私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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テイルホワイト・マキシマムチェイン

エヴォルブバイザーから進化したマキシマムバイザーを用いて変身したテイルホワイトの強化形態。 鮮やかなエメラルドグリーンのラインが随所に施され、これまでの装甲とは違った印象を持つ姿となった。 この形態最大の特徴は''闘いが長引くほど強くなる''事であり、これを活かしてセドナギルディを追い込み倒す事が出来た。 しかし、この特徴は変身者自身では抑える事が出来ないため、長く使用すると強化され続ける属性力に身体が耐えられなくなり強制的に変身が解除されてしまうリスクもある。 自分の限界を把握し、使用する事が求められるハイリスクハイリターンの形態。

武器:アバランチクローユニバース 他
必殺技:クライマックスドライブ



FILE.67 奏と京華のショッピングデート

 奏の世界に停泊するアルティメギルの艦では、次に出撃するエレメリアンを決める会議が行われていた。

 エンジェルギルディが進行役となり、テイルホワイトとテイルシャドウの戦力分析をしていく。

 そのデータではシャドウにはアンリミテッドチェインの情報が載っているがホワイトのマキシマムチェインに関しては記されていない。

 セドナギルディは情報を基地に送っていなかったらしい。

 

「戦力の情報は以上ですわ。それでは次に出撃される方を……」

 

 エンジェルギルディが大ホールを見渡す。

 

「俺の出番のようだな」

 

 聖の五界の隊員しかいなくなってしまった大ホールで黒いローブを着たエレメリアンが立ち上がった。

 

「あら、早速ですの?」

 

 予想外の志願者に驚くエンジェルギルディ。

 

「今までのデータを見せてもらい、すぐにでも会いたくなってしまってな」

 

 黒いローブを脱ぎ捨て、全貌を露わにしたガルダギルディ。

 ガルダギルディが出撃しようとする事にエンジェルギルディはまんざらでもない様子だが、聖の五界の隊員の中には快く思わない者もいる。

 一人の隊員が立ち上がり、ガルダギルディの近くへ移動していった。

 

「隊長殿、助っ人の出る幕ではありませぬ! この私、ヘルハウンドギルディがテイルホワイト及びテイルシャドウの属性力を奪取して見せましょう!」

 

 燃えるような赤い目に黒い体が特徴のヘルハウンドギルディは自信満々に胸を張った。

 

「確かに貴方はかつての四幹部に負けず劣らずの実力を持っていますが……ホワイトもシャドウも強くなっていますのよ」

 

 四幹部の中では一番の実力者であったサラマンダギルディと肩を並べるとエンジェルギルディが称する程の実力を、彼は持っていた。

 今となってはサラマンダギルディよりもセドナギルディの方が実力は上になってしまったのだが……。

 

「心配は無用であります。 私とてこの世界へ来てからただのんびりと過ごしてきたわけではありませぬ」

 

 ヘルハウンドギルディは自分の席へと戻ると、ノートパソコンを立ち上げた。

 

「モケッ」

 

 パソコンから伸びるコードを渡すと、戦闘員が大ホールのモニターへ接続し、彼のパソコンに写っている画像と同じものが表示された。

ごく普通の、テイルホワイトの写真だった、

 テレビで放送された動画をキャプチャーしたものらしい。

 

「スゥゥ…………ハアアッ!!」

 

 気合いを入れると、ヘルハウンドギルディはキーボードを素早く操作。 そして、それは一瞬のうちに終わってしまった。大ホールはにわかにざわつき始める。

 

「ほう……」

 

 大袈裟に操作をしたヘルハウンドギルディへ注目が集まる中、ガルダギルディが感心したと言わんばかりに大モニターを見て頷いた。

 それに連れられ、皆が大モニターへと視線を移していく。

 

「なんと! モニターに写っているテイルホワイトがジト目に!?」

「まさか今の一瞬で編集したっていうのか!?」

 

 口々に驚きの声を出す聖の五界の隊員達。

 先程までキョトンとした顔のホワイトが表示されていたが、ヘルハウンドギルディによってその表情は変えられていた。

 パッチリと開けていた目は、俗に言うジト目へと変えられ半開きの口と相まってこちらが小馬鹿にされているような気分へもっていかれる。

 

「これが私の力であります。 自らの信仰する愛のためならば、一瞬で自らの好みの表情へ変えることができるのです!」

 

 拳を強く握ると、ヘルハウンドギルディは今まで自分が作ってきた画像を大モニター全てに表示させた。

 笑顔の画像、悲しい顔の画像、ドヤ顔の画像、無表情の画像……写っている全てのホワイトの目がジト目になっていた。

 

「いい気合いだな。了解だ、今回の出撃はお前に譲るとしよう」

 

 ガルダギルディは腕を組むと席へ座り込む。

 それを見たヘルハウンドギルディはエンジェルギルディに出撃の許可を迫った。

 

「隊長殿、私の実力を見ていただきましたか。 この私に出撃許可を! 必ず生でジト目を……違った、ツインテール属性を頂いて参ります!」

 

 微妙に本音が混ざりながらも、ヘルハウンドギルディは最後まで言い切り、トドメとばかりにもう一枚の編集画像を表示させた。

 エンジェルギルディは指を顎に当て、しばらく考え込むと頷き微笑んだ。

 

