私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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セドナギルディ
身長:50m以上
体重:推定10万t
属性力:涙属性(ティアー)

聖の五界の幹部エレメリアンであるウンディーネギルディが自らが開発した''ゴッデスブレス(女神の吐息)''を使って進化した形態。 黒エレメリアンを吸収し、自らの力にする事や傷ついた箇所を癒す力もあり、黒エレメリアンがいる限り負ける事はない。 力が強大だが、急激な進化に適応よるのに時間がかかる。 豪腕から繰り出される拳や、顔に巻きついた髪状のパーツ、片目から放たれる光線による攻撃方法をとる。


FILE.64 邂逅、聖なるクリスマスバトル!

 意識が薄れていくのを必死に耐え抜き、私はゲートを抜けると二度目の異世界へと到着した。

 セドナギルディはこのゲートを使って私達の世界に黒エレメリアンを引き寄せていたのなら、戦場は近いはず……。

 周りを見回すと、黒い物体が……黒エレメリアンがだんだんとこちらに向かってくるのを発見した。

 

「やっぱりヴァルキリアギルディは近くにいるのかな」

 

 ゲートに入ろうとする黒エレメリアンの前へ立ち塞がると、シャークギルディから借りたスモールバスティラスで叩き斬る。

 これ、自分が使ってわかったけど凄い武器だ……!

 前に私はこんな武器を持つ相手に闘ってたんだと考えると、よく勝てたと思う。

 戦場がよく見える高い岩場に飛び乗り、遠くへ目を向けると岩場の中に目立つ巨体を二つ確認した。

 

「で、でか!? セドナギルディよりも……でかいし」

 

 明らかにあれはエレメリアンだ。

 この距離から見てあの大きさなら……木みたいな方は百メートルは普通に超えていそうだし、細い体にデカイ頭の奴の方もかなりの大きさだ。

 ボーッとしてるわけにはいかないか……!

 気合いを入れるため、自分の頬を両手でパチンと叩く。

 今この時間にもシャドウとレッド、シャークギルディに基地にいるみんながセドナギルディを食い止めてくれている。

 ヴァルキリアギルディは必ずこの辺りにいるはず……でもよくよく考えたらどんな姿してるのか私知らないんだけど……。

 

「あーもう! とりあえずそれっぽいのを探す!!」

 

 とりあえず木のエレメリアンへと駆け出す。

 駆けている中、ゲートに向かう黒エレメリアンがいれば通り抜けざまにスモールバスティラスで倒していきながら、どんどん木のエレメリアンへと近づいていった。

 

「あれは……」

 

 走っている途中、崖の前に黒エレメリアンが集まっているのを発見した。

 目を凝らしてよく見てみると黒エレメリアンの前に人のようなものが見える。 まさか、黒エレメリアンに属性力を狙われてるんじゃ……。

 考えてる暇なんかない、助けに行かないと。

 素早く、黒エレメリアンが集まる崖の上に移動する。

 上からだからわかりにくいけど、どうやら追い詰められているのはメイドさんのようだ。 なんでこんなとこにいるかは後で聞くとしようか!

 勢いよく飛び降りメイドさんに手を伸ばしていた黒エレメリアンを上段から一刀すると間も無く爆発。 続けて間髪入れずに槍を横に一閃すると、集まっていた黒エレメリアンは全て爆発した。

 

「だ、誰だ!?」

 

 後ろからメイドさんの声が聞こえた。

 確かにいきなり現れたら驚くよね。 この世界のツインテール戦士とは違うわけだし。

 

「えーっと……」

 

 他の世界で大っぴらにテイルホワイトなんて名乗っていいものなのかな。

 とりあえず、今は名乗らないでおこう。

 

「た、ただたまたま通りすがったツインテールの戦士です! ……へ!?」

 

 思わず変な声をあげてしまった。

 キメ顔しつつ、振り返るとそこにはいたのは確かにメイドさんだ。……メイドさんだけど、緑色のへんな仮面を被っている。 あれ、でもこの仮面どっかで見たような……。

 

「ツインテールの戦士だと!?」

 

 仮面を被っているせいでどんな表情をしているのかはわからないけど、相当驚いてるみたいだ。

 

「たりゃ!」

 

 メイドさんを逃すべく、とりあえず近くにいる黒エレメリアンを吹き飛ばした。 これでなんとか遠くに逃げられるかな。

 

