私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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テイルホワイト・エレメーラフュージョン

志乃や嵐、テイルシャドウと同時にエレメリンクした事で発動した形態。 髪型は属性力の強さからツインテールのままだが、肩口にアバランチクローを模した小型のシールド、左右の腰にフロストバンカーを模した小型の銃装甲、左右の手にブライニクルブレイドとジャックエッジを持ち全てのエレメリンクの武器を扱える。 ブライニクルブレイドは順手だがジャックエッジは逆手のスタイルで闘う。 圧倒的な力を持つがテイルギアのセーフティ機能が働き、7秒から8秒しか持続しない。

武器:ブライニクルブレイド、ジャックエッジ、その他装甲
必殺技:???



FILE.76 佳境の修学旅行(テイルオン)

 エンジェルギルディの宣戦布告などのトラブルもあり、かなり時間に追い詰められはしたものの、私たち全員がダッシュした事でなんとか門限ギリギリにホテルに到着することができた。

 かなり疲れたし、こんな事なら嵐の言葉無視してさっさと一緒にエレベーターに乗ってしまえば良かったと心底思う。

 まあ……ドキドキはしたし、それはいいか。

 

「あー、ちーかれーたー!」

 

 部屋に入るなり、志乃はそのままベッドに倒れこむ。

 私はというとまずはスマホの捜索だが……お、あったあった。

 志乃からの何十件も不在着信を見るといかに昼間、私を心配してくれていたのがわかる。

 時間を見ると午後六時半……夕食の八時半までは自由時間なので、さっきと違い時間に余裕はある。

 さっそくフレーヌお手製アプリの''テイルコネクト''を起動して、フレーヌへの通話ボタンを押す。すると、コール三回ほどでフレーヌが応答した。

 

『あ、奏さん。私に連絡をくださったということはエンジェルギルディの宣戦布告を見たんですね』

「うん。さすがに世界の属性力を奪っていくって話なら、私も呑気に修学旅行は楽しめないから」

『わかりました!』

 

 その瞬間、ベッドの下が眩く光りだす。

 三秒ほど光り続けたところで、閃光は落ち着き、部屋の様子は元通りとなる。……まさかこれは、例のアレだろうか。 

 

「やっぱり……」

「あ、奏さん! 助けてください!」

 

 もしかしてと思ってベッドの下を覗いたら、やはりそこにはフレーヌがいた。

 私のベッドと違って下のスペースがかなり狭いため、フレーヌ一人では脱出するのは困難なようだ。

 とりあえず志乃に手伝ってもらい、ベッドを持ち上げてフレーヌをレスキューする。

 

「冷蔵庫やら炬燵の中やらベッドの下やら、なんでヘンテコなとこから出てくるの……」

「え、冷蔵庫!?」

 

 そういえば志乃には話してなかったっけ。

 炬燵の中よろしくこれも深夜にやられたらかなりのホラーになってしまう。

 

「私も意図してやっているわけではないんですけど……ん? んんん?」

「え、な……なに?」

 

 フレーヌがチラリと私を見た瞬間、何を思ったのかグイグイと顔を近づかせ私を凝視してくる。

 おお、そのジト目。 確かヘルハウンドギルディだっけ。それが見たらかなり喜ぶに違いない。

 

「いえ……何かありました?」

「っ!?」

 

 なんでこんなに察しがいいの?

 私だって元大女優の娘、ポーカーフェイスは得意分野のはずなのに。 どうやらフレーヌには見透かされてしまったらしい。

 

「見た感じ、昼間よりも体温が上がっているような気がしまして」

「見ただけで体温がわかるってどんな目してんの」

「何か嬉しい事でもあったのかと思いまして」

 

 嬉しいこと?

 嵐に告白未遂されたことが嬉しいこと??

