「油断は……禁物ですわね」
戦いの終わりを感じつつシャドウの元へと駆け寄ると、不意にエンジェルギルディは口元を緩ませてそう言った。
その瞬間、シャドウは私の横を吹き飛ばされていく。
「シャドウ!」
吹き飛ばされたものの、そこまで大きなダメージはなかったようでシャドウはすぐに起き上がった。
「これは、ヤバイわね……」
シャドウは私の後ろのエンジェルギルディを見て歯をくいしばる。
意を決して振り返ると、その瞬間辺りに激しい突風が吹き荒れガルダギルディとの闘いで壊れたモニュメントの残骸を軽々と海へと吹き飛ばしていく。
なんとか耐え凌ぎ、今一度エンジェルギルディに視線を向け言葉を失った。
『なんという……属性力の嵐……!』
属性力自体を視認する事は、私には叶わないことだけど……肌全身がピリピリとするこの感覚でフレーヌの言いたいことが嫌というほどわかってしまった。
先程まで蹲っていたエンジェルギルディは、この前私達から奪った四幹部の属性玉を自分の周りに浮遊させていた。
シャドウによってつけられたはずの傷は跡も無くなり、左手に羽扇子と斧が合わさった神聖な輝きを見せる杖を持つ。
「お見せしますわ。 私の最終闘体……自他共に認める最高のお嬢様の姿を!!」
杖を天に掲げると浮遊していた四つの属性玉はそれぞれエンジェルギルディの手足へと吸い寄せられのみ込まれていった。 それと同時にエンジェルギルディ自体が金色に輝きはじめる。
光り輝くシルエットを私はしっかりと見てしまう。
長い髪状のパーツは新たに形成されたヴェールのような物に包まれる。
腰部から垂れ下がっていた二つの布は一つに重なり大きさを増してドーム状に膨れ上がると背中側へと移動し、その背中から生えていた四枚の羽も同じように重なると二つの大きな羽となった。
天女の羽衣思わせた一本の布はエンジェルギルディの肩口へと移動し、気品さを演出させる。
そして最後に、頭上にあった天使の輪のようなパーツが一段と大きく鋭利に変化するとエンジェルギルディを纏っていた金色の輝きは周囲に拡散しはじめた。
遂に、進化の全貌が明らかになる。
明らかになったエンジェルギルディの最終闘体に思わず私は息を呑む。
恐怖がそうさせたわけではない。
エンジェルギルディが''美しい姿''へ変わっていたことで起きたのだ。
「その姿は……」
私の国では特別な儀式に着用する、純白のドレス。
エンジェルギルディはその神聖なドレスを戦闘服としてその身に纏わせていた。
「
新たなる力を解放したその時、雲の隙間から太陽の光が差し込みエンジェルギルディを照らした。
神々しい光景を目の当たりにし、思わず後ずさる。
最終闘体……
ここに来てセドナギルディが今際の際に残した言葉を理解し歯噛みする。
敵であるセドナギルディから忠告されておきながらこの状況を作り出してしまった事は、私の慢心に他ならない。
ならせめて罪滅ぼしとして……今すぐにでも決着つけるべきだ。
両腕にアバランチクローを装備し、飛びかかる━━━━しかしエンジェルギルディはかわそうとも、防御しようともしない。
何か引っかかるが、クローをその身で受けたいというのなら望み通りにしてあげよう!
「はあああああああ!!」
エンジェルギルディまであと数メートルと迫り、大きくクローを振り上げる。
だが、あと少しというところで、フレーヌから通信が入る。
『ダ、ダメです、奏さん! 今不用意に近づいてはいけません!』
「え、どうして? 最終闘体の奴をこのままほっとくわけにも!」
『最終闘体となったエンジェルギルディの力は未知に包まれています。まずは遠距離からの攻撃で様子見してください。つまり……』
「エレメリンク、ね!」
フレーヌの言いたい事がだいたい……いや、かなりわかった。
近づかないで攻撃をするには志乃とエレメリンクし、トライブライドで闘うしかない!