「ところで、なんでメイドさんがこんな所にいるんですか?」

「避難誘導をしていてな」

 

 仮面を被って避難誘導……。 そこはよくある黄色いヘルメットにしといてほしかった。

 一般人の割に中々正義感のあるメイドさんだ。 私は無関係だったらそんな事できないし。

 ていうかあんまり長話してる場合じゃないね。

 

「き、貴様が何故ここにいる!?」

「え?」

 

 後ろから低い声が聞こえ、振り返るとそこには一体のエレメリアンがいた。

 さっきまで嫌という程見ていた黒エレメリアンではない、正真正銘のエレメリアンだ。 しかし、そのエレメリアンの後ろには見たくもない大量の黒エレメリアンが待機している。

 

「くそ!以前からこの世界の部隊に潜入していたこの俺レプラコーンギルディが、ウンディーネギルディ様にヴァルキリアギルディ様が倒されようとしている事を報告するついでに大量の実験品を届けようとしたところで、聞かされていたテイルホワイトに出くわしてしまうとは!?」

「説明ありがと」

 

 このエレメリアン、レプラコーンギルディというやつは口数が多いみたいだ。

 

「くそ! ウンディーネギルディ様に従えば幹部の座も確実と言われ仕方なく、この世界に来てみれば部隊は壊滅寸前、神の一剣まで顔を出してくる始末。 ウンディーネギルディ様の言っていたマーメイドギルディちゃんの実験まで大分時間がかかり、聖の五界がどうなっているやも知れず。 ようやく実験が始まったと思ったらエインヘリアル達が実験品を壊しまくりだし、こうなるとウンディーネギルディ様からは連絡がこないために報告ができんので早く戻らねばならぬのだ!!」

 

 いちいち長い。

 

「くそ! 戻ったら戻ったで、本当にウンディーネギルディ様に会えるかは怪しいとこだが、俺にはそれしか残されてな━━━━」

「長い!!」

 

 渾身の右ストレートをレプラコーンギルディの頰に叩き込むと、黒エレメリアンの海へと吹っ飛ばされていった。

 こっちは急いでるのにあのまま続けられたら日が暮れそうだ。

 まあ口数が多いからか、内情をベラベラと喋ってくれたし結果オーライ……ではないか。

 

「メイドさん、ここから離れてください。 あ、それと私の事あんまり言いふらさないでくださいね」

 

 メイドさんは困惑した様子ながらも頷き、駆け足で去っていった。

 これでなんとか、メイドさんはなんとか逃す事ができた。

 次は目の前の黒エレメリアン達だ。

 レプラコーンギルディはウンディーネギルディの元に戻る、そう言っていた。 という事は黒エレメリアンを引き連れてゲートを通る気に違いない。

 一旦進むのは諦めて、足止めするしかないか……!

 

「よく考えたらここでテイルホワイトを倒せれば幹部昇進ものだ! こうなったら総進撃だ!!」

 

 黒エレメリアンの後ろのほうから微かにレプラコーンギルディの声が聞こえると黒エレメリアンは列を乱す事なく、一斉にこちらに向かいはじめた。

 どうやらレプラコーンギルディはまた何か長く話してるみたいだが、黒エレメリアンの足音と遠くにいるせいで何を言っているかまではわからなかった。

 スモールバスティラスを真上に放り、その一瞬でアバランチクローを装備するとそのままブレイクレリーズ!

 

「ホワイトアウトドライブッ!」

 

 その場で回転すると近くにいる黒エレメリアンを吹雪の竜巻へと吸い寄せ閉じ込め、撃破した。

 落ちてきたスモールバスティラスを掴み取り、今度は一体一体相手していく。

 

「幹部昇進! 幹部昇進! 俺こそが聖の五界を背負っていくのだ!」

 

 レプラコーンギルディが黒エレメリアンの海から飛び出すと、剣を取り振り下ろしてきた。

 なんとか剣を受け止めると、衝撃で周囲の黒エレメリアンが吹き飛んでいった。

 ふざけたエレメリアンだけど、なかなか強い……!

