私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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FILE.66 終わりと始まり、聖なるクリスマスバトル!

 カエデのおかげで到達した私の最高の形。

 最高の形態を、この場にいる全ての人が刮目していた。

 新たな装甲は、随所にエレメラルドグリーンのラインや模様が入っており、今までのテイルギアとはまた違った印象を与える。

 私は溢れ出る属性力を何とか抑えこみ、心を落ち着かせる。

 

『フレーヌ、もしかしたら奏……!』

『ええ、エヴォルブバイザーをマキシマムバイザーに進化させ、ついに強化形態のマキシマムチェインに変身したんです!!』

 

 志乃たちの元へ移動したらしく、通信機越しに二人の話し声が聞こえてくる。

「あれが、テイルホワイトのツインテールか……!」

 

 シャークギルディもヨロヨロと起き上がり、息を切らしながら嘆声をもらした。

 

『ちょっと! 既にエヴォルブバイザーで商標登録してるのに! 早くマキシマムバイザーで出願しないとまずいわよ!!』

 

 若干一名、商業の事しか考えていないツインテール戦士がいるけど。

 いつの間に起きたのかと思えば黒羽はまったく……。やっぱり姿は同じでもカエデとは全然違う。

 初めて会った時は黒羽もミステリアスな雰囲気あったんだけどなあ。

 

『あ、あとキャッチコピーも早く考えないと玩具会社に先越されるわ!』

 

 そこまで元気ならセドナギルディと闘うの手伝ってはくれませんか。

 まだ何かごちゃごちゃ言っていたみたいだけど、途中で通信が切れたのはおそらくフレーヌが気を使ってくれたんだろう。

 ノイズが無くなり、改めてセドナギルディと対峙する。

 今の私たちの状況を表すように、曇っていた空は晴れていき、青空が広がりはじめていた。

 

「先程とは比べ物にならない属性力……。まったく、こんな事ならさっさと属性力を頂いておくべきだったな」

 

 そう、セドナギルディが自分の強さを驕っていたおかげで私はマキシマムチェインになる事ができた。

 もし相手がセドナギルディではなく、例えばシャークギルディだったら気を失った時点で私はとっくに負けていただろう。

 

「また涙が似合いそうな顔になったね……! 強くなろうが絶対に私の前で泣かせてみせる! ティィィィアッ!!」

 

 一瞬で間合いを詰め、セドナギルディが問答無用で肩口へと振り下ろしてきたブレイドを素手で受け止めた。

 

「やるねぇ!!」

 

 左手でブレイドを受け止めている間、右手に拳を作ると無造作に繰り出す。

 

「ぐうぅぅ!?」

 

 咄嗟に刀身で防御しようとしたセドナギルディだが、私の右ストレートにブレイドは耐え切れずに砕け散りそのまま胸元へ命中。

 ブリザードがセドナギルディを取り巻いて凄まじい勢いで吹き飛ばしていった。

 凄い力だ。しかしいくら力が漲るとはいえ、あそこまで簡単に砕けるのはおかしい。どうやらあのブレイド……ヒビが入っていたみたいだ。

 セドナギルディは柄だけになったブレイドを一瞥すると投げ捨てる。

 

「ふん、私だって今まで本気出してなかっただけだから!」

 

 セドナギルディが今まで見せてきた表情がついに崩れた。

 本気を出していなかったというのは負け惜しみでも何でもなく事実なのはわかってる。

 私もまだセドナギルディの本気は見ていないけど、今までのが遊びなら……実力は……!

 一瞬の間を置いて、私とセドナギルディは互いに向かって疾駆する。

 

「ティィィィィィアッ!!」

「たああああああああ!!」

 

 互いの右手同士がぶつかり合うと、大きなクレーターを作り、衝撃波で周りの岩が吹き飛んでいった。

 互角だ……!

 単純に力だけなら、私とセドナギルディは全くの互角だった。 勿論、それは私にとっては驚くべき事であるのは間違いない。

 マキシマムチェインになる前は、本気を出していなかったセドナギルディに手も足も出なかった。 実力に大きな差があったのは言うまでもなかったのだ。

 しかし、その実力の差はマキシマムチェインになる事で埋まった!