 確かに少しは意識したけど、私はしっかりとお断りしたわけだし……全然そんなの……。

 

「う、うう嬉しいことなんてあるわけないでしょ!」

「そ、そうですか」

「……奏だいじょぶ?」

「うんうん、だいじょぶ!」

 

 危ない。 もしさっきの事が志乃やフレーヌにバレた日にはかなりしつこく絡んでくるに違いない。

 絶対にバレないようにしなければ……!

 早いとこ別の話に持っていくことにしよう。

 

「そういえば今日のバイキング、昨日とメニュー違うみたいだよ」

「誤魔化し方が下手すぎる!」

 

 まさか志乃に突っ込まれるとは……。

 ていうかフレーヌの前でそれ言ったらそれこそ誤魔化してることごバレてしまう!

 こうなると、今から私が何を言ったところで全て疑われてしまう……こうなったら責任とって志乃に協力してもらうか。

 

「へ?」

 

 志乃に向けてどうにか誤魔化してくれ、との意味を込め右目をパチクリさせる。私のアイコンタクト、受け取って!

 

「あ……!」

 

 お、どうやら気づいてくれたらしい。

 察しのいい志乃はなぜか上機嫌になり、フレーヌへと近づいていく。

 

「今日はコアラを触れたからね! 奏の機嫌がいいのは当たり前だよ!」

「そうでしたか……なるほど。好きな動物に触れ合えたのであれば機嫌も良くなるし、体温も上がる……あれ、上がりますかね?」

「私たちJKはそういうものなんだよ」

 

 ナイスだよ、志乃!

 まあ、コアラを抱っこできたことは嬉しかったってことは確かだしね。

 あれ……今日は楽しいことや嬉しいことがたくさんあったわけだけど、フレーヌに指摘されたときに最初に出てきたのが嵐って、なんで!?

 コアラやフリーフォールじゃなくて、嵐!?

 私も少しは意識したけど嵐のことは振ったからもう終わりのはずなのになぜ……。

 

「奏さーん、聞いてますか?」

 

 真剣に考えていたらいつのまにか目の前にフレーヌの顔が。

 

「ごめん、全く聞いてなかった」

「素直ですね……。もう、役四十六時間後に迫ったエンジェルギルディとの闘いについてですよ」

 

 そうだ、忘れかけていたけどその相談……会議のためにフレーヌに来てもらったんだ。

 会議といってもエンジェルギルディが宣戦布告してきて、時間まで指定してきているのでその辺に関しては特に話し合うことはない。

 問題なのはそのエンジェルギルディが予告した時間……その時間は修学旅行の団体行動中なのだ。

 

「私がいないことうまく誤魔化せる?」

「うん! なんとか先生と彩たち、誤魔化しとくから!」

 

 志乃がそう言ってくれるなら安心なので、次の問題へと移る。 はずだったが、直後に見せた志乃の暗い顔によって私とフレーヌを言葉を失う。

 

「あ。ご、ごめんね!」

「どうかしたの?」

 

 志乃と私は付き合いが長い。

 これから志乃が言うことはだいたいわかってはいるけど、聞かずにはいられなかった。

 目元に浮かんだ涙を拭って、志乃は口を開く。

 

「奏や黒羽、もちろんフレーヌだって危険なことしてるのに……そのあいだ私と嵐は何もできないって考えると……悔しくて……」

 

 自分のリンクブレスを見ながら、小さな声で話す志乃。

 今までも志乃が思い詰める時はあった。 だから私は「志乃もエレメリンクを使って一緒に闘ってくれている」と、言ってきたけど……。志乃は納得してくれてたようで、そんなことはなかったんだね。

 沈黙の中、フレーヌがゆっくりと歩み寄り志乃の隣へと座る。

 

「志乃さん。一緒にエレメリアンと闘うことだけが奏さんや黒羽さんの力になるわけではありません」

 

 志乃は顔を伏せたままだが、フレーヌは優しい声音で話し続けた。

 