「わかりましたわ、次は貴方に出撃してもらいます。半眼属性(ハーフアイ)のヘルハウンドギルディ……期待していますわ」

「ははっ!」

 

 最後にもう一枚、画像をジト目へと編集するとヘルハウンドギルディは駆けて大ホールから出ていった。

 

 

 ヘルハウンドギルディが出撃した事で、会議は終了し、聖の五界の隊員達が退室していく。

 そんな中、エンジェルギルディとガルダギルディだけ大ホールに残り何かを話していた。

 

「どうせ貴方も行くおつもりなのでしょう?」

「ああ。 俺は一度決めた事はいかにしても実行する戦士だからな」

「そうですわね。 くれぐれもヘルハウンドギルディの邪魔はしないでくださいまし」

「善処しよう」

 

 翼のマントを翻して、ガルダギルディも同じく出撃していった。

 

「……」

 

 ガルダギルディが消えた廊下を見て目を細めるエンジェルギルディも翼を広げると大ホールから姿を消す。

 誰もいなくなったにも関わらず、大ホールのモニターにはジト目のテイルホワイトが表示されていた。

 

 

 聖なる日の聖なる闘いから一夜明け、私は今お母さんと一緒に前にみんなで来たショッピングモールを歩いていた。

 どうやら新しい服が欲しいらしく、私の意見も聞きたいとの事で半ば無理矢理連れてこられた。

 正直私も買いたいものがあったから丁度よかった。。

 だけど……実は私はお母さんと歩くのはあまり好きじゃなかったりする。

 その理由は……お母さんが元女優であること。

 私はあんまり知らないけど、余程人気だったのかこうして歩いていると必ずと言っていいほど声をかけられるのだ。

 

「もしかして渥美京華さんですか!?」

 

 声をかけてきた女の人、私とそんなに歳は変わらなさそうだけど……よく知ってるなあ。

 あ、ちなみに渥美というのはお母さんが女優をしている時に使っていた名字で、それと結婚する前の旧姓である。

 毎回声をかけられてるんだから帽子かぶったりすればいいのに、とは思うんだけどなあ。

 

「はい、渥美京華でーす!」

 

 引退後もファンに快く接しているせいか、お母さんのファンクラブは今も継続しているらしい。

 確か女優業は十四歳辺りから始めて妊娠するまでの五、六年間だった気がするけど……その短い期間でここまでになれるもんなのかな。

 あ、大きい声で言うもんだから周りにいた人たちまでザワザワしはじめた。

 一人一人、丁寧に対応するお母さんを見て、私はなるべく目立たないように帽子を深く被り直しその場から離れようとする。

 だが、何十人か集まってしまったこの状況では私の行為を目撃する人もいるのは勿論だった。

 

「あ、もしかして京華ちゃんの娘さん!?」

「あはは、どうも……」

 

 おそらくお母さんと同年代の女性に気づかれてしまい、とりあえず愛想笑いをしておく。

 そう、これこそが私がお母さんと出かけたくない理由だ。

 お母さんが人気でファンの人たちが喜ぶのは娘の私にとっても誇らしいが、必ずこうして私にも注目が集まってしまう。

 

「娘さんマジで!?」

「奏ちゃーん!」

「息子の嫁になってやってくれ!」

 

 名前が知られているのはおそらく私が赤ちゃんの頃にお母さんがブログで大々的に公表したせいだろう。 逆にそれ以外の理由で知られてたら怖すぎるし。 てか嫁ってなに……。

 テイルホワイトの時よりかはマシだけど、やっぱり注目されるのは苦手だなあ。

 人の海から逃れ、お母さんに合流場所をメールで送信しておく。

 どうせしばらくかかるし、その辺の服でも見てようかな。

 

「奏ちゃーん」

 

 と思ったら媚び媚びな声で走ってきた。

 ゴメンねと手を胸の前で合わせるのを見て、私は帽子を脱ぎお母さんの頭へと被せる。

 

「え、どうしたの?」

「それなら多少は気づかれにくいと思ってさ。一日貸してあげる」

「うーん、私としては不本意だけど……奏が言うなら仕方ないかな」

 

 不本意とか本人の前で口に出して言う事じゃないと思うけど。

 それにしても、やっぱり不思議でならない。

 今の言葉から察するにお母さんは変装するのを好んでいない……てことはファンから声を掛けられるのを悪く思っていないと言うことだ。

 今でもこんなに目立ちたがり屋なのに、早々と女優を引退したのはなんでだろう。

 

「ねえ」

「ん?」

 

 近くにある服を手にとっていたお母さんはその服を元の位置に戻した。

 

「お母さんって引退しなくても私が産まれてからは女優に復帰できたんじゃないの?」

「……確かにね」

 

 少しだけ間を空けてからお母さんは首肯した。

 お母さんは帽子を脱ぎ、先ほどとは逆に私に被せてきた。

 

「でも、女優してたら奏と会うの減っちゃうじゃない? 女優も魅力的だけど、私は奏の母親として奏とお父さんと一緒にいたくてね。 それで引退したのよ」

 

 ウインクすると、お母さんは違う服を手に取り自分に合わせはじめた。

 その様子をジーっと眺めていると視線に気づいたお母さんは再びこちらに向き直る。

 

「世の中には女優と母親を両立させる人もいるけど、私はそんな強くないし……それはできないと思ってね。 女優引退したこと、後悔なんてしてないからっ!」

 

