私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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リアル
性別:女
年齢:17歳
誕生日:2月2日
身長:166cm
体重:51kg

異世界から来た科学者。双子の暴走を止めるため、テイルホワイトに協力を求める。妹と違い彼女自身はツインテールの戦士ではないものの、ツインテール属性は非常に高い。


ADDITIONAL FILE.2 禁断のツインテール宣戦

 リアルミーティア。

 私がアルティメギルに対してテイルホワイトと名乗っていたように、金色(こんじき)のツインテールを持つこの少女はそう名乗っていたらしい。

 ミーティアというのは確か流星や隕石の意味があったと思う。そう考えると、彼女の纏うコスチュームは宇宙をイメージしたものだと納得できる。

 頭のリアルというのは……お姉さんの名前そのままの意味なのだろうか。

 その双子のお姉さんであるリアルが一歩前へ出ると、説得を試みる。

 

「いい加減にやめなよ! ツインテールの戦士がツインテール属性を奪うだなんて、間違ってる!」

 

 リアルの言葉には反応せず、リアルミーティアは私へと視線を移す。

 

「なるほど、理解しました。姉がこちらへ連れて来たということは、あなたがテイルホワイトですね。私を止めるために現れた、ね」

 

 容姿だけでなく、声もよく似ていた。若干妹のほうが高いだろうか。

 リアルがここに来ることもわかっていたらしい。

 

「たったいま姉が言ってたけど一応、ね。私はリアルミーティア。見ての通り、ツインテールの戦士です」

 

 自らのツインテールを自慢するように揺らして、リアルミーティアは昂然と胸を張る。

 彼女は間違いなく、自身がツインテールの戦士であることを誇りに思っている。だからこそ、それを感じた私は怒りを抑えられない。

 

「ならどうして! ツインテール大好きなんでしょ⁉︎ ツインテールを守るはずのあなたが……どうしてツインテールを奪う側に回ってるの⁉︎」

 

 リアルミーティアは表情を何一つ変えることなく、驚くべき言葉を次々に口に出してくる。

 

「理解しているじゃないですか。そうです、私はツインテールが好きですよ。大好きですよ」

「なら!」

「大好きなものを集めて、自分の世界へ持ち戻ることがそんなにおかしいことでしょうか?」

「……は?」

 

 言葉の意味が理解できず、絶句してしまう。

 そんな私に気にすることなく、悠々とリアルミーティアは話を続けた。

 

「姉から聞いてませんか? 私の世界はエレメリアンに属性力を奪われ尽くしたんです。ツインテール属性ももちろん、ね。あなたには想像できないでしょう。なにも輝くもののない灰色の世界は」

 

 ここで初めて、リアルミーティアは表情を曇らせた。

 聞いていなかった……。

 リアルの方へ目を向けると、彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。

 頭を下げる必要なんかない。自分にとって辛い記憶を、わざわざ口に出して言えだなんて、私は言わないんだから。

 脳裏に、右手にはめた白い腕輪を開発した少女の顔が浮かぶ。彼女の故郷も、アルティメギルによって属性力を狩り尽くされてしまったと話していた。

 

「そして世界に属性力が戻ることはありませんでした。だから私は、決意したんです。世界に属性力を、まずは私の大好きなツインテール属性を世界に再び芽吹かせることを!」

「まさか……」

「異世界のツインテール属性を集め、私の世界に拡散し、大好きなツインテール属性を世界に溢れさせる! 言いましたよね? 大好きだからですよ。大好きだから私はツインテール属性が欲しいんです」

 

 大好きだからツインテール属性を奪う?

 自分の世界のために、異世界の人々からツインテール属性を奪う?