「メンタルのケアやちょっとした優しさ、場を和ませる笑顔、奏さんと黒羽さんの事を思う気持ち……どれか一つでも欠けていたらエンジェルギルディまで辿り着けたかどうかわかりません」

 

 フレーヌの言うことはもっともで、私がクラーケギルディにボコボコにされ、力を引き出せなかったときに私を復活させてくれたのは志乃だった。

 それだけじゃない。私が異世界に飛ばされた時、志乃がどれだけ心配してくれていたか、フレーヌから聞いている。それに、嵐にだってまあ……不本意ながら助けられた。

 

「私が志乃さんと奏さんと初めて会ったあの日。 どうして志乃さんも一緒にビクトリースクエアに転送したのか、考えた事ありました?」

「え、それは巻き込まれただけじゃ……」

「違います。 私には関係ない人を巻き込む勇気はありません。私は臆病者なんですから」

 

 そう言うと、フレーヌは座っていたベッドから立ち上がり私の前へ移動してきた。 そして手を引き、今度は私が志乃の横に座る形になる。

 

「このお二人でないとダメだと思ったからです。奏さんではなく''このお二人''と」

 

 私も初めて聞いた話だけど、すぐに納得できた。

 仮に私一人、ビクトリースクエアに言ったところで本当にテイルホワイトになったか、テイルホワイトになったからといってそれを続けていたかどうかはわからない。

 ただ言えるのは、志乃がいなかったらピンチの場面が何度もあったということ。

 

「志乃、最後まで私と闘ってくれる?」

「うん……!」

 

 首肯した志乃は、そのまま私の元へ飛び込みベッドへ押し倒される形となる。

 

「あれ? なんかこの光景いいですね……」

「「えっ」」

 

 感動の余韻の残る中、微かに聞こえたフレーヌの声に身震いする私と志乃だった。

 

 

 次の日、オーストラリア滞在も残すところあと二日となり、私たち修学旅行生はゴールドコーストから離れ朝イチでブリズベンへと向かった。

 今はこうして修学旅行を楽しんではいるけど、明日はエンジェルギルディとの決戦があるわけで……。そう考えると時間が進むたび緊張していくなあ。

 ブリズベンでの行動は今日が自由行動、最終日の明日が全体行動となっている。

 ちなみに、自由行動の際は何故か制服で行動するよう先生たちから説明がはいり今日は皆が園葉高校の制服姿だ。

 私としては気合い入れて準備してきた私服が着られないのは残念だけど……まあ、この姿のほうが修学旅行っぽくはなるので良しとしよう。

 ただ正直なところ、フルでその修学旅行に参加できないというのは悔しい。だけど、明日エンジェルギルディを倒せれば全て終わる。 そう思えれば幾分かマシにもなる。

 

「奏、昨日のことだけど」

 

 博物館に展示されていたティラノサウルスの化石を眺めていると、いつのまにか隣に立っていた彩に声をかけられた。

 昨日のこと、というのは嵐の告白……未遂のことだろう。

 

「もしかして嵐君のこと振っちゃったの?」

「うん」

「えー、せっかく私が場を整えてあげたのにー……」

 

 やっぱりあそこで告ることを考えたのは嵐じゃなかったか。

 嵐がロマンティックなはずないし、彩の言うことから察するに……嵐が彩を振った際にあの場所をオススメしたのだろう。

 

「別に私に気を使わなくても平気だよ?」

「まったく使ってないって言ったら嘘だけど……彩から話聞いてなくても、私は断ってるよ」

 

 振られたとはいえ、彩にとっては嵐が告白失敗したのは好都合のはずなのに……どうしてそこまで私たちのことを気にするのだろう。

 あまり思いたくはないが……恋愛において私ら女の子には駆け引きというものがある。

 恋愛相談として自分の好きな人を周りにアピールし、その男子に手を出させなくする……というのは中学の間もよく耳にしていたことだ。

 恋愛相談した相手が相談した女の子の意中の男子と付き合った際には、リーダー格含め取り巻きから激しいバッシングを浴びたりもする。おお……女って怖い。

 とにかく! 恋愛において打算で動かない女の子などごく僅かしかいない、ということだ。

 そのごく僅かな人物に当てはまるのが、志乃や彩といった娘たちなんだろう。

 

「私を振ったからには奏をおとしてね!って言ったのに」

 

 いや、まあ正直落ちた……ていうか落ちてたんだけど……うわ、超恥ずかしい!

