私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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セドナギルディ(最終闘体)
身長:177cm
体重:221kg
属性力:涙属性(ティアー)

ウンディーネギルディがゴッデスブレス(女神の吐息)を使って進化したセドナギルディの最終闘体。 五十メートル以上あった体躯はウンディーネギルディの頃と全く同じになったが、体が身軽になった分だけ色々な動きができるように。 ウンディーネギルディの時に使用していた鞭を操り、戦士を圧倒する。


FILE.65 乗り越え、聖なるクリスマスバトル!

 意識を失ったテイルホワイトの前に立ち、進路を塞いだフレーヌ。

 怯える様子を微塵も感じさせず、真っ直ぐセドナギルディを見据えていた。

 その様子を見たセドナギルディは腕組みをして、興味ありげにジッとフレーヌを観察すると何かを確信したのか笑みを浮かべる。

 

「ふーん、サポーターさんか」

「……」

 

 看破されてもフレーヌは表情一つ変える事なく、両手を広げている。

 ホワイトとエレメリアンの闘いに割って入り、自分の立場がバレるリスクは充分承知していた事だ。

「裏に異世界出身の人間がいるのは予想ついてたけど、こんな子供がねえ。 あの装甲……サポーターさんが作ったの?」

 

 後ろに倒れるホワイトの装甲を指差すセドナギルディ。

 敵でありながらも純粋に科学に興味を持っているという事を理解したフレーヌはようやく口を開いた。

 

「作ったのは私だけど、オリジナルじゃない。 残された設計図を元に作ったただの真似事よ」

「じゃあオリジナルは……テイルレッド達のほうかな?」

「……っ!」

 

 少しだけフレーヌの表情が崩れたのをセドナギルディは見逃さなかった。

 

「設計図があるとはいえ、それを完成させるのは優秀なことよ。 人間だけどアルティメギルに招待したいくらい」

 

 それが本心なのか、弄んでいるのかフレーヌには知る事ができず、再び黙り込んだ。

 

「でも残念。 私より優秀な科学者がアルティメギルにいると、色々不都合なの。 アルティメギル入りは諦めてくれる?」

 

 そんな事を言われなくても入る気など全くないが、勝手に解決してくれた事に少しだけ安心するフレーヌ。

 このままではすぐセドナギルディは動き出すと考え、今度はフレーヌから話しはじめた。

 

「あなたは間違っている。 科学を己の欲望のためにしか使っていない……! どうして悪い使い方しか出来ないの!?」

「悪い使い方ねえ……。 そんなもの個人の考えでどうとでもなる事じゃない? 少なくとも、私は悪い使い方をしてるとは思ってないし」

 

 フレーヌの本音に、当たり前の事をしているという気軽さで即答した。

 

「サラマンダギルディや自分の部下を無理な最終闘体にしたのも悪くないと言うの!?」

「うん」

 

 同じ科学者なら少しだけ話が通じるかもしれないと思っていた自分に腹が立ったフレーヌは、拳をグッと握りしめ歯をくいしばる。

 このマッドサイエンティストは何がなんでも倒さなければいけない。 そう考え、次の手を練っていたが、とうとうセドナギルディは動き出す。

 

「はあ……私相手に時間稼ぎしたいなら涙ぐらい流さないとダーメ」

 

 両の手の人差し指交差させ、バツ印を作る。

 

(いえ、これだけの時間があれば充分なはずです……!)

 

 フレーヌが身構えると同時に、今度は指で丸を作るとそこから属性力を奪う光輪が現れた。

 

「サポーターさん属性力を感じないのは何かで隠してるからだろうけど……この輪にはそんなもの通じないよ。 ふふ、ツインテールの戦士のサポーターさんなら、ツインテール属性の属性力は低くないはず」

 

 フレーヌに標準を合わせ、無慈悲に光輪を向かわせるその時、セドナギルディの背後で強烈な炎が上がる。

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

 炎柱を斬り裂き、テイルレッドが現れた。

 ブレイザーブレイドをセドナギルディの無防備な背に振り下ろした。

 しかし━━━━

 

「━━━━何!?」

 

 背を向けていたセドナギルディは一瞬でテイルレッドに相対し、ブレイドを片手のみで受け止めていた。

 

「前は油断して痛い目見たからね。 テイルレッドも大分お疲れなのに、必死で可愛いわねえ!」

 

 セドナギルディが腕に力を入れると、ブレイドはパキッと音を立てて亀裂がはいる。

 

