奏達のクラスメートであり、孝喜も所属するサッカー部のマネージャー。おっとりとした性格と抜群に似合ったポニーテールがとても良い評判を得ている。 密かに孝喜に想いを寄せているが、奏たちとも仲が良く少々複雑な心境を抱いている。
真部
奏達のクラスメートでありサッカー部所属。 ポジションはミッドフィールダー。 背が高くなかなかモテる。クラスや部活内のムードメーカー的存在だが調子に乗りやすい性格。 奏曰く長身の真部。
武川
奏達のクラスメートでありサッカー部所属。 ポジションはゴールキーパー。メガネをかけている。 遠慮深い性格だが、テイルホワイトの事になると熱い一面を見せる。 奏曰くメガネの武川。
彩は以前にも登場しましたが、サッカー部の二人は班の人数要員的存在なので今後も登場するかは微妙ですかね……。
非常にマズイ。
一生に一度の修学旅行……フレーヌと黒羽が守ってくれるとは言っていたけど、このままでは私はテイルホワイトになってしまう……!
その原因としては、これからみんなで向かう季節外れの『雪とハロウィーンの祭り』にある。
昨日の夜ごはん前に私と志乃は近くでその祭りが開催されているのを知り、今日の自由行動の中で少し立ち寄ろうという話になった。……そこまではよかった。
だけど、私は見てしまった。
ハロウィーンの仮装の中に紛れて悠然と会場を歩き回るエンジェルギルディの姿を!!
その事を志乃に伝えようとしたが、時すでに遅し。
自由行動で一緒に回る班員の彩、嵐、真部、武川に話をしてみんなノリノリで行くことにしてしまったらしい。
もはやみんなのセンスを疑わざるを得ない……じゃなくて、この空気の中で私は拒否することもできずについてきてしまった。
そう……この説明の最中も私たちの着実に祭りへと近づき、会場の前へと到着してしまっていた。
「うおー! 人もかなりいるな」
長身の真部が手を目の上に添えて、遠くを眺めながら会場を見て一言。
「こりゃはぐれたらヤバイかもね。 みんな、一応集合場所決めておこう」
メガネの武川が見た目通りの冷静さで迷子になった時の対処法を説明しはじめた。これはしっかりと聞いておいた方がいいかもしれない……。
「ねえねえ、みんな。 仮装してる人と記念写真取れるみたいだし、行ってみよ」
彩が指差した方角へ視線を向けると、そこには近年のハロウィーンを象徴するかのような人たちがいた。
ちゃちいカボチャの仮装から、無駄に凝ったゾンビの仮装などがこの明るい昼間から会場を練り歩いている。
「……」
目を凝らしてみても、エンジェルギルディの姿は見えなかった。
そりゃそうだよね。 昨日いたからって今日もいるとは限らないわけだし、少し不安だけどあまり考えなくてもいいかもしれない。
少しだけ気が楽になり、みんなの後をついて行く。 しかし、ここで重大な事実に気づく。
「嘘、スマホがない……」
まったく、ついていない。
もしかしたらここに来るまでの何処かで落としてしまったのか、はたまたホテルへ忘れてきてしまったのか。
ホテルに忘れたんならまだいいけど、海外でスマホを落とすなんて何があるかわかんないしヤバイんじゃないのかな。
軽くショックを受けトボトボと歩いていると通行人と当たり尻餅をついてしまった。
「痛っ……」
スマホに続いて本当に運がないな、今日は。
こんな風に尻餅をつく事がわかってればスカートなんて履いてこなかったんだけど。
「申し訳ない。怪我はないかね?」
「は、はい。 大丈夫です」
渋い声とともに差し出された手を取り、立ち上がろうとしたところで、ある違和感を覚えた。……あれ、いま日本語で話された?