 ま、まあ……私は振ったのだからその想いはもう終わりだ。

 自分を納得させようとしていると、彩がリュックから何かを取り出して私へと差し出してきた。

 

「バレンタインデー……」

「そう、もうすぐバレンタインだからチョコぐらい渡してあげて! 告白ってめっちゃくちゃ勇気いるんだから!」

「彩が言うとすごい説得力……。 ま、それは私もわからなくはないし……考えとく」

 

 返事を聞いてニコッと笑うと、彩はサッカー部の男子に呼ばれて急ぎ足で去っていく。

 その中に嵐もいたが、目が合うとお互い顔を逸らしてしまった。

 一応断ったけど、すぐに元の状態に戻るのはなかなかしんどい。

 状況は違うが中学の頃、私が嵐との交際をやめた際も、昨日までのように普通に話すのにはかなりの時間がかかったのだ。

 ただ、私はあの時の私じゃない。

 スマホを取り出し、ラインを開く。

 嵐の名前を探してトーク画面を開き、取り敢えず話があると送信。 すぐに既読がつき、スルーされることなく返事が帰ってきた。

 待ち合わせ場所を指定すると、私はすぐにその場所へ向かい歩きはじめる。

 

 

 ラインを送ってから十数分後、待ち合わせの場所に嵐は現れた。

 待ち合わせ場所はメインの展示物から離れたあまり人がいないエリアだ。

 十分ちょい待っていて目の前を通り過ぎた人が二人しかいなかったので、博物館の中で秘密の話をするにはもってこいの場所だろう。

 

「よ、よう。 何かようか?」

 

 少し緊張……というか、気まずい感じで話しかけてくる嵐。

 

「嵐も知ってるとは思うけど、もう少しでエンジェルギルディとの決戦でしょ?」

「え、ああ。はいはい、エンジェルギルディな! それなっ!」

 

 もしかして告白の返事がNOからYESに変わるとでも思っていたのだろうか。

 確かに意図せずだが、人混みから敢えて離れた場所で待ち合わせを指定して、それっぽいラインの文面を送ってしまった私に非がある。 ていうか非しかない。

 

「勘違いさせてごめん。それでさ、明日の自由行動だけど……私は午後になったら抜けないといけないから。そのフォローをお願いしたくて」

「それは構わねえけど、いいのかよ」

「私がエンジェルギルディを倒さないとこの世界の属性力が、ツインテールがどんどん奪われていく。 自分の修学旅行と天秤にかけたら、どっちが大切かなんて明白でしょ」

 

 修学旅行は今日含めた三日間で充分に堪能できたと思うし、あとは最後にエンジェルギルディを倒し、この世界の属性力を救えれば……ある種素敵な修学旅行となるだろう。

 

「それに私はさ、ツインテールによるくだらない闘いを止めるため。私が育てた属性力をとられないため。それに、私を繋げてくれたツインテールが好きだからとられないために闘ってるんだから。 終わらせるチャンスなの」

「そうか、わかった」

 

 志乃にも嵐にも、楽しい旅行中にみんなを騙すことを頼んでしまいとても申し訳なく感じる。

 みんなをうまく誤魔化してもらうには二人には班のみんなと一緒にいてもらう必要がある。

 今まで一緒に闘ってきてくれた二人に最後の闘いを見せられないのは残念だけど、これはどうしようもないことだ。

 志乃と同様に嵐にも明日のことを伝え、納得もしてもらえたところで他のみんなと合流するため私は歩きはじめる。だが嵐は、声で私の歩みを止めさせる。

 