 

「一応聞いとくけど、あんたは何属性なの?」

 

 なんとか隙を見つけるため、とりあえず属性力を聞いてみる。 自分の属性力を熱弁して、油断するエレメリアンもいたからね。

 

「俺の属性……それはボス!」

 

 ボスって事は、コーヒー……ではなくなんらかのリーダー好きって事だろうか。

 

「違う、上司属性(ボス)だ!」

「心読むな!」

 

 なるほど、上司の事をボスって言うんだね。

 こうやってエレメリアンと闘っていると、ほとんどは無駄知識が頭に入ってくるものだけどたまにためになる知識もついてくんだよね。

 それにしても全然油断する様子がない。さすが聖の五界のエレメリアンといったところか。

 

「おいおい、俺だけに集中していていいのか?」

 

 剣に力を込めるレプラコーンギルディが突如ニヤつく。

 

「きゃ!?」

 

 剣を受け止めている間、一瞬で私の元へ近づいてきた亀のような黒エレメリアンからの攻撃をもろに受け、大きく吹き飛ばされた。

 倒れ込んでいるところで近くに待機していた黒エレメリアン三体が同時に飛びかかってくる。

 

(この体勢じゃスモールバスティラスは振れない……!)

 

 しかしダメージを覚悟しかけたところで、横から見覚えのある触手が伸びてくると、一瞬の間に黒エレメリアンを三体とも爆散させた。

 忘れるわけのない忌々しい触手、初めて私を負かした触手、また会おうと言って会うことのなかった''あいつ''がこの場に現れた。

 

「クラーケギルディ!?」

 

 マントを翻し、クラーケギルディは私の元へ歩み寄ってくる。

 なんて言葉をかけていいか分からず、私はただクラーケギルディを見るだけの中、ついに沈黙を破る。

 

「誰だ貴様は」

「はぁ!?」

 

 思わず立ち上がり、同時に横の黒エレメリアンを叩き潰す。

 あんなに……あんなに私をぶちのめしておきながら忘れるなんて……!?

 

「私はあんたにボコボコにされたの! なんか偉そうな事色々言っといて! あの時は自分がやられるなんて衝撃的だったんだから……忘れるとかありえないんだけどっ!」

 

 イライラした分パワーが上がったのか、スモールバスティラスを横に一閃すると周囲の黒エレメリアンを吹き飛ばす。

 

「くそ! こんな終わり方あるか!? しかし、最後まで上司に使われて逝けるのなら上司属性を持つ者の幸せか……!」

 

 黒エレメリアンに埋もれてたせいで気がつかなった。

 どうやらレプラコーンギルディも一緒に斬ってしまったらしく、放電しはじめる。

 上司が好きでありながら幹部昇進を目指していた部下は長い断末魔を残して爆発していった。なんかごめん。

 

「全くだ。 俺が貴様の立場なら興が削がれるところであった!」

 

 突如背後から胴間声が響き、恐る恐る振り返ると見たことのないエレメリアンが仁王立ちしていた。

 この威圧感……間違いなくこのエレメリアンも幹部級に違いない。

 迫り来る黒エレメリアンを容易く撃退していく……いくのだけれど……撃退方法が……。

 エレメリアンは私に近づくと歩みを止め、自らの槍をしまい込んだ。……しっかり説明すると股間から生えていた触手を体に巻きつけた。

 もう少し後ろから生やす事はできなかったのだろうか。

 

「俺の名はリヴァイアギルディ! 巨乳属性、ラージバストを奉ずる戦士だ!」

 

 ついに来たか、巨乳属性。貧乳属性があるんなら巨乳属性もあるとは思っていたけど、ようやくご対面だ。

 リヴァイアギルディは私の顔を見た後に視線を下にずらしていく……変態か?

 

「惜しいな、戦士よ。ポテンシャルの高さは感じられるが、それでは俺の愛する巨乳には程遠いな」

 

 愚問だった、エレメリアンだもんね。 それにしても、こんな状況でもエレメリアンは自分の属性に正直すぎる!

 ここまで言われて、私もだいたい察しがついた。

 巨乳属性のエレメリアンにすら言われてしまうのか……。

 

「悲しき中途半端な乳!!」

「中途半端で悪かったね!!」

 

 うん、言われる事は察してたからほとんどノータイムで言い返す事ができた。 なんか中途半端ってずっと言われてるせいで自分の胸に自信がなくなってきた……。

 

「まだ言うか!戦士よ、貧乳である事は恥ではない。 そなたは既に完成された……なんと中途半端な乳、貧乳ではないな。 む、貴様はまさか……」

「あー、もうっ! こんなくだらない事してる場合じゃないんだって!!」

 

 私達が口論でも始まろうかというところで、近くにいた何体かの黒エレメリアンが突撃をはじめていた。

 