相手を確認すべく、顔をあげたがそれは叶わなかった。
「カ、カボチャ……?」
私にぶつかってきたのは先ほど会場の入り口から見えたちゃちいカボチャを被った人だったらしい。
カボチャの人は紳士的に手を差し伸べてきてくれたので、とりあえず私は手を取り立ち上がる。
「いや、すまないね。 余はこのフェスティバルの主催者で、色々と急いでいたのだ」
流暢な日本語で話すところを見ると、やはり彼は日本人だろうか。
なかなか渋い声なのに、もう少しカボチャの被り物にお金をかける事は出来なかったのだろうか……。
彼が被っているカボチャはさしずめ幼稚園児の書いたジャック・オ・ランタンと言ったところだ。
私は手で服についた汚れを払いながら、頭を下げる。
そこでカボチャの主催者は何かに気づいたのか、急に私から距離をとってしまった。
「君は、仮装はしないのかな?」
「私は別にそういうのは興味ないんで……」
二月に、修学旅行先である海外で、ハロウィーンの仮装、なんてする人はいないでしょう。
カボチャの主催者は回答を聞いて肩を震わせると、頭を抱え苦しみはじめた。
「何故だ……!? 余のフェスティバルで仮装に取り憑かれない者などいないはず……!」
このカボチャの主催者、よっぽど仮装が好きらしい。
それなら尚更、しっかりとハロウィーンの季節である十月にこの祭を開催してほしかった。 それなら私も少しは仮装する気になったかもしれないしね。
未だに頭を……カボチャを抱えるカボチャの主催者を慰めようとしたが、その前に彼は自ら立ち上がり空を眺めはじめた。
「えっと……ここは人がいっぱいいるし、とりあえず移動しましょうよ」
人の流れの中で二人も同じ場所に居続けるのは明らかに邪魔になってしまうだろう。
「余は世界に仮装を響かせ、浸透させたと思っていたのだが……。一人の少女を仮装させる事が出来ないとは余もまだまだだった……」
完全に放心状態だ……。
え、これって私のせい?
「……いや余には新たな目標ができた。それは部屋に閉ざされた君の仮装欲を解放し、仮装に目覚めさせる事だ」
なんかとんでもないことになってきた。
「そして君にもこのフェスティバルの素晴らしさを……ん? 何故だ……君からは仮装どころか、全く属性力を感じないぞ」
少々呆れ気味でカボチャの主催者の話は聞き流していたが、ある単語だけはしっかりと頭の中に残る。
「属性力って……! あ、あんたまさかエレメリアン!?」
「いかにも。余は
名乗りとともに、ジャックオランタ……略してジャックギルディは被っていたちゃちいカボチャを破裂させ本当の素顔を晒した。
だが晒された面は変わらずカボチャだった。マトリョーシカかなにか……あれ、なんか前にも同じようなことがあった気がする。
「さて、属性力を持たぬ悲しき少女よ。 今から余が君の属性力を解放してやろうではないか」
先ほどまでの紳士な対応は何処へやら。
ジャックギルディは両手をグーパーさせ、なんとも気持ち悪い動作をしながらジリジリと近づいてくる。
正直言ってかなりキモい。
変身してぶん殴りたいところだけど、大観衆の中でそれは出来ないし、取り敢えず逃げるしかないか。
そうと決まればと走り出そうとしたその時、空から頼れる声が聞こえてきた。
「ノクスアッシュ!」
「うおお!?」
テイルシャドウが降下と同時に斧を振り下ろし、かすり気味だがジャックギルディに命中させる。
ジャックギルディの反応をフレーヌが基地で感知しすぐさま来てくれたみたいだ。
「あなたは逃げなさい」
「うん、ありがと」
フレーヌとシャドウはあの時に言った通り、私の修学旅行を守ろうとしてくれている。
とはいってもやはり闘いは気になるので、ある程度離れた位置から行く末を見守る事にした。
「Oh!! Tail shadow!?」
「Oh my god!!」
「Help me!!」