 ぶつかり合った拳から紫電が走る。

 私もセドナギルディも、一瞬でも気を抜いたら押されてしまう。

 そんな中、セドナギルディは次の攻撃をするがために左手を拳にする。

 

「まだまだ……私の力は、ツインテールはこんなものじゃないっ!」

 

 セドナギルディが繰り出した左の拳を避けると、そのまま腕を掴み、一本背負いのように投げ飛ばす。

 そのまま、素早くセドナギルディに接近し、両足でドロップキックをお見舞いした。

 

「こんのおぉぉ!!」

「!?」

 

 地面を抉りながら転がっている中セドナギルディは鞭を握り、私の足に絡ませそのまま投げ飛ばす。

 なんとか空中で体制を整え、上手く着地出来たのもつかの間、セドナギルディは遠距離から自在に鞭を操り私を追い詰めていく。

 

『奏さん、遠距離ではセドナギルディが有利です! 近距離での戦闘を行ってください!』

「わかった!」

 

 フレーヌのアドバイスをすぐに実行する。

 上から横から、ある時は下から来る鞭を避けながらセドナギルディへと近づき私の腕が届く距離まで接近した。

 

「ひっかかった!!」

 

 なんとセドナギルディは鞭を手繰り寄せると、自らの手に巻きつけ、手刀を繰り出す。

 

『奏さん!』

 

 その瞬間、周囲に鈍い音が響きわたる。

 避ける暇など無かった。

 セドナギルディは勿論、致命的な一撃を与えただろうとニヤつくのが見えた。

 だが、それはすぐに驚愕の表情へと変わる。

 そう、避ける暇が無いなら受ければいいだけの事だ!

 

「━━━━アバランチクローユニバース、カッコいいでしょ!」

 

 私がマキシマムチェインとなった事で、私が使っていた武器であるアバランチクローも強化されていたんだ。

 元のクローと大きな違いこそ無いが、手甲が少しだけ大きくなり、マキシマムバイザーに入っていたエメラルドグリーンのラインが稲妻のように走り、荘厳さが増していた。

 直ぐに、左手にもクローユニバースを装備し、下段から斬りあげた。

 

「こうなったら……!!」

 

 それを上手くかわしたセドナギルディは、手の中に黒い渦を作り出した。

 

『これは……セドナギルディが取り込んだ黒エレメリアンを生成しています!』

「え、ヴァルキリアギルディだけが作れるわけじゃ無かったの!?」

 

 黒い渦から次々と黒エレメリアンが創り出され、どんどんこちらに向かってくる。

 だけど、今更黒エレメリアンが出てきたところで全然怖くない!

 おおよそ百体くらいだろうか。 向かってくる黒エレメリアンに対して、クローユニバースで渾身の一閃。

 拳と同じようにブリザードを伴い、黒エレメリアンを一瞬で撃破した。

 

「こうなったら……本気の本気を見せてやる!」

 

 セドナギルディはもう一本鞭を出現させると同じように腕に巻きつけ手刀とし、両腕を振りかざしながら迫撃してきた。

 クローユニバースと手刀を打ち合わすたびに、その余波が周囲に飛び散り岩を溶かしていく。

 

「私はようやくここまできたの……! ここから私は這い上がる! ここでテイルホワイトを倒す事で……私は最高の科学者なるんだから!! 私の発明が確かなものだと証明してみせる!!」

「あんたほどの科学者なら……人間から属性力を奪わなくてすむ方法を模索できんじゃないの!! そうすれば少なくとも私達人間にとっちゃ、あんたは最高の科学者になれるのに!!」

「うるさい!!」

 

 クローと鞭がぶつかり合い、周囲にソニックブームが轟く。

 

「アルティメギルの科学者の作戦を後追いなんかして……最高の科学者になれるわけないじゃない!!」

「うっ……うるさあぁぁいっ!!」

 