 嬉々として話す彼女からは罪悪感など微塵も感じられない。

 狂気だ。ツインテールを好きというのがいくところまでいった結果、ツインテールを守るはずの戦士はこうなってしまうのだろうか。

 いや、こんなわけがない。私は知っていたじゃないか。

 ツインテールが好きすぎて、男から女になって戦っていた戦士を。

 ツインテールが好きすぎて究極のツインテールと呼ばれていた戦士を。

 ツインテールが好きすぎてアルティメギルを壊滅させた戦士を。

 自分の世界のためとはいえ、ツインテールが好きだから異世界から奪おうだなんて考えは間違っている。なら、彼女の間違いを訂正しなければ。そうしないと彼女自身、絶対に後悔することになる。

 

「あなたね……!」

 

 リアルが口を開きかけたところ、私が腕を挙げて制止する。そして、その挙げた腕を胸の前に持ってくる。

 最後の変身からもう半年も経つ。

 引退すると宣言して、長々とインタビューまで受けたというのに……まさかまた変身することになるなんてね。

 

「リアルミーティア。あんたならわかってると思うけど、ツインテールの戦士は属性力を守るために戦うの」

「当たり前ですよね」

「なら、覚悟してよね。この世界の戦士の私があんたのやってることを黙って見逃すわけない。私はこの世界を守るために、戦う!」

 

 変身するための方法はもちろん覚えている。なんだって私は一年近く、この白い腕輪・テイルギアを使って戦ってきたんだから!

 私は戦う。

 相手が属性力を狙っているのならエレメリアンだろうと、たとえ人間だろうともそれは変わらない。

 目を閉じて、私は念じる。

 変身したい。変身して、この世界を守るために戦いたい。

 そして半年ぶりに、私は変身コードを口にする。

 

「――テイルオン!」

 

 瞬間、右手のテイルギアを中心として、半年前と変わらぬ眩い閃光が放たれた。

 一瞬の間に白い装甲が全身に装着され、私の髪は銀色になり、戦士の証たるツインテールが風に靡いていた。

 半年ぶりだけど、特に異常などは感じられない。さすが、あの泣き虫博士が作っただけのことはある。

 

「素晴らしいです……! ツインテールはもちろんですけど、その属性力! それだけのツインテール属性があれば私の世界の復興はかなり進みますっ!」

 

 変身した私を見て、恍惚とするリアルミーティア。

 やはり私のツインテール属性も狙っているらしい。ツインテール属性を狙うのなら私を除外する理由はないし、それは妥当だろう。

 

「テイルホワイト。妹は世界から属性力が失われた後、いくつもの世界を回ってツインテールの戦士を倒してきた。彼女は強いよ。気をつけて!」

「いくつもの世界を……。なら、ここで絶対に彼女を止めてみせる。必要のない戦いをこれ以上続けさせない」

 

 リアルミーティアに向かって歩きだす。

 エレメリアンとは数え切れないほど戦ってきたけれど、ツインテールの戦士と戦うことはあまりなかった。

 久しぶりの変身で相手がツインテールの戦士だなんて、非常に重い戦いになりそうだ。

 テイルホワイトとして、初めて私はリアルミーティアと対峙した。

 

「やはりツインテールの戦士は素晴らしいです。ツインテールも、ツインテールに対する想いも、一般人の比ではありません、ね。私、感動しました」

 

 頬を赤らめながらリアルミーティアは両手で自分の体を抱きしめて震えると、ピッチに埋まった光輪へと近づく。

 

「な、何をする気なの?」

「気が変わりました。この世界で最初に手に入れるツインテール属性はテイルホワイト、あなたの物がいいです」

「っ⁉︎」

 

 ピッチに埋まった光輪を起こしてリアルミーティアはそれのどこかを弄ると、輪の内側から光の粒子が辺りに弾け飛ぶ。

 これは、ツインテール属性だ。以前、エレメリアンに奪われた量とは比較にならない。いったいどれだけのツインテール属性を、リアルミーティアは奪ってきたと言うんだ。

 そして気が変わったとはいえ、それをあっさりと持ち主に戻すとは……何を考えている。

 

「属性力は返してもらったといっても、あなたの考えは変わってないんだよね?」

「優先順位が変わったに過ぎません。テイルホワイトのツインテール属性を貰い受けた後、再び全てのツインテール属性を貰います」

「悪いけど私自身も、他のツインテール属性もあげる気なんかこれっぽっちもないから!」

 

 リアルミーティアの次の言葉を待たずして私は一足で彼女の眼前に飛び込む。久しぶりの変身だけど、テイルギアを動かす感覚は問題ない。そのまま私は掌底を繰り出す。

 ここまでいきなり距離を詰められれば、防御するのは間に合わないだろう……そう思っていたのも束の間のことだった。

 

「ふふ、甘すぎます」

「なっ⁉︎」

 

 確かに私は、彼女の体に目掛けて掌底を仕掛けたし、掌は彼女に当たる寸前だったはずだ。だが、私の掌と彼女の間にはいつのまにかステッキが構えられ、攻撃はしっかりと受け止められていた。

 私が攻撃が決まったと確信してから、彼女はステッキで防御するという行動をとったいうことか。早技なんてレベルじゃない……!