ジャックギルディを見てもあまり動じていなかった人々が、シャドウが現れた途端悪魔でも見たかのような表情をして走り去っていく……。
やっぱ日本だけじゃなくて海外でも色々な事にお金を請求してたんだな……。
でもまあ、そのおかげで周りに人がいなくなって闘いやすくはなっているみたいだけど。
「余の属している
エンジェルギルディの部下でありながらも、こうして誇りを持って闘うエレメリアンもやはりいるんだと、少しだけ感心した。
闘う気満々のジャックギルディだが、それと相対するシャドウの表情は穏やかだ。
ていうか何気に
「最近は私も不甲斐ない姿を見せてばかりだったけれど……もうそれはお終いよ」
話が終わると同時にシャドウは斧を振りかぶると、そのままジャックギルディに向かって疾駆した。
「仮装は簡単な物から始めるがよし……!」
元々笑っているように見えていた顔で表情は読み取れないものの、ジャックギルディが良からぬ事を考えているのは雰囲気でわかった。
「はあああっ!!」
そんな事はお構いなしに、シャドウは振り上げていた''竹箒''を振り下ろす。
「え、箒?」
振り下ろし、ジャックギルディに命中したのは斧ではなく、いつのまにか魔女が空を飛ぶのに使うような竹箒へと変わってしまっていた。
当然、屈強なエレメリアンに対しての箒攻撃は全く効果がない。
「あなた、何かしたわね」
「フフ……君には魔女の仮装が似合うと思ったのでね。どうかな、小道具を持つだけでも気分はでてくるであろう?」
こんな暑い中でテイルギアを纏いながら箒を持ったところで、そんな気分にはならないと思うけど……。
フレーヌがジャックギルディの能力を解析しているのか、シャドウは小声で何かを話し頷いている。
「本当にノクスアッシュじゃなくただの箒ね。 仮装属性……厄介な能力を持っているわ」
「まだまだ、余の能力はこんなものではない。 フウゥゥゥンッ!!」
「……これは!?」
まさか……ジャックギルディが三角形の目を光らせると、シャドウのテイルギアの形が変わってしまった。
フォースリボンはそのままだが、それを隠すように鍔が広く先がクルンとした魔女が被る帽子を被っていた。
それだけじゃない。 いつのまにか、肩には黒いローブ、体には黒いミニワンピ、足にはつま先が尖った靴を着用している。
シャドウは、いわゆる魔女……というより魔女っ子の定番の格好をしていた。
突然の事で困惑したシャドウは思わず自分の体を触り感触を確かめる。
「本当にこの服を着ているわ……。 私が……仮装している……!?」
嘘……これ幻覚じゃないって事!?
「余の目に狂いはなかった。 君には魔女っ子が似合うと初めて見た時から思っていたのだよ」
変態の意見に賛同するのは悔しいけど、黒いツインテールと魔女の衣装は調和しており確かによく似合う。
当のシャドウは最初こそ戸惑ったものの、それ以降は特にきにする様子もなくジャックエッジを手に顕現させる。
「どうやらフォトンアブソーバーのおかげで形は変わってもテイルギアの機能自体はなくなってる様子はないみたいね」
「余は仮装した娘と勝負するのが喜びだ。鎧を無効化すると勝負にならないであろう」
ジャックギルディが指をパチンと鳴らすと、今度は剣が木の杖へと変わってしまった。
「魔女っ子に剣は似合わないと思わないかい?」
シャドウは舌打ちして杖を放り投げる。
確か武器は私たちのようにフォトンアブソーバーで守られていなかったはず……だから完全に本物の箒や杖になってしまうんだろう。
「安心してほしい。余も武器を使うことなどないのでね」
ただ……さっきのジャックギルディの言い方だと、本気を出したらテイルギアを完全に無効化してただの仮装にできるのかもしれない。
「さて、そろそろはじめるとしよう」
ジャックギルディは宣言通り武器を使う気はないようでボクサーのような構えをとる。
「
だから季節外れだってば!