「頼むよ、志乃」
『任せて!』
一旦エンジェルギルディから大きく離れ、テイルブレスを天へ掲げた。
「『エレメリンク!』」
志乃との掛け声と同時に私の体を光の繭が覆う。
繭が弾け飛び、テイルホワイト・トライブライドとなった私はすぐさまフォースリボンに触りフロストバンカーを装備する。
すぐさまエンジェルギルディへと照準を合わせ、光球を発射した。
「今のワタクシに三つ編みの力如きで通じると思っていますの?」
容易く光球を受け止めたエンジェルギルディは呆れたように笑うと、その光球を握り潰し消滅させてしまった。
圧倒的な力を見せつけているにも関わらず、エンジェルギルディの動作一つ一つが
『納得いかない! 三つ編みだってツインテールに負けてないんだからーっ!』
どうやら志乃はエンジェルギルディが遠回しに三つ編みを馬鹿にしたことにご立腹らしい。
志乃の言い分はもっともだ。
いくら属性力の最強がツインテールだとしても、だからといって他の髪型を馬鹿にする事は許される事ではないと、私は思ってる。
小さな怒りが沸々と湧き上がり、私はマキシマムバイザーへと手を伸ばし、テイルブレスへジョイントさせた。
『トライブライドの強化形態にはなれませんが、一時的なパワーアップや技の威力を上げる事はできるはずです。 やっちゃってください!』
『やっちゃえ、奏ー!』
マキシマムチェインへの変身プロセスを踏んで、バイザーからフロストバンカーへ属性力が流れ込んでいくのを感じた。
再びエンジェルギルディへ照準を合わせる。
「マキシマムバイザーにそんな能力があったなんて……。 おもちゃ作り直さないといけないじゃない」
なんだか後ろにいるシャドウがぶつぶつ言っているが、今はそれに突っ込んでいる暇はないのでスルーしておいた。
バイザーからの属性力をフロストバンカーに流し終え、必殺の光線を放つ態勢に入る。
「クレバスドライブゥゥッマキシマムッ!!」
通常の必殺技であるクレバスドライブと違い、威力を増した光線のみで勝負をつけるのがクレバスドライブマキシマムというわけだ!……と頭の中に浮かんできた。
三つの銃口からそれぞれ放たれた光線は不規則に絡み合いながら、標的のエンジェルギルディへと向かっていく。
『いっけー!』
志乃が基地で元気よく応援してくれたおかげか、新たな必殺技は軌道を変えることはなくエンジェルギルディへ直撃し大きな爆煙を上げた。
確かに直撃はした。 だけど、エンジェルギルディがこれだけで倒せるのならここまで聖の五界との闘いは長引いていないだろう。
依然としてフロストバンカーを構えたままでいると、予想通り……煙の中を優雅に歩くエンジェルギルディが現れた。
「ヤッバイ……どうしよ、黒羽」
「……私に聞かないでよ」
これで倒せたら苦労はしないとは思ってはいたが、全くの無傷というのは予想外だ。
冷や汗を垂らしながら私の元へ歩いてくるエンジェルギルディに向かい、何発か光球を撃ち込んでいく。 が、放った光球は全て弾かれ海へと着弾し大きな水飛沫を上げていった。