 セドナギルディは激昂し、両腕を振り下ろす。

 私はそれを交わすと大きく後ろへ跳び、一旦距離をとった。

 

「悪の科学者の後追いなんてやめなよ! 私はたくさんのエレメリアンと闘ってきた、中には外道な奴もいたけど……きっと多くのエレメリアンは人間から属性力を奪う以外の方法があるならそっちを選ぶはずなのに!」

「それはあなたがそう思ってるだけでしょ。私はそうは思わないし、アルティメギルの上を目指していく! そのためにあなた、テイルホワイトは邪魔でしかないの……邪魔なの!!」

 

 地面を蹴り、一瞬で眼前へと迫ったセドナギルディは再び両腕を振るう。

 それに合わせクローユニバースを打ちつけると、大気をプラズマ化させ周囲の地面を抉り上げていく。

 セドナギルディはなおも乱撃し、周囲の残状を止める事なく加積させていく。

 

 

「あれが……進化したテイルホワイトのツインテールか!」

 

 テイルレッドはフレーヌ達の近くへ移動し、飛んできた岩を砕きながらホワイトを見つめていた。

 セドナギルディの攻撃を受け止めた衝撃で地面は陥没し、大きなクレーターを作り出す。

 海の神が振り下ろす鉄槌は大地を突き抜けてしまいかねないものだった。

 テイルホワイトが呼び起こしたか、先程まで晴れていた空に分厚い雲がかかり勢いよく雪が降りはじめる。

 

「皆さん、この場にこれ以上いては危険です。すぐさま私が皆さんを基地に転送します」

 

 フレーヌがタブレットを操作しようとしたが、その腕が掴まれた。

 

「フレーヌは残る気なんでしょ……。 なら二人を放っておいて私達だけ安全な所になんかいられないよ!」

「志乃さん、まずは自分の身を案じて下さい。 それに私達がいる事でかえって奏さんの迷惑になる可能性もあります」

 

 志乃を見ずにタブレットを操作しながらフレーヌは淡々と答えた。

 

「そんな事ないもん!」

「どうしてそんな事がわかるんですか」

 

 少しだけ苛立った声を出し、志乃に視線を向けた。

 

「だって……」

 

 言葉が詰まり、目を伏せた志乃を見てフレーヌは再びタブレットに視線を落とした。

 これ以上、彼女らを危険な目に合わせるわけにはいかない。 その思いで、転送を開始しようとした。

 

「だって!」

 

 その指は再び志乃によって止まる。

 立ち上がった志乃をフレーヌは見上げた。

 

「━━━私は奏と親友だから!!」

 

 自信満々に言い放った志乃はジッとフレーヌを見据えた。

 予想外の言葉にフレーヌは開いた口が塞がらない。

 

「え、いやいや! それはわかってますけど……」

「あははははっ」

「え、黒羽さん?」

 

 狼狽するフレーヌの横で黒羽が大声をあげて笑った。

 

「そうね、確かにその通りだわ。これは流石にフレーヌでも反論出来ないわね」

「え、いや……」

 

 黒羽は志乃の肩に手を乗せる。

 

「残りましょう、みんなで。 ホワイトの勝利を見届けるのよ」

「うん!」

 

 志乃が嬉しそうに首肯すると、続いて孝喜もレッドも同じように首を振った。

 未だ不満げなフレーヌへ、黒羽が視線を送る。

 

「フレーヌ、いいかしら?」

「仕方ありませんね……」

 

 大きなため息を吐くと、フレーヌは内ポケットから拳銃のようなものを取り出し、真上に発射した。

 空中で球が弾け、志乃達全員を包み込みドーム型の天井が作られる。

 

「そのかわりこのドームから出ないでください。 このドームは少しの衝撃なら弾けますし雪もしのげますから」

「わー! ありがと、フレーヌ!」

 

 笑顔でお礼を言う志乃を見て、ようやくフレーヌは小さく微笑んだ。

 だが、すぐに真剣な表情へと変わると視線をタブレットへ落としマキシマムチェインの分析をはじめた。

 エヴォルブバイザーではなくなってしまった今、ホワイトの力はフレーヌにとって完全に未知の領域だ。 一刻も早く、調べる必要があった。

 

