私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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マキシマムバイザー

フレーヌが開発したエヴォルブバイザーがカエデの力によって変化したテイルホワイトの強化装備。 無機質な機械を思わせた銀一色から真っ白になり、鮮やかなエメラルドグリーンのラインが入ったデザインとなった。 テイルギアの一部という扱いとなり、変身後は腰に装着されている。なお、変身前にも強く念じることでバイザーのみを取り出すことも可能。 テイルホワイトの属性力を無限に高める力があるが、抑えが効かないため使用には注意が必要。


FILE.69 ツインテールなクライマックスへ向けて

 あっという間にお正月は過ぎていき、今日の日付は一月七日。 今日が冬休み最後の日曜日というわけだ。

 大晦日にはエレメリアンが出撃してきてたけど、やはり休みたいのかお正月の間に現れることはなかった。

 一日は親戚や従兄弟が家に来たりしたけど……それがまあ、従兄弟の世話が大変だった。

 中学生の長男はさすがに落ち着いてたけど、次男の小学生はやれ構えだの、遊べだので……変身してない分エレメリアンと闘うよりも体力を消耗してしまった。

 二日になったらなったで今度は私たちがお父さんの実家へと出かけていたし、毎年とはいえ結構ドタバタしたお正月である。

 ただその分三日はコタツでダラダラと過ごさせてもらい、寝正月をしっかりと満喫する事ができてなかなか満足のいくお正月だったと思う。

 その後、三が日を過ぎると適度にエレメリアンが現れはじめたので私と黒羽で倒す、といういつものパターンとなっている。

 そんでもって今日はここまでエレメリアンが出撃する事もなく、何か事件があるわけでもなく、さらに言えば両親も出掛けているので私一人でゆっくりできるのだ。

 冬休みは明日までだし、今日は気合を入れてゴロゴロして無駄に過ごす!

 

 

 炬燵で寝っ転がりながらテレビを見るなんて……なんて幸せな日なんだろう。

 なんか今の私、女子としてダメな気がするけど……誰も見てないし別にいいや。

 

「ん?」

 

 炬燵の中で思いっきり足を伸ばした時何かに当たった感触があった。

 家には私以外居ないし、猫も飼ってない。なら今の感触は……。

 おそるおそる炬燵布団を上げて見ると━━━━

 

「あ」

 

 炬燵の中にいた少女と目が合う。

 

「きゃああああああああああああ!!?」

 

 すぐさま炬燵を飛び出し、ソファーの後ろへと身を隠す。

 心霊的な物を見てしまったかもしれないとガクガク震える中、炬燵の中にいた少女が出てきたらしい。

 

「すみませーん。 驚かすつもりは全くなかったんですけど」

 

 聞き覚えのある声がして、ソファから顔を出すとオレンジ色の髪の毛が見えた。

 

「フレーヌ! なんてとこから出てきてんの!? 」

 

 炬燵の中に少女がいて目が合うなんて結構なホラーなんだからね。 昼間だからまだ良かったけど夜だったら大変なことになってた。

 

「いやー、冷蔵庫の中に転送ゲートを作ろうと思ったのですが座標が少しずれてしまったようですね」

 

 そういえば前に冷蔵庫から出てきた事あったっけ。 ていうか、冷蔵庫の中に転送ゲート作ろうとすんなし!

 普通に転送してくればいいのに……ってそれもおかしな話だけどね。

 

「まあ、いいや。 何か用事でもあるの?」

 

 よくはないけどこんな事でぐちぐちいうのも気分悪いからね。

 用事があるなら炬燵でゴロゴロするために早く済ませてしまわないといけないし。

 そんな私の思いを知ってか知らずか、フレーヌはショートパンツのポケットからタブレットを取り出して操作し始める。 ……タブレットの大きさじゃどう考えてもポケットに入らないと思うけどそこはきっと未来的な技術によるものだろう。

 