エンジェルギルディが歩くたびに体に大きなプレッシャーを感じる。
その時、エンジェルギルディが突然振り返り腕を大きく上げた。
私シャドウに背中を見せて……余程余裕があるらしい。
「焦らないでくださいまし。ワタクシ、気が変わりましたの。今この姿の力を試したいだけですので」
不敵に笑った瞬間、エンジェルギルディは海に向かって腕を振り下ろす。
その瞬間、辺りに暴風が吹き荒れ、空にかかっていた雲が消え去り……海が真っ二つに割れてしまった。
水平線の先まで二つに割れた海は続いており、やがて水の壁は崩れていき海は元の姿へと戻っていった。
嵐と志乃も、シャドウにフレーヌも、もちろん私も驚愕のあまり言葉を失う。
私達とは対照的に、エンジェルギルディは喜悦の声を上げた。
「素晴らしいですわ……! 素晴らしいですわー!!こんなにも素敵で、優雅で、可憐な力がワタクシに宿っているだなんて……」
巨大化した天使の羽を展開し、天高く浮遊した。
そして━━━━
「お━━━━━━━━っほっほっほっほ!!」
エンジェルギルディが口元に手を当て、大きな笑いを上げた。
自信に満ち溢れたその笑いは、奴が言っていた優雅なお嬢様とは程遠い気がするが……。
「これ程までに笑ってしまったのはスタッグギルディとあった時以来ですわ……うふふ」
笑い終えた後、何かをポツリと呟いたエンジェルギルディは再び小さく笑う。
そして、浮遊しながら両手を広げると、その周りに魔法陣のようなものが大量に現れた。 上に横に下に……四方八方に現れた魔法陣をよく見ると全てお嬢様属性のエンブレムが入っている。
これを使って何をするつもりなの……!?
「本っっ当に素晴らしいですわ。 感じますわ、感じますわ! ワタクシに力が……愛が溢れていく!!」
その時、無数に現れた全ての魔法陣が眩く光りだす。
ここまで来て、ようやく私にはわかった。
これから物凄くやばい事が起ころうとしていると。
予感通り、突如として魔法陣の一つが弾け飛び、その残骸が光線となって地上、海上へと降り注ぎはじめる。
『いけません、すぐに転送を!』
「間に合わないわ!!」
フレーヌの言葉を遮り、シャドウはノクスアッシュを手にした。
一つを皮切りに、エンジェルギルディの周りにあった無数の魔法陣が次々と弾け、数えきれないほどの光線が同じように地上と海上に降り注ぎはじめる。
ここは有名なアクアラインのパーキングエリアなだけあって一般人も多く、光線が落ちてしまったらかなりの被害になってしまう。
「クレバスドライブゥゥ!マキシマム━━━━ッ!!」
地上へと迫る光線の雨を、その地上からの必殺技を使って相殺していく。
「シャドウお願い!」
「言われなくてもわかってるわ!」
私が撃ち漏らした光線は、シャドウによって直接叩かれなんとか被害を出さずに光線の雨を耐えていく。
必死に私達が光線の処理をしている中、エンジェルギルディは上空で笑みを浮かべていた。
「いかがかしら? ワタクシの、''
エリシオンって……楽園!?
とんでもなく嫌味ったらしく悪趣味な名前を……!