 手を腰に当てエヘンと威張るお母さん。

 いつもなら歳を考えてとか言うとこだけど、今日は見逃してあげよう。

 うん、お母さんが元女優という事が私の自慢なんじゃない。こうして普通の母親してくれるのが私が自慢したい事なんだよね。

 

「ありがとね、お母さん」

「いえいえ……あら?」

 

 相変わらず威張るお母さんに私は再び帽子を被らせた。

 

「でも目立つから帽子は被ってね」

「ええ……」

 

 いい話をしたら帽子を脱げると思ったら大間違いなんだから。

 ……属性力の中には母親属性、なんてものもあるのかなあ。

 

「奏、行くよー」

 

 いつのまにかお店の外に出ていたお母さんに呼ばれ、私も急いでお店を出た。

 お母さんは既に両手に買い物袋を持っていたので一つは私が持ち、そのままモール内を二人で歩いていく。

 ある時は家の事や、最近の事、テイルホワイトの事を話しながらショッピングを続け、飲食店へと入った。

 失礼かもしれないけどモール内にあるにしては小洒落た喫茶店だ。

 ま、私の推しがパターバットなのは変わらずだけどね!

 私が通路側の椅子に、お母さんが壁側のソファへと座りそれぞれパスタを頼む。

 パスタを待つ間、今度は学校の話になると、自然と友達の話へと移っていった。

 

「それで奏、彼氏はできたの?」

「え、何言ってんの?」

 

 反射的に答えてしまった。

 お母さんってやたらと私に彼氏が出来るのを楽しみにしてるんだよねえ……。

 うーん、私には全然わからない。

 

「嵐君……だよね? その子と別れてから全然その気配が無いから気になるじゃない?」

 

 そう、お母さんは私と嵐の関係を知っている。

 私が告白に成功し舞い上がっている中、つい勢いでお母さんに報告してしまったのだ。 あの時の私を恨む……二重の意味でね。

 

「あの子結構イケメンだし……私も気に入ってたんだけどなぁ。 ねえ、やり直さない?」

「いやいや、もうそんな対象じゃないって。今もこれからも普通に男友達のままだよ。 あ、来た」

 

 ようやくテーブルへ運ばれてきたパスタを食べ、美味しさのあまり顔が緩む。

 

「それに嵐だって今更私とそういう話になるのは迷惑だって」

「あ、嵐くーん!」

「え?」

 

 突然お母さんは大きく手を振り、私の後ろにいるであろう人物を呼んだ。

 驚いて振り返ると……お店の外に確かに嵐がいる。

 嵐も突然お母さんに呼ばれて驚いているようだ。

 

「ちょうどいいとこ! おいでおいで!」

 

 お母さんを見ると手招きし、どうにか嵐を店内に呼び込もうとしていた。

 いくら面識があるとはいえ普通親子でいるところに男友達呼び込むか!?

 私は嵐の方へ向き、必殺技を繰り出した。

 

(来るなっ! 来るな〜!!)

 

 思いよ届け!!

 来るなオーラを全開にして、どうにか嵐を遠ざけようとする。

 しかし嵐は大声を出すお母さんに負け、頭を下げながら店内へ入ってきた。

 この鈍感野郎め!

 

「嵐君いいところ!丁度君の話をしててね、座って座って!」

「あ、ど、どうも」

 

 そしてわざわざお母さんは私の隣の椅子に嵐を座らせた。

 ああ……なんでこんな事に……。

 なんかお母さんは嵐に食べなと言ってるし、これは逃す気ないな。

 とりあえず隣は気にせず、無心でパスタを食べる機械になろう。

 

「それで嵐君はなんでここにいるの?一人だよね?」

「え、なんでわかったんですか?」

「だって嵐君、時間も気にせず歩いてたし、私の呼びかけでお店入ってきてくれたし、彼女や女の子と歩く服着てないからね」

 

 洞察力凄すぎるでしょ。

 まさか女優やってるとこうなるわけ? ここまでくるとなんか怖いって。

 

「えーっと……実は、ちょっと買い物がありまして」

 

 へえ、嵐も買い物かあ。だけどそれだけでそんな吃ることあるかな。

 

「……はっ! そういえば、この時間限定のスイーツ買うの忘れてた! ごめんね嵐君、ちょっと待ってて!」

 

 お母さんは凄い勢いで立ち上がると、そのまま店内を駆けて出て行ってしまった。

 確かその限定スイーツってかなりの行列ができるほどの人気だったから……しばらく戻ってこないな、これは。

 

「……」

「……」

 

 どうしてくれんの、この状況?