「この前学校に潜入した時に気になるものを見つけまして」

「さらっととんでもないことを報告するね……」

「あ、これです!」

 

 私の反応を気にせず、フレーヌはタブレットを手渡してきた。

 写っているのは学校の中庭にある掲示板みたいだけど……これがどうして気になるんだろう。

 

「あ、もしかしてお茶飲みたいの? 茶道部員募集のポスターが貼ってあるね」

「今はボケるタイミングではありませんっ!」

 

 ボケのつもりはなかったけど……。

 

「この''修学旅行''というものです!」

 

 フレーヌは画面に写る掲示板の端にあるポスターを指差す。

 これは生徒にも配られた''修学旅行に関しての注意''というプリントだ。 へえー、掲示板にも貼ってあったんだ。

 

「エレメリアンと闘う私達を差し置いて旅行などと! こうなったら私達も対抗して修学旅行よりも楽しい旅行をしましょう!」

 

 そういえば、フレーヌは夏にも海に行きたいって言ってたしみんなで出掛けるのが好きなのかな。

 でも、言わなければいけない事がある。

 

「あの、フレーヌ」

「修学旅行とやらが何処に行くのかはわかりませんが私達はそれを超えます! なんと異世界です。異世界へ旅行です!」

 

 うう……めちゃくちゃ気になるよ、それ。

 だけど、ここは我慢だ。我慢してフレーヌに伝えないと……!

 

「その修学旅行なんだけどさ」

「異世界に行くなど、この世界の技術では絶対に不可能です。 私たちは勝ちましたよ……ふふふ、はーはっはっは!」

 

 いつになくお手本のような勝ち誇った笑い声をあげるフレーヌ。

 教えないほうがいいかもしれない。 そんな考えが一瞬頭によぎるが、それだけはダメだ。

 フレーヌを傷つけないように……慎重に。

 

「あの、フレーヌ」

「はい?」

 

 笑っていた時と同じように、腰に手を当てながら私の方へと振り向く。

 よし、今しかない。

 

「私たちなんだよね。……修学旅行行くの」

 

 両手の人差し指を合わせながら、なんとか言いきった。

 チラリとフレーヌの様子を伺うと、いつのまにか眼鏡をかけて無表情でタブレットを弄っていた。

 

「奏さん、悪い事は言いません……。私と異世界旅行に行きましょう!!」

「ええ!?」

 

 フレーヌはメガネとタブレットを床へ落として、私の手を握り締めながら懇願してきた。

 メガネかける意味なんだったの!?

 

「あえて修学旅行と同時期に私たちも行って、より楽しい思い出を作ってやるんです! さあ今から出発しましょう!」

「いやいやいや! 修学旅行はまだ一ヶ月先だよ!? しかも明後日から三学期が始まるし!」

 

 今から出発して一泊して、次の日から学校だなんてどんな過密日程よ!

 

「嫌ですー! 私だって旅行行きたいもーん!」

 

 フ、フレーヌが幼児退行している……。

 涙目になって床を這いずり回っているせいで服は乱れるわ髪型は崩れるわで結構悲惨な事になってきている。 今日はスカートじゃなくてよかったね。

 

「フレーヌと旅行ぐらい行ってあげたらどう?」

 

 突然部屋の何処からか黒羽の声が聞こえてあたりを見回す。

 その時は見つけられなかったが、程なくして黒羽がフレーヌと同じように炬燵の中から出てきた。

 すんごいナチュラルに出てくるのやめてほしい。

 黒羽はフレーヌを掴み、取り敢えず駄々こねるのをやめさせてくれた。

 

「旅行なら来年行けばいいじゃない。 文化祭みたいにどうせ来年もあるんでしょうし、今年はフレーヌ達と異世界旅行でいいでしょう?」

 

 微妙に黒羽も異世界旅行とやらに乗り気らしい。

 彼女はアルティメギルにいた頃散々異世界を旅してきたと思うけど、私たちと行くのでは意味が変わってくるんだろう。

 黒羽の言葉に未だ涙目のフレーヌはうんうんと力強く頷く。

 