「これは……!」

 

 マキシマムチェインを分析した結果、フレーヌは血相を変えホワイトへ通信を行った。

 

 

 無限に続く攻防の中、フレーヌからの通信が入り一旦セドナギルディと距離をとった。

 幸いにもセドナギルディも疲れが出てきているようですぐに向かって来ることはなさそうだ。

 

『奏さん、分析結果が出ました!』

 

 恐らくはこのマキシマムチェインについてだろう。

 

『マキシマムチェインはバイザーから発生する強力な属性力を全身に流動させる事で成り立つ形態です。 それはマキシマムチェインに変身している限り発生し続け、長時間戦闘が続くほど、奏さんの属性力はどんどん上昇していきます』

 

 そういえば、私全然疲れてない。 あれだけ長い時間クローを振っていたにもかかわらず、だ。

 フレーヌの分析結果が正しいなら、時間をかければかけるほど私が有利に闘えるという事だろう。

 このまま時間を稼ごうと思ったその時、再びフレーヌから通信が入ると、その考えは間違っていた事に気づく。

 

『しかし……あまり時間をかけすぎると強力な属性力に奏さん自身が耐えられなくなってしまいます』

「私が?」

『はい。テイルギアには使用者の命を守るためのプロテクトはしていますのでその心配は薄いですが、そのかわり変身が強制的に解除されてしまう可能性があります』

 

 この場合の変身解除というのは、おそらくテイルホワイトでいられなくなるという意味だろう。

 

『タイムリミットがいつなのか、正直私にもわかりません。 長時間闘い続けるのは危険です!』

 

 元々テイルギアは安定した出力で闘える事が最大の強みだった。

 そのリミッターを外し、出力をさらに上げる装備を使ったんだ。 テイルギアや、私に影響があるのはなんらおかしい事じゃない。

 おそらくエヴォルブバイザーはその辺りのケアはしてあったはずだ。

 

「わかった! なら私は、気合いで属性力を抑えつけてみせる!」

 

 私はフレーヌの意志に、この場にいるみんなの意志に支えられながら力を振り絞りセドナギルディへと疾駆する。

 左右のクローユニバースを打ちつけながら、体から溢れる属性力を抑えつける。

 クローユニバースを振るうたびに散らばる属性力の光は広大な宇宙に散らばる無数の星々を思わせた。

 

「あーもう、鬱陶しい!!」

 

 一際強く手刀で攻撃を弾かれるも、その力を利用して回転し、セドナギルディを吹き飛ばす。

 そしてすぐさま突貫し、武器と武器を打ち合わせていく。

 武器同士を打ちつける音が後から聞こえてくる。 音速さえも超え、私達は時の狭間で攻防を続けていく。

 

「私は、神に到達したのに!! なんでよ!? なんであなたは私と対等に闘えるの!?」

 

 確かにセドナギルディは強い。 そりゃもう、今までのエレメリアンとは比にならないくらいにね。

 だけど━━━━

 

「みんなを守りたいと、みんなの属性力を守りたいと……ツインテールを守りたいという思いが私に力をくれた! 自分の事しか考えていないあんたに、私のツインテールは負けないっ!!」

 

 みんなに支えられてここまできた。

 エレメリアンだって私の手助けをしてくれた。

 カエデはそれが幸せだと私に力をくれた。

 

「ツインテールを大嫌いと言った私を信じてくれたみんなのおかげで、今の私があるの!」

 

 だから……本当に嫌、ツインテールなんてね。

 

「私はツインテールが━━━━大っっっ嫌い!!」

 

 左右のアバランチクローユニバースが腕から外れ、一つに合体するとそのまま空中で静止した。

 

「ブレイクレリーズ!!」

 