シャドウとジャックギルディそれぞれが互いめがけて走り、拳と蹴りが入り乱れるインファイトが始まった。
「魔女っ子に格闘術は似合わんな!」
「余計なお世話ね!」
正拳突きをうまく交わしたシャドウはハイキックをかましてジャックギルディを怯ませる。……ミニワンピ着てるからあんまり脚をあげると結構危ういんだけど。
「このはしたない魔女っ子め! 少しは羞恥心を持ってみてはどうか!」
どうやらジャックギルディの位置からだとモロ見えらしい。
「私のパンツを見た者はそれなりの請求をさせてもうし……問題ないわ!」
「問題大アリではないか!?」
これに関してはエレメリアンのほうが正しいような。 いやでも、魔女っ子の仮装をさせたのはジャックギルディだったよね……。
何はともあれ、祭りに来ていた客はシャドウが現れた途端逃げていったし、誰もシャドウの下着は見ていないだろうな。
お金払わずに済んでよかったね!
「はあっ!」
「む、またそのようなはしたない攻撃を!」
シャドウ得意のドロップキックを顔面に受け、ジャックギルディは吹っ飛び祭りの看板へと激突した。
粉々になった看板を掻き分け、フラフラと立ち上がるジャックギルディ。
「ぐう……。 余が魔女っ子にここまで押されるとは……このままではテイルホワイトを仮装させられん」
お、何か気になる事を言いだした。
この私にどんな仮装をさせるつもりなのか……。
「余はテイルホワイトに……いや、今はやめておこう」
おおい! そんな中途半端なとこで切ったらかなり気になるじゃん!
ジャックギルディが何を言いかけたのか気になりソワソワしたのは、どうやら私だけではなかったらしく……。
「どうせなら最後まで言ったらどう? ホワイトに会う機会はないだろうけど」
おお、シャドウも気になるんだ。
威圧感に耐えられず、壁に追い詰められたジャックギルディにシャドウは壁ドンを披露した。……壁ドンといってもシャドウは手ではなく右脚を使っているのだけど。
「なんて破廉恥な魔女っ子……! やめてくれ、モロだ! モロだああぁ!!」
うっわぁ……。
女の下着を見てあそこまで取り乱す人(?)も初めて見たけど……ミニワンピ着ながら堂々と脚をあげる人も初めて見た。
「さて、私のパンツを見たあなたにはいくら請求させてもらおうかしらね」
「もはや君は余に見せつけているではないか! やめてくれ、余を逃がしてくれ!」
「フフフ……逃がさないわよ」
魔女っ子に仮装させなければこんな展開にならなかったんだろうな……。 普段のテイルギアじゃスカートじゃないし。
それにしても、こうして遠くから見てるとエレメリアンが女の子にカツアゲされてるように見えるな……いや合ってるか。 そのまんまだよね。
『メンディーけどウチの出番はナウしかー!』
「!?」
突如として暗号めいた言葉が響き渡ると、先ほどまでシャドウがいた所は爆煙にのまれてしまった。
シャドウは……うまく避けられたらしく無事みたいだ。
「
最後のヒラ……単純に考えると、まさか残ってるのはエンジェルギルディとジャックギルディ、それと今来たエレメリアンだけって事!?
少年のような高い声の咆哮を響かせたエレメリアンはやがて煙の中から現れる。
「あーマジでテンサゲなんですけどー? 天下のツインテール戦士がウチの兄弟虐めるとかマ? ……てかなにそのかっこ、ジワるー」
「……」
な、なんだこの雪だるま!?
ギャル……なのかな。
「まって、ここよきじゃない! インスタ映えでイイねもらいまくりよー」
いや、ギャルっぽくはあるけどこの話し方はJKだ!