 気まずすぎるし、側からみたら向かい合わないで座ってるの変に見られるし……いや、ほんとどうすんの。

 ……もうこの空気に耐えられないし、しょうがないか。

 私は椅子から立ち上がり、買い物袋を漁るとラッピングされた茶色の紙袋を取り出す。

 

「ん」

「え?」

 

 そのまま嵐に差し出すが、嵐は無表情のまま受け取ろうとしない。

 しょうがないので私の座っていた椅子の上に置き、私はソファへと座る。

 

「遅れたけど、クリスマスプレゼントね」

「え! 俺にか!?」

 

 本当は次にみんなで会うタイミングでみんなに渡す予定だったけど……とりあえず気まずい空気を壊すためにはしょうがない。

 みんなにはお世話になってるから、みんなへのプレゼントを買うため今日はお母さんについて来たってわけだ。

 

「開けてみてもいいか?」

 

 別にダメな理由もないし、首を振って答えた。

 私の反応を見て嵐はラッピングを外し、紙袋を開けると私が選んだプレゼントを取り出した。

 まあ、私には嵐の欲しいものなんてわからないから適当だけどね。

 

「うおお! マフラーじゃねえか!」

 

 予想外に喜んでくれたみたいだ。

 マフラーでこれだけ喜んでくれるならお財布にも優しいしあげた甲斐があるってものだね。

 

「サッカー部の練習朝早いでしょ? 冬は寒いだろうし、嵐は制服来てる時にマフラーもネックウォーマーも着けずに寒そうだったからさ」

 

 別に真剣に考えてたわけじゃないからね。

 私達が温かい格好してる中、一人だけブルブル震えられるのも居心地が悪いからだよ。

 

「まさか……手編みか!?」

「いやいや、タグ付いてるでしょ」

 

 何を期待してるのか知らないけど私は編み物は大の苦手だからそれは期待しないほうがいい。

 

「どうよ?」

 

 いつのまにか嵐はマフラーを首に巻いていた。

 

「うん、似合ってるよ」

 

 私が選んだんだから似合わないわけがないんだけどね。

 そういえばゼブラギルディっていうのはマフラー好きだったっけ。

 マフラー好きなのに夏に現れたエレメリアンの事を考えていると、嵐から声をかけられた。

 

「じ、実は俺も━━━」

 

 嵐の言葉は突然の騒音で掻き消されてしまった。

 これは、水の音だろうか。

 私達は店の外が見える位置に移動すると、ショッピングモールの一階にある噴水にエレメリアンがいるのを確認した。でもなんであんな所に……。

 すぐにでも向かいたい所だけど……ここじゃ人が多くて変身できない……!

 

「きゃー!! 京華さんよー!!」

「え?」

 

 突如お店の中にいた人とモール内にいた人達が遠くにいるお母さんの元へ走っていった。

 お母さん一体何した!? てか、もう少しエレメリアンに反応してもいいんじゃないの。

 ……まあ、いいや。

 お母さんの人気のおかげで周りには店員さんも含めて嵐しかいなくなったし、監視カメラに気をつけながら変身すれば!

 

「テイルオン!」

 

 変身が完了した私は素早く店内から出ると吹き抜けのエントランスから飛び降り、一階にいるエレメリアンの前へ立つ。

 噴水の上に座るエレメリアンは黒い……犬だろうか、ドッグギルディかな。

 ようやく私へ視線を移したドッグギルディは腕を組んだまま立ち上がり、大声を上げた。

 

「私は……噴水が好きなのだ! 水が吹き出るのは最高だぁぁぁ!!」

 

 な、何を言ってんのこのエレメリアン!?

 まさかこのドッグギルディは噴水属性とでも言うんだろうか。

 アホな事を言うドッグギルディを私含め周りの人が見ていると今度は肩を震え笑いはじめる。

 ヤバイ、こんな変な奴もアルティメギルにいるのか……。

 

「ふっはははは!その目、その顔だ。引っかかったなテイルホワイトよ、私の術に!」

「え、どういうこと?」

 

 ようやくドッグギルディは噴水から飛び降り、濡れた足でモールの床を歩いて濡らしていく。

「私は半眼属性(ハーフアイ)のヘルハウンドギルディ! 敢えて奇天烈な事をしたおかげで、見事にお前はジト目になっていたのだ……!」

 

 じ、ジト目……。

 自分の属性のために恥を捨てていたって事か……。

 これはなかなかの強敵かもしれない。

 あ、そういえばドッグギルディじゃなかったんだ。

 

「まあ、いいや。 さっさと倒して終わりにするっ!」

 

 アバランチクローを装備し、ヘルハウンドギルディへと飛びかかった。

 不吉な笑みを浮かべるヘルハウンドギルディはクローの攻撃をかわして後ろへ回り込む。

 私の渾身の攻撃を簡単にかわすなんて!?

 

「私は言っただろう。 お前は引っかかったのだ、私の術にな!」

「え!?」

 

 突如として、私の頭上に黒い十字架が現れるとそこから放たれる光に包まれ身動きが取れなくなってしまった。

 しかもそれは私だけじゃなく、噴水の近くにいた人たち全てがそうなっている。

 これはまるでオーラピラー……!?

 

「これこそ私の奥義だ。一度でも私をジト目で見ると対象を拘束し、好きなだけジト目を拝める事ができるのだ。 さあ、私をジト目で見ろぉお!!」

 

 なんて無駄な能力!

 だけどこの拘束の強さは本物だ。

 指一本も動かせない私へ、ヘルハウンドギルディはゆっくりと近づくと━━━━━━正座して頭を床に叩きつけた。

 これは……土下座?

 あまりにも意味のわからない行動をとるヘルハウンドギルディにどう反応すればいいのかわからない。

 

「はっはー! またもジト目になったな、テイルホワイト!」

「え、嘘!?」

 

 そうか、さっきのこいつの言葉を忘れてた。

 敢えて意味のわからない事をする事でたジト目を引き出そうとしてる……!