 マキシマムバイザーを介して放たれた強固なオーラピラーがセドナギルディを捉え、拘束した。

 腰の装甲から属性力の粒子が放たれ、私は上空へ浮かび上がる。

 そのまま右足を前へ突き出すと、合体して一つとなったクローユニバースが装着される。

 腰の装甲と合わせて、渾身の一撃を叩き込むためクローユニバースからも属性力の粒子が最終噴射。

 咆哮とともに、光を纏った蹴撃がセドナギルディへ迫った。

 

「クライマックスッ!ドラ━━━━━━━イブッ!!」

 

 豪雪を吹き飛ばして星の輝きを纏いながら、鞭を破壊するとそのままセドナギルディを貫いた。

 

「凄いわね……」

 

 一言だけ発すると、セドナギルディは放電しながらその場に崩れ落ちる。

 

 テイルホワイト史上最大最悪の闘いが、ようやく決着した。

 

 

 私はマキシマムチェインが解除され、その場に膝をつく。

 

「後悔なんてするんじゃないわよ。 私を倒したことをね」

「どういう意味?」

 

 後ろから聞こえる弱々しい声を聞きながら、私は立ち上がった。

 

「私が倒れて四幹部の属性玉が全て集まった。それが何を意味するかは……お楽しみにしといてあげる」

 

 セドナギルディはそのまま爆散した。

 私は振り向くと、先程までセドナギルディのいた所に浮いている属性玉を掴み取る。

 最後に言っていた言葉の意味……どういう事だろう。

 

「テイルホワイトよ」

「シャークギルディ……」

 

 体中に傷を作ったシャークギルディがよろめきながら歩いてきた。

私の隣に来ると、視線を移して雪が積もりはじめた大地に向けられた。

 

「セドナギルディの暴走を止めてもらい感謝している」

「ま、エレメリアンを倒すのは私がこれまでやってきた事だしね」

 

 シャークギルディと同じように私も視線を移した。

 傾きはじめた太陽が赤くなり、積もった雪を照らしている。

 どうせなら……もういいだろう。

 意を決して、私は変身を解いた。

 

「それがお前の……本当の姿か」

「そう、ツインテールが嫌いだから……闘う時以外はしてないの」

 

 私の世界に攻めてきた部隊の隊長と、私を再びツインテールにした元凶とこうして隣り合って話す時が来るなんてね。

 だけど、悪い気はしない。

 

「テイルホワイトよ、我は貧乳を愛している」

 

 まーた始まった。

 エレメリアンは本当にどこまでも自分の属性力に正直すぎる。

 

「だが━━━」

 

 話が続いた事に驚いて思わずシャークギルディを見る。

 

「存外に中途半端な乳もいいものだな」

「……やっとわかった? そうそう、これくらいの大きさが一番なの」

「フッ……」

 

 世界を赤く照らしていた陽は、だんだん地平線の彼方に消えていく。

 それと呼応するように、シャークギルディが光りはじめた。

 

「お前の最高のツインテールに魅せられた。 天にいる我の部下達にも教えてやらねばな」

 

 光が強くなるのを見て私は目を閉じる。

 

「いつかまた、決着つけようね」

「ああ、楽しみにしている」

 

 目を閉じながらでもわかっていた隣からの光が消え、周囲に夜の帳が下りる。

 優しい風が頰を撫で、私の髪を揺らす。

 最後はツインテールにしとけば良かったかな、と。

 天に昇る光に言葉を残す。

 一度倒したエレメリアンをも巻き込んだ大激闘は聖夜の始まりとともに終わりを迎えた。

 

 

 世界の狭間に鎮座するアルティメギルの基地の大ホールにエンジェルギルディがいた。

 シャークギルディが座っていた椅子に腰掛け、テーブルに置かれたお嬢様キャラのフィギュア優しく撫でる姿はまるで聖母を思わせる。

 

「苦戦しているようだな、エンジェルギルディよ」

 

 大ホールの隅にある薄暗い廊下から声が聞こえると、一体のエレメリアンが現れた。

 まるで、何度も修羅場潜り抜けて来たような精悍な声だ。

 

「貴方は……どうしてこちらに?」

 