 リアルミーティアは続けて、私の心を見透かしたように話しかけくる。

 

「テイルホワイト、あなた人間が相手だから拳を使わなかったんですか?」

「……だからなに?」

「ツインテールを傷つけたくないのは同意しますけど……情けは自分の首を絞めるだけです、よ!」

 

 一瞬の動揺を見抜かれたか、リアルミーティアは力一杯ステッキで押すとそのまま左足で蹴りつけてきた。

 ギリギリ両腕を交差させて防御することに成功するが、十数メートル芝を抉りながら後退する。

 

「この……!」

 

 再び彼女に向かおうとしたところで、無数の光弾が迫っていることに気がつき、なんとか右へ左へ交わしていく。

 こんなものを繰り出す能力まで持っているのか……!

 穴の空いたピッチに目を向けていると、私の耳に聞き慣れない電子音声が入ってきた。

 

SHOOT MODE(シュートモード)

 

 驚いてリアルミーティアへ目を向ける。

 するとなんと。彼女が先ほどまで握っていたステッキは拳銃のような形状へ変化していた。

 銃口をこちらへ向けるリアルミーティアはしたり顔で言う。

 

「''エモーショナルステッキ''。戦況に応じて形を変えることのできる、頼りがいのあるアイテムです、よ!」

 

 言うが早いか、リアルミーティアは再びいくつものの光弾を発射。

 なんとかして全て避けようとするも、数の多さに翻弄され何発かは体に浴びてしまう。しかし、一発の威力はそこまで大きなものではない。

 このまま距離を詰められなければ、私が有効打を放つことができないことをわかっているのだろう。リアルミーティアは休むことなく光弾を放ち続けた。

 

「こうなったら……!」

 

 光弾を避け続けいつの間にかピッチの脇に追い詰められていたが、近くのベンチの裏側に回り込むと、すぐさまそのベンチをリアルミーティアへと蹴り飛ばした。

 

「そんなものが私に当たるわけないでしょう!」

 

 私が蹴り飛ばしたベンチは、リアルミーティアに当たることなく撃ち落とされバラバラになってしまう。だけど、そんなことは私だってわかってる。

 バラバラになったベンチの後ろから飛び出して、今度はしっかりと拳を作り、リアルミーティアへ殴りかかる。

 

「そんなっ⁉︎」

「はああああああ!」

「くっ!」

 

 ギリギリのところで防御されてしまったが、少しはダメージを与えられただろうか。

 ピッチを転がるリアルミーティアに肉薄し、追い討ちしようとしたが……それは叶わなかった。

 

SLASH MODE(スラッシュモード)

 

「ちょっ⁉︎」

 

 女性のような電子音声が流れたと同時、光の刃が目の前で振り下ろされ、ピッチが大きく抉れる。

 リアルミーティアがいま手にしているのは、刀身が一メートルあろうかないかという剣だった。一瞬の間に、銃から剣へとステッキは姿を変えたのだ。

 

「近接戦で挑むしかないでしょうけど、あまり近づいては危険です、よ!」

 

 そう忠告しながら、決して大振りすることなくリアルミーティアは剣を振るいはじめた。

 先ほどの銃といい、剣といい、彼女は扱いにはかなり慣れている。上手く隙を作らないように剣を振るその立ち振る舞いは、長い時間研鑽されたものだろう。

 再び私は防戦一方となり、たまらず大きくバックステップする。しかし――

 

SHOOT MODE(シュートモード)

 

 電子音声が聞こえたと同時、またもや光弾の雨に襲われる。

 リアルミーティアは近距離の攻撃も、遠距離の攻撃も全てに対応できる力がある。ただその力を持っているだけなのではない、しっかりと使いこなしているのだ。これは……厄介だ。

 ただ私にも、リアルミーティアのエモーショナルステッキと同じように使いこなした……一年近く使い続けた武器がある!