「絶対に勝ってくれよ、奏」

「何回言ったら……もういっか」

 

 嵐はこうして何度注意しても私の名前を呼んできた。

 逆に私は中学生の頃に嵐を振ったあの時から、彼の名前を呼んだことはなかった。

 

「エレメリンクの準備しといてね、孝喜」

「ああ……ん? 今、名前で呼んだか?」

「なんのこと」

「絶対呼んだろ! もう一回頼む!」

「嵐の聞き間違いでしょ」

 

 後ろでまだ嵐が何か騒いでいるが、なんと言われようと呼んであげないからね。

 

 そして次の日、自由行動の途中に志乃と嵐の協力のもと、私は班から抜け出しフレーヌの基地へと転送されていた。

 基地にはすでに黒羽も待機しており、基地の空気が決戦がいよいよだということを実感させてくれる。

 今の時刻はオーストラリア時間で午後六時八分、日本時間はマイナス一時間の五時八分だ。

 エンジェルギルディが指定した時間まで後、二分。

 

「エンジェルギルディはどこに現れるか予想できません。 ただ、幹部エレメリアンは決戦の際には人が少ない場を選ぶ事が多いですが……」

 

 直近だとセドナギルディがそうだったっけ。

 ただ、相手はエンジェルギルディだ。

 

「エンジェルギルディを今までのエレメリアンと一緒にしてはダメね。平気で部下を粛清するし、自分でコントロールできるとはいえ、多大な被害を出すであろう''エリシオン''という技をこの前使ってきたわけだし」

 

 そう、エンジェルギルディには最終闘体で披露した技のエリシオンがある。

 前に受けた時は一発の威力でも相当なものだった……もしあれが全弾命中したとしたら、その時点で私たちは敗北が決まってしまうかもしれない。

 何か対策を立てようとしても、数百にもなる光線をどうするか、未だ答えは出ていない。 実戦のうちに何かひらめけばいいんだけど……。

 

「まもなくです!」

 

 フレーヌに促され時計に目をやると、指定した時間まで残りすでに三十秒をきったところだった。

 私と黒羽はカタパルトの前に移動し、互いに目を合わせ頷き合ってテイルギアを胸の前に構える。

 これが最後の変身になることを祈りつつ、変身コードを叫ぶ。

 

「テイルオン!」

「変身!」

 

 白と紺色の閃光が弾けて、テイルホワイトとテイルシャドウへの変身が完了した。

 そしてそれとほぼ同時刻、ついにエンジェルギルディの指定した時間になると━━━━

 

「━━━━こ、これは!?」

 

 突如として基地のアラートが鳴り響く。

 そして、私たちが見たのは属性力を奪われてしまった事を示すセンサー。

 そのセンサーが示した場所は、私たちが昨日までいた修学旅行先の、オーストラリアのゴールドコーストだった。

 私たちが一昨日までいたところを真っ先に狙うなんて、エンジェルギルディはまさか私の正体を……?

 まさか、そんなことあるわけない。

 

「一瞬にして街の人々の属性力を奪い去ったのね……! フレーヌ、エンジェルギルディはどこにいるの?」

「エンジェルギルディの反応は……ロシア、エカテリンブルク近くのウラル山脈です!」

 

 最後の闘いがロシアね……なかなか燃える展開にしてくれる。 ただ、この時期だと寒くないか多少心配だが属性力には変えられない!

 

「お願いします! テイルホワイト、テイルシャドウ!」

 

 フレーヌの目を見て力強く頷き、カタパルトへ入るとまもなく視界は白くなっていく。

 いよいよ、これがラストバトルだ!