余裕綽々のエンジェルギルディに反発するかのように、全ての光線を撃ち落とした私とシャドウは上空を睨む。
「ご自慢の新しい技も残念ながら不発に終わったようね」
小馬鹿にするようにドヤ顔を決めるシャドウ。
「本当に残念ですわね……」
首を振った後に両手で顔を隠すエンジェルギルディ。
本当に残念そうな顔をしていたけど、両手で顔を隠す直前に私は確かに見た━━━━不敵な笑みを浮かべるエンジェルギルディを。
その瞬間、海からいくつもの光線が飛び出し私とシャドウへと向かってきた。
「きゃあああっ!?」
「っあああ!」
『奏さん! 黒羽さん!』
まず私に、そしてシャドウに、いくつもの光線は次々と飛来し反応が遅れた私達は為す術なく被弾していった。
「あ……ぐっ……!」
膝から崩れ落ち、意識が朦朧としてきた。
かなりの弾数を身に受けたけど……一発一発の威力も想像以上に高いものだった。
そんな中、エンジェルギルディはゆっくりと降下するとヒールのような音を響かせ着地した。
「呆れましたわ……本当に呆れましたわ! まさか
声のトーンから察するに、エンジェルギルディは煽りではなく本当に呆れているようだ。
意地でも奴に一発撃ち込んでギャフンと言わせたいところだけど……エリシオンのダメージが相当で立ち上がる事ができない。
基地からフレーヌと志乃が呼びかけているのが聞こえるが、意識が朦朧としているせいで何を言っているかまでは判断できなかった。
「今回はこの力を試すだけの予定ではありましたけど、正直あなた達にはガッカリしましたわ」
いつのまにかにエンジェルギルディは属性力を奪い取る光輪をその手にして、こちらへ歩きはじめていた。
「情けないですわ、本当に情けないですわね」
とうとう倒れる私の目の前にまで移動してきたエンジェルギルディは、光輪を掲げる。
『聞けかなでえぇぇぇぇッ!!』
そう呼ぶな、と注意したのは何度だろうか。
ツインテール属性を奪われる直前に聴こえてきた嵐の声に、消えかかった意識が取り戻される。
『俺はまだお前に……クリスマスプレゼント渡してねえんだぞおぉぉぉぉッ!!』
音割れを起こしそうな程の大絶叫とほぼ同時に、エンジェルギルディが光輪を振り下ろした。
しかし、光輪は私の身体を通り抜ける事はなく地面に叩きつけられると、その場で爆発し跡形もなく消えた。
「ッ!……へえ、避けられますの」
一瞬慌てた様子を見せたが、エンジェルギルディはすぐに平静となりニヤリと笑う。
エンジェルギルディもそうだが、今は嵐が言ったことのほうが頭の中にあった。
「嵐……クリスマスって、何日前の事言ってるわけ?」
口からの言葉はこうだが、内心少し嬉しく感じている自分がいて不思議だ。
まったく、予想外過ぎて一気に意識が戻ってきてしまった。
『渡す機会をずっと考えてたんだよ。 お前にマフラーを貰ったあの日からずっとな』
マフラーをあげたのはセドナギルディを倒した後、お母さんに付き合って買い物に行った日だったか。
そういえばエレメリアンが出たあの時、嵐が何か言おうとしていたっけ。
今の今まで私も忘れていたけど、嵐に悪い事をしてしまったかもしれない。
『俺のプレゼントが何か今教えてやる! 俺のプレゼントは髪を結うためのリボンなんだ。このリボンを無駄にはしたくねえから、絶対にツインテール属性は……渡すんじゃねえぞ!』
女の子へのプレゼントの中身を先に言っちゃうなんて、センスがないにも程があるけど……何故だか凄く感情が高まってくる。
「ならそうならないために私に協力、よろしくね!」
『ああ!』
エレメリンクが解除され、私はツインテールへと戻った。
そして再び、テイルブレスを天に掲げる。
「『エレメリンク、ポニーテール!』」
光の繭に包まれると一瞬にして髪型がポニーテールへと変わり、ブライニクルブレイドを手に持つ。
そしてすぐさま、先程と同じようにバイザーで変身プロセスを踏むと、属性力がブライニクルブレイドへ流れ込んでいく。
「ブレイクレリ━━━━ッズ!!」
刃がスライドし、光の刃が形成されるまではいつもと同じだが、バイザーを使った事によって光の刃は元の刀身全てを覆い尽くしブレイドは巨大な光の剣となった。
「ブライニクルスラッシャ━━━━マキシマムウゥゥゥゥゥッ!!」