 

「うむ、周りからのジト目も最高に堪能した。 そろそろだな」

 

 属性力を奪う光輪を出現させるヘルハウンドギルディ。

 

「名残惜しいが仕方がない……。 頂こう属性力……ぶげっ!?」

 

 今にも光輪が発射されるかというところでヘルハウンドギルディは吹き飛ばされ再び噴水の中へ飛び込んだ。

 

「力が圧倒的で無くても、特殊能力の搦め手で真価を発揮するエレメリアンもいる……覚えておいた方がいいわね。 ま、ヘルハウンドギルディは普通の一般兵よりは全然強いけれどね」

 

 テイルシャドウが振り返り、笑みを浮かべて話した。

 続けて斧で私の頭上にある十字架を叩くと消滅し、術も解け体が自由となる。

 

『奏さんすいません! 今放送しているふぉーくーるあふたーがとても良いところだったもので……!』

 

 こんな時に……とも言えないか。

 少しくらいフレーヌにも気を抜いて貰いたいものだし、ゆっくりアニメでもなんでも見るのは歓迎だ。

 

「おのれ!私のジト目タイム&ツインテール奪取を邪魔しおって……!!」

 

 噴水から飛び出てきたヘルハウンドギルディは瞳を紅く、妖しく光らせ咆哮を上げた。

 

「お前もジト目になるのだ!! テイルシャドウ━━━━!!」

 

 術が解けた私にではなく、ヘルハウンドギルディはシャドウに向けて疾駆する。

 

「悪いわね」

 

 シャドウは最低限の動きでかわし、ノクスアッシュをブレイクレリーズさせた。

 

「エレメリアン連中の馬鹿な真似なら……散々見てきたのよ!」

 

 ヘルハウンドギルディの振り向きざまに、斧を一閃し、吹き飛ばした。

 

「ホワイト!」

「オーライ!」

 

 私はすぐさま嵐とのエレメリンクでポニーテールとなるとブライニクルブレイド引き抜く。

 ブレイクレリーズし、ブレイドを倍の長さにまですると私もヘルハウンドギルディ目掛けて必殺の一斬を叩き込んだ。

 

「ぐ……皆をジト目にする事が出来たのだ! 私に悔いはない!!」

 

 体中をスパークさせると、間も無くヘルハウンドギルディは爆散し属性玉がこちらへふわふわと飛んできた。

 ヘルハウンドギルディが敗れたのと同時に周りの人の術も解除され、皆が押し寄せてくるかと思いきやそうでもなかった。

 

「さ、握手は一回千円よ」

 

 シャドウがいれば人避けにいいかもしれない……。

 当然ギャラリーが寄り付かない中、勇敢にもそんなシャドウへ近づいていく者がいた。

 

「流石に奴程度なら倒すのは造作もないか」

 

 黒いローブを着ていて素顔はわからないけど、異様に大きい身長に、下から見える鋭い三つの爪。

 これはどう見ても……。

 

『エレメリアンです!!』

 

 私もシャドウもすぐに距離を取り身構えた。

 この威圧感……どう考えても一般兵じゃなく、幹部のものだ。

 

「やはり……俺の目に狂いはなかった」

 

 熱気を昇らせ、一気に炎を吹き上げらせると黒いローブは灰すら残さず一気に燃えてなくなり、エレメリアンは素顔を晒した。

 何かの鳥をモチーフとしたような頭部の鎧、青いたてがみに太陽のような翼、焔が彩られた肉体……見ているだけで火傷しそうな姿だった。

 

「俺の名は神鳥、ガルダギルディ。この世界のツインテール属性を頂くために降り立った戦士だ」

 

 腕を組み、ガルダギルディは辺りを見わたすと深い溜息をついた。

 

「失礼、お前達のようなヒロインが他にいないものかと思ってな」

 

 ヒロインって、ツインテールの戦士のことだろうか。

 ツインテールの戦士は私達二人しかいないけど、他のエレメリアンと情報共有できてないのかな。

 とりあえず周りに集まっていたモール内のお客さんに避難を促し、逃げてもらった。

 ガルダギルディは腕を組み、虚空を見上げた後、シャドウへと視線を移した。

 

「普段はクールではあるが自分の興味を惹きつけるものに対しては貪欲なヒロインか。そしてその中にもポンコツがみえる」

『なっ!? このエレメリアン、一瞬にして普段の黒羽さんの事を当ててしまいました!』

「え、私ってそんなかしら……」

 

 いやいや、このエレメリアンさっきシャドウが千円で握手するって言うのを聞いてたし。それとシャドウは自覚なかったのか……。

 ガルダギルディは次に私へ視線を移してきた。

 

「サバサバとしているが正義感が強く、それでいて裸を見られると恥ずかしがる乙女な部分も持ち合わせている微ツンデレヒロインか」

『なっ!? 奏さんの事まで!?』

 

 裸を見られるのは誰でも恥ずかしいと思うんだけど……。

 それに私がツンデレ……? 全然納得がいかない。これは断固抗議すべき案件だ。

 異議ありと、ガルダギルディを指差そうとしたがその言葉はそのガルダギルディに遮られてしまった。

 

「テイルホワイトよ、お前は異性に裸を見られた経験があるようだな。 それも、つい最近!」

「は、はぁっ!?」

 