「貧ッッ!!」

「巨ォォォォッ!!」

 

 突撃してきた黒エレメリアンを二体の胸好きエレメリアンは一瞬にして消していった。

 股間の槍が轟き、貧乳の剣が閃く。

 クラーケギルディは流石の強さだし、リヴァイアギルディも攻撃の仕方はアレだけど実力は確かだ。それと酷いかけ声を聞いた。

 後ろから見る圧倒的な迫力に、私は思わず腰を抜かしてしまった。

 

「なるほど……貴様はシャークギルディ部隊が相手していた戦士、テイルホワイトか」

 

 思い出してくれたのはいいけど、胸を見られた後に言われてもな。

 

「ほう、異世界からこのような所にな。 何か目的があるのか」

 

 股間の触手……いや、槍を屹立させながらリヴァイアギルディが振り返る。

 スモールバスティラスを杖代わりに立ち上がり、私も黒エレメリアンに備える。

 

「周りにいる黒エレメリアンに迷惑しててね。それを作ってるヴァルキリアギルディを倒しにきたの。 せっかくだし案内してよ」

 

 私の発言に、胸好きコンビは互いに顔を見合わせ首を振る。

 そりゃそうだよね。 同じアルティメギルの仲間を売るような事を幹部のエレメリアンがするわけないもんね。

 だいたいわかっていたつもりけど、帰ってきたのは予想だにしない言葉だった。

 

「ヴァルキリアギルディを倒す必要は無い。 既に彼女と闘っている者がいる」

「近いうちに決着はつくだろうからな」

「そ、そうなんだ」

 

 ヴァルキリアギルディと闘っている者……この世界のツインテール戦士だろう。

 

「自分の世界を守りたいなら攻めるのではなく引け! ガイアギルディの生み出したエレメリアンを行かせたくないならな!」

 

 ガイアギルディ……そう言ってリヴァイアギルディは木のエレメリアンの更に奥にいるもう一体のでかいエレメリアンを指差す。

 シャークギルディはヴァルキリアギルディが黒エレメリアンを生み出してるって言ってたけど……リヴァイアギルディの言い方から察するにあのガイアギルディが……!

 

「ガイアギルディっていうのがヴァルキリアギルディって事!?」

「ヴァルキリアギルディ自らがエインヘリアルとなった姿だ」

 

 自分を復活させたせいであの姿に……。

 そこまでして、闘おうとするなんてヴァルキリアギルディはどんな執念を持っているんだ。

 

 

 私はすぐに通ってきたゲートの前に戻り、中へ入ろうとする黒エレメリアンを倒していく。

 驚きなのはクラーケギルディとリヴァイアギルディが一緒について来てゲートを守ってくれている事だ。

 シャークギルディの時も思ったけど、まさかエレメリアンと一緒に闘う事になるなんてね。

 遠くになったガイアギルディを見ると、突然体に炎が走ったのが見えた。

 

「あの炎……」

 

 ガイアギルディの周りに時々噴き上がる炎。

 間違いない、前に異世界で見た……いや、ここ最近は隣で見ていた炎に違いない。

 あれは、テイルレッドの炎!

 ん? テイルレッドがいるって事はつまりここは……。

 

「ここってまさか、ツインテイルズの世界!?」

 

 クラーケギルディもリヴァイアギルディも否定はせず、目の前の黒エレメリアンに攻撃を浴びせた。

 そういえば、クラーケギルディは確かツインテイルズと闘って……。だからこの世界にクラーケギルディがいるっていうわけね。

それにしても……この世界はしょっちゅう大きなエレメリアンに攻められてるなぁ。

 それと、今この瞬間にテイルレッドがこの世界にいるって事は私の世界にいる総二はやっぱり過去から現在にやって来たっていう事……。

 

「レッドが!!」

 

 レッドが極大の炎と光を放ち、ガイアギルディは光の中へ消えていく。

 驚きの光景のあまり、私は思わず二体のエレメリアンの前に出る。

 ガイアギルディが消えていくと同時に、私達の目の前にいた大量の黒エレメリアンも黒い粒子となり、消滅していった。

 勝った……のかな。

 結局私はガイアギルディに何もできなかったけど……これで私の世界にいた黒エレメリアンも消えてくれるのかな。

 なんとか目的は果たせたけど、私一人の力じゃ無理だったよね。 

 

「あんた達には助けられたわ。 ありが━━━」

 