光の刃によって何十メートルもの大きさとなったブレイドを袈裟懸けに振り下ろし、エンジェルギルディに命中すると大爆発を起こした。
「はぁ、はぁ……」
大きなダメージを負っている状態で必殺技を放ったせいか、今までにない疲労感に襲われて膝をつく。
正直、もう闘う元気はこれっぽっちもない。
『エンジェルギルディの反応は……消えていません……』
わかってはいたけど、言葉に出して言われると絶望感が数倍にも跳ね上がる。
フレーヌの通信を待っていたかのようなタイミングで立ち込める土煙からエンジェルギルディが姿を現した。
例によって全くダメージを受けている様子がない。
「少しだけ焦りましたわ、まさかこれほど力が残っていたなんて。やればできるではありませんの」
パチパチと煽るように拍手すると、エンジェルギルディは大きな羽を目一杯に広げる。
また何かするのか、そう警戒する私達を見て僅かに微笑むとエンジェルギルディはまたも天高く浮遊する。
「先程申し上げた通り、ワタクシは今の力を試したかっただけですわ。本当の決着はまた後ほど……行うとしましょう」
そう言うと、エンジェルギルディは頭上に極彩色のゲートを生成してその中へと消えていった。
そのゲートが消えたと同時に私は脱力し、仰向けに倒れた。
エレメリアンを仕留められなくて悔しい思いはたくさんした。
だけど━━━━エレメリアンが本気で闘わずに撤退してくれた事にここまで安心した事は、今まであっただろうか。
◇
淡い水色のスーツケースへ、必要分の衣服を詰めていく。
化粧水や美容液、乳液も忘れずに入れておかないと……あ、オーストラリアは乾燥してるだろうし保湿クリームも必要だろう。
エンジェルギルディが最終闘体となってからはや二週間が経ち、今日の日付は二月二日。……なんだかツインテールって感じのする日だ。
いよいよ明日の夜にオーストラリアに向けて出発するわけで、今は持っていく物の最終確認中だ。
正直、あんなタイミングで最終闘体になったエンジェルギルディが気がかりでしょうがないけど、JKとしての私が修学旅行を無駄にするなと心の中でうるさくて……!
フレーヌ達は''修学旅行中は任せて''と言ってはくれたけど、テイルギアは外せないよね。
修学旅行を楽しみつつ、私も万一の時に備えておく。
小さくガッツポーズしていると、部屋のドアがノックされお母さんの声が聞こえてきた。
「準備終わった?」
「だいたいね」
部屋に入ってきたお母さんは何かを手に持っているようだけど……なんだろ。
「実はお母さん、奏の修学旅行羨ましいんだよねー」
「あー、お母さんは行ってないんだっけ」
「そうそう。 その頃は私は大女優で大忙しだったから!」
「あーはいはい。 自慢なら帰ってきてから聞いたげるから」
お母さんとのこのやり取りも四日間はできなくなると思うと少しだけ寂しく感じるなあ。
ただ年を考えずにぷくーっと頬を膨らませるのは如何なものか。
若い反応をするお母さんだったが、机の上に置いてある物に気づくとニヤニヤしはじめる。
「あらあらー、もしかしてこのプレゼントはー嵐君から貰ったのかなー?」
なんとなく開封し辛いからって机の上に置いとくんじゃなかった。
ほんと嵐絡みになると上機嫌になるのね。
「別に友達同士プレゼントのやり取りくらいするでしょ」
「……少しくらいはこう……男の子からのプレゼントの意味とかを考えなさいよ」
急にテンションが下がったお母さんは大きなため息をつくと、勝手にスーツケースを閉じてトボトボと部屋から出て行った。
え、いったい私が何をしたと!?
「……」
置いてあるラッピングされた箱を手に持ち、包装をビリビリと破いていく。
中身を知っているせいで大してワクワクもしないけど、今思えば男の子からのプレゼントって初めてだった。
「白いリボンか……」
私がツインテールにしていた時はバレッタだったからリボンは使った事にないんだよね。
「……闘いが終わったら、ね」
取り出したリボンを箱に戻し、机の引き出しにしまった。
いつか闘いが終わったら、その時にテイルホワイトではない私のツインテールをみんなに見せられる事を信じて。
しょーがないからこのリボンはその時に使ってあげよう!