 

 

 転送されてきた場所は、辺り一面が山々に囲まれた場所だった。

 大きな崖がいくつもあり、まさに最終決戦に相応しい場所といえるだろう。

 その最終決戦を指定した当のエンジェルギルディは大きな崖の上で、神聖な輝きを放つ杖を持ちながら私たちを見下すように立っていた。

 互いに何も言わずに睨んでいるとエンジェルギルディから口を開いく。

 

「ようこそ、ツインテール戦士たち。 まずはこの場にお越しになられたことを心より感謝致しますわ」

 

 杖を地面へと突き刺し、空いた両手で左右の腰にぶら下がる布をつまみ上げエンジェルギルディは軽く礼をした。 ……高いところからやられても全く敬意を感じないんですけど。

 

「ワタクシは一対一の勝負は求めませんわ。貴女がた二人でどうぞお越しくださいまし」

 

 再び杖を持ったエンジェルギルディは不敵に笑うと、その杖を天高く掲げる。

 

「これこそが禁戒なるお嬢様の純潔(レーヴァテイン)。 ワタクシに届く前に倒れないように、お気をつけて……うふふっ」

 

 掲げたレーヴァテインから禍々しい黒い塊がいくつも放出され、崖下の私たちの前へと落ちてくる。

 

『これは、強化されたアルティロイドです!』

 

 黒い塊から胸に菱形の石をつけたモケモケが何体も現れ、何十秒も経たないうちに私とシャドウは包囲されてしまう。

 

「少しはワタクシも属性力を頂いておこうと思いましたの。 うふふ、時間ですわね」

 

 レーヴァテインが眩い光を放つ。

 時間ということはエンジェルギルディが言ってた十分経つごとに属性力を奪っていくということに間違いないだろう。

 つまり、今の一瞬で属性力が……!

 

『こ、今度はバリ島の属性力が一瞬で……!』

 

 これは、モタモタしている場合ではない。

 エンジェルギルディを倒せば属性力を取り戻すことはできるみたいだが、だからといって悠長に闘うのは私の気が収まらない。

 怒りに震える手でフォースリボンに触れ、アバランチクローを両手に装備する。

 シャドウもノクスアッシュとジャックエッジを持ち、ハイパーモケモケ相手に攻撃をはじめた。

 

「このモケモケやたら強い……!」

 

 一撃では倒れず、何回か攻撃してやっと倒せるハイパーモケモケは私たちの体力を著しく奪っていく。

 

「モッケ━━━━ッ!」

「うるさい!!」

 

 正直硬さだけでいったらセドナギルディ戦の時の黒エレメリアン以上だ。 そのうえ、黒エレメリアン 並みに数が多いのだからまったくゴールが見えない。

 私たちが苦戦する様子を崖の上から満足そうに眺めるエンジェルギルディは再びレーヴァテインを天に掲げ眩く光らせる。

 

『今度はアクアライン近くの街全てから属性力が……!』

 

 三度目でシャドウは何かに気づいたらしく、目一杯の力を込めて斧と剣を振るい目の前のハイパーモケモケ全てを消し飛ばす。

 

「エンジェルギルディ! あなた、私たちがエレメリアンと闘い勝利した場所から属性力を奪ってるわね!?」

 

 なるほど、納得した。

 一番最近倒したエレメリアンはゴールドコーストに現れたジャックギルディたち、その次がシャドウが単独で倒したキジムナギルディが現れた場所。

 たった今奪った場所はガルダギルディと闘ったところってわけか。

 ゴールドコーストを狙ったのはやはり私の正体がバレていたわけではなかったらしく、少しだけホッとする。

 

「だけど、なんでわざわざそんなことを? まさか部下の無念を晴らすとか……!?」

「エンジェルギルディがそんな部下思いの行動を起こすわけない。 ただの挑発よ。一度守った属性力を奪うことで……私たちを挑発してるのよ!!」

 

 憂さ晴らしをするかのようにシャドウはジャックエッジを目の前へと投げつけ、それをくらったハイパーモケモケはどんどん粒子化していく。

 怒るシャドウを楽しむエンジェルギルディは喜悦に淀んだ声で話しはじめる。

 

「ええ……いいですわ、いいですわ! 貴女たちの悔しそうなそのお顔、堪りませんわ!」

 

 さらに大きな翼を展開し、宙に浮きながら続ける。

 

「貴女たちがワタクシの駒から守った場所は溢れんばかりのツインテール属性が芽吹いていますの。 ワタクシたちアルティメギルが、それを見逃すとお思いですの?」

 

 なんて卑劣……!!