 ツインテールを形作るための装甲、フォースリボンを手の甲でかきあげるように触れると、眩く発光し腕に凝縮されていった。

 

「アバランチクロー!」

 

 一年前は毎日のように両腕に装備してエレメリアンと戦っていたが、半年ぶりに装備する私の武器は思ったよりも重く感じる。ただ、動かすのにまったく問題はないだろう。

 変わらず光弾を連射するリアルミーティアに向かい、クローでガードしながら接近する。

 

SLASH MODE(スラッシュモード)

 

 スタジアムに金属同士がぶつかるような鈍い音が響き渡る。

 剣へと姿を変えたステッキの斬撃はクローの手甲で受け止められていた。もちろん、クローには傷など一つもついていない。

 クローで剣を弾き、クローによる追撃。

 リアルミーティアの持つ剣は、元はステッキとはいえ今は両手剣だ。

 両手で扱うことが前提の一本の剣と、片手で扱うことが前提の私のクローでは手数に差があるのは必至。目に見えて戦況は逆転していく。

 

「テイルホワイトの武器に剣では相性が悪いです、ね。ならばその武器、砕くまでです!」

「そんななまくらで私のクローが砕けるわけないでしょ!」

「いいえ。武器や装甲を砕くのは剣の仕事ではありません、よ!」

 

 大きく後退したリアルミーティアを追って、更なる一撃を加えようとしたその時――左腕に今までの比ではない痛みが走った。

 

「クローに、ひび……⁉︎」

 

 斬撃ではひびはおろか、擦り傷一つつくことのなかったクローの手甲が大きくひび割れている。

 

HIT MODE(ヒットモード)

 

 新たな電子音声があたりにこだまする。

 リアルミーティアが手にしていたのは今まで手にしていた銃でも剣でもない。

 柄は彼女の身長と同じぐらいの長さを誇り、その先に付いているのは前後に伸びた鉄のような塊。父親が使っているのは見たことあるが、彼女の持つものよりも全然小さい。彼女が持つその何倍もの大きさのそれは、私の知る工具ではなかった。

 

「それって、ハンマー⁉︎」

 

 リアルミーティアは肩に担いでいたハンマーのヘッドを、誇示するかのように芝へと叩きつける。力を入れていないようだが、それだけで芝に深々と埋まってしまった。

 

「言いましたよね。このエモーショナルステッキは戦況に応じて形を変えると。スラッシュモードの剣にシュートモードの銃、そしてヒットモードのハンマー。さて、あといくつあると思いますか?」

「まだなんかあるっていうの……!」

 

 確かテイルギアを作った彼女によれば、多少の傷や破損は自動で修復してくれると言っていたはずだ。もしもバラバラになってしまえば、メンテナンスできる彼女がいないこの状況では二度と使えなくなってしまう。手数が減るのは惜しいけど、ここは念のために最善策を取るべきだろう。

 ひび割れた左のクローを腕から外すと、すぐに光の粒子となってフォースリボンへ収納されていく。

 

SLASH MODE(スラッシュモード)

 

「さて、これでテイルホワイトに数の利はありません。シュートモードでは防御されてしまいますし、やはり決めるならこちらでしょう、ね!」

 

 一瞬の間にハンマーが剣へとかわり、リアルミーティアは上から、下から、右から左から斬撃を繰り返す。

 彼女の斬撃は早く、そして重い。攻撃は防げていても、やはり右腕のクローだけでは反撃することなど不可能だ。

 

HIT MODE(ヒットモード)

 

 剣からハンマーへと変化したの見て、私はクローを砕かれまいと防御ではなく避けることを選択する。しかし――

 

SLASH MODE(スラッシュモード)

 

「なっ⁉︎ つあっ‼︎」

 