「俺はとっくにそんなのは聞き飽きてんだ! ブレイレリ━━━━━━━━ズ!!」

 

 ブレイドは掴まれながらも、中央から炎が噴き出す。

 炎が噴き出しているにも関わらず、セドナギルディはブレイドを受け止め続け、必殺技を身に受けずにいた。

 しかもレッドのする必死の表情とは対照的に、セドナギルディには余裕さえ感じられる。

 何十メートルか離れた所で、痛みを堪えながら立ち上がったシャークギルディがゆっくりとセドナギルディへ歩み始めた。

 

「セドナギルディ、貴様の同胞を物のように扱うやり方……気に食わん!!」

 

 最終闘体のメガロドギルディになると、彼もまたセドナギルディへ突貫する。

 

「このような闘いは望みではないが……!」

 

 セドナギルディの背後に回り込んだメガロドギルディは誠の貧乳真理(トライデント)をその手に顕現させる。 そしてそのまま、セドナギルディの背に向かって槍を突き出した。 だが、メガロドギルディの渾身の突きもセドナギルディは空いていた右手で楽々と受け止めてしまう。

 

「無駄だって」

「く、おのれ!!」

 

 槍を全く動かせなくなったメガロドギルディは仕方なく手を離し、今度は拳を振りかぶる。

 

「うわぁ!」

 

 それを見たセドナギルディは、左手で受け止めてたブレイドを強く振るとレッドを吹き飛ばして回転させ、柄を握った。

 未だ炎が噴き出ているそのブレイドを、メガロドギルディへと振り向きざまに真一文字に一斬、辺りに炎が弾けた。

 

「ぐあああああああああああ!!」

 

 ダメージを受け、シャークギルディへと戻りながらその場に倒れこむ。

 

「シャークギルディ!!」

 

 レッドの悲痛な叫びを聞きながら、セドナギルディは誠の貧乳真理(トライデント)を真っ二つにへし折り、元の形へ戻ったブレイドを興味深く観察しはじめた。

 

「さすが私に傷をつけた武器、なかなかの威力ね。 少し使わせて貰おうかなぁ」

 

 セドナギルディは面白半分にブレイドを振り回す。

 目一杯ブレイドの感触を楽しんだ後、セドナギルディは倒れているシャークギルディに近づくとしゃがみこんだ。

 

「すぐに消えてしまうのに、最後まで痛い目にみたいなんてね。 別にあなたの涙には興味ないから私としては大人しくしてくれてたほうが良いんだけどな」

 

 すぐ近くにいてもシャークギルディは手を出すことができずに、ただセドナギルディの事を睨み続ける。

 

「涙と言えばやっぱり少女でしょ? ならやっぱりそこのサポーターさんか、テイルレッドの方が私は好みなの」

 

 立ち上がりフレーヌを一瞥し、レッドへ視線を移す。

 レッドへ向けられた視線はどんどん下に下がっていき、彼女の握っているブレイザーブレイドへと向けられた。

 

「二本あったのね。 じゃあ一本貰ってもいいかな?」

「誰がやるか!」

 

 レッドが剣を上段に構え、振り下ろす。 振り下ろされた剣と全く同じ剣でセドナギルディは受け止めた。

 同じ剣と剣がぶつかり合い、周囲がどんどん陥没していく。

 剣の経験はレッドの方が長いにも関わらず、セドナギルディは何年も扱ってきたように軽く振るい、受け止めていく。

 

「いくら続けても今のあなたじゃ私には絶対勝てないよ。かなり疲れてるみたいだし、もう諦めて泣いてほしいんだけど」

 

 セドナギルディの言葉には反応せず、レッドはがむしゃらに剣を振り続けた。

 斬り上げるブレイザーブレイド、振り下ろすブレイザーブレイド。 刃と刃の撃ち合いが、その度に巨大な爆発を大気に生み出し、レッドのツインテールをはためかせる。

 しかし、最初こそ勢いでレッドが押してはいたが、徐々に劣勢になっていく。

 レッドの剣を受け止めるように振るっていたセドナギルディが、レッドより先に剣を振るいはじめた。

 激しい剣撃を目の当たりにしているフレーヌは小型のタブレットでなんとか弱点を見つけようと分析を進めていた。

 

「レッドの限界も近い……このままでは……!」

 

 後ろに倒れ、気絶したままのホワイトを見るフレーヌ。

 

「奏さん……」

 

 ホワイトはフレーヌの声に応える事は無く、目を瞑ったままだった。

 

 