 このエレメリアンだけは絶対に許せない!

 堪らず私はマキシマムバイザーに手を伸ばし、テイルブレスへジョイントしようとするが……。

 

『奏さん、今はバイザーを使う時ではありません。 確かに今、属性力は奪われてしまうかもしれませんが……エンジェルギルディを倒せれば全て救われます! 悔しいでしょうけど、ここは我慢してください!』

 

 なんとか踏み止まり、バイザーを元の位置へと戻す。

 私たちが守ってきた属性力がこうも簡単に奪われてしまうなんて……謝っても謝りきれない。

 

「フレーヌの言うことも一理あるけれど、私としては戻るとしてもツインテール属性が世界から消えていくことに、怒りが収まらないのよ」

『黒羽さん!?』

 

 アンリミテッドブラを胸へと装着し、シャドウはチェインエヴォルブ。

 アンリミテッドチェインとなったシャドウは進化したノクスアッシュトリリオンを手に、一撃でハイパーモケモケを葬り去っていった。

 私も後に続き、クローを振るいはじめるが、

 

「ホワイト、残りは全て私が引き受けるわ。後で必ず行くから、先にあの堕天使をお願い」

「……シャドウ、待ってるからね」

「道を開けるわ、行きなさい! それと待つまでもなく、エンジェルギルディを倒しなさい!」

 

 直後、シャドウの必殺技で周囲にいたハイパーモケモケは吹き飛びエンジェルギルディのいる崖の真下への道が開ける。

 

『黒羽さんが私の指示を破るなんて……』

「それだけ黒羽も本気なんだと思う。オルトロスギルディの仇みたいなものらしいしね」

 

 心なしか自信なさげなフレーヌを励ましつつ、崖の真下に到着し足場を見つけてトントンと上へジャンプしていく。

 

「取り敢えず私はいいから、黒羽のサポートお願いね」

『……わかりました、無理はしないでください!』

「わかってる!」

 

 フレーヌとの通信が切れたの同時に、崖の上へと到着し優雅に佇むエンジェルギルディと対峙した。

 

「あらあら、期せずして一対一になってしまいましたわね」

 

 レーヴァテインを一回トンと地面に叩くとまたも光だす。

 また、私たちが守ってきた属性力が……。

 

「貴女一人でワタクシに勝てると思いますの?」

「私は一人じゃない、みんなと闘う。 みんなと闘って、あんたを倒す!」

 

 マキシマムバイザーをテイルブレスへジョイントし、今度こそ私はマキシマムチェインへと進化する。

 

「戯れ言を。貴女は一人ではありませんの。みんなと闘う? 面白くない冗談ですわ」

 

 フォースリボンに触れ、アバランチクローをユニバースを両手に装備する。

 重い。今までで一番、武器が重く感じた。

 エンジェルギルディを前にしての緊張か、怒りか、虚しさか……私の胸の中をぐるぐると渦巻いていく。

 

「まあ、よろしいでしょう。 一人でワタクシとやるのは本気のようですし」

 

 構えをとらないのは余裕のあらわれか。

 私は無防備に佇むエンジェルギルディ目掛けて、疾駆する。

 

 これで全てを終わらせる━━━━!




ついに始まりました、エンジェルギルディとの最終決戦。
ここまで長い話になりましたが、こうして今も読んでくれる方がいる事にとても感謝しています。
残り僅かとなりますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
それでは。
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