 安堵の息をつき、お礼を言おうと振り返る。

 しかし、私はお礼を言い切る事は出来なかった。

 

「ちょっと、どうしたの!?」

 

 お礼の言葉は心配する言葉に変わった。

 さっきまで堂々と闘っていた二体のエレメリアンが━━━━消えかかっている。

 思わず二体に駆け寄るとすぐにわかった。

 クラーケギルディもリヴァイアギルディも自分が消えようとしている事になんの違和感も感じていない。

 

「まさか、ガイアギルディが倒れたからあんた達……!」

 

 腕組みをしたまま、リヴァイアギルディは股間の触手を体に巻きつかせ私の疑問に答える。

 

「奴が倒れた事は関係ない。元より俺達はお前が来る前から一度消滅していたのだ」

 

 リヴァイアギルディと同様、クラーケギルディも剣をしまうと同時に無数の触手も力なくたれていった。

 

「もはや俺達がこの場に残る理由はないのだ。 ふん、最後に見るのが中途半端な乳とはな!」

 

 消えかかってる今そんな事言われても……ツッコミなんてできないよ……。

 リヴァイアギルディがそっぽを向いた後、クラーケギルディも話しはじめた。

 

「前に私は言ったな。 ''貴様が成長し、相見える日を楽しみにしている''と」

 

 そうだ。 そんな事言っておきながらもう会う事はないのかと、私も思っていた。

 だけど……クラーケギルディがしたその約束は今日、まさかの形で果たす事が出来た。

 

「私も最後に見るのが姫ではなく中途半端な乳で残念だ」

 

 だから消えかかってるこの状況で言われてもツッコミなんてできないんだって……。

 だって……相手はエレメリアンなのに私の中で怒りよりも悲しみが前に出てきてしまいそうなんだ。

 

「貴様が持っているその槍……シャークギルディの物だな。 伝えておけ、立派だとな」

 

 スモールバスティラスを強く握りしめ、思わず私は視線を下に落とす。

 すると視線の先にあった二体の足の先から、光の粒子となって煌きながら消えはじめた。

 足から腿へ、腰へ、どんどん体が消えていく二体をしっかりと私は見据える。

 

「消える前に、聞いて……」

 

 これだけは言わないといけない。

 今の自分の気持ちを、絶対。

 

「悔しいけど、ありがとう……」

 

 二体のエレメリアンは聞こえてただろうか。

 お礼の言葉を言うと同時に、二体の胸好きエレメリアンは完全に消えていった。

 小さい胸が好きでも、大きい胸が好きでも、力を合わせて闘った戦士を……私は忘れない。

 

 

 ゲートの前に立つと、前来た時と同じように最後にツインテイルズの居るこの世界を目に焼き付ける。

 この世界はガイアギルディの脅威から救われた……だけど私はまだ終わりじゃない。 しんみりするのは私の世界にいるセドナギルディを倒してからだ。

 確信している。

 スモールバスティラスは必ず主人の元へ帰ろうとしてくれる。 私を私の世界へ、みんなの元へ帰してくれる、と。

 

 自分の世界で決着をつけるため、私はゲートの中へと再び飛び込んだ。

 

 

 スモールバスティラスの導くまま、ゲートを抜けた先は……間違いなく私の世界だった。

 私が抜けるとゲートは役目を終えたようで次第にと小さくなっていき、最後は消滅する。

 向こうの世界で頑張った甲斐があってか、周りに黒エレメリアンは見当たらない。 しかし、妙な事がある。

 

「セドナギルディがいない……」

 

 五十メートルは超えていたセドナギルディだ、それなりに遠くにいても視認できないのはおかしい。

 それともう一つ、静かすぎる。

 どこかで闘っているならその音が聞こえくるはず……この場に響く音は私が歩く音だけ。

 嫌な考えが頭をよぎる。

 まさか…セドナギルディの攻撃に耐えられずみんな……!

 

「フレーヌ!」

 

 いくら呼びかけても通信機からフレーヌも志乃も嵐の声も聞こえてこない。

 いつのまにか上空が黒い雲に覆い尽くされ、雷の音が鳴り始めていた。

まさか……まさかみんな……!!