 スマホで設定しておいたアラームが鳴り、私は目を覚ました。

 目覚めには効果抜群の音楽だけど、これも毎朝聞いていると不快な音として脳に記憶しかねない。 そろそろ音楽を変えるべきかな。

 手探りでスマホを見つけ、とりあえずアラームを消すとボーッと天井を眺める。

 

「私の部屋だ……」

 

 いつもの天井にいつもの壁、いつもの家具に、いつもの窓から差し込むいつもの朝日。

 うん、全てがいつも通りだ。

 なんか凄い悪夢を見てた気がする。

 夢を見ている事自体、何かのストレスだと聞いた事あるけど……そんな中で悪夢を見たらストレスが限界値を超えないか心配だ。 ま、どんな悪夢かも覚えてないし別に良いんだけどね。

 ……体も怠いし、本当ならもっと寝ていたいところだけど遅刻はまずい。 エレメリアンのせいで遅刻は何回かしちゃってるし、これ以上はいけない。

 睡魔と倦怠感に打ち勝ち、ベッドの上で上体を起こす。

 その時、視界の隅でツインテールが揺れた。

 あれ?変身中以外はツインテールにしてないはずなのに。

 確認のため少しだけ横を向く。 やっぱりツインテールだ。

 

「や」

 

 ━━━━いや違う、ツインテールにした少女が横にいた。

 

「うぇ!?黒羽!?……いや、カエデ?」

 

 ベッドの上で頬杖をつき、カエデはクールに微笑んだ。

 最初は黒羽かと思ったけど、黒羽とカエデではなんか微妙に雰囲気が違うんだよね。 だからすぐにカエデだとわかった。

 なんで私の部屋にカエデが……ううん、なんとなく察した。

 

「私の部屋じゃ……ないみたいだね……」

 

 ベッドから降りると、部屋中にヒビが入り、ガラスのような音を立てて崩れていった。

 

「理解が早くて助かるわね」

 

 部屋が崩れ、周りの景色は前にカエデとあったような白い空間に変わっていた。

 いつのまにか着ていた寝間着も、私服に変わっている。

 さすがにこう何度も来たら慣れてくるもので、一息ついてから私は口を開く。

 

「私……負けちゃったのかな」

 

 ぼんやりとしか覚えてなかったけど、ハッキリと思い出してきた。

 ウンディーネギルディが進化したセドナギルディに闘いを挑んで、私は手も足も出なかった,。一方的にやられて……そして、そのまま気絶しちゃったんだっけ。

 エレメリアンにも助けてもらったのに……こんな結果になっちゃうなんて。

 カエデは腕組みをしながらキッと私をにらめつけてくる。

 その様は妙に迫力がある。

 

「負けるっていうのは今の私のような状況になるって事。今のあなたの状況で負けただなんて言うのはただの甘えよ」

 

 確かに、カエデの言う事はもっともだけど……。

 私はセドナギルディに手も足も出ず、黒羽は力尽きて倒れ、総二もシャークギルディも見なかったという事は多分同じく……。 こんな中で逆転の余地があるのだろうか。

 

「そうね、確かにセドナギルディは強いわ。 私が挑んでいたとしても絶対に勝てなかったと思う」

 

 カエデもセドナギルディの力を見ていたらしい。

 一応私のテイルギアの核であるカエデがそう言ってるレベルなんだ。 そんなレベルの相手にどうすれば……。

 歯を食いしばりながら視線を下に落とした。

 

「私じゃ勝てない。けど、あなたでも勝てないだなんて言ってないわ」

「え?」

 

 驚いて顔を上げるとカエデは抜群のドヤ顔をしていた。

 少なくとも私と会う時はミステリアスな雰囲気を醸し出しているカエデとしてはレアな表情だ。

 

「いやいやいや、カエデ見てたんでしょ? 私ボコボコにされたんだよ?」

「あんな連戦続きだったんだもの。 あなたやその仲間達はかなり体力を消耗してたわよ」

 

 確かに黒羽は体力が万全ならアンリミテッドチェインもあるし善戦できたかもしれないけど、私は結局同じ結果だろう。

 

「それに、あなたは大切な仲間から貰った最高の装備があるでしょ?」

 

 そう言ってカエデは手の上にその装備を出現させた。

 

「エヴォルブバイザー……」

 

 フレーヌが私の専用装備として作ってくれたアンリミテッドチェインのような強化形態になれるという進化装備だ。

 これを使って強化形態になれば今よりももっと強くなれれば、希望はあるかもしれない。

 でも、問題がある。

 

「使おうと思ったけど……使えなかったの」

 