 エンジェルギルディにとっても思わぬ来訪者であったようだ。

 彼女は眉をひくつかせ、椅子から立ち上がった。

 

「聖の五界も壊滅寸前だと聞き、はるばる来てやったんだ」

 

 神の一剣とは違う、黒いローブを纏ったエレメリアンは大ホールのテーブルに近づくと興味深くフィギュアを眺める。

 

「聞き捨てなりませんわね。 聖の五界が壊滅寸前? 私がいる限り、この部隊が壊滅する事はありませんわ。……絶対にです」

 

 黒いローブのエレメリアンはフィギュアをテーブルに戻すとエンジェルギルディをフードの奥から見据える。

 

「ああ、首領様もお前を信頼している。しかし、これ以上戦士を減らすわけにもいかないだろう」

 

 ピンッと指でフィギュアを弾くとコロコロと転がり、テーブルから落ちてしまった。

 バツが悪そうに拾い上げて、再び弾くと今度はクルクルと回転しエンジェルギルディの前で止まる。

 

「サラマンダギルディ、シルフギルディ、ノームギルディを倒す戦士だ。……いや、失敬。ノームギルディはお前が粛清したんだったな」

 

 馬鹿にするように笑う黒いローブのエレメリアン。

 

「ウンディーネギルディも先程昇天しましたわ」

「ほう、奴も敗れたか」

 

 同胞が敗れた事にまるで興味がないと言わんばかりに会話を終わらせ、次の話へ移る。

 

「お前も知ってると思うが、アルティメギルにとって現在重要な事は究極のツインテールであるテイルレッドだ」

 

 大ホールのモニターにテイルレッドが大写しになる。

 

「この世界の戦士には一般兵ではもう太刀打ちできないだろう。使えないだろうが、シャークギルディ部隊には別の世界へ行ってもらい、この世界の戦士は聖の五界に任せたい」

「それが、これ以上戦士を減らしてはならないという事ですのね」

 

 腕を組み頷くエレメリアンを見てエンジェルギルディは大きく溜息を吐く。

 確かに今のテイルホワイトに一般兵では勝てない事は充分承知していた。

 しかし、聖の五界の隊員も少なくなってきているのも事実だ。

 

「それは、貴方が考えた事ですの?」

「勿論、首領様の命だ」

 

 そう言うと黒いローブのエレメリアンはフードを下ろし、素顔を晒した。

 神の聖鳥を思わせる頭部が現れた。

 しかしそれは、聖鳥の頭部を意匠とした鎧にすぎず、本来の双眸はそのすぐ下で紅い光を灯している。

 その面は精悍さを備えていた。

 

「安心しろ、この俺がこの世界に留まってやる」

 

 身に纏うローブの下から闘気のような炎が立ち上らせると、一瞬にしてローブは灰も残らず燃えつきた。

 青い炎を彷彿とさせる後頭部から生えたたてがみ、筋骨隆々な肉体に歩みを進めるたびに床を引き裂くような三本の爪、背に生えた太陽のような翼をマントのように下ろすその姿は荘厳を備え、敵を威圧するには充分だ。

 

「サラマンダギルディ、アポロギルディに、フェニックスギルディとイフリートギルディ……そして貴方、ガルダギルディ。 アルティメギルには炎自慢の方が揃っていますわね」

「アポロギルディはともかく、他の奴らとはレベルが違う」

「そのセリフも皆さん仰っていますわね」

 

 エンジェルギルディは両手を広げ呆れたと言わんばかりに首を振った。

 ガルダギルディは余裕のある笑みを浮かべるが、すぐに表情を変える。

 

「助っ人とはいえ、俺はお前に従うつもりは毛頭無い事を伝えておく。 俺は俺のタイミングでこの世界のツインテール戦士を倒させて貰うとする」

「この世界の戦士は……テイルホワイトは手強いですわよ」

 

 翼のマントを翻し、ガルダギルディは大ホールの出口へと向かい歩きはじめた。

 

「テイルホワイト……面白い。 確かに理想の''ヒロイン''だが俺の炎で溶けてしまうのは惜しいものだ」

 