「いや、修学旅行っていうのは他の行事と違って高校生活で一度っきりなの。やっぱ高校生としては修学旅行を特別に感じちゃって……いくらフレーヌや黒羽が言っても休めないかな」

 

 最後に「ごめんね」と付け足して、なんとか二人に説得を試みる。

 一応私、女子高生としての考え方ではやっぱ修学旅行は他の行事に比べると思いの入れ方が全然違うものだ。 もちろんそれは志乃や嵐だって同じだろう。

 話を聞いたフレーヌは申し訳なさそうに、黒羽はバツが悪そうに私から視線を移した。

 困らせちゃったかな……?

 

「高校生活で一度っきり……つまりそれは一生に一度と言う事ですね。 奏さんの気持ちを考えず我儘な事を言ってすみませんでした」

 

 さっきの駄々をこねていたフレーヌは何処へやら。

 いつも通りの調子に戻ったフレーヌは頭を下げる。

 そんなフレーヌに声をかけようかと思ったその時、勢いよく頭を上げた。

 

「なので……私たちが全力で修学旅行をサポート致しましょう!!」

「え」

 

 横にいた黒羽の腕を掴み、一緒に上げるフレーヌ。

 

「奏さんの言う高校一番の思い出を私と黒羽さんで守るのです。 修学旅行中はアルティメギルなど気にせずに志乃さん達と気楽に過ごしてください」

 

 心遣いは大変嬉しい事だけど本当に大丈夫だろうか。

 なんかエレメリアンってそういう大事な日に限って大幹部クラスが出撃する空気の読めないとこがあるみたいだし。

 あれ……もしかして私のせいでフラグ立っちゃったりしてないよね。

 

「奏さん達の修学旅行を守りましょー!」

 

 元気いっぱいに拳を上げるフレーヌとテンションが低いながら満更でもなさそうな顔をする黒羽。

 そんな二人の様子を見たら、ネガティブな事は考えないようにしようと思えた。

 

「じゃ、できたら修学旅行までに聖の五界倒して心置き無く楽しんじゃお!」

 

 聖の五界の四幹部は全て倒したわけだし、残りの戦力で脅威的なのは今のところガルダギルディ、エンジェルギルディだけだ。

 あと一ヶ月もある。 それまでにどうか、この長い闘いに決着がついていますように。

 

 

 小学生の頃から思う事だけど、やはり冬休みは短い。

 それなりに充実……嫌な意味で充実した冬休みだったせいか、全く休んだ気がしない。

 そのくせ課題はやたら多いから困ったもんだ。

 本格的な授業が再スタートして結構経つけどどうにもテンションが上がっていかない。

 一つはこの寒さ。 私の地域じゃ雪が降るの自体まあまあ珍しいのに、今日もガンガン降っている。

 二つ目はエレメリアン。 正月は休んでいたみたいだけどそれが終わってからは毎日出撃してくる。一体は倒す事できるけど必ず一緒にいるガルダギルディを倒せないのがなかなかのストレスだ。 本気で対策考えないと。

 

「奏、大丈夫?」

「あ……うん、ごめんごめん」

 

 横から志乃に声をかけられ、自分がボーッとしていた事に気がついた。

 志乃だけでなく、同じテーブルには嵐とサッカー部のマネージャーである彩、サッカー部に所属する長身の真部とメガネの武川がいる。

 えーっと……私たちは修学旅行の行き先を決めていたんだっけ。 ま、行き先と言っても自由行動のだけど。

 しかしこれが結構難しい。 なぜかというと修学旅行先というのが……。

 

「しっかし修学旅行がオーストラリアのゴールドコーストとブリズベンとはな。 サッカーのことしか頭になかったな」

 

 説明ありがとう、真部。

 普通の高校なら沖縄とかだけど、この園葉高校は一応私立という事もあって色々とすごい。

 四泊五日で行われる修学旅行は最初はゴールドコーストから始まり、終わりはブリズベンという豪華さだ。

 行きたい場所が多くて迷うけど、とりあえず自由行動は有名な観光地をおさえておけばいいだろう。

 

「行動予定表の提出期限は今日までだし、とりあえず行きたいところピックアップしよっか」

 

 私達の班長、彩がしっかりとみんなをまとめあげ予定がどんどん埋まっていく。

 あ、もしかして私、今普通の女子高生やってる!?