 おそらくカエデは知ってるだろうけど、一応説明しておく。

 使おうとしたのはシャークギルディと闘う時だけど、多分今使おうと思っても同じ事だろう。

 

「これが使えなかった原因、私にはわかるのよ」

「原因って……」

 

 フレーヌは自分の責任と思っていたみたいだけど……。 でもひょっとしたら、私も心の底でエヴォルブバイザーを拒否ってた可能性も無くなはないよね。

 

「原因は私よ」

 

 目を伏せながら、カエデは弱々しく話した。

 流石に予想外すぎてすぐには言葉が出てこなかった。

 

「……いやいや、カエデが原因って。 まさかテイルギアん中からカエデが拒否ったとか言うんじゃないよね?」

 

 ははは、と最後に付け足し、大袈裟に両手を広げる。

 一応言っておくけどこれは私なりのジョークだ。 本気でカエデがそんな意味不明な事をしようとしたなんて思ってるわけがない。

 ほら、私が的外れな事言うからカエデもポカーンとしてるよ。

 

「よくわかったわね」

「えええええええええ!?」

 

 ポカーンとしてたのは私の言ったことがあってたからだったのか……って、そうじゃない。 なんでカエデがそんな事をするのか。

 

「あ、あなたは自分の身体に変な機械を急に着けられてビックリしないの?」

 

 顔を赤らめて言うのは誤解を招くからやめてね。

 

「ビックリするけど……そんな理由!?」

「嘘よ」

 

 流石に私は芸能人じゃないからズッコケる事は無いだろうと思っていた。 しかし今、自分でもわかるほど見事なズッコケを披露してしまった。

 私の反応を見て当初のミステリアスな雰囲気とは程遠い笑顔をカエデは浮かべた。 笑顔を見ると私達と大して歳は変わらないんだと、実感する。

 

「嘘というか、本当はそれも少しあるけど……大きな理由は他にあるのよ」

 

 しかし、直ぐに表情は暗くなり……笑みを浮かべてもそれは悲しいものにしか見えなくなった。

 私は地面にぶつけたおでこを撫でながら立ち上がる。

 理由を聞こうとしたところで、先にカエデが話しはじめた。

 

「戦闘力をあげる為には必然的に属性力を高める必要があるんだけど……これ以上あなたの属性力が上がったら私はついていけなくなってしまうの」

「ついて、いけなくなる……?」

「そう。 だから私は、怖くて……この装備を拒否してしまったの」

「属性力についていけなくなるっていうのは納得し難いけど、どうしてそれが怖いの?」

 

 カエデは身体を震わせると両手で自分を抱きしめ、か細い声で答える。

 

「━━━━私という存在が消えてしまうから」

 

 あまりの衝撃で声が出なかった。

 こんな時に私は、なんて言葉をかけていいのかわからず黙りっぱなしになってしまう。

 

「正確にはこのカエデという人格が消えてしまう、だけど。 ……ツインテールを守る為に偉そうにしてきた私が、自分が消えるのが怖くてツインテールを助ける力を拒否するなんてとんだ傑作よね」

 

 自嘲気味に笑うカエデの目元に薄っすらと涙が見えた。

 カエデが涙を流して泣いている。

 嗚咽を漏らし、カエデは自分の顔を手で覆うとその場にちょこんと座り込んでしまった。

 

「本当にごめんなさい……」

 

 今までミステリアスな雰囲気を纏っていた彼女を見て、私は異世界の人は自分と違うと感じていた。 フレーヌだって年齢の割に色々なことを知ってるし。

 だけど、今目の前で涙を流す彼女は私と同じだ。 そう、私と変わらない同じ女の子なんだ。

 

「謝る事なんてないよ」

 

 両膝を地面につけ声をかけると、カエデは目に涙を浮かべたまま顔を上げる。

 

「寧ろ良かったよ。 私は……自分が消える経験なんてないから曖昧だけど、それが怖い事なのはわかるし」

 

 仮に自分が他人のパワーアップのために犠牲になってくれなんて言われてもすぐ首を縦に振る事なんてできないと断言できる。

 

「それに私は、誰かを不幸にして自分の幸せを掴むのは……違うって思う」

 

 カエデは何を思うのか、再び顔を俯かせる。

 

「私は、あなたの世界のツインテール……好きなの」

「え?」

 

 カエデは立ち上がり後ろを向いて呟いた。

 後ろ姿だけど、さっきの怯えていたカエデとはまるで違うように見える。

 