 ガルダギルディが消えたのを確認したエンジェルギルディはこの艦にいる残存兵士達へ招集をかけた。

 

 そしてしばらくすると、シャークギルディ部隊の戦士は次々と別の世界へと出発していった。

 勿論、反対する者もいた。

 

「納得できません! 誇り高きシャークギルディ部隊が……諦めて撤退なんて……! シャークギルディ隊長に泥を塗ってしまいます!!」

「ウォルラスギルディ……」

 

 中でも若手で急成長を遂げていたウォルラスギルディは、首領の命令と聞かされても反対し艦に残り続けている。

 一番の古株であるサンフィシュギルディは、そんな彼の肩を叩き慰めていた。

 

「確かにウォルラスギルディの気持ちは痛いほどわかります。 しかし、別の世界へ行きそこで戦果を上げれば多少なりとも隊長は報われます。 隊長は我々が命を捨てる事を望んではいなかったのですから」

 

 拳を握りしめ、悔しさを隠しきれなかったウォルラスギルディだが、なんとか頷くと、小型の移動艇にサンフィシュギルディと乗り込んだ。

 残っていた最後の二体が出発するのを見届けると、エンジェルギルディは再び基地の中へと姿を消していった。

 

 

「奏さーん!」

 

 優しい風を受けながら歩いていると、フレーヌに呼ばれ小さく手を振り近づいた。

 近づくと、志乃がレッドに抱きついているのがわかった。

 

「紅音ー!!」

 

 しかも大声で泣いている。

 何があったんだろう……。 でも、レッドは男だからあんまし胸を押し付けるのはやめたほうがいい。

 

「実は……これを見てください」

「これって……」

 

 フレーヌの指差す方を向くと、そこには極彩色ゲートが出現していた。

 よく見ると今は人が通れる大きさだけど、段々と小さくなっているのがわかる。

 

「紅音さんが来た時と同じです。 エインヘリアルであるシャークギルディと彼がフルパワーで闘ったことにより空間が避け、またゲートを作り出してしまったんです」

 

 なるほど、志乃がレッドに抱きついてた理由がだんだんと読めてきた。

 フレーヌが同じ説明をみんなにしていたなら、レッドは自分の世界に帰るためにゲートに入ろうとしただろう。

 レッド……というか紅音と一番よく話していたのは志乃だし、寂しくて止めてるんだろうな。

 

「悪いな、志乃。俺の世界のツインテールもエレメリアンに狙われててさ」

 

 志乃の胸から顔を上げ、レッドは優しい声音で話しかけた。

 

「俺もツインテールを守らなくちゃいけないんだ」

 

 流石にエレメリアンに狙われてると言われれば志乃も止められないだろう。

 瞳に涙を浮かべたまま、ゆっくりとレッドから手を離した。

 

「ですが紅音さん。 このゲートが本当に元の世界に通じているかどうか断言できません。仮に通じているとしても生身でゲートに入るのは危険です」

 

 そういえば危険なんだよね……。

 なんか私も生身で別の世界に行ったり来たりしてるせいでそういう感覚が無くなってきてる。……レッドだって生身でこの世界に来たわけだし。

 

「いや、俺にはわかるんだ。 みんなのツインテールと想いが、俺達を結ばせてくれるってさ」

 

 私もツインテイルズの世界に行った時に、同じような思いでゲートに飛び込んだんだっけ。

 今のレッドの……総二の思いがなんとなくわかった気がした。

 

「俺のツインテールは縁だ。 だから、ツインテールが俺たちを繋いでくれる」

 

 総二の後ろにあるゲートはいつのまにか人一人がやっと通れるほどの大きさになっていた。

 総二は志乃や嵐、黒羽にフレーヌと順番に握手や言葉を交わしていく。

 そして最後に、私の前へと立った。

 

「奏のツインテール、最高だったぜ」

「最低の言葉をありがと」

 