 まさかの図星に、思わず間抜けな声を上げてしまった。 ……まあ、正確には二日前なんだけど。

 顔が熱くなる中、私以上に声を上げて驚いた人達がいる。

 

「『はあああああああああああ!?』」

 

 通信機越しに基地で大声を上げたフレーヌと、三階から見ていた嵐だ。

 どうしてここまでの反応ができるか不思議でならないけど、一応弁明はしといたほうが良さそうだ。

 

「えっと、裸は見られたけど……それは紅音にだから! 同じ女だから!」

 

 一応嘘ではない……よね。 いや、でもあの時は総二だったしやっぱり嘘になってしまうのかな。

 フレーヌも嵐も、私の言葉を聞いて落ち着きを取り戻したらしい。

それにしても……ガルダギルディはなんでそんな事がわかったんだろう。

 もし私の反応を見て、当てたのだとしたら物凄い洞察力だ。 このエレメリアンの前では、なるべく顔に出さないほうがいいかもしれない。

 私が警戒しているそのガルダギルディは、手を顎に当てなにやら考えているようだ。

 

「異性ではなく同性だったか。 それもまた一興、悪くないか」

 

 勝手に何かを納得したのか、ガルダギルディは腕を組むとうんうんと頷いた。

 それとほぼ同時に何か視線を感じた。振り返るとキッズコーナーにあるティラノサウルスの乗り物がこっちを向いて止まっている。 なんだか笑っているようにも見えるのが不思議だ……。

 視線をガルダギルディへと戻し、疑問に思っている事をぶつけた。

 

「えっとガルダギルディ、あんたも聖の五界の隊員なの?」

「違う、俺はどの部隊にも属さない」

 

 部隊に属さないエレメリアンか……。

 今までのエレメリアンは何処かしらの部隊に所属していたけど、ガルダギルディは部隊に入らない理由があって単独行動しているのかな。

 ようは特別待遇のエレメリアン……なんだか野放しにしていたらやばい気がする。

 

『黒羽さん、ガルダギルディの事で知ってる事があれば伺いたいのですが』

「悪いけど……見た事も聞いた事もないわね。 もしかしたら私が抜けた後、メデューサギルディのように一兵卒からの成り上がりかも」

 

 メデューサギルディ……知らないエレメリアンの名前だ。

 シャドウがフレーヌと話している内容が聴こえたのか、ガルダギルディは直ぐに反応した。

 

「妹をこよなく愛すメデューサギルディか。 妹のヒロインは定番にしてもはや欠かせない存在……。 この俺も奴の流儀には賛同せざるをえないな」

 

 こいつ、さっきからヒロインヒロインって……まさか。

 私の顔を見て、次に言いたいことがわかったのかガルダギルディは満足気に笑う。

 

「そうだ、テイルホワイト。 俺の属性はヒロイン……全ての人類、エレメリアンが魅了される素晴らしい属性だ」

 

 ヒロイン属性……分かりづらい属性だ。

 髪型や、体の部位とかならそれが好きだってわかりやすいけど…ヒロインっていうのは曖昧だなあ。

 あれ、何共感しようとしてんの私!?

 

「全ての女性に、はたまた一部の男性にもヒロインの素質はある。 しかし、素質だけで終わってしまう……ヒロインとは最も極めるのが難しい属性力なのだ……!」

 

 ガルダギルディは悔しそうに握り拳を作り、歯噛みした。

 

「清楚、クール、ギャル、痴女、眼鏡、姉、妹、義母、お嬢様……そしてツンデレ。 ヒロインは時代とともに増え続け、多岐に渡ってきた」

「誤解されがちだけれど、メジャーな属性は極めるのが難しいのよ。 ツインテール属性はもちろん、ガルダギルディの言う属性力もね」

 

 エレメリアンはツインテール属性を少なからずとも持っているという事を聞いたけど…他の属性力がメインというのが多かった。

 そういえば私も、純粋にツインテール属性を持つエレメリアンとは会ってないんだ。

 

「よくわかっているな、テイルシャドウ。 そう、ヒロインにはメジャーな属性力を埋め込まれる事が多い……そのヒロインを愛し、属性力を極めるのは最も難しい事なのだ」

 

 裏を返せば、その難しい属性力を極めているであろうガルダギルディは……。

 私は警戒しブレイドを構えたが、なんとガルダギルディは背を向け歩き出した。

 

「俺は闘いに来たわけではない。 俺の目が正しいかどうかを見極めたかっただけだ」 

 

 ゲートを生成し、中に入ろうかというところでガルダギルディは歩みを止めこちらに振り向く。

 もしかして、気分が変わって闘う気になったのだろうか。

 だが、私はすぐにゲートに入らなかった理由を知ることとなった。

 ゲートの中から一体のエレメリアンが現れたのだ。

 

「ご機嫌ようホワイトさん、シャドウさん」

「エンジェルギルディ……!!」

 

 因縁深いシャドウはすぐに斧を構え、いつでも攻撃できる態勢に入る。

 

「せっかちですわねえ、私も今日は闘う気はありませんのよ」

「何か目的があるのか?」

 

 ガルダギルディの問いかけに、不敵に笑うとエンジェルギルディは胸の前で人差し指を立てた。

 

「ただ、貰うだけですわ」

 

 突如、稲妻のような衝撃波が私とシャドウに直撃し、テイルブレスが悲鳴をあげるように放電する。

 放電したテイルブレスからこれまでに倒した無数の属性玉が弾けて飛び出し、エンジェルギルディの周りで浮遊する。

 最初に飛び出した属性玉を取ると、そのまま浮遊する属性玉を眺めるエンジェルギルディ。

 

「一体何を!?」

 

 シャドウが驚愕の声を上げる中、エンジェルギルディは周りに浮いている属性玉を一つ一つ調べていき、二つ目を取り出した。

 まさか……目当ての属性玉があるって事…?