腕を組んで頷いていると、スマホがブルってフレーヌアプリからの通知が表示された。
修学旅行前夜だし、パパッと倒して早く寝てしまおう。
待ってなさい、修学旅行!
◇
アルティメギル基地、中央の大ホール。
そこでは残りの
しかし、程なくしてテイルホワイトとテイルシャドウに翻弄されると最後はアンリミテッドチェインの必殺技で爆散する。
テイルホワイトが撮影していたアルティロイドに帰るよう促すと、モニターはブラックアウトした。
「あーあ、まーたやられちゃったよ……」
エンジェルギルディのいない大ホールで上がる声は覇気が無く、テイルホワイト達に勝てる事なんて微塵も思っていないようだ。
「残りの隊員は俺を含めて五。 もう終わりじゃね?」
若い男を思わせる声の持ち主がテーブルに足を乗せると、椅子の前の脚二本ををを浮かせて話した。
その横に座る女性型のエレメリアンはその様子を見て大きな溜息をつく。
「キジムナギルディ。あなた、少しは隊の事を心配したらどうなの?」
キジムナギルディと呼ばれたエレメリアンは茶色の体を揺らすと、アクロバティックな動きで椅子から飛び降りる。
「いやいや……
キジムナギルディは男性型のエレメリアンにしては珍しくシャープな外観であり、筋骨隆々のエレメリアンが多かった
身長も高くなく、成人男性よりも少し小さい程度だ。
そしてエルフギルディは、女性の魅力を遺憾なく発揮した容姿をしている。
長い髪はもちろんのこと、エレメリアンとは思えない可憐な顔立ち、胸部を押し上げる豊かな双丘、そして耳を強調するように被さったパーツ。
見た目だけでは彼女が戦闘するなどとても思えないだろう。
「こんな事ならサラマンダギルディがやられた時に、さっさと
「そんな事言ってると……!」
先程まで呆れた様子でキジムナギルディを見ていたエルフギルディだが、突如表情を強張らせる。
「どしたよエルフギルデ……っああああ!?」
後ろを振り返った瞬間、キジムナギルディは吹き飛ばされ壁へと激突した。
基地が大きく揺れ、エルフギルディは思わず立ち上がる。
「随分と愉快なお話をしているようですわねえ」
「た、隊長!?」
依然として最終闘体の
「確かに
身をくねらせ、わざとらしく悲しむエンジェルギルディ。
そして彼女は起き上がったキジムナギルディの元へと歩み寄って話しかけた。
「入りたいのならどうぞご自由に。''元''マーメイドギルディが支配する
笑いながら話しているが、キジムナギルディは言い様のない恐怖に襲われ首をブンブン振り続ける。
その様を眺めていたエルフギルディはエンジェルギルディの言葉に引っかかりを覚えた。
「あの隊長。 ''元''マーメイドギルディ……とはどういう事でしょう?」
機嫌を損ねない様、恐る恐る質問した。
「マーメイドギルディはツインテイルズとの闘いで''最終闘体のエンジェルギルディ''になりましたわ」
「は!?」
衝撃の事実を告げられ、思わず声を上げるエルフギルディ。
同じエレメリアンが存在するという禁忌に驚きを隠せない二体とは対照的にこちらのエンジェルギルディはえらく楽観的だった。
「そんなに驚く事ではありませんわ。あちらはあちら、こちらはこちらでよろしいですわ。それに……」
隅にある廊下へと歩き出し、ボソッと最後に呟く。
「あの科学者の性格上、永くない事はわかっていますもの」
ホール歩く音にかき消され呟いた言葉は二体へと届かなかったが、エルフギルディは確かに見た。
哀しそうな顔しているエンジェルギルディを。
だいぶ更新が遅れてしまいました。
待ってくれていた方には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
その間に発売されました俺ツイの16巻!
やはり熱い! 新たな戦士の登場や新たなチャラ男、謎のゼっちゃん!
見所満載なのでまだ読んでいない方は是非!