 ハンマーの大振りなら軽々と避けられたに違いない。しかしリアルミーティアは、私がそう感じるのを読んでいた。

 ハンマー振りかぶった瞬間に剣へと変化させ、そのまま一閃。

 虚をつかれた私はクローでの防御が間に合わず、もろに一斬を受けたテイルギアからは激しく紫電が走った。

 フォトンアブソーバーを超えて、私自身にも強烈な痛みが走る。

 

「くっうう……!」

 

 ピッチに膝をつき、二の腕をおさえる。

 無防備な私に向かって、リアルミーティアは悠然とした表情で歩み寄ってくる。

 このままではまずい。すぐに立ち上がろうとしたところで、私とリアルミーティアの間に一人の少女が割って入る。

 

「もうやめだよ。ツインテールの戦士の癖にツインテールの戦士を傷つけるなんて……いつまでそんなこと続ける気なの⁉︎」

「……」

 

 リアルだ。

 妹の暴走を悲しんでいるのか、姉として妹を止められなかったことに罪悪感を感じているのか、はたまたその両方か……その目には大粒の涙を浮かべている。

 だがその思いは、リアルミーティアには届かなかった。

 

SHOOT MODE(シュートモード)

 

「邪魔ですよ!」

「⁉︎」

 

 容赦なくステッキを銃へと変化させると、なんとそのまま光弾をリアルに向かって発射する。

 考える間もなく私はリアルの前へ立つ。そして――

 

「リアル……! ああああっ‼︎」

「テイルホワイト‼︎」

 

 多少はクローで防いだものの、かなりの数の光弾を体に浴びて、その場へ倒れてしまった。

 

「あらら、姉のおかげで勝負がついてしまいましたか?」

 

 酷く落胆したように、リアルミーティアは大きくため息をついてからそう言った。

 

「テイルホワイト! ごめんなさい、私のせいで……」

「平気……ではないけど……まあ平気」

「あ、あれだけの攻撃を受けて……。その装甲、本当にすごいね……」

 

 自分自身にダメージは確かにあるけど、改めてフォトンアブソーバーの凄さを実感した。

 リアルの驚きようを見ると、どうやらこのテイルギア。私たち以外の異世界の人から見ても、これを作り上げた科学力は計り知れないレベルなのだろう。

 

「な、なんだ……あれ」

「え! あれテイルホワイトじゃねっ⁉︎」

「おいおい! 他にもう一人いるぞ!」

「ツインテールじゃない娘もいるわ!」

 

 どうやらツインテール属性を奪われたせいで気を失っていた人々が意識を取り戻しはじめたようだ。意識を取り戻す人が増えていくたび、スタンドのざわめきは大きくなっていく。

 それとほぼ同時、大きな音が近くなってきたかと思うと、国立競技場の上空に一機のヘリコプターが現れる。

 警察のヘリコプターではない……となるとテレビ局のだろうか。

 

「どうやらテレビカメラで中継されてるみたいだよ」

「そりゃこれだけ暴れてれば誰か通報するか……」

 

 上空から見たら、国立競技場はより凄惨に映るだろう。

 いきなりツインテールの少女が現れて、国立競技場をめちゃくちゃにしたとなれば、速報扱いは間違いないか。めちゃくちゃにした要因は私にもあるとはいえ。

 

「テレビ中継か……」

 

 ヘリコプターから視線を外し、私は立ち上がるとクローを地面から引き抜いて、再び右手に装備しなおす。

 

「テイルホワイト。あまり無理すると……!」

「無理はするって。ツインテール属性もその他の属性力も、守れるのは私たちしかいないんだから」

「わ、私たち?」

 

 ヘリコプターを興味深そうに眺めていたリアルミーティアは、ようやくこちらへ向くとそのまま銃を構える。

 

「自分で言うのも恥ずかしいけど、私もエレメリアンと戦っていた頃はまあまあ人気があったの。それこそ町がテイルホワイトばっかりになるくらい」

「それだけのツインテールを持っていれば当然ですよ。この世界以外でも同じ扱いを受けるでしょうね」

「そうかな。それでさ、どんだけ自信過剰なんだって思われるかもしれないけど……テレビを含めて今現在メディアの間じゃテイルホワイトの話題で持ちきりだと思うの。もちろん、リアルミーティアもそうだけど」

「……何が言いたいんでしょう」

 