 

『四幹部の属性玉が全て集まった』

 

 その時、私の脳裏にセドナギルディが今際の際に呟いた事が浮かびあがる。

 そうだ、エンジェルギルディが探しているのは……!!

 

「たあああああああ!!」

 

 察したその瞬間、エンジェルギルディに向かって疾駆しブレイドを振り下ろす。

 だが、属性玉を探していたにも関わらずエンジェルギルディは弓を出現させ、ブレイドと交差させる。

 鈍い金属音が辺りに響いたその時、エンジェルギルディは三つ目の属性玉を手に取った。

 その時弓が激しく閃光し、その光で私は吹き飛ばされる。

 エンジェルギルディに選ばれなかった属性玉は用済みとばかりに、その場に落ちてしまった。

 選ばれた三つの属性玉は再びエンジェルギルディの周りを浮遊する。

 

『あれは日焼け属性と清楚属性、そして涙属性の属性玉!?』

 

 シャドウが倒したサラマンダギルディ、シルフギルディ。

 私が倒したセドナギルディ。

 聖の五界の四幹部とされていた属性玉をエンジェルギルディを狙っていたんだ。

 四幹部の中で、ノームギルディはエンジェルギルディに粛清され、その属性玉も持っているはずだ。

 つまりこれで、四幹部の属性玉が全てエンジェルギルディの手中に収まったという事になる。

 もっと早く、セドナギルディの言葉に気がついていれば……!

私が拳を地面に打ち付ける中、エンジェルギルディは手の中に三つの属性玉を包み込む。

 

「さて、用事は済みましたし帰りましょう」

「え!?」

 

 たしかに闘う気はないと言ってはいたけど、本気にしてなかった。

もちろんそれはシャドウも同じようで驚いているのがわかる。

 

「それでは、御機嫌よう」

「次に会う時はお前達のヒロインオーラをとくと見させて貰おう」

 

 そしてあっさりと、エンジェルギルディとガルダギルディはゲートの中へと消えていった。

 呆然とその場で立ち尽くす私に対して、シャドウは床に散らばった属性玉を一つ一つ拾い集めていく。

 

「ちょっと、ボサッとしてないでホワイトも手伝ってちょうだい」

「あ、ごめん」

 

 シャドウに促されるまま、私も属性玉を拾いテイルブレスへ収納していく。

 拾い集める中、私はエンジェルギルディの事を考えていた。

 四幹部の属性玉を集めたら、てっきり何かをやらかす気でいたのかと思っていたけど……何もしてこなかった。

 セドナギルディの言った事が私達を怖がらせるためのデタラメという事も無いと思うけど……。そうしたらエンジェルギルディが四幹部の属性玉を集めたわけは?

 今日何もしてこなかったから安心、というわけにもいかないし警戒していかないとね。

 

「ふう、やっと終わったわね」

 

 かなりの数があったせいで全てを拾い集めるのはなかなかの重労働だった。

 もしかして掃除機かなんかで吸った方が良かったんじゃ……。

 

『そういえば奏さん、最初からそちらにいたんですか?』

「あ、うん。 お母さんと買い物に来てて……あ」

 

 あ母さんの事、すっかり忘れてた。

 

 

 急いで店の扉を開け中に入ると、お母さんはエレメリアン騒ぎなど知らなかったかのように優雅に紅茶を飲んでいた。

 娘の私が言うのもなんだけど、元女優を思わせるには充分なほど様になっていた。

 

「お母さんごめんっ!」

 

 嵐とともに、急いで席へと向かい手を合わせ謝る。

 何も言わずに放置してしまったし、もしかしたら怒られるかと思ったけどお母さんは黙ったままだ。

 いや、もしかしてこれは怒ってるのかな……。

 

「俺からもすいません、伊志嶺さん」

 

 なんと嵐も横で一緒に頭を下げてくれた。

 お母さんは依然として黙ったまま、飲み終え空になったティーカップをテーブルへと置く。

 

「貴方たち……」

 

 いつもより真剣で、それでいて小さい声でお母さんは口を開いた。

 これから説教が始まる……そう私は覚悟した。

 

「貴方たちは若いし、積極的になるのはわかるわ……私もそうだったもの」

 

 私と嵐は手を腿の上に置き、静かに耳を傾ける。

 積極的に、というのは若いが故の行動力とかそんなもんだろう。

 

「私が嵐君を呼んだとはいえ、私がいない間に二人が消えて……しばらく経っても戻ってこなくて……どんな気持ちになったと思う?」

 

 チラッとお母さんを見ると、少しだけ悲しい顔をしているのがわかった。

 寂しい思いをさせてしまったんだろうな…。 

 

「やっぱり私は、まず報告してほしかったの」

 

 報告……店を出るという事だろうか。

 

「第一に私に報告してくれれば……盛大にお祝いだってできたはずなのよ」

 

 お祝い……?

