッドがある変化に気づく。
「おい、俺たちを狙ってない奴もいるぞ!」
レッドの指摘通り大部分の黒エレメリアンは三人に向かってきているが、僅かに横にそれそのまま走り去っていく個体もいる。
『まさか、近くの人間の属性力を感知してる!?』
「ヤバイわね……」
連続使用と疲労のせいで、このタイミングでシャドウはアンリミテッドチェインが解除されてしまった。
『とりあえず私達三人で近くの人を避難誘導しましょう!』
『わかった!』
『もちろんだ!』
三人は身元バレ防止のため、例の作りの悪いテイルホワイトお面を被るとカタパルトに入った。
(近くといっても何十キロかは市街地からは離れてる。 三人が避難誘導してくれるならかなり時間が稼げるわね)
シャドウはノクスアッシュを左手に持ち替えると、右手に黒い粒子を集め始める。
「ジャックエッジ!!」
一瞬にして黒い粒子が固まり、漆黒の剣が完成した。
斧と剣を手に持ち、黒エレメリアンを次々と弾き飛ばしていきながらセドナギルディから離れていく。
「セドナギルディを倒す必要はない! 我々は耐えるのみだ!!」
シャークギルディもセドナギルディに向かう事なく市街地へ向かう黒エレメリアンを中心に攻撃していた。
レッドも二人とは大きく離れた位置で、市街地に向かう黒エレメリアンを迎え討つ。
「グランドブレイザーマグマッ!!」
ブレイドで地面を斬りつけると、いたるところからマグマが噴き出し、黒エレメリアンを容赦なく呑み込んでいく。
近くにいた黒エレメリアンを一掃したレッドは膝をつきながら息を整える。しかし、取りこぼしていたらしい黒エレメリアンが後方からテイルレッドへ飛びかかってきた。
「なっ!?」
レッドが気がついた時にはもうブレイドを振っても間に合わない。
攻撃を受ける覚悟を決めた中そこへ、光よりも速い黄金の矢が現れ黒エレメリアンを貫き消滅させた。
「!」
矢が飛んできたであろう方向へ目を向けるとそこには弓を構えたエンジェルギルディの姿があった。
「お前は!」
「お久しぶりですわね、テイルレッドさん。 どうやらその様子では記憶が戻ったようですわね」
咄嗟にブレイドを構えるレッドと対照的にエンジェルギルディは弓を消滅させると腰に手をやりリラックスした様子で話し始める。
「美しくない……流石マーメイドギルディですわね」
遠くに見える漆黒の大地を見て、エンジェルギルディは呆れたように呟やいた。
「このような美しくない実験をする者にエンジェルの名前は与えられませんわ。…それに乗っかるウンディーネギルディもですが」
「な、何を言ってるんだ!?」
テイルレッドを一瞥すると、エンジェルギルディは全六枚の羽根を展開して空中に浮かぶ。
「部下の失敗を正すのが上司の役目ですが、ウンディーネギルディの気合は見事ですわ。 その気合に免じて、粛清ではなくテイルレッドの属性力を守る事にしましたの」
「意味がわかんないぞ!」
「私が出しゃばるのはここまでですわ。 精々頑張ってください、テイルレッドさん」
天使の羽根が散り、レッド視界が白く染まる。
羽根が地面に落ちきる頃には、エンジェルギルディの姿はなくなっていた。
「エンジェルギルディ……あいつは一体……」
地面に落ちている羽根を拾い上げると、その羽根は消滅してしまった。
次回も決戦回となります。