 私の言葉を訝しんだリアルミーティアは、トリガーにかける指に力を入れる。

 

「私がテイルホワイトとして戦ってるこの状況をテレビカメラの向こうにいる人たちに知ってもらう。これが逆転の一手になるってこと」

 

 口を開け呆気に取られるリアルミーティア。

 次第にその表情は崩れ、肩を小刻みに震わしはじめる。そしてついに耐えられなくなり、大きく笑った。

 

「あ、あはははは! なんですかそれ! 応援が力になるということでしょうか。まあ確かに、気休めにはなるかもしれませんね!」

 

 応援が力になる、か。

 そうか、そういう効果もあった。確かに劇的に強くなるというわけではないが、応援は力になると思う。

 だけどね、今はそうじゃない。

 その効果は後で……本当にどうしようもなくなったときのためにとっておこうと思う。

 

「あははは……は?」

 

 未だ笑うリアルミーティアをよそに、私は大きく右腕の……テイルブレスを空に掲げた。その動作を前にしてようやく彼女の笑いは止まる。

 そして私はこれまた半年ぶりに、このこの名前を叫ぶ。

 協力が不可欠なんだから……頼むよ、志乃!

 

「――エレメリンク!」

 

 その瞬間、辺りを昼と錯覚させるほどの閃光がテイルブレスから放たれ、コアに刻まられていたツインテールのエンブレムが違う形に変化する。

 

三つ編み(トライブライド)!」

 

 光の幕が全身を覆い、それが剥がれ落ちる。

 私の髪型はツインテールから三つ編みになっており、体の装甲も多くなっていた。

 テイルホワイト・トライブライド。

 遠距離からの攻撃に対して対処しにくい、ノーマルチェインの欠点を補うテイルホワイトのフォームの一つだ。

 

「ツインテールじゃ……ない⁉︎」

「さすがに驚いた? 私の友達にすごい三つ編み属性の娘がいて、その娘の協力ありきの形態だけど」

「でたらめすぎます! あなたツインテールの戦士じゃないですか!」

 

 三つ編みの先についたフォースリボンを指で弾くと、右腕に盾と銃が一体となった重々しい銃器、フロストバンカーが装着された。

 

「そっちが武器を自在に変えて戦うなら……こっちはフォームチェンジで対抗あるのみ!」

「ツインテール属性こそが最強。だから戦士はツインテールになるんです! 三つ編みになったところで、戦況が変わるとは思えません、よ!」

 

 言い終えたその瞬間、リアルミーティアは何発もの光弾を発射する。

 何発か体に受けてわかったけど、あの光弾一つ一つはそこまでの威力じゃない。全て当たれば致命傷になり得るかもしれないが、それが起こること決してない。なぜなら、フロストバンカーで全て撃ち落としてしまうからだ!

 左手を添えて右手でトリガーを引くと、三門の銃口からそれぞれ光弾ではなく光線が発射され、リアルミーティアの光弾を飲み込みながら彼女に迫っていく。

 

「そんなっ⁉︎」

 

 リアルミーティアはすんでのところで避けることに成功したが、まだ安心するのははやい。

 私は光線を発射したまま、フロストバンカーを薙ぎ払う。すると光線はリアルミーティアの脇腹辺りへ直撃し、爆発を起こす。

 

「……」

 

 煙のせいで視界から外れたリアルミーティアを警戒しつつ、私は次の一手を準備する。

 そして煙が晴れる直前に複数の光弾の発射音が聞こえ、そちらに向かって光線を放つ。しかし、その先にリアルミーティアはいなかった。

 

「火力ではあなたの方が有利みたいなので、近接戦で決めさせてもらいます!」

 

 背後に回り込んでいたリアルミーティアは、いつのまにかステッキを銃から剣へと変形させていた。光弾の発射音で電子音声が聞こえないよう誤魔化したってこと……!

 避けることはできず、フロストバンカーで防御することも叶わない。

 ならば用意していた次の一手をここで使う!

 わかってるよね、嵐!