「消えるのは怖いわ。 でも、あなたの世界のツインテールをあなたと一緒に護れるのなら私は……」

 

 手元にあるエヴォルブバイザーを見つめるカエデ。

 私はすぐにカエデの考えを察した。

 

「私言ったじゃん!誰かを…カエデを不幸にしてまで幸せを掴みたくないって!」

 

 間違いない。

 カエデは自分を犠牲にしてエヴォルブバイザーを使用できるようにするつもりだ。

 

「ダメ!」

 

 思わず私はカエデの腕を掴む。

 カエデ自身が怖いと言っていたんだ。 フレーヌには悪いけど、無理にバイザーを使うことなんてない。

 

「エヴォルブバイザーじゃなくても絶対にセドナギルディは倒すから! みんなと協力して倒すか私がもっと強くなるか、それかフレーヌに新しい武器を……!」

「そんな時間はないわ。セドナギルディはこのまま世界のツインテール属性を奪っていこうとするはず」

 

 正直、私もわかっていた事だ。

 今までの私じゃセドナギルディには絶対に勝てないし、頼れるのはまだ私の知らない未知の力しかないという事も。

 

「私は、あなたの世界のツインテールを護りたい。 そう思ったら……恐怖を吹き飛ばす事ができたわ。 それと、あなたの優しい言葉のおかげでね」

 

 自分の胸に手を添え、目を瞑ったカエデは優しく微笑んだ。

 嘘偽りの無い、正真正銘の本心だと感じるには充分過ぎる笑顔だ。

 

「それに気づいたわ。不幸になるんじゃ無い……。あなたを支え、今まで以上に力になってツインテールを護れるなら……それは私の幸せ」

「カエデ……」

「それに、たぶん属性力がこうやって話したりする事が異常だったのよ。 私は本来の形に戻るだけだから」

 

 気づけば先程のカエデと同じように私の頰に涙が伝っていた。

 私に近づき、カエデは優しく微笑みながら右手で優しく頰に触れてきた。

 温かい……。

 カエデの手からくる温かさは、まるで母親に触られてるような心も温かくなる、とても心地のいいものだった。

 

「私はこの世界のツインテールが好き。 エレメリアンを全て倒してくれなんて言わないわ。 あなたの世界を護ってくれるだけでいいから……」

 

 カエデが左手持っていたエヴォルブバイザーが光りだす。

 それと同時にカエデ自身も光りはじめ、段々と薄くなっていく。

 

「━━━━頼んだわよ。最高のツインテール戦士、奏ちゃん」

 

 頰に触れていた手も光となって消え、残ったエヴォルブバイザーが引き寄せられるように私の手元へやってきた。

 白い空間全体も強く光りだすと、私は段々と飲み込まれていく。

 心地いい光を浴びながら……意識が現実に引き戻されていった。

 

 

 テイルレッドの限界は近かった。

 ブレイザーブレイドを振るうセドナギルディに追いつけなくなっていき、僅かながらダメージを受け続けている。

 

「このままでは……!」

 

 レッドの様子を見ていたフレーヌは意を決して立ち上がる。

 いくら自分に闘う力が無いとってもこのまま傍観しているだけでは収まらなかった。

 タブレットを小型化し、内ポケットにしまい込み走り出そうとする。

 

「っ!」

 

 走り出そうとしたフレーヌの肩を誰かに触れられ、驚いて振り返る。しかし、そこにフレーヌに触れた人物はいなかった。

 

「奏……さん…!?」

 

 先程まで意識を失っていたホワイトが居なくなっていた。

 フレーヌはすぐに事態を把握して再びタブレットを取り出し、セドナギルディの分析を進めはじめる。

 

「ティィィアッ!!」

「ぐっ!?」

 

 そしてとうとう、ブレイドはセドナギルディによって弾かれ、力なく宙を舞う。

 

「いただき、究極のツインテールっ!」

 

 身を守る術のないテイルレッドへ躊躇なく振り下ろされる審判の刃。

 思わず目を瞑るレッド。

 セドナギルディが勝利を確信し、笑みを浮かべたその時、鈍い金属音が周囲に響き渡る。

 

「なに!?」

 

 まず驚きの声を上げたのは正面にいるセドナギルディ。

 

「あ……」

 

 続いてフレーヌがその姿を横から確認した。

 レッドも後ろから刮目した。

 その目に映るは真白きツインテール。

 唯一この世界で選ばれたツインテールの戦士の背中がそこにあった。

 

「……テイル……ホワイト…………!?」

 

 

 セドナギルディの振り下ろしたブレイザーブレイドをギリギリアバランチクローで防ぎ、どうにかテイルレッドを守る事が出来た。

 私が意識を失っている間、色々な事があったらしい。

 セドナギルディはレッドの武器を使っているし、シャークギルディはボロボロの状態で横たわっている。

 私のせいで……!