 

「奏━━━━!!」

 

 グッと拳を握りしめ、セドナギルディを探そうと跳躍しかけたが、聞き覚えのある声でその場に踏み止まった。

 

「志乃! っあ!?」

 

 志乃の声がした方へ視線を移そうとしたその時重い一撃が体に浴びせられ、地面に打ちつけられる。

 ''私に攻撃した者''は倒れる私を掴みあげる。

 

「あんた、誰……!? 」

 

 片腕で私を掴み上げるエレメリアンは今まで見た事がない。

 漆黒の体に、紅い眼、そして頭から腰までの長さの髪の毛とそれと合わせるよう腰から足首まで伸びる布のパーツ。

 こいつ……どこから……!

 困惑する私を見て、エレメリアンはニヤリと笑うと口を開いた。

 

「忘れられるなんて残念ねえ。さっきまで会っていたのに」

「その声、まさか!」

 

 エレメリアンの声は私が異世界に行く前に聞いたあの声だ。

 自分を科学の力で強化した水の精霊━━━

 

「━━━ウンディーネギルディ!?」

「違うよ、私はセドナギルディ」

 

 セドナギルディとは言うけど声はウンディーネギルディの時のものだ。 それに体格だってウンディーネギルディの時と同じだ。

 私が異世界に行っている間に何が!?

 

「ホワイト━━━━!!」

 

 私を掴むセドナギルディに、遠くからシャドウがアンリミテッドチェインとなって特攻してきた。

 おかげで私はセドナギルディから解放される。

 

「ルナティックウゥ!クライシス!!」

 

 すぐさまシャドウはブレイクレリーズすると、セドナギルディに向かって必殺技を放ち、見事に命中した。

 

「黒羽!」

 

 しかし無理をしていたのか、シャドウはアンリミテッドチェインが解除されると同時に変身も解除されその場で気を失ってしまった。

 

「あーあ、無理するから。 今さらそんな技効くわけないのに」

 

 煙の中から現れたセドナギルディは余裕ある笑みを浮かべる。

 

「ま、オルトロスギルディが弱ってなければやばかったかもしれないけど」

 

 弱っていたとはいえ、アンリミテッドチェインの必殺技を受けてこんなに余裕があるなんて……!

 私は立ち上がり、セドナギルディと対峙した。

 

「志乃、黒羽をお願い」

「う、うん……」

「それと……みんながどうなったのかわかる?」

 

 志乃や黒羽は確認できたけど他のみんなが気がかりだ。

 

「私とフレーヌと嵐は避難誘導してて……でもレッドとシャークギルディは、わかんないの……」

「そっか……」

 

 とりあえず三人が無事なのはわかった。

 二人が私とセドナギルディから充分離れたことを確認すると、スモールバスティラスをしっかりと握りしめた。

 

「心配してんの? だーい丈夫、まだ誰の属性力も奪ってないから」

 

 普通のエレメリアンなら信じられるけど、セドナギルディがそう言っても素直に受け取っていいのか。

 

「それで、あんたに何があったの?」

「……私が女神の吐息(ゴッデス・ブレス)を使って、セドナギルディに進化したのは知ってたよね?」

 

 笑みを浮かべながら弾む声で話すセドナギルディは余裕そのものだ。

 一応知ってはいるけど首肯はせず、私は黙ったままセドナギルディを見据えた。

 

「簡単な事。 この姿はセドナギルディの……私の最終闘体よ」

「っ!?」

 

 驚きのあまり声が出ない。

 あの圧倒的な強さを見せていた巨大なセドナギルディは最終闘体じゃなかったのか……!

 声が出ない私を意に介さず、セドナギルディは笑いながら話し続けた。

 

「ウンディーネギルディからセドナギルディへと新たなエレメリアンへ生まれ変わった事で、私は''セドナギルディ''の最終闘体になる事ができた……!」

 

 セドナギルディは手を空へ掲げ、喜悦に満ちた表情を見せる。

 見た事はないけど、マッドサイエンティストはあんな表情をするんだろう。 暗黒と狂気に満ち溢れたあの笑顔を。

 

「正直、この姿になる事を計算していたわけじゃない。 最後は私の誇ってきた科学の力ではない進化なんて……皮肉なもんねえ!!」

 

 瞬間、セドナギルディを中心として衝撃波が走り、辺り一面に転がった石を吹き飛ばしていく。

 セドナギルディの周りに紫電が迸ると、ゆっくりと歩を進めはじめた。

 この地球が、セドナギルディに怯えているかのように上空では幾多もの稲妻が走り、近くへ落ちてくる。

 私は思わず、半歩後ろに下がってしまう。

 強い。今までのエレメリアンとは桁違いに……間違いなく強い……!