 修学旅行よ、ありがとう。 と心の中で思いながらガッツポーズを決める。

 修学旅行中はフレーヌと黒羽がエレメリアンを対処してくれるみたいだし、しばらくテイルホワイトに縁なく気楽に楽しめる!

 

「あ、僕行きたいとこあって……いいかな」

 

 メガネの武川がスッと手を挙げてから、本をテーブルの中央へと置く。

 開かれたページに写されていたのはブリズベンにある劇場だ。 正式名称は長いのでQPACと呼ぶことにしよう。

 それにしても、武川が劇場にあるのはなんだか意外かな。

 サッカー部ならもっと「スタジアムが見たい!」とかかと思ってたりした。

 

「ここの劇場のテイルホワイトの劇は高クオリティで有名なんだ。ブリズベンに行くなら外せないと思うんだ!」

 

 縁がないと思った瞬間にこれか……。

 少しだけ落ち込む私とは対照的に、武川はメガネをクイっと中指で上げかなり上機嫌だ。

 

「おお、いいねえ!流石俺たちの守護神だ!」

 

 真部は賛成のようで、武川と肩を組み大きく笑いはじめた。

 二人の様子を見ていると横から志乃が近づき小声で話しかけてきた。

 

「彩も嵐も賛成みたいだけど……奏は平気?」

「気にしないで。私もちょこっとだけ興味あるし。 それに一生に一度だから好きなところ行きたいもんね」

 

 本人が出演した我がクラスの劇よりもどれだけ高いクオリティなのか、見させてもらおうか。

 

「それじゃブリズベンの劇場を行動予定表に記入して……。うん!これなら時間的にも丁度いいね。 職員室行って提出してくるから」

 

 彩は早歩きで図書室から出て行く。

 行動予定表を書き終わったということは、もうすることがないな。

 この六時限目がはじまる前から予定表は粗方埋まってたから結構時間が余ってしまった。

 せっかく図書室に居るんだし、たまには純文学でも読もうかな。

 残った班員が盛り上がる中、私は席を立ち純文学が並べられている本棚を探し始めた。

 

 

 神秘に満ちたアルティメギル首領の間━━。

 相変わらず首領はヴェールに包まれ、シルエットでしかその身を確認する事ができない。

 あらゆるエレメリアンの憧れであるこの聖域に、聖の五界隊長のエンジェルギルディは呼び出しを受けていた。

 白いローブを羽織ったエンジェルギルディはヴェールの前へ到着し跪く。

 

「星が、輝いておるな……」

 

 室内であるにも関わらず、この神秘的な空間の天井に宇宙そのものと言っても過言ではない星空が写し出されていた。

 地球から見える星空ではないようで、エンジェルギルディが見てきた星座が一つも見当たらない。

 まさか強大な組織であるアルティメギルを束ねる首領が、適当に星空っぽくしただけの偽物を仰々しく眺めている……なんて事はないだろうとエンジェルギルディは思う。

 

「人間は生命が尽きた時、星になると考えていたそう。ツインテールの戦士と闘い、散っていった同胞もそうではないか?」

「首領様もなかなかロマンチストですのね」

 

 ヴェールの奥で首領が腕を上げると、頭上に輝く星と星の間に線が引かれていく。 そしてまもなく見たことのない星座が出来上がった。

 ただでたらめに線を繋いでそれっぽく見せただけのような、歪な形をしている。

 

「……」

 