 この責任は、私自身でとってみせる!

 アバランチクローで押し切るとセドナギルディは大きく跳躍し、距離をとった。

 

「ホワイト……」

「ありがと、レッド。それとごめん、一人で闘わせるような事して」

 レッドは特に反応せず、口をポカンと開けたまま私を見続けている。

「……」

「あの……恥ずかしいんだけど……」

「わ、悪い!」

 

 慌ててレッドは目を逸らした。

 裸見られてても、なかなか露出の多いこのスーツをジッと見られると恥ずかしい。 ……寧ろ裸見られてるから変に意識しちゃってるのかも知れない。

 多分、私の顔も赤くなってると思う。

 気を取り直し、セドナギルディと対峙した。

 

「何……何なの!? さっきあなたは負けたはず……何で立っていられるわけ!?」

 

 セドナギルディは私がここでこうしている事が予想外過ぎるらしい。

 そりゃそうだ。 私だって、心の中でカエデと会わなければとっくに諦めていたんだから。

 

『奏さん、平気……なんですか?』

「うん、この通り元気いっぱい」

 

 フレーヌも信じられないといった様子だ。

 体の痛みも消えてるし、闘うにはベストな状態だ。

 そう、カエデのおかげだよ!

 

「あはは、体力が戻ったところで私に勝てると思ってるわけ? 圧倒的な力の差を感じたでしょ? 涙を流しそうになったでしょ?」

 

 半笑いで問いかけてくるセドナギルディ。

 そう、流しそうになったよ。

 ううん、心の中で私とカエデは涙を流した。

 だから━━━━

 

「━━━━女の子はね……泣けば泣くほど強くなるの!」

「何ですって!?」

 

 腰に手を当てビシッと指差す。

 つまりセドナギルディの属性力とは相性抜群だってわけだ!

 腰に装着されていたエヴォルブバイザーに手を伸ばし、セドナギルディに見せつけるように前へと突き出した。

 

『いけません、奏さん! それは失敗作で使ったところで何も……!』

 

 これは失敗作なんかじゃなかったんだよ。

 カエデが私を信じてくれた。 私を信じて、カエデは私に力をくれた。

 

「今ならわかる、使いこなせる!」

 

 刹那、エヴォルブバイザーが眩い光を放つ。

 見覚えのある、心の色の光だ。

 

「これが、私達の想い……」

 

 不意のことで警戒していたセドナギルディが、ブレイドを構える。

 

「何で……何でこんな計算外なことばかり……!? これ以上、私を狂わせないでよ!!」

 

 エヴォルブバイザーを包んでいた光が、そのなかへと吸い込まれていく。

 光が完全に吸い込まれると、バイザーは属性力をほとばしらせた。

 

「━━━━マキシマムバイザー!!」

 

 銀一色だった装備にエメラルドグリーンのラインが走り、進化した新たな装備。

 私は教えてもらった通り、再びバイザーをテイルブレスへジョイントさせた。

 閃光に怯み、嘆声をもらすセドナギルディ。

 

「まさか……!!」

 

 エレメリンクの時とも、本当の力を手に入れた時とも違う、かつてない力が身体を駆け巡る。

 リボンに、肩に、胸に、腰に、足にも。

 新たな超装甲が展開し、私のテイルギアは最高の力を手にしていた。

 属性力が余波が放たれ、大気が震えた。

 

「これが私の最高の力……(ツインテール)! マキシマムチェイン!!」

 

 セドナギルディと闘っていたレッド。

 ボロボロの状態で横たわるシャークギルディ。

 遠くで意識の無い黒羽を庇っていた志乃と嵐。

 セドナギルディから私を庇い、守ってくれていたフレーヌ。

 この場にいる全ての者が、私の変身に刮目していた。

 そして私は、今起こっている闘いを終わらせるべく、カエデとの約束を守るべくセドナギルディを見据えた。

 

 さあ、最高のツインテールの始まりだ!




どこかのレディースの先生の技と名前が被っているのは仕方がないんです…。
関係ありませんが僕がこの話で一番気に入ってるエレメリアンはオルカギルディだったりします。
覚えてない方、聞いたことない方は良ければFILE.18から19までどうぞ!

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