 店を出ると報告してお祝いっていうのはなんかおかしくない?

 

「でもいいの。 私は奏を信じてたから……絶対に彼とやり直してくれるって」

 

 優しい目で嵐を見るお母さん。

 うーん、なんとなくわかってきた気がする。

 

「まさか二人がまた付き合い始めてたなんて……しかも親がいない間にデート━━━━」

「ちがーーーう!!」

 

 思わず私は机を叩きながら立ち上がり、お母さんの言葉を遮った。

 なんか話に違和感があると思ったら……!

 お母さんは私と嵐が同時にいなくなったのを変な方向に勘違いしている。

 完全に誤解だ、早くこの誤解を解かなきゃ後々面倒くさい事になる気がしてならない。

 

「またまた照れちゃって♪」

「違うの! 照れてない! 付き合ってない!」

「ふふふ♪」

 

 ヤバイ、必死に否定すればするほどなんかドツボにはまっていく。

 私が反論しあぐねていると、隣に座っていた嵐が立ち上がる。 

 

「あの、伊志嶺さん。 俺たちは本当にただの友達なんで……」

 

 一応嵐も誤解を解こうとしてくれてはいるらしい。

 しかし、お母さんは……。

 

「嵐君まで照れちゃって。二人が付き合ってないならそのマフラーはなに? さっきまでしてなかったし、今二人で買ってきたんでしょう?」

 

 そういえば、嵐は私があげたマフラーをしたままだった。 観察眼がすごいお母さんは当然それを見逃すはずもない。

 

「いやこれはさっき伊志嶺に……伊志嶺さんにプレゼントされたもので」

 その説明の仕方じゃ余計に拗らせてしまう!

 

 プレゼントなのは違いないけど他の言い方は無かったのか。

 案の定お母さんはニヤニヤしている。

 

「ちょーっと待つのです!!」

 

 頭を抱えていると、店の扉を勢いよく開きよく知ってる女の子の声が響いた。

 店内にいたお客さんは皆が振り返り、注目する。

 またややこしくなりそうで、もっと頭が痛くなってきた。

 

「お母様、聞き捨てなりませんね! 奏さんと嵐さんが交際しているなどと……。フッ、ありえません!」

「貴方は?」

「フレーヌと申します!」

 

 あれ、これはひょっとしたらいい方向に向かうかもしれない。

 

「奏ったらいつのまにか外国人の友達ができていたのねえ。 日本語お上手だけど、貴方はどこの国の方なの?」

 

 フレーヌの容姿を見て外国人と判断したようだ。

 まあ、誰が見たって日本人ぽくはないからね。

 

「えっと、私は……ス、スウェーデン?です」

「へえ、スウェーデンね」

 

 なぜ、スウェーデン……。

 

「それで、どうしてフレーヌちゃんは奏達が付き合っていないと断言出来るのかな?」

 

 頼むよ、フレーヌ。いい答えで誤解を解いて!

 私の視線に気づいたフレーヌは、綺麗にウインクをかました。

 

「私は奏さんと出会って半年ちょいくらいですが、嵐さんと交際してる雰囲気は全くありませんでした。 一度だけ二人で水族館に行ってましたが、あれは違うと聞かされていましたので」

 

 前半は良かったのに後半で見事にぶち抜かれた。

 ドヤ顔のフレーヌと、ニヤニヤしているお母さんを見て思わず私は両手で顔を隠した。

 どうすればいいの……!?

 

「そろそろゲロッちゃいなさーい。付き合ってないなら二人が揃って親の前から消える理由なんてないわよ」

 

 いくらでもあるとは思うけど、適当な事言うとまた照れ隠しって言われるし……本当にどうすれば。

 そんな絶望感の中、一筋の光がさした。

 

「テイルホワイトです、伊志嶺さん! テイルホワイトが現れたって言うんで二人で見に行ってたんですよ!」

「そ、そうだよお母さん!」

 

 お母さんはテイルホワイトの大ファンだし、これでとりあえず話を変える事は出来るかもしれない。

 肝心なプレゼントとテイルホワイトは全く関係ないけど気づかないでくれれば……。

 

「なんで教えてくれなかったの!? 私ももう一度生でホワイトちゃん見たかったのに!?」

 

 予想以上の食いつきだった。

 

「こんな事してられないわ! まだ近くにいるかもしれないし、行くわよ奏!!」

 

 凄い勢いでお母さんは立ち上がると数えもせずにお札を何枚かテーブルに置いて、店の外へ走っていった。

 助かったけど実の娘の事よりテイルホワイトを優先されるのはなんか複雑……。 いや、どっちも私なんだけどさ。

 

「二人ともありがとね。 私お母さん追いかけるから、またね」

 

 どうせ近くでテイルホワイトを探しているだろうし、お母さんはすぐ見つけられるだろう。

 二人に手を振り、私はお母さんに続いてお店を出るのだった。

 今日の話を蒸し返された時ように、言い訳考えておかなくちゃね…。




お母さん回です。
普通に話を考えていたらお母さんの出番が全然ないので、これを読んでくれていた方はタイトルを見て「京華って誰?」と思った方が多いかもしれません。
総二と違って奏が変身する事がお母さんに知られてないのでなかなか絡めにくかったりします。

エンジェルギルディが四つの属性玉を集めて、ガルダギルディが登場して……どうなるのか。
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