周りの景色を見て、雪だるまは何処からか自撮り棒を取り出して周りが写るようパシャパシャと自撮りしはじめた。
「君は相変わらず自撮り第一なのだな。助けてもらい感謝するぞ」
「ちょ、今いいとこなのに話しかけるとかどんだけかまちょなの? 大事な時間邪魔されてマジイラオコだわー」
「ぐは!?」
露骨に不機嫌になった雪だるまは持っていた自撮り棒でジャックギルディを叩きつける。
ただの自撮り棒なのでエレメリアン的には痛くはないはずだが、ジャックギルディは頭を抱えてうずくまってしまった。
「や、テイルシャドウ♪ ウチはジャックフロストギルディ。 ウチとしてはアンタとやるのはなしよりのなしでぴえーんな訳で病んでるんだよね。でもま、ウチにもワンチャンあるって隊長に言われたんだけどぉ……そマ?」
「な、何を……言っているのかしら」
話す内容がアレすぎて忘れかけたけど、あの雪だるまの名前はジャックフロストギルディと言うのか。
カボチャのほうもジャックて名前がついていたしとてもややこしいし、フロストギルディでいいや。
「……あーね。 ウチの言う事なんか知らないってわけね、おけまる」
シャドウは純粋に何を言っているのかわからないだけだろう。
ちなみに私自身は使いはしないけど、学校で何回か聞いたことあるのでだいたい言っていることはわかる。
「ウチもまあインスタ映えスポットどちゃくそ歩きまくりだし。 あーは言ったけど足腰にはかなり自信ありありなんだよねー」
フロストギルディは小さく短い手足をプラプラ振ると、いきなりシャドウへ殴りかかる。
しかしそこは流石のシャドウ。
いくら不意打ちとはいえど、しっかりと反応してフロストギルディの拳を握り押さえつけた。
「痛い痛い! これちょーやばたに! やばたにえん!!」
思いを汲んだのか、はたまた何を言っているのかわからないからか、シャドウはフロストギルディをそのままジャックギルディへと投げつける。
魔女っ子の格好をしているのにここまでそれっぽい要素が全くないのは逆に凄くないだろうか。
「少しは魔女っ子らしくしたらどうかね!?」
武器が使えなくなったら徒手空拳で挑まれるのは少し考えればわかるはずだけど……今文句を言っているジャックギルディはそれを思わなかったのか。
その後、シャドウは二対一ながらも優位に闘っていく。
しかし私は━━━━
「このままならシャドウは勝てるけど……」
一人で闘うシャドウを見て、私は鬱々としていた。
そしてチラリと右腕を見ると、いつのまにかテイルブレスが可視化しているのに気づいた。
◇
奏が隠れる場所からそう遠くない所にある屋台の裏で、志乃たちは固まっていた。
志乃や孝喜はエレメリアンを間近で何回も見ているため、普段と様子はあまり変わらない。 が、しかし……他のメンバーは違った。
「魔女っ子のテイルシャドウ、なかなかイケるな……」
真部は手に持っているスマホで普段のシャドウと比較しながらポツリと呟いた。
「まあ見た目はいいからね。それより画像は削除したほうがいいよ。 テイルシャドウに見つかったら最後、かなりの額を請求されると思う」
メガネを光らせて答えるは武川。
「守護神なのに私の後ろに隠れてるから全然カッコよくないよ、武川君」
チラチラと戦況を見つつ彩は呆れ顔だった。
「ねえ志乃。さっきから奏と連絡取れないけど、大丈夫かな」
「この近くにいるとは思うけど……」
エレメリアンが現れて騒ぎになる前に逸れてしまってから、志乃も何度か着信を入れていたものの奏からの返事はなかった。
地球上ならどこでも通信できるフレーヌアプリを介しても返事がないと言うことはスマホを忘れてしまったのか……それとも返信できる状況じゃないのか。
(フレーヌならわかるだろうけど、黒羽のサポート中だし……)
奏の事を心配する志乃だが、取り敢えずはこの場から避難する事を皆に提案する。
「このまま此処にいると何が飛んでくるかわからないし、取り敢えず離れよっ!」
普段の志乃からは想像できない真剣な顔で言われ、孝喜以外の三人は互いの顔を見た後に力強く頷いた。
皆の安全とシャドウの評判を考えての最善の選択に孝喜も勿論同調し、隙を見て一人ずつ離れ出す。
「俺らも行こうぜ。 黒羽ならまあ……大丈夫だろ」
「でも奏が……!」
孝喜は志乃にも避難を促すが、連絡の取れない奏を心配してその場から動こうとしない。
「いざとなったら伊志嶺にはテイルギアがあるし心配ないだろ」
「そう、だよね……」
少しだけ安心したのか、志乃もようやく立ち上がり皆が避難した方向へと駆けだす。