 

「よせ、セドナギルディ!!」

 

 セドナギルディが背後から呼び止められ、振り返るとシャークギルディが誠の貧乳真理(トライデント)を杖代わりにして立っていた。

 シャークギルディ……かなり激しい闘いをしたようで全身ボロボロだ。

 呼び止められたセドナギルディは溜息をつく。

 

「まだやる気なの。 もうやめたら? 残り少ない時間、苦しむのは嫌でしょ」

 

 残り少ない……そうか。

 シャークギルディもヴァルキリアギルディの力で蘇っているなら彼女がいなくなった今、クラーケギルディやリヴァイアギルディのように……消えてしまうんだ。

 しかも、もう時間がない。

 

「お前のやり方は、我らの意志に反している。 一部隊の隊長として見逃すわけなかろう!」

 

 シャークギルディは一瞬でセドナギルディに接近すると自らの真理を、誠の貧乳真理(トライデント)を振るう。

 風のように早い刺突も、その槍がセドナギルディに当たる事はなく全て避けられていく。

 

「海の勘違い君が、その海の女神に逆らうとどうなるか、教えてあげる必要があるみたいだね」

 

 シャークギルディの渾身の突きを避けたセドナギルディ。

 そして優しく、シャークギルディの額に指を一本つけると━━━━

 

「ぐあああああああああああああ!!」

 

 その様はまるで中国武術における発勁のよう、それだけでシャークギルディは地面を抉りながら吹き飛ばされていく。

 

「シャークギルディもオルトロスギルディも、勿論テイルレッドもみーんな疲れてるから相手にならない。 ホワイトは……どうかしらねえ」

「この!」

 

 怖がったところで何が変わるわけでもない。

 私はセドナギルディに向かって疾駆するとスモールバスティラスを突き出す。

 

「わかるわかる、焦っちゃうよねえ。 でも冷静さを欠いたら余計苦しくなるだけ」

 

 なんとセドナギルディは私の刺突を避け楽々穂先を摘むと、いくら力を入れようが槍が動かなくなってしまった。

 

「ダメね、生身で異世界へ行ったせいでかなり消耗してる。 絶望の涙は早いとこ見られそうだわあ」

 

 穂先を握り込むと、氷細工のようにあっさりとスモールバスティラスは粉々に砕け散ってしまう。

 セドナギルディは掌に残った破片を払い撒くと、ウンディーネギルディの時に使っていた鞭をその手に持つ。

 

「フフフ……絶望の涙を見せなさい。 ティィィアアア━━━━!!」

 

 その攻撃は本当に鞭を使っているのか疑うくらいだった。

 どれだけ離れようともしつこく鞭は伸びてきて私を叩きつける、近くに寄ろうと同じだ。 ある時はその辺に転がっている大岩を鞭で絡め取り投げつけてくる事もあった。

 防戦一方のまま、どんどん時間は過ぎていく。疲労がたまり、私はだんだん鞭を防御する事が出来なくなっていった。

 そして━━━

 

「っあ!!」

 

 強烈な一撃を浴びせられた私はゴロゴロと地面の上を転がる。

 まずい……本当にこのままじゃ負けてしまう……!

 心で強く思っていてもダメージが蓄積された体は言う事を聞いてくれず、とうとう立ち上がれなくなってしまった。

 

「あらあら……涙を見せてくれる前に気絶しちゃうの?」

 

 セドナギルディの言う通り、私も段々と意識が遠のいていくのを感じていた。

 ダメ! ここで私が気絶したら……セドナギルディの……!

 

「やめなさい!」

 

 歪んでいく視界の中、突如私とセドナギルディの間に割り込んだ者がいるのがわかった。

 

「フ、フレ……ヌ」

 

 ヘンテコなお面を外し、素顔となったフレーヌが私の前で両手を広げている。

 守らないと……守らないといけないのに……。

 

「私は……責任を果たします……!」

 

 フレーヌの言葉を最後まで聞いたところで、私は意識が遠のき……ついに失ってしまった。




原作十三巻のラスト……大好きです。
そして気づけば文字数も30万を突破していました。 (ラノベだったらおおよそ三巻くらいでしょうか……)
不定期にも関わらず、未熟な文章の小説を読んでいただきかばかりか感想まで頂けるのは感謝しかありません!
皆さま、ありがとうございます!
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