 さしものエンジェルギルディも、首領の意図を汲み取ることは容易ではない。

 頭上に完成された星座が何座なのか、首領の答えを聞くまで黙秘する事に決めた。

 しかし、首領が答えを出さないまま再び腕を上げると完成された星座は消え去ってしまう。

 

「こうなるのだ」

「……ええ」

 

 エンジェルギルディば詳しく聞くと話が長くなる事を察して、とりえず頷くだけにしておく。

 依然として跪いたままのエンジェルギルディの瞳は、再び天に描かれた星へと向けられた。

 めちゃくちゃな星座は消えてしまったが、悠然と輝く星は健在で僅かな光を届けていると感じられる。

 

(流星……いえ、彗星ですわ)

 

 突如として星の間から青白い光を帯びて現れた彗星は、他の星を巻き込みながら進んでいく。

 首領の手によってこの光景が作られたのか。気になるエンジェルギルディだが、やはり話が長くなりそうなので問うのはやめておく。

 

「首領様……私を此方へ招いていただいた理由を聞かせて頂けます?」

 

 早く基地へと帰らせてもらいたいですわ、という隠しきれぬ本音を言外に滲ませ、エンジェルギルディは丁重に尋ねた。

 

「……わからぬか?」

 

 聖の五界(セイン・トノフ・イールド)でありながら、属性力奪取に手こずっている状況を叱責されるのであろう。 エンジェルギルディはそう考え、頭を下げたままだ。

 

「……?」

 

 しかし、叱責を覚悟していたエンジェルギルディは妙な違和感を感じるともに自身が羽織っていた白いローブを脱ぎ捨てた。

 

「これは、どういうことですの?」

 

 脱ぎ捨てられたローブの背中部分に、先程まで無かったはずの剣のエンブレムが描かれていた。

 その様子を見て、ヴェールの向こうで首領は不敵に笑う。

 

聖の五界(セイン・トノフ・イールド)はもはや壊滅したのだ。 隊長であった其方は神の一剣(ゴー・ディア・ソード)へと戻るがよい」

「お断りしますわ。 あの科学者が隊長をしている神の一剣(ゴー・ディア・ソード)へは戻ることはできません」

 

 首領相手に引くことなく、命令も即座に拒否したエンジェルギルディ。

 自分は聖の五界(セイン・トノフ・イールド)の隊長だという確固たる意志を持ち、そのまま首領の影を睨み続ける。

 首領の命令はわかりやすくするとテイルホワイトを諦め、テイルレッドの属性力を手に入れるためのバックアップに成りさがれという事だ。

 隊長としてのプライドが高いエンジェルギルディは絶対に引くわけにいかない。

 

「貴様!首領様になんという口の聞き方を!!」

 

 ヴェールの奥の首領とその前にいたエンジェルギルディの間に突如、緑色で恰幅のいいエレメリアンが割り込んできた。

 

「首領様のご厚意で一隊長になったに過ぎん貴様が首領様に意見することなど許されんのだ!」

 

 緑色のエレメリアンは無骨な剣と円盾をその手に出現させ、ヴェールの前で立ち塞ぐ。

 

「トロルギルディ、あなたに用はありませんの。属性力共々、本当に美しくない方ですわね」

「ぐっ……!」

 

 トロルギルディと呼ばれた緑のエレメリアンは自身に向けられた言葉が胸に突き刺さり、思わず両手に持っていた武器を落としてしまった。

 それを見たエンジェルギルディはさらに追い討ちをかける。

 

「不細工属性(アグリー)などという美しくない属性力を持っている故に美しくない行動をしてしまうのですわ。 行動まで不細工とは、擁護のしようがありませんわね」

「そ、そこまで言わなくてもおおおおおお!」

 

 自身の属性力がコンプレックスとなっていたトロルギルディも、否定され続けた事で心が傷んだのかゲートを開いて逃げてしまった。

 

「あらあら、帰ってこれるのか心配ですわ」

 