「ぬおおお!?」
しかし、そこへジャックオランタギルディが吹き飛ばされ屋台を破壊した。
思わず足を止める志乃と孝喜。
「ぬうう……魔女っ子とは思えぬ脚力よ。 ……んん?」
そして運の悪い事に、二人はジャックオランタギルディの目に止まってしまった。
パイプをどかしながら立ち上がると、ゆっくりと二人へと近づくジャックオランタギルディ。
シャドウが気づき止めに入ろうとしてもジャックフロストギルディと大量の戦闘員に阻まれてしまう。
「こうなったら一気にフルパワーで吹き飛ばすわよ!」
『いけません! 近くにいる志乃さんたちまで巻き込まれてしまいます!』
フレーヌの忠告が入り、広範囲の攻撃ができないとわかったシャドウは仕方なく一体一体戦闘員を倒していくがそれでは間に合わない。
眼前まで迫ったジャックオランタギルディから志乃を庇うように孝喜は前へと出る。
「……先ほどの少女と同じように君たちから全く属性力を感じない。 君たち、あの少女と知り合いか?」
テイルギアと同じようにリンクブレスにもイマジンチャフが搭載されている。
集団の中では狙われにくく、気づかれることはないが、こうして相対してしまうとエレメリアンもその不自然さに気づき逆に目立ってしまうこととなる。
勿論その不自然を理解し、頭のキレるエレメリアンもいた。
「属性力を持たぬ人間が生まれるのは余らに奪われた場合のみ。だが、シャークギルディ部隊、及び余の
目のようにくり抜かれていたカボチャの双眸が赤い光を放つ。
「この世界の科学レベルでは属性力を隠すことなど不可能だろう。あの少女と君たちは、テイルホワイトに関係があるみたいだね」
双眸が赤く光ったその時からいつのまにか志乃は悪魔っ子の、孝喜はフランケンシュタインの仮装をさせられていたが、そんな事を気にしている場合ではなかった。
「どうかな? 合っていると思うのだが。どちらにせよ、余が属性力を頂くのは変わりないのでね」
属性力奪取のための光輪を持ち、二人の頭から通そうと高く振り上げると、容赦なく振り下ろす。
「ぶー。 それはハズレ」
「何ッ!?」
背の高い孝喜の頭に触れるか否かというところで、光輪は止められた。
答えを否定する効果音を発した声とともに、横から伸びた腕にジャックオランタギルディも思わず声を上げる。
その腕を見てすぐに誰かわかった志乃と孝喜は安堵の息を漏らした。
テイルホワイト・マキシマムチェインがそこにいたのだ。
◇
志乃と嵐の格好とか色々ツッコミたいところだけど、今は目の前にいるジャックギルディを離すのが先だ。
ジャックギルディを持ち上げ、大量のモケモケの中へと投げ飛ばす。
「ぐおおおおお!?」
その衝撃で大量のモケモケは吹き飛び、消滅していく。
「凄い連絡したんだよ!」
「ご、ごめん。 スマホ落としたか忘れてきちゃった見たいで」
どうやら結構心配かけてしまったらしい。
これは後で何かしら奢ってご機嫌とりしとかないとだね。
横にいる嵐に視線を移してみる。
「………」
「な、なんだよ……」
「フランケンシュタイン、似合ってないね」
「違っ! これはあのカボチャ野郎が勝手にやった事で!」
おー、嵐がここまで焦ってるのはなかなか見ないな。
尚も弁解する嵐を見て、私はフッと息を吐き話しかける。
「志乃を守ろうとしたのは、なかなかかっこよかったよ」
必死に弁解していたが急に嵐は目を逸らし頰を軽く掻いた。
「ま、まあ……」
「それじゃ、関係疑われるしそろそろ逃げて。 ジャックギルディはなかなか頭が良さそうだからね」
なんか嵐が言いかけていたが、疑われている今、私たちずっと一緒にいるとそれは確信に変わってしまう。
何故か志乃は励ましながら、嵐はガッカリとした様子で他の三人の元へと歩いていった。
ここで今日初めてフレーヌから通信が入った。
『奏さん……一生に一度の修学旅行なのに、いいんですか?』
えらくテンションが低いのは旅行前に言ってくれた約束の事があるからだろう。
「ポジティブに考えてみて。 修学旅行中にテイルホワイトになるって、他の人は経験出来ないんだよ?」
『それは確かにそうかもしれませんが……』
「それにさ」
「モケモケ━━━━ッ!!」
襲ってきたモケモケにアバランチクローユニバースを叩き込む。
いいところなんだから邪魔しないで。
「んんっ。それにさ、闘える力があるのにただ見てるだけなんて……やっぱ私にはできないよ」
『わざわざ言い直さなくても』
あれ、いいこと言ったはずなのにあんまり響いてない感じ?