 握手を交わし、二人で一緒に笑う。

 手を離し、総二がゲートへ振り向くとその拍子にツインテールが私の手に当たった。

 サラサラで、温かくて、想いがこもってる……これが総二のツインテールなんだね。

 そういえば、まだ言い残した事があった。

 

「ん?」

 

 ゲートへ歩く総二へ近づき、肩をトントンと叩くとこちらに振り返った。

 

「私のせいだけどさ……。 なるべく思い出さないでね……」

 

 一応他のみんなに聞こえないように口元に手を当てておいた。

 多分顔も赤いだろうからなるべく見えないようにしないといけない。

 

「えっと……おう」

 

 総二の返事を聞いた私は、小さく手を振るとみんなの元へと戻る。

 総二はゲートの前で歩みを止めると、こちらに向いてサムズアップした。

 みんながそれぞれ手を振ったり、同じようにサムズアップしたり、腕を組んでいたりと……別れの挨拶をしたのを見届けてから総二はゲートへ飛び込んでいった。

 まるで待っていたかのように、総二が飛び込むとゲートはみるみるうちに小さくなり、まもなく消滅する。

 辺りが完全に暗くなった中、私達はしばらくその場でゲートが消滅した場所を眺めていた。

 

「もしかしたら、私は間違っていたのかもしれません」

「え?」

 

 隣でフレーヌが呟いたのと同時にまた心地よい風が吹き、夜でも映えるオレンジ色の髪の毛が揺れる。

 

「私の考えでは強いツインテール属性を持つもの同士が惹かれあって、偶然この世界に紅音さんが来てしまったと思っていたんです。確証は持てませんでしたが……」

 

 確証が持てなかったから、私達には敢えて話さなかったという事だろう。

 

「もしかしたら紅音さんがこの世界にきたのは必然だったのかもしれません。この世界で奏さんに出会い、一緒にアルティメギルから守るために来てくれたんでしょう」

 

 しゃがんでから、少しだけ積もった雪を手のひらに乗せてフレーヌは呟いた。

 

「これも確証は持てませんけどね」

「そうだね」

 

 私を見上げて笑ってから、フレーヌはそっと雪を地面へと戻した。

 

 

 それからしばらく、静かな時間が流れた。

 

「さ、帰ろ」

 

 隣で涙を浮かべる志乃の手を握る。

 みんなが頷いたの後、志乃も頷き涙を拭った。

 

「では私の基地で完勝祝いとクリスマスパーティーを同時開催しましょう!」

 

 いつのまにか服の色を赤く変えたフレーヌが、いつのまにか手に持った鈴を鳴らしながら提案した。

 

「やる気満々だな、ちびっ子」

「誰がちびっ子ですか!」

 

 フレーヌをからかって笑っていた嵐は、彼女の転送装置で先に基地へと送られた。 ……本当に基地に送ったんだよね?

 

「商標の出願しないといけないけど……TVに映ってないしまだ平気よね」

 

 珍しく黒羽も乗り気なようで、嬉しそうな顔をしながらうんうんと頷いている。

 フレーヌと黒羽が、同時開催パーティーについて話し合っていると志乃が間から話しはじめた。

 

「ダメだよ二人とも。 クリスマスがどういうものか、私が徹底的に教えてあげるからね!」

 

 気づけば志乃も楽しそうに、クリスマスについて二人に説明していた。

 

「ちょっと奏ー! 会議に参加しないと好きなパーティーにできないよー!」

「はいはい」

 

 どうやら元気になってくれたみたいで良かった。

 志乃は笑顔が素敵な娘なんだから、こうでなくっちゃね。

 今日は長い一日だったなあ……。

 きっと普通の女子高生はクリスマスを満喫しているはず……!

 この後のパーティーで少しでも追いついて見せるんだから!




聖なるバトルでは別れが多くなりましたね。
やはり愛着のあるキャラクターが今後登場しなくなるのは自分的にも結構考えさせられます。

唐突ですが自分は仮面ライダータイガが好きです。
なので戦士二人の武器はクローと、斧にしていたり……。
どうでもいい話題ですみません…。
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