 

「目眩しですか⁉︎ 私には脅威足り得ません!」

 

 リアルミーティアが振り下ろした剣は、私を包む光に叩きつけられる。

 たまごの殻が割れるように、光はひび割れていき中から姿を表すのは――

 

「ポ、ポニーテール⁉︎」

 

 髪型を三つ編みからポニーテールへと変え、リアルミーティアの剣をこちらも剣で受け止めていたのは、私ことテイルホワイト・ポニーテールだ!

 

「これがエレメリンクで得たポニーテールの力! クロー一つだと剣を持った相手には苦労したけど、同じ剣ならそういかない!」

「返り討ちです!」

 

 ポニーテールで使う剣はブライニクルブレイド。

 出来るだけ装甲を薄くして動きやすくなったこのポニーテール形態では、攻めて攻めて攻めまくる。ノーマルチェインよりもさらに近接に特化した形態だ。クローから剣へと武器が変わったことで、相手に攻撃を与えるスピードも桁違いに早い。

 次第に互角の勝負から、一方的にこちらが攻め続ける展開へと変わっていく。そして次第に、リアルミーティアは焦りの色を隠せなくなっていった。

 

「こうなったら、その剣を砕いて……!」

 

HIT MODE(ヒットモード)

 

「それじゃ、私のスピードにはついて来られないよ!」

「そんな……⁉︎」

 

 リアルミーティアはハンマー振りかぶり剣の破壊を狙うが、その大きさと重量では振り下ろすまでに時間がかかりすぎた。

 ブライニクルブレイドの一斬でハンマーの柄が斬れる。すると、ハンマーの状態からただのステッキに戻りながら芝の上へと落ちた。

 リアルミーティアは力なくその場で手と膝をつく。

 

「エモーショナルステッキが……! こんなことに、なるなんて……!」

 

 見るとステッキはひび割れ、所々紫電が走っている。

 リアルミーティアの落胆ぶりからすると、どうやらもう武器として使うことはできないのだろう。

 

「勝負あり、かな」

「……いえ、まだです」

「何いってんの。もうあんた戦えないでしょ?」

 

 一応リアルミーティアとして変身はできているみたいだけど、エモーショナルステッキはどう見ても壊れてしまっている。

 状況を考えれば明らかに私が有利のはずだけど。

 

「別に今日で雌雄を決することはありませんよ、ね」

「だいぶ体もボロボロなのに、逃げることさえままならないでしょ」

 

 ここまで来たら根性があると褒めてやるべきか。

 いや褒めてる場合じゃない。早くリアルに連れて帰ってもらって、異世界から奪ったツインテール属性を返してもらわなければ。

 

「テイルホワイト!」

 

 リアルに声かけられ、彼女に視線を向ける。

 ピッチの端から焦って様子で走ってきているが、何かあったのだろうか。

 

「エモーショナルステッキは武器として使う以外にも使い道があって……!」

「また会いましょう! テイルホワイト!」

 

 リアルの言葉を遮って聞こえた言葉は自分より遥か上空から聞こえたものだった。

 驚いて空を見上げると、光の翼を展開させ、リアルミーティアが宙に浮かんでいた。

 

FLYING MODE(フライングモード)

 

 ジェット機のような速さで空を飛んでいった後に、あの電子音声が遅れて聞こえてきた。

 そういえばこの国立競技場に来たとき、彼女は遥か上空から降りてきた。完全に頭からそのことが抜け落ちてしまっていた。あーもうっ、私のミスだ……!

 

「ごめんね。私がもっと早く言っていれば……」

「ううん。私も油断してた」

「……とりあえず、ここからは出た方がいいかもね」

 

 リアルが横目でスタンドを見る。 

 スタンドはまるで今がサッカーの試合中かのような大盛り上がりの状態である。いつだかに嵐に見せてもらったイギリスのプロリーグを観戦するサポーターのような熱気だ。

 なるほど、これは早いうちに帰った方が良さそう。日本じゃありえないだろうけど暴徒化したりしたら怖いしね。

 

「よろしく」

「まかせてよ」

 

 リアルが転移装置を起動させる。するとスタンドにいる人たちの熱狂や、ずっと上空を飛んでいたヘリコプターの音が小さくなっていく。

 やがて辺りが白く発行し、私たち二人は光に包まれていった。

 

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