少しだけ思っていたのとは違っていたが、取り敢えず目の前のエレメリアンとモケモケを倒さなければ。
周りに群がっていたモケモケを吹き飛ばし、ようやくジャックギルディと闘うといったところで思わぬ闖入者が現れた。
「テイルホワイトってそれMJK!? ウチがやらなきゃ意味ないっしょー!」
「ちょ、待ちなさい!」
突然フロストギルディがシャドウを振り切り、私の前に立っていたジャックギルディを吹き飛ばして立ち塞がった。
やっぱり雪だるまだし小さい。
「うわ、生で見るとめっかわだねー。 テイルホワイトとかインスタ映えしまくりだし、こんなとこ会えるなんてめっちゃ神ってるってー!」
スマホを持ちぴょんぴょんと飛び跳ねながら私の元へ近づき、無理矢理肩を寄せるフロストギルディ。
「はーい、tkmk♡」
パシャリ。
いつのまにか自撮り棒まで用意していたフロストギルディと一緒に写真を撮ってしまった。
現役JKである本能が私をそうさせたのか。撮られる瞬間にウインク、指で小顔に見えるポーズまでしてしまった。
フロストギルディ……凄いJKっぽくてスマホ持ってこれだけフレンドリーだなんて。
これは、もしかすると説得すれば倒さないで済むんじゃないだろうか。
「あのさ」
「写真あざおでーすっ! ウチの引き立て役にこれ以上はいないってねー! あははは!」
うわ、凄いムカつく!
やっぱりエレメリアンは倒すべき存在なんだと理解した。
未だにスマホに夢中なフロストギルディに向かってクローユニバースを叩き込む。しかし、軽々と避けられてしまった。
「うーわ……秒でテンションバリ下がった。ウチとしたらイイねはまだまだ欲しかったんけど、しょーがないかな」
渋々とスマホをしまい込むと、フロストギルディの表情が一変する。
思わずその動作だけで私は身構えてしまった。
さっきまでシャドウに押されていたはずなのに、なんだろうこの迫力は……。
「実はこれでもウチ、
「さ、参謀!?」
こんなに小さくてふざけてて、私よりJKっぽい奴が!?
「あはは、マジ卍ーって思ってるっしょ?」
参謀といったらもうそれはかなり上のはずだけど、勢いで嘘を言ってるんじゃないだろうか……。
そもそもこんな奴が参謀なんて務まるの? ……だから元なの?
ただの嘘ならいいけど本当に聖の五界の参謀だったのなら、その実力はそれなりにあるはずだ。
警戒するに越した事はないと、クローユニバースをしっかりと構えてどんな攻撃にも対応できるように準備しておく。
フロストギルディは準備体操をするかのように、肩をグルグルと回し気合を入れた。
「んじゃとりま、はじめよっかー!」
高速で飛びかかってきたフロストギルディをクローユニバースで迎え撃つ。
エンジェルギルディまでもう少しだ。
ここで終わるわけにはいかない!
あけましておめでとうございます。
最近はなかなか更新ができませんが呼んでくれる方がいる事に感激しております。
今年は2019年ですが、作中では特に何年などは設定していませんのでよろしくお願いします。
それでは!