 剣と円盾を拾い上げて隅へ投げた後、再びヴェールの前へと立つ。

 

「首領様、私は神の一剣(ゴー・ディア・ソード)には戻りません。 私は聖の五界(セイン・トノフ・イールド)隊長としてテイルホワイトの属性力、頂いてまいりますわ」

 

 深々と一礼すると、脱ぎ捨てたローブはそのままにエンジェルギルディは早足で首領の間を後にした。

 ヴェールの奥にいる首領が天を仰ぐと映し出されていた星空とともに、床に落ちていたローブも散りとなって消えていった。

 エンジェルギルディが後にし、静寂が訪れた不可侵の聖域へまた、今度は首領が呼んでいない来訪者が現れる。

 

「よう、久しぶりだな━━━━首領ッ!!」

 

 陽気な挨拶とともに現れたのは不死鳥のエレメリアンであるフェニックスギルディ。

 

「ほう……貴様か」

 

 迎える首領の声音にも、喜色が滲んでいる。

 首領はヴェールの奥でパイプオルガンに手をかけると厳かに奏で始める。

 

 アルティメギルのある一つの因縁が今、終わりを迎えようとしていた。

 

 

 自分の基地へと帰還したエンジェルギルディは、大ホールに一人佇みテイルホワイトの映像を眺めていた。

 モニターにマキシマムチェインとなったテイルホワイトが大写しになる。

 ガルダギルディにマキシマムチェインを見せたことにより、エンジェルギルディにもテイルホワイトが強化された事は伝わっていた。

 

「無事に戻ってこれるとは、意外だったな」

 

 大ホールに精悍な声が響き、廊下へ目をやると暗がりからガルダギルディが現れた。

 返事をすることなく、引き続きテイルホワイトの記録を見ているとガルダギルディは自分の存在を主張するようにエンジェルギルディに一番近い席へと腰を下ろして話しかけた。

 

「しかし、その様子を見ると何事も無かった訳ではないようだ」

「あらあら、ヒロインのための観察眼を私に使うなんて勿体無いですわよ?」

「誰がお前などに使うか」

 

 ガルダギルディの特技を使わなくとも、今のエンジェルギルディは誰から見てもわかるほどに覇気が無かった。

 

「今のお前の姿は四幹部や部下には見せられんだろうな」

 

 興味なさげに吐き捨て、ガルダギルディは立ち上がると大ホールの出口を目指し歩き始める。

 しかし、その歩みはエンジェルギルディによって不意に止められた。

 

「部下? 私に部下などいた事はありませんわ。 あなた、何を勘違いしていらっしゃるの?」

 

 お嬢様のようにお淑やかに話していた頃とは違う。

 低く、凄みのある話し方をされ、襲いくる威圧感にガルダギルディは振り返ることができなかった。

 

「前にあなたも言っていたではありませんの。ええそうですわ、私に部下などいませんわ。下にいる者、横にいる者は全て道具……私という存在を高める為だけの……道具ですわッ!!」

 

 震える拳を大テーブルへと叩きつけると、見るも無残にバラバラになってしまった。

 

「それがお前の本性ということか」

 

 ようやく振り返りながら、ガルダギルディは静かに呟いた。

 

「今までの私も嘘ではありませんわ。 お嬢様も機嫌を損ねる時はありますもの」

 

 少しだけ息を荒げながらエンジェルギルディは話す。

 

「どうやら私には猶予があまりないようですわ。 ガルダギルディ、勿論協力はしてくれますわね?」

「……ああ」

 

 ガルダギルディが首肯したのを見届けると、エンジェルギルディは手のひらに四幹部の属性玉を出現させる。

 

「━━━━本気で闘ってさしあげますわ、テイルホワイト」

 

 黄金の弓矢を出現させ、モニターを射抜くとエンジェルギルディは不敵な笑みを浮かべてガルダギルディとともに大ホールを後にした。




二年生なら修学旅行というイベントは欠かせません!
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